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タイトル



第1話 「選ばれし者達」
Story:01 Children

Bパート



認知

 シンジは結局何もする気が起きなかった。
 勉強する気にもなれず、かといって寝たりするのもつまらない。
 ベッドに寝転がっているシンジ。

 そんな内に時間は経ち、いつの間にか寝る時間になった。

 シンジは本格的にベッドに入ったが、なかなか眠れない。

 「僕は…僕の身体は…どうなっちゃったんだろう…」

 ふとさっき鏡に映った自分の瞳を思い出した。
 見間違えるはずもない。
 瞳は、紫色をしていた。

 そんなことを考えながら質問を自分に対して止めどなく繰り返すシンジの頭に、突然声が響く。

 (…知りたい?)

 えっ!?
 シンジは、聞いたことのない声に驚く。
 聞こえた声は、澄んだ女性の声だった。

 「き、君は一体…誰? どこにいるの?」
 (どこって…あなたの中だけど…)
 「えっ、じゃあまさか…」
 (そうよ。あの球が私)
 「やっぱり…」
 (それより、わざわざ声出して話さなくてもいいのよ。伝わるんだから)
 (あ、そうなの?)
 (そうよ)
 (ところで、君は誰なの?僕はどうなっちゃったの?)

 (んー、まず私が誰か、ね。私は、地球を守るためにやってきたの。名前はEVA)
 (エヴァ?)
 (そうよ。…まあ、仲間内…ってったって3人しかいないんだけど…では、『初号機』と呼ばれてるわ)
 (・・・)
 (で、次にあなたがどうなったかだけど…、まあ手っ取り早く言えば一つになった、ってところかしら。つまりは私があなたであなたが私というか…、んーと…)
 (ねぇ…、地球を守る、って…)
 (…え? あ、そうそう。あなた、『使徒』って聞いたことある?)
 (『しと』? なにそれ)
 (じゃあ15年前の大災害は?)
 (それは知ってる)

 15年前の大災害…世に言う「セカンドインパクト」

 南極大陸が蒸発し、海面が上昇。
 それによりたくさんの都市が水面下に沈んだ。
 そして、人々は生き残るための争いに突入していった…。
 その原因は、「大質量隕石の落下」ということで片付けられてしまっていた。

 そういう事件があったことは、シンジも歴史の授業やニュースなどで知っている。

 (あれを起こしたのが、使徒なの。彼らは、地球を手に入れようと企んでいるのよ)

 (そ、そんな…。じゃあ、ニュースは、授業は全てだったのかあぁーっ!)
 自分の今までの苦労が水の泡になったことを知り、シンジはショックを受けた。

 (ま、まあそういうことよ。それで、使徒がまたこの星を狙ってるのよ)
 (また、爆発を起こすの?)
 (まあ…、そうなるわね。最終的には)
 (もう…だめなの?なんとか避ける手はないの?)

 (だから、私たちが来たのよ。…それで、あなたの力を貸して欲しいの)
 (で、でも…僕は普通の中学生だよ?そんな恐ろしい奴等なんかと…)
 (そうね、表向きは普通だけど…)
 (え? …それ、どういう意味?)
 (あなたはただの人間ではない、ってことよ。手っ取り早く言えば)

 ガーン

 (そ、そんな…じゃあ僕は人間じゃないの? そんな…)
 (元は人間だったわ、一応のところ)
 (…よかった…)
 (でも今のあなたは人間と私達EVAの中間点のようなものよ。私たちと融合できるからには、あなたは少なくとも他の人達とは違うわ)
 (どう違うの? そんなこと、分からないよ…)
 (あなたの中にはね、隠れた力があるの。他の人間にはない能力が)
 (僕が…)
 (ええ、そう。だから、使徒はまずあなたを狙ってくるはず)
 (でも僕はそんなこと…)
 (それも事実なのよ)
 (・・・)
 (今の所、使徒に対抗する手段は普通の人間にはないわ)
 (だから、僕が…?)
 (そうなのよ)
 (でも…僕は何をすればいいの?)
 (私と一緒に戦ってほしいの)
 (そんなこと、出来るわけ…)
 (言うのは簡単だけど、実際にやるのは難しい。それは分かってるわ。でも、あなたにしか出来ないこともあるのよ)
 (・・・)
 (それに私たちと一緒になって使徒と戦えるのは、あなた達選ばれた人間にしかできないの。そういう人間は、この地球上にあなたを含めて3人しかいないわ)
 (・・・)
 (だから…おねがい。一緒に…)
 (・・・)
 しばらく考え込むシンジ。

 長い沈黙の後、シンジは決意して言った。

 (…わかった。手伝うよ)
 (ありがとう…)
 まじめな口調がやわらいだ。

 (それから…、くれぐれもこのことは秘密よ)
 (うん。分かってるよ)

…余談だが、シンジはそのあとEVAの話を夜中まで聞かされたらしい。



 同時刻。
 シンジと同じくレイとアスカも、それぞれ自分と一つになったEVAに説得されているところだった。

 (あなたと私の力があれば、あなたの大好きな 碇君も守ってあげられるわよ)
 「な、何を言うのよ」
 レイは、真っ赤になった。
 実は、レイはシンジのことが好きだったりする。
 まだ言い出せないでいるのだが。
 「…でも、いいかも知れないわ…」
 (ね!)

 一方、こちらはアスカ。

 (…ね、いいでしょ?)
 (めんどくさいけど…ま、いっか。自分の存在をアピールするいい機会だわ!)
 (じゃ、決まりね)
 (ええ!)

…ノせられやすいタイプのようで…。



転校生

 「おはよー」
 シンジが教室に入る。

 「あ。おはよう、碇君。」
 「洞木さん、おはよう。」
 「よ、碇。」
 「おはよ、ケンスケ。」

 「碇君…おはよう…」
 「あ、おはよう。綾波…」
 2人はしばし見つめ合う。
 そして、お互いの異変に気づいていた。
 他の人は誰も気にしてなどいない。

 (へぇ…これが碇君かぁ…。優しそうな…)
 レイの中に響く零号機の言葉はそこで一旦途切れる。
 (ま、まさか…この感じは…)

 (そーよ、私よ!)
 零号機の声に混じって、レイが聞いたことのない声がした。
 だが、零号機にとっては、その声は懐かしい。
 (初号機よね?)
 (ええ。…でも奇遇ねぇ。こんな近くにいるなんて)
 (そーね。まさに『御都合主義』って奴ねぇ)

 しかし、その会話はレイとシンジは聞こえないも同然だった。

 「碇君…その目…」
 「綾波も…その目の色は…」
 レイの瞳の色は、シンジの知っている黒ではなく赤。
 シンジの瞳の色は、レイの知っている黒ではなく紫。
 2人は、顔を合わせた瞬間お互いから何かを感じとった。自分と同じであるということを。

 「ひょっとして…」
 シンジは小声になる。

 「綾波も…EVAに?」
 「・・・」
 無言で頷くレイ。

 「やっぱり…」
 「碇君も、なの…?」
 「うん」

 「おいおい、何小声で話しあってんだ〜? ア・ヤ・シ・イ・な〜?
 トウジ&ケンスケが迫ってくる。

 へ?
 思わずその声に反応して真っ赤になってしまうシンジとレイ。

 「・・・」
 「・・・」
 2人とも何も言えずにうつむいてしまった。
 クラスからどっと笑いがまき起こる。

 そんなとき、表から激しいブレーキ音が!

 「おおぉっ!ミサトセンセーや!」
 トウジとケンスケは、さっきのことなど全く忘れているように窓へと突進した。

 (ついてけないな…)
 シンジは、2人の友人についてつくづくながらそう思ったという。



 「喜べ男子ぃー! 今日は転校生を紹介するぅ!」
 2年A組担任、葛城ミサト(29)が言う。

 クラスの男子から大歓声がまき起こった。

 「はぁ…」
 だがシンジは、どうもそういう気分にはなれなかった。
 まあ、無理もないところではある。

 そんなとき、扉ががらっと開き、栗色の髪・青い目の少女が入って来た。
 彼女は、すたすた教壇に向かうと、黒板に名前を書き、振り返る。

 「惣流・アスカ・ラングレーです。 よろしく!」
 そして、微笑んだ。

 うおおおぉぉぉっっっ……
 再び、男子から歓声がまき起こる。

 「これは売れる! 売れる、売れるぞぉーっ!」
 ケンスケは別の意味で感動していた。

 「惣流・アスカ・ラングレーさん、か…」

 ふとシンジが彼女の顔を見る。
 彼女の視線もシンジの方を向いていた。
 その瞬間、2人の間に見えない糸がつながったような気がした。

 一瞬にして、アスカの微笑みがまじめな顔になる。
 シンジの表情も硬くなった。

 アスカは、シンジに向かってつかつかと歩み寄り…

 「あんた、もしかして…」
 「惣流さんも…?」
 無言で頷くアスカ。

 (あら、弐号機ね!?)
 (はぁい、おひさしぶり!初号機、元気だった?)
 (ええ、まあ…)
 (しっかし、こんな狭い空間の中に『適格者』が3人もいるなんて、まさに偶然中の偶然ねぇ)
 (…そうよね)

 「あぁら、碇シンジ君。知り合い?」
 教師・ミサトがおもしろそうに言う。
…しかしこの人、本当に教職免許取れたんだろうか…?

 「ち、ちち、違いますよおっ!」
 シンジは必死で反論した。
 「違うわよっ!」
 アスカも。

 が。

 「ほ、本当にちがうんですってば…」
 気づくとクラスの男子全員からにらまれていた。
 シンジは冷や汗をたらして座る。
 アスカも、再び教壇に向かった。

 (シ、シンジ〜。お前というやつは…)
 トウジ&ケンスケにしてもそう思ったのは例外ではない。

 「うう…悪夢かも…」
 机に突っ伏すシンジの背中をつつくものが。

 「ん?…ああ、綾波。」
 「…どうだったの?」
 「やっぱり…そうみたい」
 「私たちと同じ…なのね?」
 「そう。僕達と同じ…EVAだよ。」

 シンジとレイの小さな会話に気づくものはいなかった。


第2話に続く ver.-1.00 1997- 5/24公開

ご意見・感想・誤字情報などは VFE02615@niftyserve.or.jp まで。


 次回予告

 突然現れる使徒。
 初めて出会う敵に、シンジはどう立ち向かうのか。

 次回「使徒、襲来」。 この次もサービス…なんかできるかな?



 Tossy-2 さんの『新戦士 エヴァンゲリオン』第1話Bパート 公開です(^^)

 やっぱり何となくお気楽な3人ですね(^^)

 いきなり自分と融合した物をあっさり受け入れて、
 あまつさえ一緒に戦うことさえ承認して・・・・考えなくて良いのかぁ(笑)

 学校で出会った3人はこれからどうなるのでしょうね。
 まだ出てこない”使徒”も気になります。
 

 訪問者の皆さんも一緒に第2話を待ちましょう!
 Tossy-2さんに感想メールを送るのも忘れずに(^^)


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