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大陸・・・・・・

一つの大陸がある・・・。

この話はその大陸の南部に位置する国家から始まる。

魔法による独自の文化、魔法による強力な軍隊、魔法による安定した王国。

その国の名をネルフといった。

魔導王シンジ


第一話   Magical City 




彼、碇シンジがまず考えたことは、これが夢であるか、夢でないかだ。目に見える風景は全て白で統一されていた。壁も天井も真っ白い空間の一面に真っ白な霧が立ちこめてる、そんな風に思える。自分の姿も確認することが出来ない。

(やっぱりこれは夢なのだろうか・・・・)

しかし、それにしては嫌に意識がハッキリしている。いや、いつもより鋭敏なくらいだ。

(とりあえず動いてみよう・・。)

そう思った瞬間、意識が前に進む。どこまでも、どこまでも進む・・・。どのくらい進んだか・・・。どのくらい時間が経ったか・・・。不意に、目の前に自分以外の存在を見つけた。姿はわからない、見えない。しかしそこに確かに存在した。そして、それが何かもシンジにはわかった。

(あれはかけらだ・・。)
(そう自分のかけら・・・。)
(こんな所にあったのか・・・。)

シンジはそれに向かって進んだ。それに意識をのばし・・一つになろうとした瞬間、




「バカシンジ!!」

凄まじい、怒声が彼を引きずり戻す。まるで、今まで魂が抜けていたのが急に体に戻ってきた感じだ。

「う・・・・・あ・・・・・?」

(僕はいったい・・・・?)

「ようやくお目覚めね、バカシンジ。」

シンジが声のした方を振り向くと、そこには一人の少女が立っていた。赤みがかった髪を2パートのロングで伸ばしており、サファイアの様な青い目は、その輝きをますます強めようとするかの如く、少し細めてこちらを睨んでいる。

しかしその少女の目を見返して、シンジの口から出た言葉は・・・・・。

「・・・・・・・・・誰?」

少女はその言葉を聞いて少しの間、ポカンとしていたが、やがてこみ上げる怒りに肩をふるわせながら、右の手のひらをこちらに向けて叫んだ。

「白冷激!!」

バシュウウウウ・・・・・

少女の手のひらから、輝くような白い冷気がシンジに向けて放出される。

「うわああぁぁぁぁぁぁ!?」

その空気をまともに浴びてシンジが悲鳴を上げる。

「何するんだよ、アスカ。」

シンジが全身に霜を張り巡らし、がたがた震えながら叫ぶ。

「ようやく目が覚めたみたいね。まったく、寝ぼけて10年間連れ添ってきた幼なじみの顔を忘れるなんて。」
「そのまんま永眠するかと思ったよ。」

シンジはぼやきながら頭を振る。さっきは頭に靄がかかったみたいで自分の名前すら思い出せなかったが・・・。

「それじゃ、さっさと着替えてきなさい。今日は魔法陣システム論の講義があるんだから。遅刻して単位落としても知らないわよ。」

アスカがそれだけ言うとつかつかと部屋を出ていった。シンジはアスカが出ていった後のドアが閉まるまでぼんやりと眺め、ついで、今から着替えるべき制服に目を移す。

紫を基調とし、胸には赤いルビーで止めたネクタイがつけられた制服。そして、その服の右胸につけられた紋章は、茎を境に半分に割れた葉にNERVのロゴが書かれた模様。この国にいる者なら誰もがあこがれる、王立魔法学院の生徒の証である。

先のアスカも同じ制服に身を包んでいた。もちろん女性用にデザインされたもの(以前アスカがスカートが短すぎると愚痴をこぼしていた)だが。

若干14歳にしてこの制服を身につけられると言うことは、二人とも天才と呼んでも差し支えない才能を持っていると言える。

そんな感慨に身を浸すこともなく、シンジはさっと制服を身につける。

「アスカー。準備できたよー。」
「それじゃ、さっさと行くわよ。急げば出席には間に合うわ。」

二人は家を飛び出し、市街をかけていく。
学院はネルフの中核都市であるテーゼに建っている。すでにテーゼの街路は大勢の人でにぎわっている。仕事に出かける人、早朝から仕入れた食料を売っている商人、様々な街を渡り歩いてる旅人。

そんな中にあって、街の中を颯爽とかけていく二人はやはり目を引くようだ。容姿もさることながら、この二人の「身分」がそうさせているのだろう。

「シンジ、後何分余裕ある?」

アスカが走りながら後ろを振り向いてそう尋ねる。

「ええと・・・。後10分ぐらい・・。」
「ぎりぎりね・・・。それじゃもう少し急ぐわよ。」

そう言って、アスカが加速して前に向き直った瞬間、

ドン!

鈍い音がして、アスカがコテンと転倒する。どうやら通行人とぶつかったらしい。

「いったあ、何なのよ、いったい。」

涙目になってへたりこむアスカ。

「わ、悪いな、姉ちゃん。急いでたんでね・・・。」

ぶつかった相手はダメージが少ないらしい。それだけ言うと、立ち上がって走り去って行った。

「大丈夫?アスカ?」

そう言いながらシンジが手を差し出す。
アスカがその手を取り立ち上がったが、何故か怪訝な顔をする。

「?なんかおかしいわね。」
「何が?」
「いや、何かが・・。」

アスカはそう言って、トントンとジャンプしている。

「ま、まさか・・・。」

アスカがはっとして自分の体をまさぐる。

「さ、財布が無い・・・。」
「忘れたの?」
「すられたのよ、さっきの奴に!」

アスカが怒りをあらわにして、怒鳴り散らす。対してシンジはのんびりという。

「それは災難だったね、でももう行かないと講義に間に合わないし・・・。」

その言葉にやり場の無かった怒りの矛先が出来たとばかりにシンジにくってかかる。

「あんたバカ?あたしの財布を取り戻すのが先決に決まってるでしょう。」
「え?でも、アスカは財布にいつも小銭しか入れて無いじゃないか・・。」
「お金の問題じゃ無いわ。あいつはいわば私をこけにしたのよ。ふふふ・・・とっつかまえて目にもの見せてくれるわ。」

アスカの目が怪しく輝き始めるのをみたシンジは、長年のつきあいからもうアスカを止めることは出来ないことを悟っていた。

(これはまた補講だな・・・・)



たったったったっ

アスカとシンジは街路から道一本はずれた裏路地を疾走していた。にぎやかな繁華街から道一本はずれただけで、辺りは人も見かけなくなり、閑散とした雰囲気になる。

「アスカ、本当にこっちでいいの?」
「あったりまえよ。ほら、見てみなさい。」

そう言ってアスカが人差し指を一本たてて目の前に持ってくる。光の細い糸がアスカの人差し指から出て、道の先へと延びている。魔法探知・・・・・財布にあらじかめ自分の魔力をマーキングして置いてあったので、こういうことが出来るのである。

「どこのどいつだか知らないけど、私の財布をかすめたのが運の尽きよ。」

シンジはこのアスカのセリフに心から賛同し、名も知らぬスリの末路に同情した。
その時、

「「炎の矢!」」

道の奥の方の暗闇から声が重なって響く。

「な?魔法?」

声に一拍遅れて正面から、無数の炎の雨がシンジ達に向かって降り注ぐ。

「く!?」

シンジがとっさにバリアを張る。アスカはそんなシンジの行動を予期したかのように、自分は攻撃のための呪文を唱える。

「・・・はぁあああ・・・・ファイアー・レーザー!」

アスカの躰の高さぐらいの熱線がそのまま放出され、炎の矢と通りすがり道の奥へと消えていく。そして轟音。爆風。

向こうから降って来た炎の矢はシンジのバリアに阻まれ次々と消滅していく。

「やったの、アスカ?」

シンジがバリアを解除しながら尋ねる。アスカは静かに頭を左右に振る。

「ううん・・・。手応えが無かったわ。呪文を唱えると同時にその場を離れたのね。・・にしても・・・。」

アスカが握り拳をつくりながら、言葉を続ける。

「あたしの財布を奪うだけでは飽きたらず、魔法を悪用するなんて、同じ魔法使いとして見逃すわけにはいかないわ。」

私怨だけでなく、大義名分で犯人をぼてくりまわす理由ができて、アスカはどことなく嬉しそうだ。シンジは「朝、その魔法を使って自分をたたき起こすのはいいのか?」とは言わなかったが、代わりに別のことで口を開く。

「でも、さっきの声からして、少なくとも二人はいるようだけど・・・。」
「かまわないわ。挟み撃ちにしましょ。シンジは左から、私は右から行くから。」

そう言って返事も聞かずにアスカは走り去って行った。

「ちょ・・・。まあ、いいか・・。」

呟くとシンジは言われたとおり左へ走っていく。
(「始祖の再来」と言われた彼女に万が一のことも無いだろうし・・。)



「どうするよ、おい。追って来るぞ。」

裏路地の片隅で、男が4人集まって不安げに言葉を交わしている。

「だいたいお前が悪いんだぞ。学院の生徒がいるからからかってやろうぜ、なんていうから・・。」
「んなこと言ったって、むかつくじゃねえか。俺ら何回学院の受験に失敗してると思ってるんだ。」
「そうだぜ、ガキの分際でこれ見よがしに制服つけて街歩きやがって・・。」
「でも、あの魔法の威力みたろ。並じゃねえぞ。」
「じゃあ、せめて財布くらい持って逃げとおそうぜ。魔法探知なんてもって数時間だしな。」
「よし、じゃあ二手に別れて逃げるぞ。」

そう言うと、男達はぱっと半分に別れ、左右に駆けていった。



その男達が遭遇したのがシンジではなくアスカの方だということを彼らは神に呪うべきだろう。

「ふ・ふ・ふ・・・・。みぃつけたぁ・・・。さっきはよくもやってくれたわねえ。」

アスカはにこっと微笑む。もし道で普通に出会い、この笑みを見せられたのであれば男達は即座に魅了され微笑み返しただろうが、このような状況では寒気以外何も感じられなかった。

そして不気味に笑うアスカを前に、男達の脳裏に浮かんだ言葉は一つだった。

(殺らなきゃ殺られる!!)

「う・うわぁぁぁぁーーー!!白冷激!!」
「ら・ら・ら・・・雷撃!」

恐怖にひきつりながら、男達は呪文を唱える。輝く息吹と、雷の閃光がアスカに降りかかる。

ばしゅううううう・・・・

しかしそれらはあえなくアスカに届く前に消滅する。

「あ・あ・あ・・・・」

もはや恐怖に震え、男達がへたりこむ。今のが男達ができる最大の攻撃だった。なすすべない男達を前にアスカが悠然と呪文を唱え出す。

アスカの周りに白い光の帯が渦巻いていく。それはアスカの足下から、ぐるぐる躰に巻き付くように頭上の方へ上っていく。徐々にアスカの頭上に白い光の玉が出来てくる。

「こ、この魔法は・・・・・」

驚愕に満ちた男の声、彼女の唱えている呪文は魔法使いの奥義とも呼べるもの。ネルフでも扱えるのは、将軍クラスの術者のみだ。
頭上の光の玉が頭くらいの大きさになった頃、アスカがにこやかに答える。

「冥土のみやげに教えてあげるわ。私の名は惣流・アスカ・ラングレー。」
「惣流って・・・・まさか・・・・王家の?」

「そ、この国の王女なんかやってるわ。気づくのがちょっっと遅すぎたみたいだけど。」
「た、たすけ・・・。」
「いくわよ・・・・白色破壊光線!!!」

白い光球が二人の男の間に落ちる。瞬間、
ずどおおおおおぉぉぉ・・・・

その日、空に燦々と輝く太陽に勝るとも劣らない、白い光がテーゼを照らしたという。



一方シンジの方は・・・・・、

バシィィィィ・・・・・

シンジが最後の一人を電撃で気絶させたところだった。そして、数十メートル先の巨大な爆発をみあげ、爆風に髪をたなびかせながら深い深いため息をして呟く。

「はぁ・・・、またやった。これで、町中で破壊魔法を使ったのは3度目か・・・。あれでこの国の王女なんだからなぁ・・・。」

シンジはこの国と自分の身の未来を憂い、もう一度ため息をついた。



立ちこめていた煙がはれ、ぽっかり空いたクレーターのような穴の中、二人の男がずたぼろで倒れていた。そのうちの一人をたたき起こすとアスカは尋ねる。

「さあて、あたしのお財布は誰が持ってるのかなぁ?」
「あ・・・・・う・・・・・お、俺達じゃ・・・ない。」
「何ですって?しまったシンジの方か・・・。」

アスカが男からぱっと手を離すと、男は地面にしたたか頭を打ち付けて気絶したようだ。 それには見向きもせず去ろうとするアスカに、もう一方の男が声をかける。

「ま、待って・・・。」
「なによ、まだやられたりないの?」
「最後に一つ教えて・・・・・・・・・。あの財布にはいくら入っていたの・・・ですか・・。」
「20GOLD+αよ。」(ちなみに1GOLDは100円くらい。)
「に、にじゅう・・?」

男はそれを聞くとぱたりと気絶した。おそらく当分立ち直ることは出来ないだろう。



「シンジ!!」

シンジの姿を見つけたアスカが駆け寄る。

「あ、アスカ。これ、さい・・。」

言い終わる前にアスカがパッとシンジの手から財布をもぎ取る。

「・・・・シンジ・・。中身見た?」
「見てないよ。見ても小銭しか入ってないだろうし。」
「本当に?」
「本当だって!」
「本当の本当に?」
「しつこいよ、アスカ。なんでそんなに聞くんだよ。」

どうやら本当に見てないことを確認すると、アスカはほっとしたような、残念そうな顔に変わる。

「そ、見てないんならいいわ。さあてと、一暴れしたらお腹すいちゃった。なんか食べに行こうか?シンジのおごりで。」
「な、なんだよそれー。」

シンジの声を聞いて笑いながら、アスカはそっと財布の中身を確認する。財布のポケットには一枚の写真が挟まっている。その写真の有無を確認するとアスカはクスリと笑って、

「やっぱ、今日は私がおごるわ。」
「え?アスカがそんなこと言うなんて珍しいね。あ、もしかして・・・」

アスカはぎくりとして

「もしかして・・なによ?」
「スリの財布も盗ってきたとか・・・。」

テーゼの街にまたもや魔法の爆音が響きわたったのは言うまでもない。


第一話 終わり


第2話に続く

ver.-1.001997-08/18公開

ご意見・感想・誤字情報などは persona@po2.nsknet.or.jpまでお送り下さい!


あとがき・・・なのか?

YOU「どうもです。またやってしまいました。新連載、「魔導王シンジ」いかがでしたでしょうか?」

アスカ 「いかがでしたでしょうかじゃなーい。あんた、自分が何やってるかわかってるんでしょうね?」

YOU「おお、これはアスカ様。もちろんですとも。元ネタは知る人ぞ知る「鬼畜王ランス」です。世界設定や魔法はここから持ってきてます。」

アスカ 「いやあーーーー。こんな世界に私を引きずりこまないでぇー。」

YOU「何をおっしゃいます。王女ですぞ、姫ですぞ。数あるエヴァ小説の中でも、こんな高い身分は初めてでしょう。いや常々、私、アスカ様は女王、もとい王女みたいな高貴な役が似合うと思ってまして・・。」

アスカ 「ま、それはそうだけど・・。」

YOU「(当然のように肯定するか?)さらにタイトルにご注目、「魔導王シンジ」。つまり、シンジ君がアスカ様とご結婚なさって、国王となり世界を征服していくという・・・・。」

アスカ 「ほ、本当?」

YOU「嘘です。」

アスカ 「白色破壊光線!!」

どぐぁぁぁぁぁぁぁぁ

YOU「そ、そんな・・一回待機しないと使えないのに・・・・卑怯・・・・がくっ・・・。」



お・ま・け

魔法の一部を書きますんで「鬼畜王ランス」を知らないかも知ってる方もご一読を・・・。 勝手に解釈して有るのが多々有ります。しかし、なんたるアバウトな説明・・・。

炎の矢・氷の矢・雷の矢・・・・・そのまんま。汎用性が高く、魔法の基本である。

火爆破・・・・いわば魔法で作る爆弾。爆破の時間は術者の意のまま。

白冷激・・・・超低温の冷気を手より発生させる。

雷撃・・・・・・雷を掌から放射状に放つ。

ファイアー・レーザー

スノー・レーザー

ライトニング・レーザー・・・・・・それぞれエネルギーを単純に放つものだが、破壊力は絶大。

白色(黒色)破壊光線・・・・・魔法使いの奥義たるもの。しかし、その原理、詳細はいまだ解明されていない。また、その形状は術者の性質により様々な形をとる。

以上、それでは今度が有ればまた・・・。


 YOUさんの2本目の連載『魔導王シンジ』第一話、公開です。
 

 アスカが「スカートが短すぎる」とぼやく制服・・・・見たいなぁ(爆)

 そのな格好で−−
 こけたり、
 爆風を浴びたり、
 派手な魔法使ったり、

 うっ鼻血が(白色破壊光線爆)
 

 写真を守るために戦う健気なアスカちゃんにメロメロです(^^)
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 2つ目の連載を開始したYOUさんに応援メールを!

 

 

 えっと、【ランス】についてはここで。
 ・・・・URL確認してないので、間違っているかも(^^;


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