TOP 】 / 【 めぞん 】 / [Tossy-2]の部屋/ NEXT

タイトル



第3話 「友達の価値」
Story:03 Friends and I

Aパート



ある日常


 「…でね、今日さぁ…」
 「えーっ!本当!?」
 「いやね、つまり…」
 「だからさ…」

 第3新東京市立第1中学校、2年A組。

 例の襲来のことは、もうほとんどの生徒の記憶から消えかけていた。
 会話も、普通のものだけとなっている。

 今は、休み時間。
 生徒たちはいくつかのグループになって、話をしている。
 ゲームの話、ファッションの話、タレントの話…。

 そんな中に、最近できたばかりのクラスターが1つあった。

 「…で? 結局どうなったわけ?」
 「気絶してる間のことなんか分かる訳ないよ。」
 「碇君、もう身体は大丈夫?」
 「あ、うん。ほら。」

 少年1人と少女2人。
 碇君と呼ばれた大人しそうな少年は、左手を動かして見せた。

 「よかったわね…。」

 青い髪の少女が、少し微笑む。

 「しっかし、帰ってきたときにはもう何ともない、なんて信じられないわねぇ。」
 「な、何だよう。本当なんだからしかたないじゃないか、アスカ。」
 「そうよ。事実は事実なのよ。」
 「な、何よ。レイまで…」
 僕を(碇君を)信じてくれないの?
 シンジとレイがアスカに迫る。

 わ、わかったわよ!信じればいいんでしょ、信じれば!

 アスカは、いくぶん投げやりに言った。



 キーン コーン カーン コーン……

 終業のチャイムが鳴る。
 同時に、生徒たちは帰り支度を始めた。当番のあるもの以外は…。

 「なあなあ、今日は久しぶりにあそこ行こうぜ!」
 「そうだなぁ…そうするか!」
 「あ、俺も俺も!」

 「部活、今日無しだって!」
 「やったぁ!」
 「早く帰ろ!」
 「うん!」

…等々、明るい会話が聞こえてくる。
 休み時間と同じく、自然にグループにまとまり、生徒たちは帰っていく。

 彼らにしても例外ではなく…、

 「ほら、シンジ!帰るわよ!」
 「ま、待ってよ。えーと…」
 「・・・」
 シンジがアスカにせき立てられ、レイはそれをちょっと悲しげに見つめている。
 このところ、いつもの光景だ。

 「…と。よし。」
 やっとシンジの荷物がまとまったようだ。
 その声を合図に、アスカは歩き出した。
 レイは、シンジが荷物を持つのを待ってから、歩き出す。

 彼らの帰り道は、他のグループに比べて静かだ。
…いや、彼らが暗いというわけではなく、聞かれるとまずいから、ということで納得して下さい。



 その日も、シンジ達は例の公園(第2話Cパート参照)へと寄った。
 3人は、ベンチに座っている。
 真ん中にシンジ、両脇にレイとアスカ。

 「使徒、また攻めてくるのかな?」
 「多分ね。あれだけで諦めるとは思えないわ。」
 「今度はいつかな?」
 「…分かるわけないじゃない。…案外、今これからとか。」
 「それはちょっと困るな…」
 「分からないわよ? 第一、敵の正体すら何も分からないんだし。」
 「まあ、それはそうだけど…」
 「碇君、大丈夫。今度は私も…」
 「あ、ありがとう。綾波…」
 「いいの、私は碇君と一緒なら…」

…で、いつもこんな調子でラブコメモードに突入するシンジとレイ。
 半分キレてる状態でそれを見つめるアスカ。

 「綾波…」
 「碇君…」

 ガタッ

 アスカがついに立ち上がった。

 「私、帰るわ。」
 振り向きもせずに言う。

 「そ、そう。」
 「…さよなら。」

 その声に返事は帰ってこない。

 「…どうしたのかな?」
 「分からない。」
 超鈍感なシンジがその繊細な心理を理解できようはずもなく、レイも鈍感ではないもののあまり感情を知らないため、こういう結果になる。

 (何よ…。レイばっかしずるいわ…)
 アスカは、帰り道そんなことばかりを考えていた。



 その夜。

 アスカは、うなされていた。
 今まで見たこともないような悪夢に。
 それは、シンジの話に影響されているのであろうことは間違いないだろう。


 夢の中で、アスカは暗闇にいた。
 そして、何かと対決している。
 相手の姿は見えない。それが余計にアスカを不安にさせていた。

 いきなり、右目が見えなくなった。
 頭を何かが貫通する感じ。
 それだけにとどまらず、左手が何かに掴まれる。
 恐ろしい力で左手が締め付けられ、アスカは呻いた。

 (助けてシンジ! 助けてぇ!!)
 悲痛な叫びは、声にならない。

 だが、関係ないように力は強まり…


 「きゃああぁぁぁぁぁっっっっ!!」
 もう少しで骨が折れる。
 そこでやっと悲鳴が響きわたり、アスカは目を覚ました。

 (夢…?)

 周囲を見渡し、自分の部屋であることを確認する。
 背中に、寝汗をぐっしょりとかいていた。
 時計を見ると、まだ真夜中だ。

 (怖い…。誰か…助けて……)
 暗闇を恐れるようにアスカは布団にもぐり、声を殺して泣いた。

 (助けて…シンジ…)

 夢の中のはずなのに、その感覚がありありと蘇ってくる。
 アスカは、自分が汗をかいていることさえ忘れていた。
…結局、アスカは泣きつかれて再び眠りに落ちる。
 今度は、あの恐ろしい夢は見なかった。



 で、舞台は例の宇宙船へと移る。

 「サキエルがやられたか…」
 「となると次は…」
 「私が行こう。」
 「シャムシェルか…頼んだぞ。」

 「…御意」

…なんかどっかの時代劇みたい…。



アスカ、ダウンする?


 再度、第3新東京市。

 朝。

 ミーンミーン… と蝉の声。
 セカンドインパクト以来、夏しか無くなってしまった日本では、いつものような、珍しくない朝だ。

 はっ、と目を覚ますアスカ。
 すぐ体の変調に気づいた。
 一年中夏なので、朝ではあるが外気温はそれほど低くはないはずだ。
 だが、寒気がする。

 ごほごほ…

 咳も出た。

 (あちゃー、風邪だわ)
 そういえば、昨日目が覚めたとき汗かいてたっけ…とか思ってみる。
 どうみても風邪だ。
 幸い、それほどひどくはないようだが…。

 (学校は行けると思うけど…)

 それ以上は…無理ね。



 「え?アスカ、今日調子悪いの?」
 「そう…ごほごほっ!

 いつのまにやら学校。
 アスカは、咳をしながら答える。

 「じゃあ、休んでれば良かったのに」
 「そうも…ごほごほ…いかないでしょ…ごほごほ」
 「大丈夫だよ。だってアスカ、向こうで大学卒業してるんだし」
 「とにかく、学校には…ごほ…来れるから来たのよ…ごほごほ。」
 「ほら、保健室行ったほうがいいよ。」
 「そうよ、アスカ。」
 いつのまにかヒカリも口を出す。

 「でも、咳だけ…ごほごほ…だし…授業には…ごほ…影響ない…ごほごほ…ないわよ。」
 「じゃ…じゃあ、苦しくなったらすぐ保健室に行ってね。」
 「わかった…ごほごほ…わ。」

 こうして、一日は始まった。

…でもって、そんなときに限って都合良くまた使徒が現れるのだった。



Bパートに続く ver.-1.00 1997- 06/04公開

ご意見・感想・誤字情報などは VFE02615@niftyserve.or.jp まで。




 次回予告

 シャムシェルが現れる。
 2度目の出撃は、またもシンジのみ。
 お約束通り投げられて来ると、そこには…


 あとがき

 アスカ派の人々に、とりあえずごめんなさい。
 アスカにはもーちと後で活躍してもらいます。
 今回は、まだ弐号機が出てくると困るので…ね。

 さて、2話Bパート、お楽しみに!




 Tossy-2さんの『新戦士 エヴァンゲリオン』第3話Aパート公開です!

 アスカの意地っ張りなところが出てきてましたね。

 シンジが気になっているのに、レイに苛つくばかりで素直な言葉が出ない・・・
 可愛いです。
 悪夢にうなされその名を呼ぶ・・・・あぁ守ってあげたい・・(^^;
 

 でも、ここのシンジはレイとラブラブなんですね。
 その内、三角でもめるのかな?
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 次回再び「戦い」を書くことになりそうなTossy-2さんに貴方のメールを!!


TOP 】 / 【 めぞん 】 / [Tossy-2]の部屋