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一生懸命書いてもこの程度という困ったもんだ。それにしてももう七万人記念か凄いなあ企画



めぞんねるふ!!!!!!

水の流れる音が止み、シンジはイソイソとエプロンを外した。外には朝日が昇り夜の闇を新興住宅地から退散させている。
「いつまでやってるんですか・・・・もう出かけるんですから・・・・」
夕べから宴会をしていた同居人ではない四人がたむろしている。
「シンちゅああああん、あたしを置いて行くのおおおお?」
「こらバカシンジ!誰が出かけていいって言ったのよ!?生意気よおおおお」
何やら喚き倒す二人をあっさりと無視するとエプロンをしまいながら話しかけた。
彼女らは一晩中の宴会で既に思考回路がショートしているのだ。まともに話が出来るはずはない。
「シンジが出かける・・・・フフフッ・・・ウフフフフッ・・・・フェヘッヘヘヘヘヘヘ」
淡い青の髪の少女は何がおかしいのか赤い瞳を怪しく輝かせて笑い転げている。
気味悪そうにシンジは見ていたが時間が押し迫っていることを思い出すと慌てて支度を始めた。と、その時・・・・・・・・・・・・・・・・・
「うーーーーん、ユイ、恥ずかしがるな。はははっほうらお前の好きなジョリジョリだぞう」
「うわああああ、なんなんですか!?やめてよ!!うああああああああ!!」

ガギン!!

いきなり後ろから酔ったゲンドウに抱きつかれ髭でうなじを『ザワザワッ』とされたので思わず一升瓶で頭を殴りつけてしまった。
「ユイは照れ屋さんだからなーーーーー・・・・・・・・・・・・・・」
幸せそうな顔をしたまま倒れ込んだゲンドウを踏みつけながらシンジは慌てて着替えている。
「シンジ脱げ!そのまま一気に全部脱げ!!ゲヘヘヘヘへへへ」
女子高生のアスカが楽しそうに笑っている。
今更、気にもならない。
「じゃあ、行って来ます。朝御飯は作ってありますから。じゃあ」

「バカシンジの奴どこ行くのよ・・・・・ん?・・・・・なになに」

アルバイトニュースfrom『HELL』の巻き





「お早うございます!」
「あ、お早う、今日もよろしくな」
シンジが元気良く挨拶した相手は喫茶店『パブロフの犬』のマスターだ。バイトを始めたシンジの雇い主でもある。
アルバイトを始めた理由は約十二日ほど遡る・・・・・・


「お金がないですって!!」
「甲斐性無し・・・・・・・」
学校でシンジの作った弁当を開けたアスカとレイは、今にも食いつかんばかりの目つきでシンジを睨み付けていた。そこには鮭一切れのみがおかずの海苔弁がある。
「しょうがないだろ・・・・みんなパクパク食べるんだから・・・」
「何よ、あたし達が悪いって言うの!!あんたのやりくりが悪いのよ!!」
「本当ね・・・食費のやりくりも出来ないなんてあなたには失望したわ・・・」

シンジの食費が底をついた。
はっきり言ってねるふ館の住人はみんなシンジにたかっている。彼らの渡している雀の涙程の食費に比べてその要求は許容範囲を大きく超えていた。

「シンちゃん、あたしねフォアグラって言うの食べたいなあ」
「シンジ、あたしキャビア!!」
「サアロインステエキ・・・・・松坂うしの・・・・」
「鯛だシンジ・・・明石の鯛を使え・・・」

それだけの食費を払っているのなら叶える事も出来るのだが、いい所「賞味期限切れのレトルトハンバーグ」しか買えないような食費ではどだい無理な話だ。
それでもシンジは何とか気に入りそうな物をと苦労しながら材料を可能な限りかき集め彼らの食事を作り続けていた。

食事だけなら何とかやりくり出来たがそれに加え宴会の酒やらつまみやらで出費が日々かさみ、そしてとうとう底をついた。
もっとも食欲旺盛な年頃のアスカとレイ、年頃を大きく過ぎたのに未だカバのようにバクバク飯を食うミサトのお陰で普段の家計すらも圧迫してはいたのだが。

「そうよ!あんた働きなさいよ!!大体バイトもしないで飯食おうなんて屑よ!!」
「そうね・・・働いたら・・・馬車馬のように働きなさい・・・フフフッ」
自分達が何か負担しようなんて言う考えは微塵も持たない二人。
シンジも既に文句を言っても無駄なのは悟っている。
「分かったよ・・・・探してみる・・・・」

バイト先はいとも簡単に見つかった。
「シンちゃん、会社の近くのサテンで募集してたわよ。やってみない?」
ミサトの紹介でそこに行ってみると確かに張り紙がしてある。彼女の紹介だからホストクラブかストリップ劇場かとお一応警戒していたが店構えのちゃんとした喫茶店であった。

芸は人を助ける。技術職万歳・・・・・・・
シンジに取って飲食店はまさにうってつけだった。マスターもびっくりするほど料理の腕があったのだ。
「何処で修行したんだ?」
「別にしてませんけど・・・」
ねるふ館での日々で会得した料理の腕前は、プロ並みになっている。
そりゃそうだ。
少しでも気に入らなければ容易に実力行使にでる連中を相手に毎日朝夕と食事を四人分作っているのだ。その辺のレストランの修行なんかとは比べ物にならないほど厳しい。
口に合わなければ遠慮なくライフルをぶっ放される所など他にはない。

命がけの日々・・・・

そんなわけでシンジは此処『パブロフの犬』でバイトする事となった。


「シンジ君オハヨ、今日も一緒にがんばろ」
「霧島さんお早う、今日も忙しくなるね」
シンジに『がんばろう』などと声をかけるのはねるふ館の関係者ではない証拠だ。
彼女の名は霧島マナ。
此処で一緒にバイトしてる同じ歳の女の子だ。
シンジと偶然同じ日に面接してウエイトレスとして採用された。因みにシンジはウエイター兼厨房係だ。
「じゃあ、僕向こうで仕込みしてるから後でね」
「うん、お昼一緒に食べよ」

シンジはバイトを始めてから今まで味わうことの無かった『楽しい日々』を過ごしている。
この霧島マナと仲良くなっていたのだ。
明るいこぼれるような笑顔、その優しい性格。愛らしい表情。
いずれもシンジの周りにない物だった。
アスカやレイのような『派手さ』はないものの充分可愛かった。
それも手伝ってかシンジの働きぶりは実に真面目で熱心だ。
「シンジ君料理上手ね。今度あたしにも何か作ってね」
「シンジ君一緒に帰ろ」
「これ作ってみたんだけどどう?・・・・美味しい?・・・良かった!」
「シンジ君と一緒にアルバイトできて良かった!あたしすっごく楽しいもん!」

そんないかにも楽しげな会話が二人の間で交わされていた。


「へえ、シンジ君良くやってるわねえ。もう十日も続いてるの」
感心したようにリツコさんはミサトと話をしている。バイト先を紹介した彼女が一応覗いてみたのだが良くやっているようでその事をリツコさんに話していたのだ。
「まあ、何か楽しそうにしてたわよ、ヒヒヒッ、何か可愛い女の子と一緒に」
「やな笑い方ねえ・・・でも楽しくやってるんならいいじゃない。必要よ、楽しい事もね」
ミサトのオヤジ臭い笑いに比べリツコさんの微笑みは美しかった。

「ちょっとなんかつまんないわねえ・・・・・」
「・・・・玩具がないモノ・・・」
シンジの部屋にたむろしているアスカとレイはごろっと横になってポテトチップスを囓っていた。
余計なことだがシンジが買って置いた物だ。
「大体あたし達をほっぽいといてバイトなんて生意気よ!!」
「・・・そうね・・・!・・見に行ってみる?」
「んーーーー、暇つぶしにいいかもね!レイ、支度しなさいよ。すぐ行くんだから!!」

というわけで彼女達はおめかしすると早速シンジのバイト先に向かっていったのだった。

「シンジ君の作った料理って美味しいね。ほんとに上手ね」
「そんな事無いと思うけど・・・・ただ何時もやってるから・・・」
照れながら答えるシンジ。
滅多に人に誉められないのでたまーに誉められると上がってしまうのだろう。
「でも霧島さんの作ったのも美味しいよ。この卵焼きなんか良く焼けてるし・・・」

二人は喫茶店の近くの公園で少し遅いお昼を食べていた。
マスターはこの若い二人に気を利かせて一緒に休めるようにしてくれたのだ。
お昼ご飯はシンジがあまった材料で何か簡単な物を作って食べているが今日はマナもお弁当を作って持ってきていた。
可愛い弁当箱にこれまた可愛らしく作られたおかずの数々が入っている。
「・・・・はい・・・・あーーーん」
「あ、あの・・・な・・・・・霧島さん・・・」
真っ赤になる二人。
「駄目かな?・・・・・」
悲しげなマナの目に見つめられシンジは彼女の箸にパクッと食いついた。
「ありがと・・・すっごくおいしいよ!」
「ほんと?よかった。フフッ」
この公園だけ南国のような陽気に包まれている。

「ねえ・・・シンジ君て・・・・・・・・・・・」
食後の『のほほん茶』などを飲みながらマナは俯いたままシンジに話しかけた。
「なに?」
「シンジ君て・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
何かとても言いづらそうに言葉が遮られる。
今彼女の心臓はレッドゾーンに突入していた。
「シンジ君て・・・・・付き合ってる人いるの?」
「へ?・・・・・・・・・・いないけど。何で?」
「そう!何でもないの・・・・良かった!」
今にも踊りだしそうなマナ。
そしてシンジが次第にその意味が分かって来ると彼の心臓もレッドゾーンに一気に突入した。
「き、霧島さん・・・・僕・・・・・」
「シンジ君、そろそろお店に戻ろ」
「うん・・・・そうだね・・・」

赤く染まり始めた空が二人の頭の上に広がっていく。
もうすぐお客が来始める時刻だった。


休日出勤した会社員や、泊まりがけで仕事をしていた会社員、近所の大学生・・・・・等々をはじめとしていろんなお客が入り始めた。
中にはカップルや親子連れ、友達同士で来ているのもいた。

その中に二人の姿もあった。

「何よ!バカシンジの奴!でれでれして!!」
「・・・・ドスケベね・・・小さい癖に・・・」

赤い瞳と青い瞳
暗く怪しい輝きをその異なる二色の瞳の少女は放っている。

「真面目に仕事しているかと思えば・・・覚えてなさいよバカシンジ!!」
「馬車馬のように働いてるかと思えば・・・対策が必要ね・・・」
手元にあるアイスコーヒーをズズッと啜りながら楽しそうに働くシンジを見つめる。
彼女の頭の中にはどんな方法を採るか様々に計算されていく。

「此処は一つうちのババア共に手伝わせるのが得策ね」
「バーサン達・・・役に立つの?」
「ふん、猫の手よりましでしょ。あんなババア共でも・・・フフフッリツコでも焚き付けるか」
「ミサトみたいな役立たずでも何かには使えるわね・・・バーサンは使い捨て・・・」

二人はシンジに気づかれないように店を後にする。

さっきまで晴れていた空に厚い雲が広がり辺りを暗くしていた・・・・。


「という訳であんたの力を借りたいの」
「そう・・・貴方の優れた洞察力を頼りにしているの・・・」
アスカとレイがしおらしい顔で六号室のミサトに協力を要請していた。
「やーよそんなの面倒くさい・・・いいじゃないシンちゃんが幸せだって・・・ふぁあ」
日曜なので朝っからビールをがぶ飲みし、昼からずっと寝ていたのだ。それをこの二人に叩き起こされ些か不機嫌そうである。
「何言ってるのよ!シンジをそんな目に遭わせられないわ!」
「そうよ・・・彼は私が不幸にするもの・・・・」
言っている事は滅茶苦茶であるが真剣である。

「駄目、あたし仕事で忙しいんだから!他を当たってちょうだい」
ミサトはつれなく答えた。
こんな面倒くさい事に関わりたくはなかったし第一シンジがどうしようと関係なかった。
彼女は大人だ、好きだとかどうしたとかはすっかり卒業している。そう、いい大人なのだ。
彼女達より二倍年を取っているのだ。もうすぐ三十歳だ。
大人だ大人だ大人だ大人だ・・・・・・・・・・・・すっごーーーい大人だ。

「シンちゃんだってお年頃よー、彼女が居たって良いじゃなあーい。そ・れ・と・も・・・・」
「バカ言ってんじゃないわよ!!」
ガスッ!!

「こんな奴当てにしたあたしがバカだったわ!次!!」
アスカに後頭部を殴られ気を失ったミサトを放ったままアスカとレイは次の相手に向かった。

「・・・・あたし達を助けて・・・」
夕飯の準備をしているリツコさんにレイが話しかけている。
「何よこの忙しいときに!・・・・ほらさっさと言いなさい!時間が勿体ないでしょ」
忙しいのですっかり不機嫌である。
今夜の夕飯はどうやら鳥のシチューらしい。

「・・・・・という訳よ・・・手伝って・・・」
「あんた達まだ懲りないらしいわね・・・今度は半殺しじゃ済まさないわよ・・・・」
リツコさんの目が細くなり殺意のこもった光を放ちレイを突き刺した。
「・・・・・・・・!!」
失敗したかと思ったレイの脳裏に一つの作戦が思い浮かんだ。
「シンジが言ってたわ・・・バーサンは用済みだとかバーサンは要らないとか若い娘はたまらんとかバーサンはひつこいだとか・・・・・・・・・・・・ぐう」
彼女の白く細い首にリツコさんの手が伸びキュウウウウッと締め上げている。
「うるさい小娘ねえ・・・スープの具にするわよ・・・あんたの代わりは幾らでも居るのよ、佃煮に出来るくらいに・・ホホホホホホホッ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「仕方ないわね・・・・・あたし達でなんとかしなきゃ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「今度は負けられないのよ!このあたしは負けられないのよ!!」


そんでもって数日後、喫茶店『パブロフの犬』前

「レイ、準備はいい?・・・・そう、じゃあ行くわよ!!!」

カランコロン

「いらっしゃいませ。・・・?」
出迎えたシンジの前に現れた客は真っ黒のサングラスを掛けアフロヘアの二人の少女だったがどっかで見たことがあった。
アスカとレイなのだが忙しいシンジはさして気にとめていなかった。
勿論カツラの変装である。

「コーヒー二つ」
おきまりの注文をすると二人はごそごそし始める。
(レイ・・・どう?あれちゃんと持ってきた?)
(有るわ・・・大丈夫・・・・)

やがて運ばれてきたコーヒーを手にしながらウエイトレスのマナを睨み付けた。
「ちょっとあんた!何よこれ!あたしにこんなの飲めッて言うの?」
「・・・あたしのにも入ってたわ・・・どう落とし前つけるの?」
マナはびっくりした。
今時アフロヘアに真っ黒のばかでかいサングラスを掛けたその格好だけでも充分びっくりできるのだがまさか日本語が話せるとは思わなかったのだ。
「あ、あの何か不都合でもあったのでしょうか」
「こんなのが入ってたのよ!良く目開けて見なさいよ!ほら!!」

ドン!!

そこにはリツコさんに黙って借りてきたゼリエルが悲しげな目でテーブルの上に置かれている。

「ピー・・・・」

「ほら!ねーちゃん、どうしてくれんのよ!ああん!?」
「困るわ・・・死んで詫びなさい・・・・」

・・・・・・・

二人はあっという間にシンジに叩き出された。
「まったく・・・酷いお客だったね。何考えてるんだろ」
「あーびっくりしちゃった。でもシンジ君が居て良かったわ。あたしだけじゃどうしようもなかったもの」

今日は何故か強気のシンジ。たまに好意を寄せるのが居るとすぐつけ上がるタイプらしい。

「なによバカ!!・・・・・・ってちょっと大きかったわね・・・」
「そうね・・・・ゴキブリくらいで良かったかもね・・・」
作戦その一・・・失敗・・・・

「次行くわよ!」
「ええ、ヒソヒソ作戦ね・・・・」

彼女達はまた店の中に入っていった。今度の変装はレイが長髪のカツラをかぶりセーラー服を着込んで長いスカートをはきいわゆる「一昔前のスケ番ルック」になった。
一体どこから情報を入れているのか2015年にもなってその格好もないだろう?・・・

「いら・・・しゃいませ・・・・」
シンジは呆れ顔で二人を出迎えた。
古本屋に一冊50円で売っている色褪せた大昔の売れ残りコミックから出て来たような格好だ。
さっきと同じ席に着くと予定通りにマナが注文を取りにやってくる。
「ご注文はおきまりですか?」
「あたし納豆定食」
「あたし・・・モツ煮定食がいい」
喫茶店でこんな注文をされたのは初めてだろう。マナは大きな目をパチクリさせながら聞き直した。
「あ、あの・・・うちにはそう言った物はないので・・・」
「ああん?なんやて!そのくらい揃えなさいよ!!それで喫茶店て言えるの!?」
「あたし達を舐めているの?ふざけるんじゃないわよ・・・どういう目に遭わせるか・・フフフッ」
凄む二人。
「あの・・・済みません・・・本当にないんです。ですから他の物を・・・キャッ」
「なめとったらあかんで!!オラア!!この落とし前どう付けるつもりや!!」
「死にたいらしいわね・・・・ひと思いに楽にしてあげる・・・フフフフフフフフッ」
今時その辺のチンピラだってこんな絡み方はしない。何故かというと・・・・

「あ、もしもし警察ですか?今大変なんですぐ来て下さい!」
シンジは電話を取るなり110番していた。
「バカシンジの奴!!レイ!引き上げるわよ!」
「ええ、アスカ!!!」
「え!・・・・あの二人?・・・」

慌ててお互いの名前を呼びながら店を飛び出した。所詮二人の作戦能力はこの程度である。ようやくビルの隙間に逃げ込むと変装を解きながら息を整える。

「ハアハア・・・・シンジの奴覚えてなさいよ・・・はあ・・・次どうする?・・・」
「フウフウ・・・次・・・N2爆雷で店ごと一気に・・・」

彼女達の会話にもう一人入り込んできた。
「店ごとどうするつもりだよ・・・・何で邪魔するんだよ!」

シンジだ。
さっきの会話を聞いてようやく気がついたらしい。それにしてもあんなちゃちな変装で今まで気がつかないとはよくよく抜けてる奴だ。
それでも白いシャツにネクタイを締めている姿は、今までのシンジとは違ってほんの少しだけしっかりしているように二人には映っている。
馬子にも衣装・・・・

「あ!シンジどうしたの?」
「あたしは何も知らないわ・・・全部この女の差し金よ・・・・」
「違うわよ!・・・・そ、そう、リツコに脅されたの!あの女自分が歳食ってるから妬んで・・・・」
言い訳をおろおろし始めている二人。だがシンジは聞く耳持たなかった。
「いい加減にしろよ!何のためのアルバイトだと思ってるんだよ!・・・もう来るなよな!」
いつになく強気、いつになく偉そうにシンジは二人に言い放った。シリアスだ・・・・
「シンジ・・・」
「・・・・・あたし悪くないわ・・・みんなこの女が・・・・」

くるっと背を向けシンジは二人を放っておいたまま店内へと消えていってしまった。
まったくいつもの弱さは微塵も見せない。
実に男らしい態度だ。どっかあたまの配線がショートしてるのかとさえ思える。

「何よ・・・バカシンジ・・・バカシンジ・・・バカシンジ・・・・・・・・・・」
「・・・・・・あたし悪くない・・・・・」
このまま泣きながら家に帰ればまだ可愛げもあるがそこはアスカとレイだ。

「しょうがない、こうなったら闇に紛れて直接行くわよ・・・あの女を仕留めるわ!!」
「そうね・・・装備点検しましょ・・・」

またもやリツコさんの所から無断で持ってきたプログナイフやら劣化ウラン弾をフル装填したハンドガン、パレットガン、止め用のトマホーク・・・・
リツコさんの管理体制も問われるべきであろう・・・・


「お疲れさま!」
「お疲れさま・・・シンジ君そこまで一緒に帰ろ」

夜の十時に店はしまった。
マナとシンジはこの時間で上がることになっていた。
辺りはすっかり暗くなり、だが第三新東京市の街並みに色とりどりの明かりが灯っている。

「シンジ君の料理が美味しいからいっぱいお客が来るね・・・・」
「そんな事無いよ・・・・」

シンジは自分の料理のさほど自信は持っていない。必要だから身に付いてしまっただけだ。

「霧島さん・・・・あの・・・」
「あらぁシンちゅあん、今終わったの?」
何か決意したようなシンジの呼びかけに答えたのは彼女じゃなくミサトだった。
ほろ酔い気分の彼女がフラフラと近寄ってくる。
「あらああシンちゃんお元気イー。早く帰ってきてねえ、一緒にお風呂入ろ」
相変わらず酔ってもバカなミサト。一瞬シンジの顔色が変わった。
「な、何言ってるんですか。酔っちゃってもう・・・」
「処でシンちゃん、あの二人の夕飯どうしたの?お腹空かしてるわよう・・・きっと」
アスカとレイのことだ。
さっき追い払ってしまったのですっかり忘れていたらしい。もっとも覚えていたところでわざわざ夕飯を作りに戻る来もなかったが。
「シンジ君・・・・誰かと一緒に暮らしてるの?・・・・それに一緒にお風呂って・・・」
マナが不安げな顔でシンジを見つめる。
「そんな事無いよ・・・お風呂なんて別にそんな・・・」
堂々としていればいい物をついおろおろしてしまう。
「それよりシンちゃん、あたしお腹空いちゃったから帰ったら何か作ってねえ」

誤解を招くような一言をミサトは口にした。

「シンジ君・・・この人と一緒に暮らしてるの?・・・」
「そうよう、同じ屋根の下に暮らしてるんだからあ・・・へへへへっいいでしょ」

誤解しか招かない一言をミサトは口にした。

「ち、違うよ!同じアパートにいるだけで・・・・」
堂々としていればいい物をついおろおろしてしまう。
「それにぃあたしのぅ朝御飯と夕御飯まで作ってくれてるんだからぁ」
事実だ。
彼女の言うことは取りあえず事実だ。
ねるふ館に風呂がないので一緒の銭湯に通っているし、確かにアパートだから同じ屋根の下だし、朝飯と夕飯は確かにシンジが作っている・・・・というよりたかられている・・・。

だが、思いこみの激しい年頃だ。そんな事は知ったこっちゃ無い。
「シンジ君・・・そう・・・ゴメンね・・・・あたし勝手にはしゃいでたんだ」
「違うったら!ミサトさん何とか言ってよ!」
「にゃあにいシンちゅああん・・・ああ、わかったわよ・・・んーーーーー」
唇を思いっきり突き出したミサト。
シンジが求めたのは訂正であって口紅を真っ赤に塗りたくった唇ではない。

「シンジ君・・・あたし帰るね。・・・もう・・いいから・・・・さよなら!!」
「霧島さん!!待ってよ!」
追いかけて走りだそうとしたシンジをミサトが洋服の端を持って止めている。
「シンちゅうううううああああん!あたし置いてっちゃやーよ!」

ゲシッゲシッゲシッゲシッ!

ゴキブリを踏みつけて退治するかのように彼女をふりほどきマナを追いかけた。が・・・・
第三新東京市の繁華街の人並みは決して少なくなく、少女一人の姿などあっという間に隠してしまった。

「霧島さん・・・・・・・・」

ハアハアと息を切らしながらシンジは公園のベンチに腰掛けた。
以前二人でお弁当を楽しく食べた公園・・・もう二度とそういう事はないだろう。
シンジは泣いた。
それしか出来なかった。

「さすがミサトね・・・ああも簡単にうまく行くなんて・・・」
「そうね・・・年の功という奴ね・・・」
物影から一部始終を覗いていたアスカとレイが賞賛の声を上げた。
彼女達の作戦は脆くも崩れ去ったがまあ、結果オーライという奴だ。
「帰りましょ・・・・お腹空いたわ・・・・」
「う、うん・・・そうね・・・」
レイに催促されアスカは立ち上がるとねるふ館のある方向へと向かって歩き出していった。

「何で・・・・・何で・・・こうなるんだよ・・・・」
自らに降りかかる不幸の数々が走馬燈のように駆け抜けていく。

「バカシンジ!ほら帰るわよ!何いつまでもめそめそしてんのよ!」
「ア、アスカ・・・」
シンジの前に栗色の長い髪の少女が立っていた。
ネオンの光を背負ってシンジを見下ろしていた。
「・・・・お腹空いたから何か作って!・・・・その・・・シンジが作って!」

今回基本的に彼女達はあまり邪魔をしていない。すべてことごとく失敗したからだ。

「・・・・・アスカ・・・・・・・・・そうだね・・・・」
「そうよ、あたしお腹空いてるんだからすぐに作ってよ!・・・だから・・・帰ろ」
「うん・・そうだね。何食べたいの?」
「・・・うんとね・・・ハンバーグ!」
「じゃあ、帰ったらすぐ作るよ」

アスカはシンジを立たせると今度こそ本当にねるふ館に向かって歩き出した。
「ねえ・・・レイはどうしたの?」
「先に帰ってるわよ」
「ふうん・・・アフロヘア似合ってたよ・・・」
「うるさいわね!バカシンジの癖に生意気よ!・・・・・・」


「君ちょっと起きなさい!こんな所で寝てちゃ・・・」
「うっさいわねえ、シンちゃん呼びなさいよう・・・お腹空いたわよおおおおお!」
「ほら、暴れないでほら!!アタッアタッ!」
「駄目だ・・・トラ箱行きだなこりゃ・・・」
「シンちゅうううあああああん!何か作ってえええええええええ!」

第三新東京中央警察署内泥酔者保護施設。通称トラ箱
そこには楽しい夢を見て汚い大いびきをかくミサトの姿があった・・・・・。


終わり

ver.-1.00 1997-06/02
リツコ:ご意見、ご希望、苦情、文句、その他諸々はこいつまで送ってやって下さいませ。ほほほっ

アスカ:何よこれ・・・またあたしの可愛らしさが目立っちゃうじゃない!
レイ :可愛く無いわ・・・・図々しいのね・・・
ミサト:好きにしなさいよ・・・はあ・・・嫁入り前って言うのに・・・
アスカ:いいわねミサトは気楽でさ。殆ど地のままじゃない。
ミサト:うっさいわね!大体あたしだってラブストーリーの一つや二つ・・・
アスカ:見た事無いわよ。あ、でも良く探せばどっかに有るかしらね。
レイ :埋蔵金探すより難しいわ・・・・
リツコ:あたしもそう言えば見た事無いわ。
ミサト:あんたのもないでしょ!
レイ :バーサン共は用無しなのよ・・・・・
リツコ:ふん、あんただって最後はキュウウウウウウッてクビ締められて終わりよ。
アスカ:そうそう!レイって幸せとは縁がないのよ。あたしだけね。ハッピーエンド迎えるのは
ミサト:よっくいうわねえ・・・まあでもレイって幸せとは縁遠い感じだわ確かに。
レイ :・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・メソメソ・・・・
アスカ:・・・ちょっと言い過ぎたかしら・・・レイ?・・・レイ?・・・?

レイ :クワッ!!!!

アスカ:ヒイイイイイイイイイ!
ミサト:グアッ!
リツコ:貴方一体!?・・・・・うっ!

一同 :・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

レイ :あたしを舐めるからよ・・・フフフフッ・・・挨拶ね・・・また読んだのね 貴方・・・どうだったの?面白かった?

・・・・そう、良かったわね・・・・でも・・・それは不幸の始まり・・・・・溶けた心が貴方を壊す・・・・フフフッ・・・

ウフフフッ・・・ヘヘヘヘヘッ・・・アアハッハハハハハハハ!・・・・・・・・・・・・・ファッハハハハハハハハ!!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まだ居るのね・・・好きにすれば・・・・そう・・・じゃあ・・・

・・・・・・・・・七万人ね・・・そう・・・おめでとう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・

・・・・・・・・・・めでたいのね・・・フフフフフフフフフフフフフッ・・・


 ディオネアさんのカウンタ小説『めぞんねるふ!!!!!』第6巻、公開です(^^)
 

 今回のシンジ君はラブラブしてましたね。
 初登場キャラとの初々しいふれ合い・・・・私も一緒にはにかんでしまいました。

 霧島マナ、ゲームが出ない内から美味しいキャラクタです(^^;

 まるでミュージシャンの新曲が発売前のラジオでブレイクしているような・・・
 で、発売と同時にミリオンHIT!

 ま、まさか、商売上手のガイナックスがそれを狙っているのか?!
 web上で人気を煽ってゲームを買わす・・・・あり得る(^^;
 

 閉話休題(^^;

 とにかく後半のアスカの行動にも「嫉妬心」がチラホラと見えていたようですし、
 ネルフ館のシンジ君にも春が来るのか?  まさかね(笑)・・・まさかね・・
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 今回も記念小説を書いてくれたディオネアさんに私に替わって御礼のメールを書いて下さいね!!


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