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第二新東京市郊外の新興住宅街。

僅かながらも緑の残るこの地域では、その少ない緑にしがみついた蝉が精一杯の自己主張を続けている。

一年中夏であるにも関わらずだ。

不愉快極まりない。

素朴な疑問だが、彼らは一体どうやって世代交代しているのだろう?

それほど、今の日本では蝉の声が絶えることがなかった。

15年前、常夏の島国となったこの国の住民は絶望した。

農作物は全滅し、気候にそぐわない家畜達はその数を減らして行った。

生きるために必要な物は次々と失われていく。

元々乏しかったこの国の自給能力は完全に消滅した。

だが、15年経った今でも、人は生きている。

「生きてさえいれば、どこだって天国になる」とは、故碇ユイ氏の名言だが、地獄では地獄なりの生き方を模索するのが人間であり、だからこそ次代を生きる資格を掴み取ったと言えないこともない。

げに恐ろしきは人間の環境適応能力と言ったところだろう。

ここにも、蝉の声の気にならない子供達がいる。

彼らにとってはそれが当たり前であり、大人が懐かしむ”昔”は彼らにとっては実感のわかない夢物語に過ぎない。

当事者が直視したくない事実は、存在し続ける。

だが、それを客観的に見ることができる存在が生まれたとき、人は少しだけ進化する。

過去を振り返らず、未来を見つめることが人の生きる道。

もしかしたら、それを一番よく知っているのは、とあるマンションの一室でだらけた休日を過ごしている3人の子供達かも知れない。





 ”未来のために” After Story
 
Writing by HIDE



「あー、もう、退屈退屈退屈ぅー!!」

床に寝そべり、TVを眺めながらスナック菓子に手を伸ばしていたアスカが、突然四肢をバタつかせて叫んだ。

S-DATでクラシックを聴きながら雑誌に視線を落としていたシンジが、何事かとイヤホンを外す。

そのシンジの肩にもたれてうつらうつらしていたレイは至福の時間を邪魔されてちょっと不機嫌だ。

アスカの隣でお菓子のおこぼれにあずかっていたペンペンは、怪しい雲行きを敏感に感じ取り、レイの膝の上に避難を開始した。
 
 

日曜日の昼下がり。

特に何も予定のなかった3人は、持て余した時間を自宅で無為に過ごしていた。

シンジは短パンにTシャツというラフな格好。

アスカもそれに同じ。

レイはシンジが見立てた純白のワンピースを着込んでいる。

以前買い物に行ったとき、何故か既視感を感じたシンジがレイにプレゼントした物だが、レイはすっかり気に入ってしまっている。

ちなみに濡れると思いっきり透ける。

・・・まあ、余談以外の何物でもないのだが・・・。
 
 

シンジも男だ。

さすがに15ともなるとアスカの大胆な格好にドキリとさせられることも多いのだが、彼女にしてみれはそのシンジの反応が面白くてたまらない。

だが、たまにシンジがトウジやケンスケを家に連れてくると、いつのまにやら着替えてしまう。

どうやら、シンジ以外に珠のお肌を見せてやるつもりはないようだ。

素直ではないが、わかりやすい性格と言えるだろう。
 
 
 

「た・い・く・つぅー!」

シンジとレイはそれなりに優雅に過ごしていたのだが、アスカは時間を無駄にしたくない性格の持ち主なので、こういったのは耐えられないらしい。

「シンジ!何とかしなさい!」

アスカの要求はいつも理不尽だ。

「何とかしろって言われても・・・」

シンジの反応は当然のことだろう。

具体的な指針も無しに何とかしろと言うのは、理不尽極まりない。

「なんでこんな天気のいい日曜日に家でゴロゴロしてなきゃなんないのよ!どっか連れて行きなさい!」

「無茶言うなよ。もうお昼過ぎちゃってるし、何の用意もなしに出かけるわけにもいかないだろ?」

「むー。だったら、なんか芸でもしなさいよ!」

アスカはちょっとふくれて、よけいに理不尽な要求をシンジに向ける。

要はシンジにかまって欲しいだけなのだが、彼女にはこういう言い方しかできないらしい。

シンジも最近それがわかってきているのか、ため息を一つ返すだけだ

「ホント冴えない男ね。芸の一つも持ってないの?あんたからエヴァ取ったら何ものこんないじゃない!」

「何だよ。アスカだって似たようなもんじゃないか。」
 
さすがに少しばかり気分を害されたシンジが言い返す。 

それを聞きとがめたアスカは、立ち上がって髪をひとつかきあげ、鼻を鳴らす。

「はん、冗談じゃないわ。この頭脳明晰、容姿端麗、スポーツ万能の惣流・アスカ・ラングレー様とあんたなんかを一緒にしないで欲しいわね!!」
 
だが、ペンペンを抱えて黙って聞いていたレイがすかさずつっこみを入れる。

「その分、高慢で、自信過剰で、乱暴よ。差し引いたら何も残らないわ。」

「レイぃ〜。」

「私は事実を述べただけ。あなたには慎みと思いやりも足りないわ。」
 
シンジとペンペンはうんうん頷いている。 

そのシンジの顔にアスカの肘がめり込んだ。

「碇君に何をするの!」

「うっさいわね!あんたもいつもいつもシンジにベタベタしてんじゃないわよ!暑苦しい!」
 
「あなただって、私がちょっと目を離すと碇君といちゃいちゃしているじゃないの。ほら、そういう風に。」

「・・・あ、綾波、その表現は適切じゃないと思うよ・・・。アスカぁ!チョークチョーク!!」

シンジの首に巻き付いたしなやかな腕は、完璧なチョークスリーパーを極めていた。

レイの膝の上も安全ではないことを悟ったペンペンは、自室の冷蔵庫に消えて行く。

「ミサトはどうしたのよ!ミサトは!スポンサーがいなきゃ何もできないじゃないのよ!」

シンジの首を極めたままアスカが不満を口にする。

「み、ミサトさんなら、アスカがまだ寝てるうちに着飾って出かけたよ。多分、日向さんとデートじゃ・・・ぐえっ・・・」

そこまで言ったところでアスカの腕に一段と力がこもり、シンジはそれ以上言葉を続けることができなかった。

レイも先程から引き剥がそうとしているのだが、非力な彼女ではまったくと言っていいほど効果がない。

「あんの、年増女!30目の前にして焦ってるわね!」
 

 

「へ、へーくっしょい!ちくしょうっ!」

洒落たイタリアンレストランに親父のくしゃみが響きわたる。

優雅な昼食を採っていた客達は、場違いな現象に一斉に声のした方に視線を向ける。

だが、そこには声の主と見られる人物はいなかった。

彼らに確認できたのは、紳士淑女が集まるこの店の中でも一際目を惹く美しい女性と、さほど見劣りのしない実直そうな青年とのカップルだけだった。

紳士淑女達は首を傾げながら、再び優雅な食事を開始する。

「み、ミサトさん。風邪ですか?」

実直そうな青年−日向マコト−が、目の前の美女−葛城ミサト−にひきつった笑みを張り付けながら尋ねた。

「おっかしいわねぇ、そんなはずないんだけど・・・。きっとあの子たちがろくでもない噂でもしてるんじゃないかしら?」

「そ、そうですか・・・。」

「あ、ボーイさーん!こっちにビール追加!」

・・・後悔はしないな?日向マコトよ。
 

 

戻って葛城家のリビングルーム。

アスカにしてみれば、自分たちが家で退屈な時間を過ごしているのに、ミサトがのうのうとデートなんぞをしているのが気に入らないのだろう。

その怒りは当然のようにシンジに向けられていた。

「ほら、シンジ!放して欲しかったら、何とかしなさいよ!」

「わ、わかった。わかったからちょっと放して!」

思いっきり力を込めて、たっぷり10秒の間、首を絞めてからシンジを解放する。

このままシンジを落とすのも面白そうだったが、彼が何を始めるかにも興味があった。

「げほっ、げほっ、やっぱり乱暴じゃないか・・・」

「大丈夫?碇君。」

目に涙をためたシンジが咳き込みながら抗議する。

すかさずレイが心配そうに声をかける。

その様子を見て不機嫌になったアスカがいらいらした口調で急かす。
 
「ほら、シンジ!何でもいいから、早くしなさいよ!」 

「わかったよ。まったくアスカはうるさいんだから・・・。」

「シンジっ!」

シンジは逃げるようにして部屋へ駆け込むと、しばらくごそごそしていたが、やがて古ぼけたチェロケースを抱えて戻ってきた。

少し懐かしそうにアスカが声をかける。

「まだ、持ってたんだ・・・。」

「うん、邪魔なだけなんだけど、捨てられなくて・・・。」

シンジはケースからチェロを取り出しながら、アスカに答えを返す。

レイはその様子を興味深げに観察している。

「人に聞かせるのは少し恥ずかしいんだけど・・・。」

言い訳しながらも、ソファに腰掛けて、弓を構える。

目を閉じて、軽く息を吸い込み、止める。

ゆっくりとそれを吐き出しながら、なめらかに弓を操り始める。

オーケストラでは他の楽器に紛れてしまいがちなチェロ。

だが、意識すれば確かな存在感を持った重厚な音色に気づく。

それが今、何者にも頼らず、自らを主張して独奏を始めた。

シンジの存在を象徴するかのような音色が葛城家のリビングルームに響きだす。

二人だけの観客は、心を振動させているような、低く、重い音色に魅せられ、眠るように瞳を閉じた。
 
 

 

この曲、前に聞いたことある。

たしか、ヒカリに頼まれて、したくもないデートをさせられたときだった。

コースターを待ってる隙に逃げ出して、帰ってきたらシンジが弾いてた。

意外なものを見たような気がしたっけ。

何も取り柄のない、冴えない男だと思ってたんだもの。

ベランダで、夕陽に照らされながら演奏しているシンジが、少しだけ大人に見えた。

それが悔しかった。

私よりも、ずっとずっと子供で、人に言われたことだけ黙ってやっているだけのシンジに、こんなことができるとは思わなかったから。

どうしてか聞いてみたら、「誰もやめろって言わなかったから。」って答えが返ってきた。

なんでこいつはこうなんだろう?

それって、「自分からやめようとは思わなかった」ってことでしょ?

自主的に続けていたってことじゃない。

はっきり言えばいいのに。

そう思っている自分が子供っぽく思えて、よけいに悔しくなった。

加持さんがミサトと一緒にいるって聞いて、いらいらしてもいた。

だから、からかってやったの。
 
 
 

キス、しよっか。
 
 
 

私のファーストキス。

ちょっともったいなかったけど、どうしても確認したかった。

シンジの奴、震えてた。

ほら見なさい、やっぱり子供じゃないの。

でも、その日からシンジが男に見えた。

でもね、あいつは変わらないの!

こんな可愛い女の子とキスしたのよ!

一緒にくらしてるのよ!

普通はもっと意識するものでしょ?

けど、あいつは変わらなかった。

それに、シンジの瞳はいつもレイに向けられていた。

悔しかった。

私のプライドはズタズタ。

ええ、そうよ。

嫉妬よ。

私はレイに嫉妬してたのよ!

いいじゃない!

寂しかったんだもん。

私を見て欲しかったんだもん。
 
 

でも、今はいいの。

シンジは私の側にいてくれるんだから!

ちゃんと私のことも見てくれるんだから!
 

 

 
 

不思議・・・。

この曲、碇君の感じがする。

暖かくて、落ち着いて、消えてしまいそうな私を繋ぎ止めてくれる感じ。

私は何もいらなかった。

何も欲しくなかった。

どうせ、失われてしまうんだもの。

でも、それは間違いだったの。

碇君は私を見ていてくれた。
 
 

碇君が助けに来てくれた。

私のために泣いてくれた。

嬉しかった。

笑うことができた。

碇君を守りたかった。

だから、死のうと思った。

悲しかった。

涙が流れた。
 
 

嬉しいこと。

悲しいこと。

笑顔。

涙。
 
 

みんな碇君が教えてくれた。

それを思い出したとき、私は人になれた。

私が人になれたとき、私の存在に意味が生まれた。

碇君だけは綾波レイを見ていてくれる。

新しい、絆。

だから、私はここにいる・・・。
 

 
 

やがて、空間に吸い込まれるようにして、心の演奏は終わりを告げる。

二人の観客は瞳を閉じたまま。

開いてしまうと涙がにじむから。

「ど、どうかな?」

シンジが少しはにかんだ笑顔で感想を求めた。

二人は涙が乾くまで数秒待ってから目を開く。

真っ先にアスカが口を開いた。

「ねえ、シンジ。」

「何?」
 
 

「キス、しよっか?」
 
 

その言葉にシンジの時間が一瞬止まる。

「と、と、と、突然何言うんだよ!」

レイの様子を伺いながら、明らかに動揺した口調で叫んでしまう。

案の定、ルビーの瞳は絶対零度の冷たさをもって、シンジを射すくめている。

「つまんないのぉ。」

結局の所、シンジを困らせるのが目的だったようだ。

アスカはそれ以上食い下がろうとはしなかった。

チェロをしまうシンジの背中に突き刺さる視線。

「私、ヒカリん家行って来るわ。夕飯までには帰ると思う。」

アスカは、シンジとレイの様子を観察しながらチェシャ猫のような笑みを残し、着替えのために部屋へ向かう。

シンジもいたたまれなくなって、チェロケースを抱えて一旦部屋に戻った。
 
 

 
 

「いってきまーす!」

「いってらっしゃい。気を付けてね。」

何気ない挨拶が家族を実感させる。

アスカは終始上機嫌で家を出た。

「やれやれ、やっと静かになったね。」

アスカを送り出したシンジがリビングに引き返し、レイに声をかけた。

だが、応えは返ってこない。

レイが本気で怒ったとき、彼女から感情は消え、極端に無口になる。

声をかけても、返ってくる言葉と言えば、『そう。』だの『良かったわね。』だの、抑揚のない台詞だけだ。

こうなるとシンジにも手が着けられない。

仕方がないので、読みかけの雑誌を手に取ると、以前のようにレイの横に腰を下ろす。

しばらく無言の時間が流れたが、レイの方が先に口を開いた。

「ねえ、碇君。」

「な、何?」

シンジの声は、ちょっとひきつっている
 
 

「私のこと、好き?」
 
 

シンジは予想外の問いに少しばかりとまどったが、レイに向かって軽く微笑みかけた。

「もちろん、好きだよ。」

「じゃあ、アスカとどっちが好き?」

「同じくらい。」

迷わず、きっぱりと答えた。

「なら、いい・・・。」

そう言ってレイは腕をシンジにからめ、彼にもたれかかると、目を閉じた。

ペンペンが自室から一旦顔を出したが、邪魔をしちゃ悪いかのように再び引っ込める。

しばらくして、もう一度、レイが口を開いた。

「碇君。」

「どうしたの?」

「・・・ありがとう。」

「どういたしまして。」

シンジは雑誌を閉じると、レイの方へ身体を預け、同じように目を閉じた。

そして、二人は安息を抱えて眠りに落ちていった。

互いの存在を、ぬくもりを意識しながら。
 
 

 

「でね、シンジの奴が・・・」

「シンジったらさあ・・・」

「聞いてよ、シンジってば・・・」

アスカのおしゃべりに付き合わされていたヒカリが一つため息をついた。

「どうでもいいけど、最近、碇君のことばっかりね。」

アスカの顔が真っ赤に染まる。

照れ隠しに大声でまくしたてた。

「あ、あいつがだらしないから、私に不満が溜まるのよ!」

「はいはい。で、どうなればいいわけ?碇君が綾波さんを放っといて、アスカにばっかり優しくしてくれればいいの?」

「そんな無神経なことしたら、手加減なしで張り倒すわ!」

冗談ではなさそうだ。

それを聞いたヒカリが心底あきれた声をだす。

「結局、今のままでいいんじゃない。」

「そ、それは・・・」

アスカが口ごもる。

「幸せなんでしょ?」

「うぅ・・・」

「あっきれたぁ。のろけにきたわけぇ?」

「そ、そう言うヒカリはどうなのよ!相変わらず、あの熱血バカに弁当作ってるじゃないの!」

旗色が悪くなったアスカが話題を変える。

今度はヒカリがリンゴになる番だ。

「い、いいじゃないの。私は鈴原が好きなんだから・・・ 」

後半は消え入りそうな声だったが、アスカの耳にははっきりと聞こえた。

今更アスカに隠す必要もないのだが、こうも正直に言われるといささか拍子抜けの感がある。

アスカはこれ以上責めようもないので、話題を変えることにした。

「鈴原とシンジに何があったか知ってる?シンジの奴、転校してからしばらくは気にしてたようだったけど。」

ヒカリは話すべきか否か少し迷っていたが、アスカを刺激しないように笑顔を作ると、次のように答えた。

「ええ、最初のうちは碇君が気にしてたから、一発殴ってやったらおとなしくなったって鈴原が言ってたわ」

アスカの顔色が変わる。

「あのバカ!シンジに手を出したの?!」

「それで元に戻るならいいじゃない。だいたい、アスカこそ学校で碇君ぶつのやめた方がいいわよ。綾波さんが白い目で見てるから。」

「わ、私はいいのよ!・・・それにしても男ってなんであんなにバカなのかしら。」

それを聞いたヒカリが意味有りげに含み笑いを漏らす。

お互いそこが好きなんでしょ?とでも言ってやろうと思ったが、ややこしくなりそうなのでやめた。

ふと、時計の方を見やると、そろそろ夕飯の支度を始めなければならない時間だ。

まだ一人でぶつぶつ言っているアスカに声をかけてみる。

「そろそろ夕飯の支度しなきゃならないけど、食べてく?」

「あ、私はいいわ。シンジが作って待ってるはずだから。」

思わずヒカリが吹き出した。

「なにがおかしいのよ?」

「ごめんごめん。でも、あなたたち本当に夫婦みたいね。」

アスカの顔から火が消えるまで、10分かかった。
 
 
 

 
 

「ただいまー。」

返事はない。

買い物にでも行っちゃったかな?

そう思ってアスカがリビングに行ってみると、ソファでシンジとレイが寄り添って居眠りをしている。

当然、シンジの頭にはアスカのかかとが落ちてくる。

「お、おおぉぉぉ・・・・」

シンジが頭を抱えてうめき声を漏らす。

「なにしてんのよ!あんたたちっ!」

ようやく事態を把握したシンジが間抜けな声を出す。

「ああ、アスカ。おはよう。」

失礼。

まだ彼はよくわかっていないようだ。

「晩御飯はどうしたのよ!私、お腹減った!」

時計の方を指さしてアスカがまくしたてる。

その声でレイが目を覚ました。

「おはよう、アスカ。」

彼女もよくわかっていない。

時計の方をぼんやりと眺めていたシンジは、『まだ6時半じゃないか。今日のアスカは早起きだな』なんてことを考えていたが、ようやく自分の置かれている状況に気が付いた。

「うわあ!まだ買い物もしてないや!ごめん、アスカ!」

「なんですってぇ?!とっとと行って来なさい!」

シンジは必要以上に首を何度も縦に振ると、財布をひっ掴んで玄関に向かう。

その後をレイがちょこちょこと付いていく。

「碇君。私も行く。」

「ちょっと待ちなさいよ。私も行くわ。レイが付いていったら野菜ばっかりになっちゃうじゃない!」

一緒に行きたいのなら、素直に言えばいいのだが、誰にともなく言い訳するのがアスカのアスカたる所以である。

「うん。じゃあ、みんなで行こう。何か食べたいものある?」

「何だっていいわよ。」

あんたの作る物ならね。

「碇君が作ってくれる物なら、何でもいい。」

この場合、口に出せるか出せないかの差は大きい。

・・・はずだが、シンジにはアスカの言いたいことは嫌でもわかる。

それが、家族というものだろう。

なんだかんだ言っても、今のアスカとレイに関してはシンジが一番よく知っている。

アスカに至っては、彼女の両親よりも。

おそらく、世界中で一番。
 
 

「あの、ちょっと恥ずかしいんだけど・・・」

シンジの抗議は議論の余地なく却下された。

彼は護送される罪人よろしく街中を引き回されることを余儀なくされている。

ただ、彼の両脇をかためるのは、いかつい警察官ではなく、美少女が二人、左右の腕を押さえていると言うことだけだ。

それを数人のクラスメイトに目撃され、彼が極悪人扱いされるのは、また別のお話。
 
 
 
 

To be contined
 

つづくかもしれない・・・。
Ver.-1.00
ご意見・ご感想はhide@hakodate.club.ne.jpまで!

<あとがき>

やっぱり始めました。

そう、ベタベタのAfter Story!(笑)

連載みたいな感じじゃなくて、とびとびのお話にするつもりです。

基本的には続きものですけどね。

学園にとらわれず、日常生活を描くような感じで。

学園ってシチュエーションは苦手なんです。

本編がアスカよりだったので、レイよりに・・・と思ったんですが、そう思って書きながらも結局平等な雰囲気になりましたね。やっぱり僕はアスカ人なのか?!

おまけにラブラブにするつもりはなかったんですぅ(笑)。

さらに、長い!!

おそらく僕の最長記録。

今回のBGMは当然、「田○星児」です(笑)。

どっかで見たような展開ばっかりですが、僕の場合、どんなに否定しても結局は他のエヴァ小説が根本にあるようです。

その点はご容赦!
 
 

今回はNC4のHPエディタで書いてみました。

使いやすいんだけど、変換が遅い!


 HIDEさんの新連載『”未来のために” After Story』、公開です。
 

 きちんと色つきが固定してるHIDEさんの新連載(^^)

 あぁ・・・連載開始に1票を投じて良かった・・

 苦しい戦いをくぐり抜けたチルドレン達の幸せ一杯の生活・・
 

 アスカとレイも、シンジを巡る場面では可愛い緊張感が伝わりますが、
 何となく通じ合っているような良い雰囲気ですね。

 素直に気持ちを出すレイと、
 そうしない、そうできないアスカ。

 微妙な関係ですね。
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 貴方のメールがこの様な形になるのです、ガンガン感想を送りましょう!


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