【 TOP 】 / 【 めぞん 】 / [Tossy-2]の部屋/ NEXT
Aパート
「…いよいよだな」
「ああ」
「15年か…長かった」
「そうだな」
「しかし、もうすぐあれは我らの手に…」
「ふっふっふっふっ…」
「はぁっはっはっはっはっ…」
暗闇に、声が響く。
ここは、地球に向かっている宇宙船の中。
…で、お約束通り(?)彼らは地球征服に向かう途中だった。
こちらもまた暗闇。
だが、3つの光る球がある。青、紫、赤。
「まずいわね…」
「そうね…」
「急ぎましょ」
「ええ」
声はその球から発せられていた。
会話が終わると、3つの光は地球を目指した。
日本、第3新東京市。
「はぁ…。今日も仕事で遅くなっちゃった。」
人通りの少ない道を、つぶやきながら歩く少年が1人。
「もうすぐ文化祭だからって…こんなに遅くまで残らせる必要ないじゃないか…」
少年…碇シンジ(14)は、ぶつぶつ文句を言いながら早足で歩いていた。
…と、ふと空を見上げた彼の目に、バラバラの方向へ跳んでいく3つの流れ星が映る。
「流れ星…か…」
しかし、何か変だ。
その星は、消える風もない。
さらには、そのうち紫色の星がこっちに向かってくる。
「な、何なんだ?あの流れ星は…?」
そして、呆然としているシンジの足下で、「コトン」という音と共に、その星は輝きを失った。
それは、ハンドボールぐらいの赤黒い色をした球体だった。
「…?」
シンジは不思議に思って、それを持ち上げ、顔を近づけてみた。
「何なんだ、これは?」
そう言いながらもしげしげと眺めている。
…水晶玉のような感じ。
でも、色付きだし…
シンジは、そんなことを考えていた。
その時。
輝きを失っていた球が、再び紫の光を取り戻す。
「うわっ!」
シンジは驚いて、手からその球を落とした。
しかし、その球が再び地面に落ちることはなく、宙に浮いてシンジの方にゆっくりと向かってくる。
「!」
シンジは怖くなったが、なぜか身体が動かない。
(ど、どうしてこんな時に僕の体は動かないんだぁ〜!!)
と心の中で叫んでは見たものの、状況に変わりはない。
球は、シンジの胸の高さでゆっくりと迫ってきた。
そして、シンジの胸にぶつかると思った瞬間、
ズブ
変な音がした。
球が胸にめり込んでいく。
「う、うわっ!」
シンジは思わず声を上げた。
手から鞄が落ちる。
球は、そんなシンジの思いと全く関係ないように胸の奥底へと沈んでいった。
球が消えた後、シンジはあわてて胸に手をやってみる。
「…何とも…ないみたい…」
驚きを隠せないシンジ。
だが、帰らなくてはならない。
とりあえず、シンジはこれといった変化が無いことに安心して再び歩き始めた。
だが、シンジの身体に変化は着実に現れてきていた。
しかし、この状況でシンジがそれを知ることはなかった。
その頃、シンジのクラスメートである綾波レイもまた、道を歩いていた。
かなり太い道なのだが、郊外なこともあり人通りは全くといっていいほどない。
レイは、何となくつまらなさそうな表情をしている。
歩く度にそのプラチナブロンドの髪が揺れる。
ふとレイはその黒い瞳で空を見た。
空には、この都会には似合わない満天の星。
満月の明るい光が地面を照らしている。
耳に入ってくるのは、セミの声。
今は夏。昨日も、明日も。いつまでも。
もう、日本には夏しかないのだ…あの時から。
そんなことは全く考えずにただぼんやりと空を見ているレイ。
その足下に球が転がってくる。
レイは、球を拾い上げた。
「…何かしら…」
すると、その球もシンジが拾ったものと同じように光りだし…
「・・・」
無言のまま驚いているレイの胸の中へと姿を消す。
「今の…何だったのかしら…」
不思議に思いながらも、立ち尽くしているわけにはいかないので、レイは自宅へ向かった。
同じ頃、ドイツ。
…と言えば誰のことかは分かるはずだが…一応書く。
「明日は日本ね、パパ!」
栗色の髪・茶色の瞳の少女、アスカが父親に言う。
その顔は、満面笑顔。
「そうだね。」
「ねえねえ、日本ってどんなとこ?」
「うーん…一言じゃ言えないなぁ…でも、いいところさ。」
「へぇ…」
アスカは、日本に行くのが楽しみでならないようだ。
日独クォーターで日本語を話せるとは言え、なにせ初めて訪れる外国だ。無理もないところだろう。
待ちきれないのか、アスカは表に散歩に出かけた。
「日本か…楽しいとこだといいなぁ…」
そう言いながら空を見上げるアスカに、赤い流れ星が見えた。
「赤い星…」
…と思っているうちに、その星(?)はアスカの方へと向かってくる。
「え゛っ! うそ!?」
アスカが走り出そうとしたとき、その頭に星ならぬ球がぶつかった。
ゴツ!
バタッ
アスカの額には大きなコブが出来ている。
後頭部は地面とお友達になった。
そして、アスカの目の奥と頭の周りに新たなお星様が多数生まれたのは、言うまでもない。
『ちょ、ちょっと失敗しちゃったわね』
球は、そう声を発すると仰向けに倒れているアスカの胸に飛び乗った。
次の瞬間、それはアスカの胸の中に消える。
…なお、アスカはその数分後気がつき、すぐ家へと帰ったそうだ。
「ただいまー」
シンジが家につくと、すぐ母ユイが迎えに出てきた。
「あらシンジ。遅かったのね。」
「まあね。もう少しだし、文化祭。」
「そういえばそうだったわねぇ。今年は父さんも連れて見に行きますからね。」
「えっ、べ、別にいいよ。そんなこと…」
「遠慮しないの。ほら、ごはん出来てるわよ。」
「う、うん…」
シンジは、いつも通りご飯を食べた。両親と共に。
だが、いつも通りの気分にはなれない。
何しろ、帰り道であんな事があったばかりだ。
話してみようかな…
そう考えても見たが、話したところで信じてくれる人などいないだろう。
ましてや、何も変化はない(とシンジは思っている)。
こんな突飛な話、証拠もないのに信じてくれる人の方が不思議だ。
カチャ
「ごちそうさま…」
「あら、もういいの?」
「うん…」
シンジは、そう言うと自分の部屋に引っ込んでいった。
「はぁ…一体あれは何だったんだろう…」
シンジはベッドに寝転がり、天井を見つめていた。
そして、夕方のあの感触を思い出す。
胸に何かが入り込んでいく感触。
その後に訪れた、身体が火照る感じ。
ふとそれが気になった。
そして、シャツを脱ぐと鏡の前に立ってみる。
胸は…なんともない。
しかし、もっと良く見ようと鏡に近づくと、自分の顔に何か違和感を感じる。
そしてそれは案外あっさり解決した。
「目が…」
そう。
シンジの瞳は、もう今までの黒ではなく、紫色をしていた。
「どういうことなんだ…?」
鏡から離れたシンジは、再びつぶやいた。
一方、レイはといえば案外早く気づいていた。
「私の目が…」
レイの瞳の色は、黒かった。だが、今は赤い。
風呂に入ろうとして気づいたのだった。
…とすれば、当然アスカも…
「な、何が起きたの? 一体…」
自分の髪の手入れをしていて目を丸くした。
茶色かったはずの瞳が、マリンブルーになっている。
「私…どうなっちゃったの…?」
その疑問に、答えはない。
ver.-1.00 1997- 5/23公開
ご意見・感想・誤字情報などは
VFE02615@niftyserve.or.jp
まで。
次回予告
自分の身体の変化、そしてあの悲劇の真相を知るシンジ達。
そんなある日、シンジのクラスにドイツから転校生がやってくる。
Tossy-2さんの『新戦士エヴァンゲリオン』第1話、公開です!
「レイはその黒い瞳」「茶色の瞳の少女、アスカ」この描写に驚きました。
あれれ、なんで? と思っていたらこの展開!! やられた(^^)
二人はそれぞれ「赤い目」「青い目」に驚いていましたが、
私達エヴァ人にとっては黒&茶に違和感を感じてしまうでしょうね。
・・・・・ちょっと見てみたい気もするな(^^)
それにしてもシンジもレイもなんかお気楽な性格で,
大事件がほのぼのしてしまいます(^^;
訪問者の皆さんの期待も高まってきましたか?
ぜひTossy-2さんに感想を送って下さいね!
【 TOP 】 / 【 めぞん 】 / [Tossy-2]の部屋