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第三新東京幽霊奇譚


(後編)


青葉シゲルは24歳。職業は役者・・・、といえば、聞こえはいいが肝心の役者の仕事は滅多になく、ほとんどフリーターの様な生活をしていた。昔はそれでも満足していた。確たる目標もなくバイトしたり、親のすねをかじって大学に遊びに行っている同世代の馬鹿とは違うという誇りすら持っていた。
しかし、この世界にはいって6年にもなるのに演じる役どころはほとんどが端役ばかり。決してこの世界を舐めていたわけではなかったが、目立った進歩のない中、時間だけが急速に過ぎていくようで焦りだけが募っていた。それでも、いつか、いつの日か・・・。それだけを念じて彼は努力してきた。
そして、それがついに報われる日が来たのだ。ある大作映画のキャストの一人が入院し、急遽代役が必要になった。その映画の監督のおぼえがよかったことや、その役のイメージが青葉にぴったりであったことなど、様々な幸運が幾重にもかさなり、その役が青葉に降りてきたのだ。まさに千載一遇のチャンスだった。
嬉しかった。’努力が相応に報われる’。これほど嬉しいことは他にあるまい。 さらに青葉にはもう一つ、嬉しいことがあった。彼には恋人がいる。同じ役者仲間だったが、彼女の方は事情があり志し半ばに役者の道を諦めざるを得なくなった。だが、青葉はその後も彼女と恋人として交際を続けていた。親からも勘当状態だった自分を応援し続けてくれたたった一人の人間といってもよかった。青葉は彼女に幾度もプロポーズしようと思ったが、そのつど、うだつの上がらない今の自分が彼女に相応しくないような気がして思い直したのだ。 だが、今なら言える。自信を持って、自分と一緒になってくれと、そう言えるのだ。
正式に代役が決まったその日に、彼は真っ先に直接彼女に報せようと、車で道を急いでいた。
だが、彼女の家に向かう途中ラジオから道路交通の情報が流れた。いつも通ってる中央通りでは渋滞に巻き込まれるらしかった。急がないと自分のこの浮き立った心と彼女にプロポーズする決心がさめるような気がして、彼は道を変え狭い裏道を通ることにした。

(早く、速く、あいつに報せてやりたい。あいつの喜ぶ顔が見たい・・・。)

青葉の心はそれのみが支配していた。・・・今日はスピードメーターが示す数値に比べて車がやけにのろいように感じられた。

(速く速く・・・。)

青葉は自分の心の命じるまま、アクセルを踏んだ。
窓の外の景色はスピードに溶けるようにぼやけて流れていく。

(彼女になんて話を切り出そう。どう話を切り出すのが一番効果的かな?やっぱ驚かせてやりたいよな・・・。家についたら、まず何気なくドライブに誘って、助手席にあいつを乗せて・・・)

そう考えてちらりと、彼女が座るだろう助手席に視線を走らせた。それだけの動作だったのだ・・・。その瞬息の時間の後だったのだ。
少年が自分の視界に現れたのは・・・。

「なっ・・・!?」

青葉はブレーキを踏めなかった。踏んでも無駄だと瞬時に悟ったのか・・・、それとも踏む余裕すらなかったのか。今となっては・・・どうでもいいことだった。

ドン・・・・・・

嫌な振動が車に、そしてそれを通して青葉に伝わった。青葉にはそのとき何もかもがゆっくりと鮮明になっていた気がした。車は少年の下げていた鞄の方から撃ちあたり、少年を弾き飛ばした。少年はあっけなく宙を舞い、十字路の、青葉から見て左側の壁に頭から激突する。壁からもはじかれ・・・人間一人がまるでビリヤードの玉の様に、車に、壁に、地面に、当たってバウンドして地に倒れ伏した。
青葉はようやくブレーキを踏んだ。自分で思ってた以上にスピードが出ていたらしい。車は急ブレーキでがくがくと揺れながら、次第にスピードを落としていく。

がくがくがく・・・・・・。

揺れながら止まる。

がくがくがく・・・・。

止まってもまだ揺れている

がくがくがく・・・。

揺れているのは青葉だった。ハンドルを持つ手が、体が、歯が、滑稽なほど大きく震えていた。青葉は必死にふるえを止めようとしたが止まらなかった。初めて、舞台に上がったときとは違う、心の芯までの震え。それは恐怖からきていた。

(やってしまった。やってしまった。やってしまった・・・。)

どうする・・・?

虚ろな頭で自分にそう問う。

どうする・・・?

決まってる。いますぐ車を降りて、少年の容態を確かめ、警察と病院に連絡する。
・・・容態?あの少年は生きているのか・・・?・・・いや、あれではおそらく助かりっこない。おそらく即死だ。
警察に連絡・・・?どう言うのだ?どう言い訳ができる。こんな狭い道でスピードを出して、脇見をして、その上、・・・いま気づいたんだが・・・少年の通っていた道の方が優先道路だ。
完全に過失致死だ。どう考えても自分が悪い。青葉自身が考えたってそう思う。

(・・・だからどうだっていうんだ。・・・さぁ、車を降りて・・・。)

震える頭で青葉は体に命令する。だが、体が理性の命令をあっけなく突き返した。足が、震える足がアクセルに向かう。震える足が言う。こんな馬鹿なことがあっていいはずがない。数秒前まで人生の絶頂にあったのに・・・、それがたった一瞬の不注意で全て壊れてしまったというのか?不合理だ!もっと無茶な運転をしている人間はいくらでもいるのに、なんでよりによって俺が、俺だけがこんな目に・・・。
終わり・・・終わりなのか?これで・・・。
役者の道も・・・。
あいつとの結婚も・・・。
俺の人生の全てが・・・。
・・・・・・いやだ、こんなのが現実であっていいはずがない・・・!
いいわけがないんだ!!
だから・・・
だから・・・逃げるんだ!

ダン・・・・・!

アクセルを思い切り踏み込んだ音が聞こえた。
青葉にはその音が何処か別の、自分とは全く関わり合いのないところで響いているように思えた。






「・・・っ・・・・・・!?」

頭の中から何かが弾ける感覚と共に、レイとシンジは造られた夢から覚めた。
心臓が激しく鼓動し、全身にべっとりと気持ち悪い汗をかいている。特にシンジは自分が死ぬシーンを見せられたのだ。衝撃は大きかった。

「今のが・・・、そうだ、たしか僕は・・・。」

その日の出来事をゆっくりとシンジは思い出していた。途中までアスカと一緒に帰っていたのだが、シンジは途中で家に用事を思い出し、走って帰ろうとしたのだ。 見たいテレビがあったからとか、そんなつまらない理由だった。
そんなつまらない理由で、不用意に交差点に飛び出し、あの事故を起こしたのだ

「交差点での出会い頭の衝突。・・・どちらか片方でも注意していれば避けられた事故だったわね。」

さすがにレイは、いち早く冷静さを取り戻して、事故の状況を評してみせる。そのとおりだったとシンジも思うが、青葉はそう思ってはいないようだ。警察もそう思わないだろう。青葉にが’罪’を背負うことになるのは避けられない。

「・・・どうするの?この人を警察に突き出す?私が警察に連絡してあげてもいいわ。」
「・・・・・・そのつもりはないよ。ないけど・・・。」

シンジはもう一度、青葉の方に視線を向ける。完全に絶望しきって、現実から逃げている青葉がそこにいる。積み上げた幸せが大きかっただけにそれが崩れた衝撃も計り知れないだろう。そして、おそらくこのままずっと彼はこのままなのだろう。いつか警察が踏み込んでくるその日まで・・・。

「・・・何とかしてあげられないかな?このままじゃこの人、可哀想だよ。」

シンジの答えにレイは目を丸くした。
どこまでお人好しなんだろう、碇君は。自分を殺した張本人だというのに。等、様々な言葉がレイの喉元に出かかったが、口から出た言葉はそれらを見事に凝縮した一言だった。

「・・・・・・貴方、馬鹿なの?」

当然と言えば当然過ぎる問いに、シンジは困ったような、ただ笑うしかなかった。






「アパート、第三マリーチの○×△号室・・・ここね。」

レイとシンジは、青葉のアドレス帳から書き取った住所を手に青葉の恋人の家にやってきた。彼を、青葉を救えるとしたら、それはその彼女の役目だと、レイは自分の体に戻った後、そう提案した。

「でも、でももし・・・。」

シンジは不安げにレイの方を見た。レイはわかっているといわんばかりにうなずいてみせる。

「そうね。もし、彼の恋人が彼のことをどうでもよく思っていたら、あっさり見捨てるかもしれないわね。そこまでいかなくとも、彼女にとっても彼の犯した罪は耐えられないものかもしれない。彼もそれをおそれて、恋人に電話すらかけられないでいる。」
「それじゃ救われないよ。」
「・・・そう。問題は彼女が青葉という人の力になってくれるかどうか。それを見極めるのが碇君の役目よ。」
「僕の役目・・・?」
「今から、私が彼女と話してみる。そのとき、碇君は彼女の思考をよんでその内容を逐一、私に伝えて。できる?」
「・・・・・・うん、僕は僕のやれるだけのことをやるよ。」

こんな状態の自分にも出来ることがある。そう考えることができるのがシンジには嬉しかった。青葉を救いたい、とは思っていたが、またレイに全て頼ってしまうのはなんとなく心苦しかったのである。
レイがシンジの返事をきいて、チャイムを鳴らす。数秒待って返事と共にドアから女性が現れた。その女性はレイを見て、不思議そうな顔をする。見知らぬ中学生が一人で尋ねてくるような事情に心当たりが無いのは当然だろう。(注:シンジは普通の人には見えないし、声も聞こえない。)

「あの・・・どちら様でしょうか?」

ドアを少し開けて顔だけ覗かせたまま女性が問う。年齢は20を少し過ぎた頃だろう。丸っこい顔立ちで、家庭的な、側にいてくれるだけでほっとするタイプの女性だ。

「突然、おたずねして申し訳ありません。私、青葉の親類で綾波レイともうします。・・・彼のことで少しお話があるのですが・・・、よろしいですか?」

レイが幾分丁寧だがいつもの、感情のこもらない事務的な口調で話を切り出す。彼女は青葉という単語に、見て解るほど反応した。

「はぁ・・・いいですけど。彼に何か・・・?」

レイは目でシンジの方に合図する。シンジは手早く、彼女に頭を合わせ、その心中を読みとる。

(シゲル・・・。最近連絡もないから不安に思ってたけど・・・、なんで親類の人が・・・。病気?事故?)

「事故か病気かと不安がってる・・・。彼の事を本気で心配しているよ。」

シンジの返答に、レイは小さく首肯する。

「ちょっとここでは。中に入らせてもらってよろしいですか?」
「ええ。かまいませんけど。」

ドアがゆっくりと開いていく。彼女の心に近づくための第一関門が開いたように。 レイは靴を脱いで部屋に入る。女性らしい小綺麗な部屋で、微かに花の香りが漂って居心地がいい。
どう話を切り出したらいいかレイが思案していると、

「あの・・・、私のことはどうしてお知りになったのですか?彼・・・私のことはご家族にも話してない・・・と思ってたけど?」

台所でお茶を入れていた彼女が、先に質問してきた。レイは咄嗟に切り返す。

「私は青葉さんの姪で、家が近いこともあって私にとっては兄のような存在でした。彼は結婚を考えている相手はいるが、事情があってみんなには話せないでいる、 と語ってくれたことがあります。」
「そう。そうなの?」

とりあえず、この場さえ切り抜けられる嘘でよかった。目的は彼女に事故の事を知らせ、青葉のところへ連れていくことである。しかし、それにしてもまずい言い訳だったとレイは内心悔いた。案の定、

「・・・なんか、かなり怪しまれてるよ。」

と彼女の思考を読んだシンジが声をかけてくる。どうやら早く本筋にはいった方がいいらしい。彼女がお茶とお菓子を持って席に着いたのを待って、レイは決心して話を切り出す。

「・・・最近、青葉さんと連絡はとっていますか?」
「いえ。電話しても出ないし、家を尋ねてもだれもいないから・・・。あの・・ ・シゲル、どうかしたんですか?」

やっぱり話してないのね・・・。
となると、ここで事実を話すしかないのだが、どう切り出したらいいものかレイは迷った。いきなり「貴女の彼氏はひき逃げ犯なんです」といっていい反応が返ってくるとは思えない。そう考えて、レイは彼女の胸の内を探るため、シンジを伺う。

「彼女は不安がってる。青葉さんが他に好きな人が出来て、自分を避けてるんじゃないか。それで、こんな子供に別れ話を代弁させようとよこしたのじゃないか、あの人気が小さいから・・・って。」
(そう・・・。なら・・・・・・)

レイはシンジの話に小さく頷くと、視線を彼女の方に戻す。

「彼の話をする前に一つ言っておきたいことがあります。青葉さんは貴女のことを心の底から愛しています。それは今も変わりません。こうして私が来たのもやむを得ない事情があるから・・・。どうか、そのことを信じてこの話を聞いてください。 」
「やむを得ない事情?」
「単刀直入に言えば、彼は警察から追われているんです。」
「!?」
「ご存じですか?二日前起こった、中学生のひき逃げ事件。・・・あれの犯人が青葉さんなんです。・・・突然、こんなことを言って信じてもらえないかもしれませんが。」

彼女はレイの話に半信半疑だったがそれでもショックを受けたらしく、視線を宙に彷徨わせている。

「そんなこと・・・。それで、シゲルは今・・・?」
「彼の自室です。・・・彼は、今、現実から全て逃げ出しているんです。おそらく、警察の手が及ぶまでそのままでしょう。」

「いいよ、もう一息だ。殆ど、彼の元に行く気になってる。」

シンジの言葉の意を得て、レイはとどめとばかりに彼女に懇願する。

「お願い・・・。今からでも自首すればなんとかなるわ。青葉さんをなんとか助けてあげてください。私にとっても大事な従兄ですから。」
「・・・わかったわ。でもその前に一つ聞いていいかしら?」
「なんですか?」
「あなた、最初、シゲルの姪とか言ってなかった。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」

場の空気が一変する。先ほどまでの泣き落としのメロドラマ風の雰囲気から、空気全体が固体化したしたような重苦しい雰囲気に。
レイは沈黙したまま、お茶の残りを飲み干すと、静かに言った。

「・・・・・・・・・ごめんなさい。こういうとき、どういう顔すればいいのかわからないの・・・。」
「・・・笑うしかないと思うけど。・・・っていうか・・・・・・」

彼女の顔が笑みの形を保ったまま見る見る赤く染まっていく。それがよけい怖かった。
シンジの方を見てみると、彼は真っ青な顔をして十字を切っているだけだった。彼女の中によほど恐ろしいものが見えたのだろう。
レイは今日、この時、この状況に至るまでの過程を回想していた。
何故、私はここにいるのだろう。
何故、私はこんな目に遭っているのだろう。
それは馬鹿で間抜けな幽霊、碇君に出会ってしまったから。
そう、馬鹿ってうつるのね・・・。

「二度と顔をみせるなぁーーーーーーー!!!!」

物が激しくぶつかる音。グラスやガラスが割れる音がそれから小一時間ほど、付近の住民が警察にダイヤルしかけたくらいまで続いた。
一見、おとなしそうな人間ほど、切れると怖い。
何故か傷一つ無く帰ってきたレイは後日、そう結論づけたと言う。






「もう少しでうまくいってたのに・・・。碇君のせいで失敗ね。」
「何で僕のせいなんだよ!?綾波が基本的なぼけをかますからだろう?」
「空、青い空。目に見えないもの。花。おなじものがいっぱい。いらないものもいっぱい・・・。」
「また、そうやってわけのわからないごまかしかたをする・・・。まぁ、最終的にうまくいきそうだからいいものも・・・。」

怪しい世界にトリップしかけてたレイは、シンジの最後の一言を聞きとがめて我に返る。

「うまくいきそう・・・?」
「うん、たぶん。暴れた後の彼女の考えを読んだら、やっぱり青葉さんの家に行く気になってたよ。」
「どうして?信用してもらえたとはとても思えないのに。」
「青葉さんのことがホントに好きだからじゃないのかな。好きな人がそんな目に遭ってるって聞かされたらたとえ99%嘘だってわかっても、心配になっちゃうだろうから。」
「そう・・・なの?よくわからない。でもそれだけ、彼のことが好きなのなら・・・。」
「うん、きっと大丈夫だよ。」

そこで会話がとぎれる。気まずい沈黙ではなく、言葉以上に沈黙がふさわしいからそうであるような沈黙。それを破ったのはレイの方だった。

「碇君、また成仏できなかったわね。」
「うん、そうみたいだね。」
「残念?」
「う・・・ん。残念だよ、残念だけど・・・。」
「何?」
「・・・こんなこと言ったら、また綾波に怒られるかもしれないけど、少しホッとしたんだ。」
「・・・・・・。」
「あ、ごめん。やっぱりいけないよね。こんな・・・。」
「別に怒ってないわ。」

ホッとしたのは私も一緒だから・・・。
シンジに聞こえないほど小さな声でレイはつぶやいた。

・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・

明くる日の朝。
三日前に起こった交通事故の犯人が地元の警察に自首してきた旨が、ニュースで小さく報じられた。ある者は当然のことだと思い、ある者は小さく同情し、ある者はそれを記憶に留めることなく聞き流した。
だが拘置中の彼には、かかさず面会に来る女性がいるという。
出所を待って結婚する予定だとか・・・。
それが、シンジ達の行動の結果であるかどうかは定かではないが・・・。

・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・






最近自分で自分がわからない。
いつからだろう?
気がつけば、彼のことを考えている自分がいる。
気がつけば、彼の姿を探している自分がいる。
気がつけば、彼と一緒にいるとき心を弾ませている自分がいる。
どうして・・・?
彼はいずれ消えてしまう。私の元から去ってしまう人なのに。
彼との絆は儚く消えてしまう絆。
そんなことは、わかっているはずなのに。
自分の心が抑えられない・・・。
自分が怖い・・・。
最近、願っていることがある。
もし・・・・・・・・・なら・・・・・・、と。
でも、それはとても怖いこと。恐ろしいこと。いけないこと。
でも、それは彼と一緒にいたいという、私の本当の心。
もし叶うのならば・・・・・・。
私は・・・・・・・・・。







星が見える。
芦ノ湖湖畔の辺りまでくれば、街の灯も遠のいて、夜空には星が無数に浮かんでみえた。
そして、ひときわ大きく月が見える。真円を描いたそれは、ともすれば綺麗を通り越して、神聖なものすら感じられる。
シンジとレイの二人はそこにやってきていた。
星を見たい。
唐突にレイがそう言いだした。どうして?とシンジが言ったら話したいことがあるとレイは答えた。答えになっていない様な気がしたが、シンジは黙って言うとおりにした。

夜空はいつも見ている。一人の時はそれしか見るものがないのだから。何もうつらない
夜空は何もなさすぎて、同じく空虚な自分を溶け込ませてくれる。
しかし、星空といえるものを見たのは久しぶりだった。

「天国を信じてる?」

レイの質問は唐突だった。星にでも語りかけるように、レイは夜空を見上げたままだった。

「天国・・・?」
「天国でなくてもいいわ。あの世とかそういうもの。」
「わからないけど・・・。あったらいいなって思ってる。」
「・・・そう?なら、もし、死んだ先には何もない無の世界なら?死が消滅でしかなかったら?」
「え・・・?」
「それでも、碇君は死を望むの?」

夜空を見上げていたレイが、突然シンジの方を振り返って言った。
月の光に照らされたレイの姿は息をのむほど美しかった。シンジは気圧されながら、答えた。

「な、何だよ今更。」
「答えて。どうして?消えるのが怖くないの?」

レイの表情は今まで見たことがないほど悲痛そうだった。シンジはなんとなく、レイのいわんとしていることがわかって、レイの目を見て答えた。

「怖いよ。すごく怖い。なるべくなら・・・、このまま、成仏するのを先延ばしにしたいくらい。」
「なら・・・」
「でも、それは逃げてるだけなんだ。本当はわかってるんだ。他人とふれあえず、心も通じない・・・、それは死んでるのと同じだって。父さんや母さんやアスカや友達が自分を覚えてくれるのを見て心を和ませてみても、それは生きていたときの過去に逃げ込んでいるだけだって。」
「お葬式のときのこと・・・ね。」
「僕の時間は止まって・・・、もう前に進むことは決してないんだ。終わりが来ているのを認められないだけ・・・。やっぱりこんな姿になったのは僕の内面に原因があったのかもしれない。」
「でも、碇君は私と心を通わせることができる・・・。一人じゃないわ。」
「え?」
「もし、私がずっと碇君の側にいると言ったら・・・?」

レイが言った言葉の意味がシンジにはつかめなかった。いや、頭のどこか片隅では理解していたかもしれないが、口から返せたのは言葉になれない、空気が漏れるよ うな音にすぎなかった。レイはもう一度、今度ははっきりと言った。

「私がずっと一緒にいると言ったら?」
「そんなことできな・・・。」
「できなくはないわ。私が体を捨てて、ずっと幽体のままでいれば碇君と同じ状態になれるもの。そうすれば・・・、たとえ時がどれだけ流れても碇君と一緒にいれる。碇君と同じになれる。」
「・・・冗談・・・だよね・・・。」

当然そうじゃないことは、シンジもわかっている。それでも問わずにはいられなかった。レイは無言のままシンジを見返している。

「・・・馬鹿なこと言うなよ!そんな、そんなことしたら綾波も一人になっちゃうじゃないか。」
「かまわないわ。・・・私は元々一人だったから。」

そう言ったレイの表情はなんとなく、シンジに「何もない」と言ったあの時のレイを連想させた。辺りの気温が二、三度下がった心地がした。
シンジが何か言おうとする前に、レイが言葉を続けた。

「私には生まれたときから何もなかった。’家族’という本来あるべき最小の居場所さえ私には用意されてなかった。お父さんもお母さんもずっと海外で家にいない。家にいたのは、黙々と作業をする家政婦だけ。見たでしょう?私の家を。家族の痕跡や人の温かさがまったく無い、空虚な家を・・・。・・・ずっと一人だった!私が生まれた意味も、生きる意味も誰も私に教えてくれなかった!誰も私が生まれてよかった、貴方がいてくれてよかったと言ってくれなかった!!一人の食卓、孤独な誕生日、鳴らない電話、真っ白なアルバム、私の周りにはそんなものしかなかった・・・。」

レイがこれまで見たことがないほど、感情を高ぶらせて叫んだ。仄かに赤くなった頬がそれを証明している。

「でも、妹のアイちゃんは・・・?」
「アイが家に来たのは、つい三ヶ月ほど前なの。私と同じように育てられたみたい。ずっと一人で生きてる。別に私を必要とはしてないわ。」
「そんなこと・・・。」
「だから・・・碇君さえいれば、後はどうでもいい。そう思える・・・。」
「綾波?」
「私は・・・貴方が好き。」
「・・・・・・。」
「ただ、それだけ・・・。だから、ずっと一緒にいたい・・・。」
「綾波・・・。」

シンジは何もいえなかった。
口を開けば、レイの想いに答えてしまいそうな自分がいたから。
今まで、早く成仏することにこだわってた理由の一つが、自分がレイに惹かれてつつあったからだとわかったから。
このままレイとずっと二人で・・・。
星空を見上げていればいいのかもしれない。
他愛のないおしゃべりをして・・・。
気が向けば、いろんなところに行って・・・。
二人で寄り添って、存在し続けるのもいいのかもしれない。
消えるという選択肢しかなかったシンジにとって、それはあまりに甘美で魅惑的な選択だった。

だが、それでも、シンジにはわかっていた。
それは、何か違うと・・・。
それでは駄目なのだと・・・。

長い時間が経って・・・
シンジはようやく口を開いた。

「・・・綾波、ごめん。・・・やっぱりそんなことはさせられないよ。」
「・・・私が嫌い?」
「違うよ。全然そうじゃない。僕も、・・・僕も綾波が好きだよ。だから、綾波の気持ちがすごく嬉しかった。・・・でも・・・その・・・僕は口べただからうまくいえないけど・・・。」

そう言うシンジはいかにももどかしげだった。一生懸命、自分の想い伝えるべく何かをまとめようとして考えてる。その表情、行動、仕草、全てを含めて、私はこの人のこういうところが好きなのかもしれない。シンジを見ながらレイはそう思っていた。

「僕はずっと、こんな幽霊なんかやってきて・・・。現実を眺めているうち、生きている全ての人がどうしようもなくうらやましくなってきたんだ。もちろん綾波のことも・・・。」
「うらやましい?私のことが?」
「うん・・・。何もないって綾波はいうけど、決してそんなことはないよ。だって綾波は生きてるから・・・、これからいろんな人と出会って、いろんな体験をして・・・、ひょっとしたらアスカとも友達になれたりするかもしれない。アイちゃんとだって・・・家族になれるかもしれない。」
「・・・・・・・・。」
「生きてるってだけで僕には無くなってしまったたくさんの可能性があって・・・。いろんな希望があって。生きてればどこだって天国になるって母さんがよく言ってたんだ。生きてるときは意味が分からなかったけど、今ならわかる。その通りだと思う。この前会ったの青葉さんみたいに、全て失ってしまって絶望することもあるだろうけど、それでも・・・生きてれば・・・・・・生きてれば何時だって・・・。だから、綾波。自分には何もないだなんて、そんなこと・・・、そ、そんな・・・・・・あ、あれ・・・?」

シンジの言葉の最後は震えていた。
一滴、また一滴と・・・。シンジの目からは涙がこぼれ落ちた。目をこすり出すシンジに、レイは不思議そうな顔をして歩み寄ると、頬に伝ったシンジの涙をそっと拭った。

「何、泣いてるの?」
「綾波が悲しいこというからだよ。・・・ごめん、僕、馬鹿だから言ってることわかんないかもしれないけど・・・。」
「・・・碇君は馬鹿じゃないわ。馬鹿なのは・・・私、だったみたいだから・・・。」

月に照らされ湖面に移った二人の影がそっと重なった。
静寂が長いこと、辺りを支配する。
恋人たちのひとときと言うにはあまりに悲しすぎる時間だった。






「ふぁ・・・ぁ・・・。」

静寂を破ってシンジが長いあくびを漏らした。 目から先ほど漏らしたものとは違う種類の涙がにじみ出る。思えばあれから二人、ずっと寄り添って星空と、湖面に写るもう一つの星空を眺めていた。
まだ空に気配は見えないが、そろそろ夜明けが近いのでないかと思える。

「眠いの?」

レイが軽くほほえんでシンジに訪ねた。自然にこぼれでたと思える笑み。いままで蕾の中に閉じこもっていた花が咲いたように綺麗だった。
シンジは照れくさそうに、答える。

「うん、ちょっと。眠気がくるなんて久しぶりだけど・・・。」
「じゃあ、寝た方がいいわ。・・・ここに頭乗せていいから・・・。」

レイはそう言って自分の膝の上を指した。シンジは真っ赤になって遠慮しようと思ったが、それ以上にレイが恥ずかしそうなのを見て、お言葉に甘えることにした。
照れながら、レイの膝上に自分の頭を乗せる。柔らかな感触が側頭部を包んで、何ともいえないほど心地いい。
寝転がると、視界の一面に星空が写った。宝石を散りばめた・・・などいう言葉では表現しきれない美しさがそこにあった。

歌が聞こえた。
綺麗で、暖かい歌声。
それでいて昔聞いたような、懐かしい歌声・・・。
歌の主は当然、レイだった。

「子守歌?」
「ええ。・・・小さい頃、家政婦さんが寝付かない私に、子守歌のテープを流して聴かせたから覚えたの。だから、変かもしれないけど・・・。」
「ううん、うまいよ。」
「そう?」
「・・・なんかお母さんって感じがする。」
「・・・・・・馬鹿。何を言うのよ・・・。」

シンジは瞼を閉じる。
安らぎが、おそらく幽霊になって初めて、大きな安らぎがシンジを包んだ。
体全体が暖かい雲に包まれているように・・・。

「碇君・・・。」
「何?」
「さっき・・・、私とアスカさんが友達になれるかもしれない・・・ってそう言ったよね。」
「うん・・・。」
「本当になれると思う?」
「う・・・ん。僕は・・・、なれると・・・、思うよ。」

眠りに落ちていく・・・。
眠りに落ちていく・・・。

「綾波・・・なら・・・き・・・・・・っ・・・と・・・・・・。」

眠りに落ちていく・・・。
眠りに落ちていく・・・。

「碇君・・・?」

人は皆、いずれ・・・。
眠りに・・・・・・。

「い・・・か・・・り君」

まるで、夜気にとけ込むかの様に、シンジの姿が消えていった。まるでそこには元々何も無かったのだと言うかの如く、感触も仄かなぬくもりも全てが消え去っていた。
あまりにあっけなく、唐突すぎて、レイにはそれがなにを意味するか最初わからなかった。

「・・・成仏した・・・の?」

何故か月に向かって問いかけてみる。
当然、返答もなく、返答を期待したわけでもなく・・・。
月はその輝きと同じく冷たい沈黙を返すだけだった。
・・・・・・
・・・・・・
呆然と・・・どのくらい呆然としていたか、レイは立ち上がった。
家に帰ろう。家に帰って、まずはそれからだ。ここにいても碇君はいないのだから。

道を歩く。
夜があけたばかりのこの時刻には、町に人の気配はまだ無い。
それを差し引いても
この道は何処か広すぎるとレイは思った。

門をくぐり、レイは家の扉を開けた。
中に入ってレイは軽く驚いた。玄関の前の部屋から、妹のアイが出てきたから。
パジャマを着て、眠そうな目をこすっている。

「起きてたの?」
「違うわ。今、目が覚めたの。」

そう、と答えようとして、レイはアイが自分の顔を不思議そうに眺めているのに気づいた。

「何?」
「どこか痛いの?」
「え?」
「だって・・・、泣いてるよ。」

レイはおそるおそる、自分の目に手をやった。指先に濡れた感触。
指摘されて初めてわかる。自分の頬を熱いものが伝う感触。

「涙・・・?私、泣いてるの?」
「痛いの?お薬持ってくる?ねぇ・・・」
「・・・・・・・っ・・・・・・っっ・・・・・・!」

何かが、胸の奥からわき出してくる。どうしようもないくらい大きい感情の波。
レイはためらわずそれを吐き出した。声にして。涙にして。
目の前のアイに抱きつき泣き叫ぶ。

「おねぇ・・・ちゃ・・・。」
「・・・っ・・・いや・・・っあああああーーー!!碇君・・・。碇君・・・・・・・!ひ・・・ああああぁぁぁ・・・。」
「碇君・・・?逝ったの・・・?」
「う・・・ぐ・・・あぁ・・・あああああああ。」

長く、悲痛な嗚咽が、
夜明けの空に響きわたった・・・。


















それから、数年後・・・。

タタタタタタタ・・・・・・・・

「ちょっと、速くしなさいよ!なんであんた歩くのは速いのに、走るのはそんなにのろいのよ。」
「私は、貴女みたいな体力馬鹿と違うもの。別に目標は逃げたりするわけじゃないのに、無駄な体力はつかわないわ。」
「だれが体力馬鹿よ!この前の校内の実力テスト2位だったのよ!」
「1位は私。」
「きいいいいぃぃぃ!あんなの何かの間違いに決まってるわよ!・・・っと、ほら見えたわよ。」

ピンポーーン

「ごめんくださーい。」
「こんにちわ、おばさま」
「あら、二人とも。さっそく会いに来てくれたの?」
「はい。あの・・・いま起きてますか?」
「ええ。どうぞ、あがって顔を見せてやって。あの子も喜ぶわ。」
「はい。おじゃましまーす。」
「失礼します。」
「わぁ、かわいいーーー!ちっちゃーーい。」
「お猿みたい。」
「馬鹿、産まれた子はみんなこうなのよ!」
「ふーーん。そう・・・。あっ・・・。」
「どうしたの?」
「・・・この子、私の指を握ってる。こんなちっちゃい手で・・・。それでも何か必死で掴もうとして・・・。・・・人は生まれたときからずっとこうなのね・・・。」
「あんたって時々意味深なこというわよねぇ・・・。・・・ところでおばさま、この子の名前なんて言うんですか?」
「この子の名前?ふふ・・・この子の名前はね・・・・・・。」

---FIN---



ver.-1.00 1998+12/12公開

ご意見・感想・誤字情報などは persona@po2.nsknet.or.jpまでお送り下さい!


あとがき(過去最長?)

ふはははははーーーー!
言い訳のしようがない。
なんで遅れたかは、
単に遊びほうけてたからです(爆)
11月末に発売された某ゲームもしてました(核爆)
とりあえずコレットでクリアしました(死爆)
こういう馬鹿です。あきらめてください。

初っぱなから景気の悪い話いきます。
凍結状態だった碇探偵事務所と短編「届け、私のこの想い」を部屋から撤去することにしました。碇探偵事務所はどうしても続きがかけない、短編は出来が悪すぎる等の理由です。
碇探偵事務所は紹介してくださっているページもあり大変申し訳ないのですが、謝るしかありません。ごめんなさい。大家さんにも原案の深澤さんにも読者の方々にも、みんなみんなごめんなさーーい。
さらにさらにさらに、
このお話のラストの一部が、アリスソフトホームページでとりさんが連載されてた「花の首飾り」とダブってしまったぁーーー!このラストの展開は元々考えてたんです!決して決してまねしたり影響された訳ではありません。お願い信じて(涙)
・・・しかし、同氏シナリオの「デアボリカ」には少し影響されたかもしれない 。はぅ・・・。

さてと、都合の悪い話はこのぐらいにして、あとがきの本筋にはいります。
このお話はラストから思いついていった珍しい話です(たいがいそうか?)。
ホントの話、この後編が書きたいがために、今まで前編、中編と書いてきました。
書き始めたときは、前編中編の下書きが二日で完成し、この調子でぱぱっと書いて終わらそうと思っていたのがこのざま。いい加減連載の方をなんとかしろとの、暖かいお言葉もたくさんいただきました(爆)
特に後編はプロットにかなり無理が生じて、途中強引な展開を余儀なくされました。そのせいで満足のいく出来にはなりませんでした。ああ、残念(ーー;
まぁ、どうにもこうにも完成です。ああ、ともかく完成してホントによかった。
ホントは明るいラブコメが書きたかったのですが、何をトチ狂ったのかこんな恥ずかしい話に・・・。
次また短編書くことがあったら、今度こそひたすら明るくラブラブで、かつ短い話いきます。(どんなの書くかは決まってたりします。)

読み切り恒例の?各キャラの設定について。

碇シンジ・・・とにかく、最初に幽霊にしようというところから決まりました。なんといっても幽霊ですから、とにかくあまり活躍しないように、無力なところを強調しようと書きました。おかげで、こんなに情けないシンジ君に仕上がりました。フフフ・・・。なんか人がよすぎる気もしますが、人間無くすものがないと強いから・・・。苦労した点は、シンジの成仏願望は孤独な人間の自殺願望と決してイコールではないということをちゃんと表現することです。これが書ききれてないと、このお話は破綻してるも同然なんですが・・・、うまく書けてる?

綾波レイ・・・初めてレイを書きました。なんかレイな人にも気に入ってもらえるか心配ですがどうでしょうか?いつも通り感情を極力出させず、ラストでぐわっといこうと思いました。気をつけた点は、レイが単にシンジの逃げ込む場所にならない、この一点です。
その一点にひっっっっっっじょーーーーーーーに苦労しました(ふっ・・・、そのための前中後編だ(爆))。
「俺のレイはこんな○○じゃねぇ!」
と思った人がいたら、遠慮なくメールにその旨ぶちまけて送ってください。
泣いて落ち込んだ後、今後の参考にします。(連載の方もそろそろレイがメインになるし)

惣流アスカ・・・今回、脇役です。書くときアスカを書こうと思って書きませんでした。まぁ、たまにはこんなのも・・・ね。

青葉シゲル・・・いやべつにこの役、日向でも時田でもよかったんですが←ひでぇよ
ただ、設定は何故か非常に力がはいりました。入りすぎてほとんどオリキャラになってますが。いいよね、青葉だから・・・。

綾波アイ・・・3秒で命名。何故か、作品中一番人気。パタリロに似てると言う人もいてました。
こいつは今度からパタレイと改名。しかし、後編書くとき出さなきゃよかったと死ぬほど後悔(プロットの改造で出番無くなったし)。こいつの存在はあまり気にしないでください。

以上です。
次からは連載に戻ります。
いつになるやら・・・ですが(師走はちょい、いそがしい)気長にお待ちを。
ではでは!



 YOUさんの『第三新東京幽霊奇譚』後編、公開です。




 祝・成仏

 って(^^;


 本物の、
 芯からの、
 バカが付くほどの、

 お人好し加減を見せたシンジ・・


 流れもあったけど、
 変に逃げたりそういうことはしないで、

 やあ、よしよしでした−−


 うん、
 これで良かったんだよね、きっと。。





 で、
 祝・転生

 なのかな?


 アスカとレイに思いっきり

 おもちゃにされ、
 かわいがられ、
 etc

 そんなことになりそう(^^)


 やあ、よしよしです−−




 これで良かったんだよね。
 うん。





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