TOP 】 / 【 めぞん 】 / [Tossy-2]の部屋/ NEXT



エヴァンゲリオン パラレルステージ

EPISODE:05 / Intermission

第5話






Cパート



2日目


 再度、某所。

 「やはり、パターン1では無理だったな。」
 「彼を、甘く見すぎていたか。」
 「そういうことだ。」

 モノリスの会談。
 中央のホログラムディスプレイには、あの男の顔が表示されている。

 「…無様だな。」
 「01」のモノリスが声を発した。

 「次の計画では、このようなことは無いだろうな。」
 「それは何とも言えんよ。全てが100%の計画というのは無いのだ。」
 「相手が未知的な部分を持つ存在ならなおさらな。」

 「どういった手が有効なのか、がわからん。調べる必要があるな。」
 「ああ。」
 「では、そのようにシナリオは頼むぞ。」
 「了解した。」

 ゴウン…

 無言。
 闇。



 「ふああぁぁ…あ。」
 シンジが起きると、そこにはレイがいた。

 「おはよう、碇君。」
 「え?…ああ。おはよう、綾波。」

 ガラッ!

 「シンジ、起きなさい!…って、あぁーっっ!
 戸を開けて飛び込んでくるアスカ。
 その目に、先客の姿が飛び込む。

 「あ、アスカ。おはよう。」
 シンジが挨拶するが、

 ちょっとファースト! アンタがなんでここにいるのよ!
 「碇君を起こしに来たの…」
 ぬわんですって!? アタシの仕事取るんじゃないわよ!
 「これは、もうあなたの仕事では無いわ。」

 「ふ、2人ともやめようよ。朝っぱらから…」
 なだめようとするシンジの声も、2人には既に聞こえていない。

 「…とうとう、決着を付けなければいけなくなってしまったのね、ファースト…。一撃で地獄を見せてあげるわ。」
 「それは私のセリフよ。」

 「ふっふっふ…」
 「ふふふ…」
 こめかみに血管を浮かび上がらせている2人。

 「ああああ…」
 いつの間にか発展してしまう事態に、シンジはただそう呟くしかできなかった。



 「いっくわよぉ!」
 「いつでもいらっしゃい」

 その受け答えの後、先に動いたのはアスカだった。

 たああぁぁっ!
 アスカは、右手を振り上げると勢いを付けてレイに向かって突き出す。

 「・・・」
 厳しいレイの表情。
 無言だが、レイもパンチを繰り出す。

 やめて!
 シンジの声が飛ぶ。

 「いいえ、やめられないわ。」
 「これは、女の戦いなの! アンタは口を出さないで!」

 そして、ついにあと5cmでお互いの拳がすれ違おうとした、その時。

 「いいから、やめてよ!」
 シンジの声。

 「!」「!」
 同時に、2人の腕に鋭い痛みが走る。

 相手の顔にも、ましてや身体にも触れていないのに、どうして?

 アスカとレイは、もう片方の手で、今自分の拳のある空間に触れてみる。
 そこには、見えない壁のようなものがあった。



 「な、何よコレ!? シンジ!?」
 「碇君?」

 レイとアスカがシンジの方を向いてみると、シンジは右手の平を前に軽く突き出していた。

 「…もう」
 ちょっと怒った風の顔をして、シンジは手を降ろした。

 すると、レイとアスカの前に存在していたはずの見えない壁がふっと無くなる。
 2人は、お互い前につんのめり、軽く頭をぶつける。

 「きゃっ!」
 「あっ…」

 「いたたた…」
 頭を押さえ腕を振りながらアスカが言う。

 「ちょっとシンジ! いきなりATフィールド展開することないでしょ! 思いっきり手ぶつけちゃったじゃないの!」
 「…だって、あのままだったら、僕の部屋がめちゃくちゃになるから…」
 「し、失礼ね! いくらアタシだって、そこまでしないわよ!」
 「本当に?」
 疑いの眼差しが、アスカに注がれる。

 「う…」
 「本当に、そう言えるの?」
 再び、シンジ。

 …あーもう! 分かったわよ! アタシが悪かったわよ!
 耐えきれなくなったのか、そう言うとアスカは部屋から逃げるように出ていった。



 後に残ったシンジとレイは。

 「…ごめんなさい、碇君…」
 しょぼんとして、レイが言う。

 「い、いいよ。部屋も壊れなかったし、被害は無かったんだから…」
 「でも、私…」
 「綾波…」
 いつのまにか、いい雰囲気になるシンジとレイ。

 ガラッ!

 そこへ、またもやアスカ襲来。
 慌てて背筋を伸ばすシンジ。

 「シンジ!」
 「は、はい!」
 「今日の朝御飯は、アタシが作るからね。」
 「え…」
 「だから、朝御飯をアタシが作る、って言ったのよ。文句ある?」
 「い、いや…ないけど…」
 「じゃ、決まりね! 待ってなさいよ、腕によりをかけて作るから…」

 そう言うと、ニヤリと笑ってアスカは去っていった。
 再び、ふたりっきりになるシンジとレイ。

 だが、シンジはどこか呆然としているような感じだ。
 (アスカが料理するなんて、今日は嵐かな?)

 レイは、また敵対心を燃やしている。
 (弐号機パイロット…侮れないわね…)

 その頃、台所のアスカは。
 (フフフ…これでバカシンジをあっと言わせてやるのよ!)

…とか考えながら、ニヤリとした表情のまま包丁をふるっていたとかなんとか。



 シンジとレイは、居間に移動していた。

 台所からは、時折

 「ダンッ!」 (包丁の音)
 「バシャッ!」 (水をこぼす音)
 「あ、まちがえた」
 「あれ? どうやるんだっけ?」

…等々の音と言葉が聞こえてきたが、その度にシンジの心配はつのっていく。

 (アスカの料理の腕って…。まさかとは思うけど、ミサトさん並なのかな。作り方とか雰囲気も似てるしなぁ…。だとしたら、これは緊急避難を適用した方がよいのでは?)
 時間が経つに連れて、シンジの顔色は悪くなる一方だ。

 「あ、ちょっと多すぎたかしらね……ま、いっか。」

 「はぁ…」
 シンジは、何度目か分からない溜息を一つ、ついた。



 「さ、食べましょ。」
 アスカが笑顔で言う。

 「う、うん…」
 シンジは真っ青だ。
 いや、というよりもう半ば白くなりかけている。

 「・・・」
 レイは、相変わらず対抗心の炎を燃やしていた。

 じゃあ、いっただっきまーす!
 「い、いただきます。」
 「・・・」
 3人、それぞれ席に着いた。

 アスカは、にこにことシンジの方を見ている。
 シンジは、食べようと決心しているところだった。

 (逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ…)

 「…どしたの?」
 「い、いや。な、な、なんでも、ないよ。」
 わざとらしい笑顔のシンジ。

 「さ、シンジ。食べて。」
 再びにこにこ顔になるアスカ。

 「う、うん…」

 (逃げちゃっ、だめだぁっ!)
 最後に、心の中で叫んでシンジはスプーンを口に運んだ。

 数回噛み、急いで飲み込む。
 甘くて苦くてしょっぱくて辛い味が口に広がる。

 「…どう?」
 今度はアスカが心配そうな顔をした。

 「…な、なんかこう、独特の味、って言うか…その…」

 (良かった…想像よりはまともだ…)
 そんなことを思って少しひきつった笑顔で言うシンジ。

 「良かったぁ。」
 再び笑顔に戻るアスカ。
 事実と想像に相当な誤差があることには気づかない。

 「じゃあ、昼御飯もアタシが…」

 「いや、僕が作るよ。」
 シンジはさっきと変わらぬ笑顔で言うが、その心の中では、
 (ミサトさん程じゃないけど、コレを繰り返されたら致命的だな…)
 と思っていたとか。

 「そう? アタシはいつでもいいのよ。」
 「い、いいんだよ。僕からのお礼ってことにして。」

 「シ、シンジ…。お礼なんて…そんな…」
 アスカ、沸騰寸前。

 (ふ…予定通りだわ)
 (弐号機パイロット…あとで見てなさい…)

 女の戦いは、続く。



 「じゃあ、買い物に行って来るから。」
 11時30分頃、シンジがアスカとレイに言った。

 「え?」
 「だって、さっき見たら冷蔵庫の材料、ほとんどないんだから。」
 「あ、そうか。結構いろいろ使ったからね。」
 「ふーん…」
 「ビールでしょ、納豆でしょ、唐辛子にチョコレートに味噌…」
 「も、もういいから。と、とにかく行って来るよ。」
 これ以上聞きたくないシンジは、その場から逃げ出した。

 「行ってらっしゃい…。」
 慌ててアスカが見送るが、もう既にシンジはいない。

 「…なんか、やたら速いわね…」
 「あなたのせいじゃないの?」
 ぼそっと言うレイ。

 「な…ファースト! それどういう意味よ!?」
 「意味も何も無いわ。別に。」

 くす。

 意味有りげな笑い。

 ピキッ!

 アスカの気分は、一瞬にして怒りへと変わる。

 「ふっふっふ…どうやら本当に地獄をみたいらしいわね…」
 「それはあなたよ…ふふふふ…」

 「ふっふっふ…」
 「ふふふ…」



 その頃、シンジは。

 「あー、もうあんなの食べたくないや。…でも、ミサトさんのよりはずっとましかも知れないな…」
 一部の人間が聞いたら黙っちゃいないような事を呟きつつ、シンジは道を歩く。

 「…さて、と。昼御飯、何にしようか…」

 そう思っていると、後ろの方で何やら音がした。

 ビシッ!

 かなり大きい音だったので、思わずシンジは振り返る。
 が、そこには誰もいない。
 ただ、道があるだけだ。
 何の変哲もない、ただの道が。
 ともかく、そんな音を立てそうなものは何一つ無い。

 「…何もないや。空耳かな…?」
 首を傾げつつも、シンジは再び歩き出した。



 「こちら、A班。目標に向かって発砲しましたが、まるで効果無しです。」
 『そうか…わかった。引き上げろ。』
 「はい。」

 黒服の男が2人、無線機と話していた。
 口調に揺るぎはなかったが、男達は明らかに動揺していた。
 今までかつて、自分たちが目標を外したことなどないのだから。

 「…なぜだ。ただの子供だろう? なぜ俺達が…」
 「ただの子供の訳がなかろう。我々が動いているのだからな。」
 「…しかし、なぜあいつは倒れなかったんだ。弾は確かに心臓を…」

 「それが、『ただの』子供でない所以なのだろう。ともかく、引き上げるぞ。」
 「あ、ああ…」

 そう。
 彼らには信じられなかった。
 自分たちが狙いを外すことなど。
 かといって、正確に、しかも遠距離後ろから消音銃で狙われて、さらには確実に弾の当たるコースに立っていながら無事、というのも信じられないことだった。

 だが実際、彼らの目標である「子供」は、それを彼らに見せつけた。
 狙撃のプロである彼らは、確実に心臓を貫くように弾を発射した。
 しかし、その目標はただ平然と歩いていたのである。

 結局、彼らの仕事は初めて失敗に終わったのだった。



 シンジ、その頃。

 「…まったく。どうして今日はこういう変なことばっかり起きるんだろう?」

 そう呟きながら足早にスーパーに向かおうとして歩いていると、いきなり喉の奥に何か冷たい湿った空気のようなものが入った。
 それが、シンジをせき込ませる。

 「ゴホッ…こ、今度は何なんだ…?」
 「す、済みません。大丈夫ですか?」

 見ると、花屋の店先で霧吹きを持った人が、花に水を吹き付けているところだった。

 (…なんだ。ただの霧吹きか…)
 「ええ、大丈夫です。」

 そう答えると、シンジは再び歩き始める。
 急がないと昼御飯に間に合わない。

 その後ろで、霧吹きを持った人がニヤリと笑うのを見たのは誰もいなかった。



 (フ…これであと10秒もすれば…)
 霧吹きを持った男は、口元を歪めながら心の中でそう呟いた。
 この霧吹きの中には、即効性の睡眠薬が入れてある。
 人間なら数秒で寝てしまう。

 男は冷静に、カウントダウンを始める。

 (9……8……7……6……)

 だんだんと、目標の姿は遠くなる。
 が、見逃すことはない。
 通りは真っ直ぐ一本道。
 その上、人通りもちょうど昼食時でまだ少ないからだ。

 (3……2……1……0…フッ)
 男は、少しうつむいて微笑をもらした。
 仕事の成功を信じて。
 彼もまた、失敗を知らないプロだった。

 だが。
 彼が視線を上げると、まず目に入ったのは信じられない光景。

 ターゲットが、まるで何もなかったように歩いていること。

 「ば、ばかな…」
 男は、目を丸くした。
 確かに、この中には睡眠薬が入っているはず。
 しかし…

 「奴は…化け物か?」

 と、男のポケットで無線がなる。
 男はそれを取り出すと、おもむろに耳に当てた。

 「こちら、B班」
 『作戦の方は、どうだ』
 「…残念ですが、失敗です」
 『どういうことだ?』
 「例の薬を使ったのですが…、全く効果がありません。」
 『そうか…ならば、次だ。コード166を使え。』
 「166…ま、まさか!」
 『そう。アレだよ。』
 「・・・」
 男は、2の句がつげなくなった。

 「アレ」…新開発の神経性毒ガスで、拡散性は高く不安定だがその分効果が高い。

 『…では、期待しているよ。』
 それで、無線は切れた。

 「アレを使うことになるとは…」
 そう険しい表情で呟きつつも、男は変装にとりかかる。
 眼鏡を外し、髪を解き。
 そして服も着替える。
 これに要した時間、1分。

 次に、男は持っている鞄からスプレー缶を取り出した。
 シールには、大きな文字で「166」と書いてある。

 「これを使う…」
 男は、険しい表情のまま、誰にともなく呟いた。

 「…本当に今回の相手は、人間なのか?」
 問いへの答えは、帰ってこない。



 (ホント、今日は変な日だなぁ…)

 そう思いながら、シンジは元来た道を引き返していた。
 だんだんと、人通りが多くなってくる。
 耳に、12時の時報が聞こえてくる。

 あ、まずい! 早く帰らな…!
 そこまでしか、シンジは話せなかった。

 狭い路地に引き込まれるシンジ。
 その手から、買い物袋が地面に落ちる。

 ドサッ…

 その音に見向きをする人はいるが、ただのゴミくらいにしか思わず通り過ぎていく。

 「おとなしくしろ。」
 シンジの顔の前に、スプレー缶と手が出てくる。

 手が微妙に動くと、缶から気体が吹き出してシンジの顔を直撃する。
 それを、おもいっきりシンジは吸ってしまった。

 せき込んだ後、地面に手をつくシンジ。

 「ふっ…てこずらせやがって…」



 「毒ガス…」

 「そうさ。お前はもう動けまい。」
 男が、シンジを見おろして言う。
 確信があった。
 確実に、効いているという。

 だが。

 「・・・」
 シンジは、ゆっくりと立ち上がった。
 鋭い視線が、男を射る。

 ば、ばかな…っ!
 再び、同じセリフを口走る男。
 その動揺を抑えるようにナイフを取り出す。

 「・・・」
 シンジは微動だにしない。
 ナイフを突き立てようとした男の方が吹っ飛ばされる。

 ドサ…ッ

 おそらく10m以上は離れたところに、男は背中から落ちた。
 どうやら気絶しているらしい。

 男が気絶する前、最後に見たのはやたら印象に残る赤い瞳だけだった。



 プシュッ!

 ごめん!
 シンジが駆け込んでくる。

 「んもーう、おっそぉーい!」
 「ごめん、今作るから…」
 「早くしてよね!」
 「うん。…ところで、綾波も食べるの?」
 シンジが話題をレイに振ると。

 「…ええ…(ポッ)
 またもや赤くなって答えるレイなのであった。

 (碇君のお料理…)



 と、そこへ。

 プシュッ!

 もう一度、ドアの音。
 それに続いて聞こえる声。

 「たっだいま〜ん」
 ミサトだ。
 すぐ、居間に姿を現すミサト。

 「あれ、ミサトさん早いですね。」
 「ま、ねー。今日は休暇の中日でしょ? 私もちょっち早く仕事を切り上げてきたのよん」
 「え? どうしてですか?」
 「決まってるじゃない。今日は、私が夕食を作ってごちそうするわ。」

 「何ですって!?」「何ですって!?」
 アスカとシンジが同時にミサトの方を向く。
 顔色が、だんだんと蒼白になっていく。

 「ミ、ミサトさん。それだけはやめて下さい…」
 「ま、失礼ねぇ…。もう、作るって決めたんだから。やるって言ったらやるわよ。」
 「ミサト。や、やめて。」
 「アスカまで何てこと言うの。レイは、いいでしょ?」
 「…碇君がやめて欲しいと言うから、私もやめて欲しい…」

 …何よもう3人して! とにかく! やるって言ったからにはやるわよ!

 こうして一方的に夕食は「ミサトのカレー」と決まった。
 結局、ミサト以外全員が地獄を見たのは言うまでもない。



第6話に続く

ver.-1.00 1997-07/24公開
ご意見・感想・誤字情報などは VFE02615@niftyserve.or.jp まで。


 次回予告

 休暇も最後の日。
 月曜なので普通に学校へ行くシンジ達3人。
 だが、学校でアスカとレイが…。

 次回、「休日U・消えた2人」 この次も、サービスサービスっ!


 あとがき

 「休日」1日目・2日目が、無事終了しました。
 さて、残るは3日目。

 3日目は、第6話を使って細かく書いていこうと思います。
 今度のゼーレの行動は、果たしてなんなのか。
 巻き込まれた人々の命運は?

 第6話、鋭意制作中! (7/21現在)


 Tossy-2さんの『エヴァンゲリオン パラレルステージ』第5話Cパート、公開です。
 

 メラメラと音を立てるアスカとレイの戦い(^^;
 激しく、コミカルなシンジを巡る争い・・・・・

 間に立つシンジは大変なのでしょうが、
 全く可哀想とは思えないぞ!

 えーん、羨ましくなんかないやい! (;;)

 お前なんかミサトカレー食って死んじまえぇぇぇぇ(^^;



 その裏で動くゼーレの腕利き工作員達・・・・

 いい加減に、シンジに手を出す愚を悟れって思っていたら・・・
 第6話のタイトルが・・・・・
 シンジぃ、二人を守れよぉぉ

 
 さあ、訪問者の皆さん。
 貴方の感想をTossy-2さんに伝えてあげましょう!


TOP 】 / 【 めぞん 】 / [Tossy-2]の部屋