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NEON GENESIS
Νεον Γενεσισ

Evangelion
Ευανγελιον
Parallel Stage
Παραλλελ Σταγε


EPISODE:06 / Intermission 2

第6話


休日 U



た、二人



Cパート



追跡


 NERV休憩所。

 「な、何ですって!?」
 コーヒーを飲みながら休憩していたミサトは、シンジの話を聞いて素っ頓狂な声を上げた。
 周りの職員達(数人しかいない)が一斉に振り向く。

 「あ、アスカとレイが誘拐されたって…本当なの!?」
 「ええ、間違いないと思います。」

 「まずいわ…」
 「すみません…僕がもっと注意していれば…」
 「そんなことないわよ。注意するったって、そりゃシンジ君が女子更衣室に入り込むわけにも行かないでしょう?」
 「まあ、それはそうなんですけど…」
 「とにかく、後悔するよりは2人を何とかして助けなきゃならないわ。」
 「はい」



 少々後、発令所。

 メインモニターには第三新東京市の概略地図が映し出されている。

 「…で?」
 ミサトが問う。

 「だめです。ビーコンの電波も反応無しです。携帯電話は学校に置いたままのようですし…」
 答えるマコト。

 「…さすがプロですね…。くやしいですが、電波探索による位置特定は出来そうもありません」
 「そう…」
 唇を噛むミサト。
 見るからに悔しそうな表情をしている。
 手に持った鉛筆が折れそうになるほど、手に力がこもる。

 (結局、何もできないの…?)

 「固有電磁波パターンでの探索は?」
 こちらはリツコ。

 「だめです。反応、ありません」
 マヤが即座に答える。

 「そう…衛星映像は?」
 「誘拐されたと思われる、1時間30分前から現在までのデータを確認しましたが、誘拐直前あたりから電波撹乱が激しくなっています。映像確認できません。」

 「ところで、何か痕跡はないの?」
 再びミサト。

 「ありませんね。シンジ君の話から、おそらく車を使ったのでしょうが、中学校付近にタイヤの跡、足跡など2人の居場所が特定出来るようなは見あたりません。」

 「市への出入りは?」
 「昨日から現在までに出入りした車は、3台だけです。いずれも入って来た車ばかりですし、犯人はまだ市内に潜伏している可能性が…」
 「そう…考えうる行動範囲は?」
 「MAGIによりますと、市内ほぼ全域、97%に及んでいます。とても絞り込みはできませんね。」
 「はぁ…」
 溜息。

 「…しかし、古典的よね。人質作戦なんて…」
 そして、ミサトは1人つぶやいた。



 さて、場所は変わって彼らの更に後方では。

 ゲンドウと冬月が小声で話し合っていた。

 「しかし古典的な手法だからこそ、か」
 「ああ。…老人達め、セカンドとレイを人質にとって初号機を手に入れるつもりか」
 「どうやら、そのようだな」

 「しかし、うかつだったな、シンジ…」
 「いや、彼の責任ではないだろう。まさかシンジ君が女子更衣室に入るわけにもいくまい」
 「・・・」
 「むしろ、問題は諜報部だぞ。彼らがいながら、何故こうもあっさり誘拐される。職務怠慢極まりないのではないか?」

 「…ゼーレとの内通者がいるのかも知れん」
 「いや、しかし…」
 「諜報部、絶好の隠れ蓑だとは思わんか。」
 「・・・」

 「いずれにせよ、シンジを渡す気は毛頭無い。ただレイとセカンドを取り戻す。それだけだ」
 「…そうだな」



 「う…」
 目に入る光の眩しさに、アスカは目を覚ました。

 うっすらと目を開けると、コンクリートむき出しの壁が目に入った。

 (ここは…)

 きょろきょろと辺りを見回す。
 だが、ある物といったら2mを超える高さのところにある小さな鉄格子付きの窓と、その正反対の位置にあるこれまた頑丈そうな扉だけ。
 あとは自分と、まだ眠っているのだろうか、レイがいるだけだ。

 相当なはずの地上の熱気も、ここまでは伝わってこない。
 むしろ、寒いくらいだ。

 思わずくしゃみをするアスカ。
 ふと、自分が水着姿なのに気づく。
 あわてて自分の上に掛けられていた毛布にくるまる。

 (どうして、こんな所へ…)

 女子更衣室を出たところまでは、確かに記憶があった。
 だが、その後頭が冷たくなったかと思うと視界が暗転し…そして、今気づいたわけであった。

 (アタシ達、誘拐されたの?)
 疑問に答えるモノはない。



 「ファースト…ちょっとファースト。起きなさい」
 隣のレイに呼びかけるアスカ。
 数回揺すると、レイはまぶたを開けた。

 「あ…」
 「ようやくお目覚めね。」

 「ここは…?」
 目をこすりながら、いつもの口調で言う。

 「どうやら、地下室か何かみたいよ。…アタシ達、誘拐されたらしいわ」
 「!」
 一気に、レイの頭は覚醒した。
 思わず立ち上がるレイ。

 「とりあえず、落ちつきなさい。ファースト。」
 「弐号機パイロット…」
 「…慌てても、どうにもならないわよ。」
 「・・・」
 「待つしかないわ。助けを。…シンジをね。」
 「碇君が?」
 「まあ、おそらくアタシ達を誘拐したのはシンジ狙いでしょうからね。人質作戦だと思うわ。」
 「…碇君」

 レイは、再びゆっくりと腰を下ろした。

 (碇君…)

…と、

 「その通り。」
 低い男の声がして、重そうにドアが開いた。



 そのころ、NERVでは。

 「ミサト」
 リツコが、後ろにいるミサトに声を掛けた。

 「なに? スクランブル外れたの?」
 「いえ、それよりもっと驚くべき事よ。…マヤ。」
 「はい」
 キーボードを叩くマヤ。
 その目の前のディスプレイに、オシロスコープでよくみる波が表示される。

 「…一体何の波形?」
 「スクランブル信号。そして…犯人からのメッセージ。」

 「な、何ですって!?」
 驚くミサト。

 「マヤ、やって。」
 「はい。」
 再びキーボードを叩くマヤ。

 ピピッ!

 リターンキーの後短い電子音が響き、波形がどんどんと変化していく。

 「…スクランブル信号の中に、スクランブルされたメッセージが入っていたわ。」
 「じゃあ、声紋鑑定が…」
 「いえ。残念だけど、合成音声よ。声紋から特定は出来ないわ。それに…特定できたとしても居場所が分かるわけでもないわよ。」

 『終了しました。』
 ちょうどその時、作業の完了を知らせるメッセージが表示された。

 「マヤ、再生して。」
 「わかりました。メインスピーカーに出力します。」

 数秒の後、発令所に声が響きわたる。
 合成されたとはっきり分かる男性の声だった。

 『このメッセージに気づく頃には、既に分かっていると思うが…ファーストチルドレンとセカンドチルドレンを預かった。』

 「・・・」
 辺りに、沈黙が流れる。

 『返す条件は…君たちの予想通りだ。なお、取引場所は自分たちで見つけたまえ』

 プチッ、と通信の切れる音がして、再び発令所には沈黙が広がった。



 「その通りだ。」
 開いたドアから入ってきたのは、大柄で体格のいい男だった。
 黒い服を着て、目には黒いサングラスをかけていた。

 「我々の目的については知っているようなのでこれ以上は言わん。君たちは、取引の材料として利用させてもらう」
 な、なんですって!?
 「落ちつきたまえ。あまり暴れられると薬を使わなくてはならなくなる。」
 「ぐ…」

 「…彼らがメッセージに気づいたようだ。安心したまえ。君たちは取引が終わったらすぐに返す。」
 シンジを…シンジをどうするつもり!?
 「答える義務はない。」

 それだけ言うと、男は部屋から出ていった。
 その後、扉は再び重い音を立てて閉められた。

 (碇君…)

 あーもー! 腹立つわねっ! こんなところに閉じこめて!
 あしらわれてしまったということ、そして狭い室内に2人っきりと言うことがアスカの怒りメータをぐんぐん上昇させていっていた。



 一方、シンジは。

 『ミサトさん、こんなことして何か分かるんでしょうか?』
 「もしかしたら、と思ってるのよ。人間の科学じゃどうにもならなくても、エヴァならなんとかなる気がしない?」
 『しませんけど』
 「あら」
 あっさり否定されて、ミサトはこけた。

 そう。
 シンジは現在弐号機とシンクロ中。
 アスカと弐号機はシンクロできるのだから、弐号機を使って居所がわりだせないか?という単純な発想の下、ミサトが有無を言わさずシンジをエントリープラグに押し込んだのであった。

 『何も、変わった事ないですよ。』
 「そう?…でも本当になんとかなる気がしない?」
 再び聞くミサト。

 『はい。』「しないわ」
 同時に後ろからも返事が聞こえた。
 ミサトが後ろを振り返ると、リツコが来ていた。

 「あ、あらリツコ…」
 「ミサト、なに無駄な事やっているの?」
 「む、無駄ってまだ決まったワケじゃ…」
 「無駄は無駄よ。アスカが弐号機とリモートシンクロしていれば別だけど…そんなことは使徒かシンジ君でも無ければ出来ない話よ」
 「あ、そ、そうなの…」
 「とりあえず、早く発令所に戻りなさい」
 「へ、へへへ…」
 バツが悪そうに頭をかきながら発令所に戻るミサト。

 「…全く…」

 溜息をつきながら呟くと、リツコはシンジに降りてくることを促した。

 「…シンジ君。早く降りていらっしゃい」
 「言われなくてもそうしますけどね…」

 リツコが見上げると、既にシンジは弐号機の肩に立っている。
 そのままシンジはそこから一歩踏み出す。
 そしてそのまま、シンジはまるでエレベータにでも乗っているかのように、すーっとゆっくり降りてきた。

 「全くミサトは…。」
 はあ、再び溜息の音と共にリツコが言う。

 「それよりシンジ君、むしろ弐号機よりあなたの方がよほど2人の居場所を探り当てられる可能性が高いわ。…レイとアスカの精神波長は分かるわね?」
 「はい。…でも今は、思考がまだそれほど強くないみたいで、反応はありません。」
 「そう…精神波を感じたら、すぐに言ってくれるかしら?」
 「わかりました。」



 …んもう、遅いわねぇ!
 「落ちつくのよ、弐号機パイロット」
 静かに、レイが言う。

 「どうしてアンタはそう冷静なのよ!?」
 「あなたは、どうしてそう興奮しているの? あなたこそ、冷静になれと言ったのでしょ?」
 「う…そ、それもそうね。しっかし、遅いわね…強行突破して帰りたくなってきたわねぇ…」
 「じゃあ、そうする?」
 至極あっさりと言うレイ。

 「そ、そうするって言ってもねぇ、ファースト…」
 「出来ないことは無いわ」
 「で、でもね…」
 「分かっているはずよ、彼らの目的。」
 「・・・」
 「…碇君には、手出しはさせたくないわ。それは、あなたも同じでしょ?」
 「それは…」
 「なら強行突破すればいいわ」
 「でも、こんなに頑丈な扉よ? それに、きっと見張りがいる…」
 「大丈夫。そんなこと、碇君のためだったら…」
 レイが、毛布をその場に残し、すたすたと扉に歩み寄っていく。
…そして立ち止まった。

 次の瞬間。

 ドゴオォォン…!

 いきなり砂埃が無い上がる。
 轟音が、辺りにとどろいた。

 アスカは、その中で咳をしながらもレイの方を向く。
 その目に入ったのは、無惨にひしゃげて通路の向かい側の壁に大きな穴を作っている扉の姿、そして無表情のレイ。

 「ファースト、あんた…!」
 その驚きの声に、レイはゆっくりと振り返った。
 どこか自嘲と哀しさを含んだ表情を浮かべながら。

 「さあ、出ましょう」
 振り返ったレイは、静かにそう言った。



Dパートに続く

ver.-1.00 1997-08/07公開
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 次回予告

 脱出を試みるレイとアスカ。
 だが、ゼーレは総力を挙げて連れ戻そうとする。
 そして、2人は…


 あとがき

 いよいよクライマックス突入です。
 レイのこともアスカにバレちゃいます。
…でも、まだ終わりませんよ。(^^;

 6話最後のDパート、お楽しみに!


 Tossy-2さんの『エヴァンゲリオン パラレルステージ』Cパート、公開です。
 

 敵のアジトからの脱出を試みるアスカとレイ・・・
 その行動理由が「シンジのため」と言うのが泣かせますね。
 

 次回はアクションかな?
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 Tossy-2さんに感想メールを送りましょう!


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