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幸せがどこにあるのか…まだわからない。

だけど…ここにいて、

生まれてきてどうだったのかはこれからも考え続ける。

だけど、それも当たり前の事に何度も気付くだけなんだ。

自分が自分でいるために。

 

 

でもぼくはもう一度会いたいと思った。

その時の気持ちは本当だと思うから

 

 

 

 

 

 

 

 

「二人の補完」

 

  第十話「Death & Rebirth ヒト新生」

 

 

 

「綾波! どこだよ!? どこにいるんだよ!? 綾波!!」

シンジは闇の中を彷徨っていた…。

「ねえ、綾波! 姿を見せてよ! 僕を助けてよ! 僕を一人にしないでくれよ! 綾波〜!!」

シンジは必死の形相で少女の名を呼び続けた。深い闇に少女の名前がこだまする…。だが返事はない…。

「綾波……。」

がっくりと膝をつくシンジ…。

その瞳には深い絶望が宿っていた。

 

 

「呼んだ? 碇君……。」

その時シンジの後方から少女の声がした。

シンジは振り返る。するとそこには第三中学の制服を着た、空色の髪をした少女が宙に浮いていた。 そして宝玉のような赤い瞳でじっとシンジの事を見つめている。

それを見てシンジの目が希望の光で満たされる。

そしてシンジは「綾波〜!!」
と叫んで猛然と少女めがけて駆け寄った。

シンジが空色の髪の少女を抱きしめようとした瞬間、

 

パンッ!!

 

小気味のいい音が闇の中に響き渡った。

シンジは少女に打たれた左の頬を押さえて呆然としている。

そして信じられないようなものを見るような目で少女を見つめて

「どうして……」と呟いた。

少女は赤い瞳に冷たい光を称えてシンジを見つめている。

シンジはその視線に耐えられなくなり、感情を露わにして大声で喚きだした。

「どうしてだよ!? 何で綾波まで僕を拒絶するんだよ!? 僕を迎えにきてくれたんだろう? 僕をアスカから助けにきてくれたんだろう!? なのにどうして…」

シンジはまるで捨てられた子犬のような、すがるような目で少女に訴える。

そのシンジの様を見て少女の赤い瞳に強い嫌悪が浮かびあがった。そして右手を振り上げると今度はシンジの右頬を思いっきりひっぱたいた。

再び小気味のいい音が深い闇の中に響き渡る…。

 

そして少女は

「私を侮辱しないで、碇君。」と呟いた。

 

「侮辱?」

シンジには少女が何を言っているのか分からなかった。打たれた頬を押さえもせずに呆然としている。

「そう、侮辱よ! 碇君。 あの時総てに絶望した碇君が見た少女…あれは私ではないわ。 私は現実に生きる碇君を惑わすような事は絶対にしないわ。 あれは逃げ道を探していた碇君の心が勝手に作り出した幻影にすぎないのよ。 あなたはアスカが自分を受け入れてくれないと知ると今度は私に逃げたのよ。」

「…………………………………………。」

シンジは何も答えない。

「あなたにとっては女性は全て自分が逃げ込むための避難所にすぎないわけね…。 セカンドチルドレンが本気であなたを憎む想いが分かるような気がするわ。 彼女はあなたに自分を女として愛して欲しがっていた。 けど、そんな彼女の想いをあなたは踏みにじってしまったのだから…。 私は同じ碇君に好意を持つ女として、そんな彼女の気持ちがよく分かる。 私だって今の碇君には強い嫌悪しか感じられないから…。」

そう言う少女の赤い宝石のような瞳には、シンジに対する強い嫌悪と激しい怒りが渦巻いていた。

 

それを見てシンジはしばらく俯いていたが

「な…何だよ! 綾波まで僕が全部悪いっていうのかよ!?」

拗ねたような目で少女を見上げて質問した。

 

少女は先ほどとは違う憐憫の眼差しでシンジを見つめると

「全てが全てあなたの責任だと言うつもりはないわよ、碇君。 もちろん、彼女の方にもいろいろ問題はあったと思うわ。 けど、それでもあなたがセカンドチルドレンをああいう風にしてしまったのだけは確かね。 あなたはあなたに対する彼女の不器用な想いを最悪の形で裏切り続けてきたのだから…。」

 

シンジは少女の言葉に耐えられなくなり

「そうだよ! 確かに悪いのは僕だよ! 僕がアスカを傷つけたんだよ! けど、だからってあんなのないよ! アスカは僕に復讐することだけを生き甲斐にして、ずっと僕を苦しめ続けてきたんだ! いくら何でもあんなの酷すぎるよ!」

「そう、よかったわね。」

「何がよかったんだよ!?」

「セカンドチルドレンがあなたを本気で憎んでくれたからよ。 彼女にとってあなたがどうでもいい存在ならきっと彼女はあなたを無視していたと思うわ。 愛情の対極に位置する感情は何だと思う? 実は憎悪ではなく無関心よ。 愛情も憎悪も本来紙一重の違いしか持たないのよ…。 だから彼女の今までのあなたに対する仕打ちは、彼女の彼女なりのあなたに対する不器用な愛情表現の裏返しだとでも思えばいいわ。」

 

シンジは少女の言葉に呆然としている。

シンジには少女の言葉は到底受け入れられるものではなかった…。

やがてワナワナと肩を震わせると

「そんなの………そんなの………絶対に納得出来ないよ……!!」

そう大声で喚き散らした。

 

「そう。」

少女はただ一言肯いただけだった…。

シンジは再び訴えるような目で少女を見つめると

「もう、つらいのは嫌なんだよ! お願いだから僕を助けてよ! お願いだから僕を綾波と同じ所へ連れていってくれよ。 僕を見捨てないでよ! お願いだよ! 綾波!」

そういってシンジは少女に取りすがった。

少女は何も答えない。赤い瞳に冷めた色を浮かべてじっとシンジを見つめている。

 

 

「それじゃ何のために私たちは死んだのかしら? シンジ君…。」

突然後ろの方から聞き慣れた声がした。驚いてシンジは後ろを振り返ってみる。

すると、そこにはシンジの知っている黒髪のセミロングの女性が腕を組んでじっとシンジを見つめていた。

「ミ…ミサトさん!!」

シンジは闇の中から現れた女性をそう呼んだ…。

 

 

ミサトはシンジの目の前までくると正面からシンジを見下ろした。 そして

「アスカがあなたを助けてくれないと分かったら、今度はレイにすがるわけ? あいかわらず進歩がないのね、あなたは…!」

ミサトは吐き捨てるように言うと、侮蔑をこめた目でシンジを見下ろした。

シンジは怯えた目でミサトを見上げている。

「シンジ君! あなた本当にこんな所で終わるわけ!? そんな事あたしは絶対に許さないわよ! それじゃあたしは何の為に死んだのよ!? あなたを苦しめて不幸にするためにあたしは命を落としたというの? あたしがあなたにそうなる事を望んでシンジ君を助けたと本気で思っているの!? 答えないよ! シンジ君!」

ミサトはシンジの胸倉をつかんで激しくシンジに訴えた。

シンジはミサトから目を背けて何も答えない。

その瞬間、ミサトの瞳の中に激しい憎悪の炎が燃えさかった。

 

 

「シンジ君、女性をほったらかしにして一人だけ楽になろうというのは感心できないな…。」

今度は突然、別の闇の中から無精髭を生やした長身の男性が現れた。

「か…加持さん。」

加持は厳しさを瞳に称えてシンジを見下ろすと

「シンジ君。 今、君が逃げたらアスカはどうなるんだい? アスカをあんな状態まで追い込んでおいて、その責任を取らずに自分一人だけ逃げ出すつもりなのかい?、シンジ君。」

加持のその言葉にシンジは耳を塞いだ。

 

 

「そうやって、嫌なことからずっと目を背けて生き続けていくつもりなの?」

加持の後ろから金髪の白衣をまとった女性が現れた…。

「リ…リツコさん……。」

 

 

気がつくと他にもシンジのよく知る…そして二度と会えないと思いこんでいた人物がシンジの周りを取り囲んでいた。

 

「シンジ君、言ったはずだよ。 君は死すべき存在ではないってね…。 だから君はいつまでもこんな所にいてはいけないよ。 早く本来自分のいるべき世界へ還るんだ…。」

少女と同じ赤い瞳をして、彼のことを初めて好きだと言ってくれた銀髪の少年…。

 

「シンジ…、逃げてはいかん!」

彼が捨てられたと思いこんで、ずっとおびえ続けてきた彼の父親…。

 

「シンジ、強く生きなくては駄目よ…。」

そしてエヴァの中で最後までシンジを守り続けてきた彼の母親…。

 

「カヲル君……、父さん……、母さん……。」

皆一様にシンジを取り囲んで、冷たい目でシンジを見下ろしていた。

シンジはその視線に耐えられなくなり

「な…なんだよ!? みんなで僕を断罪しにきたのかよ!? 畜生! もういいじゃないか!  もうつらいのは嫌なんだよ! あんな酷い現実なんかいらないんだよ! 嫌なことから逃げ出して何が悪いんだよ…!?」

シンジは大声をあげて感情を爆発させた。

 

 

すると赤い目の少女は冷たい光をその瞳に称えながら

「そんな事は始めっから分かっていたことじゃないの?、碇君…。」

とシンジに問いかけた。

「!?」

「あなたは総て分かった上で現実に還ったはずじゃなかったの?、碇君…。」

シンジは何も答えない。

 

「ヒトは分かり合えるかもしれないという希望…

けどそれは見せかけにすぎないということを…

それが本当に自分勝手な思い込みだということを…

それが祈りのようなもので、ずっと続くはずはないという現実を…

そしていつかはあなたを裏切り、見捨てられるという結末を…

そうした事を全て覚悟した上であなたは現実へ還ったんじゃないの?

それを理解した上でもう一度会いたいと思った…、そうあなたは願ったんじゃないの…?」

少女はシンジに問いかける。

だがそれでもシンジは俯いたまま何も答えない。

 

「だったら全てはあなたの予測の中の出来事にすぎないはずよ、碇君。

彼女に対するあなたの想いが自分勝手な思い込みにすぎないことも…

彼女があなたに与えた束の間の安らぎがいつまでも続くわけじゃなかったということも…

そしていつかは彼女があなたを裏切り見捨てるということも…

それを全て分かっていて、それでももう一度彼女に会いたい…そう願ったんじゃなかったの、碇君?」

 

シンジは耐えられなくなり、頭を抱えて叫んだ。

「もう、やめてよ! もう許してよ! 綾波〜!!」

 

「いいえ、許さないわ! だって、あなたは私でなく彼女を自分の意志で選んだのよ…。なのに……。」

シンジは顔を上げた。そしてハッとする。

そこにはシンジがはじめて見るものがあった…。

空色の髪の少女は泣いていた。

宝玉のような赤い瞳から涙がこぼれ落ちていた。

 

「私は碇君と一つになりたかった…。 二人目の私がその想いに気づいた時、私ははじめて涙というものを知った。嬉しかった。 人形だった私がはじめて感情というものを得られたことが…。 けど二人目の私はその想いをあなたに伝えることなく死んでしまった…。 だけどその二人目の私の想いは三人目の私にも受け継がれていたのよ、碇君…。」

シンジは黙って少女を見つめている。

シンジの胸の中には先ほどとは違う感情が渦巻いていた。

「だから私はあの時、碇君と一つになれて本当に嬉しかった。 叶うことなら全てを振り捨ててでもずっとあなたと一緒にいたかった。 けど最終的にはあなたはそれを拒絶した…。 あなたは、決して誰にも傷つけられることのない虚構の世界で生きる事を…、私と一緒に永遠の安息の中で生きる事を拒否したから…。
それよりも、総てのつらい現実を覚悟した上で、そしてほんのわずかな限られた短い時間しか生きられない事を受け入れた上で、それでも彼女と共に生きることをあなたが自分の意志で選んだから…。」

少女は本当に口惜しそうな悲しい目をして少年に訴えた。

 

「そしてそれが正しいことだというのも理解できた。 二人目の私はあなたと一つになることよりも、あなたを守ることを選んだのだから…。 だから私は補完の女神であるリリスの使命を捨ててでも…、そしてあなたに対する一人の少女としての想いをかなぐり捨ててでも、もう一度あなたに現実を与えたのよ…。 そしてあなたが望んだ彼女に、もう一度生命と未来を与えたのよ。 それがあなたの望みだと分かっていたから…だから私は黙ってあなたの前から消えたのよ。 なのに碇君。 あなたは…、あなたは…、そんな私の想いを侮辱したのよ!」

少女は嗚咽を漏らした…。

 

「私は綾波レイよ! リリスである前にこれでも心を持った一人の少女なのよ! 私はあなたの女神なんかじゃないわ! 碇君!」

かつての人形のような様が嘘のように感情を露わにするレイ。

それを見て銀髪の少年がそっとレイの肩に手を置いた。

 

シンジはそんなレイの姿がいたたまれなくなり目を背けた…。

自分が、母のように…女神のように慕って、すがりついていた目の前の少女が、実は傷つきやすい乙女心を持った普通の一人の女の子であることを思い知らされていた。

そして、こんな世界に来てまで自分が再び他人を傷つけてしまったことを思い知らされて、自分自身がやりきれなくなった。

 

レイは顔をあげると再びシンジを正面から赤い瞳で見つめて

「碇君…。もう一度あなたの現実を生きてみる気になったかしら?」

そうシンジに問いかけた。

 

シンジは黙って俯いていたが、やがて
「ごめん…」と呟いて顔を背けた。

 

「どうしてなの?」

今度はミサトがシンジに問いかける。

するとシンジは顔をあげて大声で叫んだ。

「僕には…僕には…現実へ還る資格なんてないんだ! 幸せになる資格なんてもっとない! そうさ、僕が総て傷つけたんだよ! アスカを傷つけたのも僕だよ! トウジの足を奪ったのも僕だ! カヲル君を殺してしまったのも僕だ! そして今なおこんな所でさえ再び綾波の心を傷つけたんだ! それに何よりサードインパクトを発生させ多くの人間を殺したのもみんな僕がやったんだ! そうだよ! アスカの言っていることはみんな正しかったんだよ! 僕は本当に最低の人間の屑なんだよ! 僕には他人を傷つけることしか出来ないんだよ! これから現実へ還ったって再びみんなを傷つけるだけなんだよ!」

シンジは目に涙を溜めて泣きながら、そう周りにいるみんなに訴えた。

 

ミサト達は何も答えない。皆それぞれの瞳にそれぞれの思惑を称えてシンジを見下ろしいる。

 

「そうだよ! なのにあんなに多くのヒトを傷つけたのに僕は今でも自分が救われることしか考えていないんだ! 僕は本当にそんな自分が嫌いなんだ! 世界中の誰よりも憎いんだ! だからこれが当たり前なんだよ! 僕なんか死んで当然なんだよ! 誰からも必要とされず誰からも愛されずにみじめに朽ち果てて死んでいくのが今の僕には本当にお似合いなんだよ!」

シンジは吐き捨てるような口振りで、そう自分自身を断罪した。

 

すると突然ミサトがシンジの正面に現れると、いきなりシンジの胸倉をつかんだ。

シンジはミサトの顔を見上げてハッとする。

ミサトの瞳の中にはシンジに対する激しい怒りと憎悪が渦巻いていた。

「最後の一言はチョッチ気に入らないわね、シンジ君…。 あなたが自分をどれだけ卑下しようとそれはあなたの勝手よ。 けど、だからといってあたし達のあなたに対する想いまで貶めるのは絶対に許さないわよ! あんたが誰からも愛されなかったですって!? あんた本気でそんな事思っていたの!? ふざけんじゃないわよ! あたし達は何の為に死んだっていうのよ! ここいにる人間はみんなあなたの為に……。」

ミサトの目には涙が溜まっていた。

 

そしてミサトがさらに先を言おうとした時、見かねた加持がミサトの肩を掴んだ。

「そこまでにしておけよ、葛城…。」

「だ…だって、加持君。」

加持は深みのある目で、興奮するミサトと項垂れたシンジを見つめると

「俺達がシンジ君にどんな想いを託そうとそれは俺達の勝手だが、シンジ君がその想いを全て受け止めなければならない義務はないさ…。 そして何よりも、そんな俺達がシンジ君に無理矢理背負わせた俺達の手前勝手な願望こそが、シンジ君をここまで追いつめてしまったのかもしれないしな…。 シンジ君の人生はシンジ君自身のものだ! だから生きるも死ぬもそれは最終的にはシンジ君が自分で決めることなんだ! 本来ならこうして俺達が横から口出しするような事じゃないんだ!」

加持の厳しい視線にミサトは沈黙した。

 

加持はレイの方を見る。

するとレイはこくっと肯いて左手を高く上げた。

するとシンジの目の前にいきなり重々しい扉が出現した。

中央に十字架を型どった紋章が描かれており、この闇の中で一段と禍々しい雰囲気を醸し出しいた。

呆然とするシンジ…。

シンジにはなぜか扉の中央の十字架が死神のイメージとして浮かび上がってきた。

 

レイは扉の前に立ってシンジを悲しそうな目で見つめると

「もう何も言わないわ、碇君。 あなたにとって現実が本当につらいだけのものでしかないのなら、もう苦しまないでいいようにあなたを楽にしてあげるわ。」

そのレイの言葉にシンジは顔をあげる。

シンジの瞳の中に安堵めいたものが浮かびあがってくる…。

それを見て側にいたミサトは眉をしかめたが何も言わなかった。

 

レイは扉のノブ部分を指さして

「この扉の向こうは別の世界に繋がっているわ。そう、私や葛城三佐などが住む世界…。それが何を意味するのかは言わなくても分かるわよね?」

シンジは黙って肯いた。

「あなたがもし本当に自分に生きる価値がないと思いこんでいるのなら、この扉を開けなさい。そうすればあなたは楽になれるわ。」

シンジはその言葉に吸い込まれるように扉へ近づいていき、そして扉のノブに手を掛けようとした…。

それを見てミサトがシンジに念を押すように付け加えた。

「ただし一度開けてしまったらもう取り返しはつかないわよ。 たとえあたし達と一緒の世界へ来たことを後で死ぬほど後悔したとしても、もう二度と元の世界に還ることは出来なくなるわよ! 本当にそれでいいのね? シンジ君?」

そのミサトの言葉に、シンジは思わず反射的にノブへ伸ばした手を引っ込めた。

そしてシンジの瞳の中には困惑の色が浮かんできた。

 

しばらく迷っていたがやがておずおずとした目で周りを見回すと

「ね…ねぇ…、ぼ……僕はどうしたらいいと思うの………?」

とまるで母親とはぐれた子犬のような心細い声でみなに問いかけた。

「…………………………………。」

みな何も答えない…。ただ黙ってシンジの行動を見守っている。

「ねぇ、答えてよ! 教えてよ! 僕は…僕はどうすればいいんだよ! みんな、教えてよ!」

 

「それはシンジ君が自分で決める事だ!」

加持は再びそう宣言した。

「か…加持さん!」

 

加持はシンジの正面まで来てシンジを見下ろすと

「もう俺達は何も言わない。もう一度現実を生きようと、その扉をくぐって俺達の所へ来ようとそれはシンジ君の勝手だ! ただし、それはシンジ君が自分の意志で決めるんだ! それだけは絶対に譲れない!」

加持は顔全体に厳しさを漂わせてそうシンジを諭した。

シンジは加持の迫力に気圧されて思わず顔を背けた…。

 

すると加持はまるでシンジの張りつめたものを解くように表情をくずすと

「まあ、そんなに急いで結論を出すことはないさ。 時間はいくらでもあるんだから一人でじっくりと考えてみることだな。 自分がどうすべきなのか…。 本当に君はいらない人間なのかどうか…。 いくら時間をかけてもかまわない。 ただし答えは必ず自分で見つけるんだ。いいね、シンジ君?」

「………………………………。」

加持は暖かみのある笑顔でシンジにそう問いかけたがシンジは何も答えなかった。

 

加持は表情を引き締め直すと

「それでは俺達はシンジ君の考えの邪魔にならないように一旦消えるとしよう。 いいかい、シンジ君。 俺達は道を示した。 だがこれからどうするかは君が自分で考え、そして自分で決めるんだ。 自分が何をすべきなのか、まぁ、後悔のないようにな…。」

そう言うと、加持は突然シンジの目の前から闇の中へ吸い込まれるように消えてしまった…。

そしてそれが合図となったように、シンジを取り囲んでいた人達が一斉にシンジの前から消えていった。

そして後には深い闇の中でシンジと十字架を型取った扉だけが残された。

 

 

シンジはやや呆然としていたが急に怯えだして

「ま…待ってよ! 僕を一人にしないでくれよ! ねぇ、教えてよ! 僕はどうしたらいんだよ? ねえ、誰か教えてよ!」

シンジは大声で叫んだが返事はない…。

「ねえ、助けてよ! 僕を見捨てないでよ! 父さん! 母さん! ミサトさん! 加持さん! リツコさん! カヲル君! 綾波……」

シンジは泣き叫んで、先ほどまでシンジを取り囲んでいた人達の名前を呼び続けたが、誰も再びシンジの前には姿を現さなかった。

「助けてよ……ううう……ひっく……うううぅ…。」

しばらく深い闇の中ですすり泣くシンジの嗚咽の音だけが響きわたった。

 

 

 

シンジは泣き疲れるとしばらく呆然としていたが、やがて何かを決意したように猛然と扉のノブに向かって手を伸ばしはじめた…。

だがまだ躊躇いがあるらしく、あと少しでノブをつかめるという所で怯えたような表情をして手を引っ込めてしまった…。

 

それからしばらくの間シンジは扉のノブに手を出しては引っ込める…。そればかりを延々と繰り返していた。

わずかな決意を瞳に称えて扉に近づいては、すぐに怯えた表情をして扉の前から離れてしまう。その繰り返し…。

何百回とその動作を繰り返していたが、やがて永久機関めいた自分の行動をシンジは自嘲した。

「ははっ…、結局僕は誰かが背中を押してくれないと死ぬ決意さえも出来ないんだ。 もう一度現実を生きる希望もなく…だからって死ぬ勇気さえない…。 本当に出来損ないの僕にお似合いの末路だな…。」

 

「もう何もかも疲れた…。 もう何もしたくない…。」

シンジは扉の前で膝をかかえて座り込むと、目を瞑りそこで思考を完全に停止させた…。

 

 

 

 

 

 
















 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからどのくらい時間がたったのだろう……。

シンジは扉の前で座ったまま、ずっと俯いている。

だがわずかにシンジに変化が見られた。

シンジは今、かつて自分がすがりそして自分を裏切った少女の事を考えていた。

 

アスカ……。

思えば悲しい娘だったな…。

自分にはない太陽のような輝きを持つ少女…。最初はそう思っていた。

明らかに背伸びしながらも自分を他人に認めさせるために精一杯努力していた。

そんな彼女の前向きな生きる姿勢に僕は憧れていた。

けど、エヴァとシンクロ出来なくなってから彼女は変わっていった…。

エヴァに乗ることだけに自分の価値を見いだしていた少女はエヴァとシンクロ出来なくなった時、自分の価値を信じられなくなり自分の心を殺してしまった…。

なぜ、そうなったのか?

たぶん、アスカは他人の無償の愛というものを信じられなかったのだろう。

自分に他人を認めさせるだけの価値がなければ誰も自分を愛してくれない…。

明らかにアスカはそう思いこんでいた。

愛というものを知らない少女…。

誰からも愛されずに育った子供…。

僕と同じだ…。

今ならそんなアスカの想いが分かるような気がする。

アスカが僕を憎むのは本当に当然のことなんだろう…。

だって、そんなアスカがたった一つ縋っていたエヴァという絆を、僕は粉々に打ち砕いてしまったのだから…。

翻ってみて僕自身はどうなのだろう?

僕もアスカと同じように誰からも愛されない悲しい子供だったのだろうか?

 

 

 

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シンジは何度も何度も自分に問いかけた。

気の遠くなるような時間その事だけをずっと考え続けた。

 

 

 

 

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……………………………………………!!

 

 

そしてやがて一つの結論に達した…。

 

 

 

違う! 違う! 違う!

 

どうして今までそんな事を考えていたのだろう?

どうしてこんな簡単な事に気がつかなかったのだろう?

確かに今まではそうだったかもしれない…。

14年間生きてきて、本気で僕のことを心配してくれた人間なんて一人もいなかったのかもしれない…。

けど第三新東京都市にきてから全ては変わったんだ!

そこで僕ははじめて僕を認めてくれる人達に出会ったんだ。

 

 

その時シンジは立ち上がった。

シンジの瞳には今までにない何かが宿っていた…。

それからシンジは再び自分の人生を邂逅した…。

何もなかった14年間の虚しい日々をではない。

わずか半年にも満たない短い期間であったが、今までの14年間の自分の半生をはるかに凌駕する密度をもった第三新東京都市にきてからの生活を…そしてそこで出会い自分を支えてくれた人達を…。そして何よりも最も彼の心に近づいた蒼い瞳の少女のことを…。

 

 

 

アスカ…。

他人の愛を信じられなかったかわいそうな子供…。

現実に裏切られ自分の価値を信じられなくなり、自分の殻の中に逃げ込んでしまった哀れな少女…。

一度は偽りの再生を果たしたけど、サードインパクト後「気持ち悪い」の言葉を残して再びアスカは自分の中へ逃げてしまった…。

けど、逃げた先にもたぶんいいことはなかったんだと思う。

夢の中のアスカは毎晩のようにうなされていた。

そしてアスカは再び現実に還ってきた。

僕を憎むことによって…。

なぜそんな悲しい想いでしかアスカは現実と自分をつなぎ止められなかったのか?

 

僕のせいだ!

たとえ僕がアスカの言うような出来損ないの屑だとしても、それでもアスカを愛することぐらいは出来たはずなんだ!

たとえ他人に提供できる特別な何かをもっていなかったとしても、それでもヒトを愛することだけは出来たはずなんだ!

無償の愛!

何らの価値さえも必要としない特別な想い…。

それさえあればアスカは壊れずにすんだんだ!

本当に僕のせいだ!

 

僕は今まで自分が愛されることばかり望んで、自分から他人を愛そうとしなかった…。

自分には他人を愛することなんてできるはずはないと勝手に思いこんでいた。

だって、自分は愛というものを知らなかったから…、他人に愛されたことがないかわいそうな子供だとずっと思いこんでいたから…。

冗談じゃない!

僕はただそうやって逃げていただけなんだ!

今なら分かる…。

現実に苦しむアスカの姿を見ていれば僕がいかに他人に甘えていたか…、そして自分がいかに愚かだったかよく分かる。

 

僕は自分が誰からも愛されない、必要とされないいらない人間だと思いこんでいた。

けど違ったんだ。本当はみんな僕の事を愛してくれていた、守ってくれていた。

ただ僕がそれを拒絶していただけだったんだ。

他人を受け入れるのが怖かったから、ただ逃げていただけなんだ。

 

 

 

シンジの目から涙がこぼれ落ちた。

そして再びシンジは邂逅する。

彼を守るために命を散らした想いでの人々を…。

その時にはすでにシンジの瞳には今までにない強い生きる希望が宿っていた。

 

 

 

ミサトさん…。

ミサトさんは父親から捨てられたと思いこんで落ち込んでいた僕を引き取って、あらん限りの愛情を持って僕に接してくれた。

こんな僕にやさしさをもって接してくれ時には本気で僕を叱ってくれた。第十二使徒に取り込まれた時も初号機からサールベージされた時もミサトさんは泣いて僕を迎えてくれた。

僕の為に本気で涙を流してくれたんだ。

僕が総てに絶望して無気力になった時も僕を見捨てずに命がけで僕を助けてくれた。

「あんたまだ生きてるんでしょう! だったらしっかり生きて、それから死になさい!」

そう、ミサトさんはきさくなお姉さんを捨ててまで、僕に怖がられてでも、そして自分の手を血で汚してでも僕を助けてくれたんだ。

それなのに命がけで自ら汚れてまで僕を守ってくれた人の愛に僕は最期まで気づかなかったんだ。

馬鹿だよ。本当に僕は愚かだよ。

ごめんなさい、ミサトさん。 そして、ありがとう、僕のやさしいお姉さん。

 

 

 

加持さん。

僕が憧がれた人。

スマートでたくましくて、やさしさと包容力をかねそろえたネルフで一番大人の人間だと思った。

僕も何度か加持さんに自分の悩みについて相談してもらった。加持さんは面倒くさがらずに僕の悩みに正面から答えてくれた。

第十四使徒に襲われた時も悩んでいる僕の背中を押して進むべき道を示唆してくれた。

本当に懐の深い人だった。アスカが憧れるのも無理はないと思った。

僕自身、加持さんの中に父性を見ていたかもしれなかった。

けど加持さんも逝ってしまった。加持さんにはもっと聞きたい事があったのに…、もっと教えてほしいことがたくさんあったのに…、

けど生きていたとしても加持さんならきっとこう言うんだろうな。

「自分で考え自分で決めろ。真実はつねに自分で見つけるんだ」

今ならそんな加持さんの想いがわかるような気がする。今なら加持さんの示した道を継げそうな気がする。

ありがとう、加持さん。 僕の頼りになるお兄さん。 もし天国が存在するのなら今度こそミサトさんと一緒に幸せになってください…。

 

 

 

綾波…。

母さんの面影を持つ少女。それもそのはずだった。綾波は母さんのクーロンだからだ。

「ごめんなさい。こんな時どんな顔をしたらいいか分からないの」

「笑えばいいと思うよ。」

初めて彼女の笑顔を見たときから僕は彼女に惹かれていった。初めは人形みたいな変なヤツだと思っていた。なんで父さんに贔屓されるのか分からなかった。だけど僕と接しているうちに少しずつ人間らしい、そして女の子らしい感情を見せる彼女に僕は夢中になった。

 

「これが涙? 泣いているのは私? これが私の本当の気持ち? 碇君と一つになりたいという私の気持ち…、駄目…!」

綾波は使徒と自爆して死んだ。僕を守る為に…。

そして再び現れた綾波に僕は恐怖した。

愚かだった。自分を命がけで守ってくれた綾波を拒絶するなんて…。

死ぬことさえ出来ない、そして人として生きていく事さえ出来ない彼女の苦しみに比べたら僕の悩みなんて論議にも値しない甘えにすぎなかった。

 

「私はあなたの人形じゃないわ!」

「頼む! 待ってくれ レイ!」

「駄目! 碇君が呼んでいる!」

綾波は三度僕の前に現れた。リリスという名の異形な姿を以て。これが綾波なの!? これが僕が好きだった綾波レイの本当の姿なの!? 現実を認めるのが怖かった。アレを綾波だと認めるのが怖かったんだ。綾波は僕を助けにきただけなのに…。父さんを捨てて、人の形を捨ててまで…、そう僕の望みをかなえにきただけなのに…、あんな事を願ってしまったのは僕が弱かったせいだ!

「どんな姿でもたとえ人でなかったとしても綾波は綾波だよ」
と言える心の強さがあればサードインパクトは起こらなかったんだ!

 

綾波は強かった。父さんの道具として育てられ、それ以外の生き方など知らなかったはずなのにそれを拒み、自らの意志で自分の進むべき道を選択した。そして人の形を捨ててまで最期まで僕に殉じてくれた。

「あなたは死なないわ。私が守るもの…」

あの時の言葉を実証するかのように…。

綾波の心の強さに比べてなんと自分の心は弱かったことか…、綾波の一途さに比べてなんと自分の心は貧しかったことか…、

最期に綾波は消えてしまった。

死んだと表現していいのかどうかは分からないけど本当に消えてしまった。

 

さようなら、綾波…。

君が僕に見せてくれた君の強さと笑顔を僕は絶対に忘れない。君のことを忘れない限り僕は前より少しは強くなれると思う。もしまた巡り会う事があったら今度こそ本当の人間として生まれ変わって再びあの笑顔を僕に見せてほしい。

綾波…、君の体は人間のものではなかったとしても、君の心は…、君の魂は紛れもなく人間のものだ。

そうだ…、君は人間だよ。いまなら言える。たとえ世界中の総ての人が君を化物だと罵ったとしても、僕だけは誇りを持って君を守ってあげるよ。

綾波は誰よりも強く、そして誰よりもやさしい普通の女の子なんだってね!

さようなら…綾波…。 そしてありがとう…、僕のもう一人の母さん…。

 

 

 

カヲル君…。

はじめて僕のことを好きだと言葉で言ってくれた人。

「ガラスのように繊細だね。君の心は…、好意に値するよ。」

「好意…?」

「好きってことさ…」

 

彼が使徒だと知った時、僕は自分が彼に騙されたと思った。 裏切られたと思った。 けど違ったんだ…、カヲル君は僕を騙したわけでも裏切ったわけでもなかったんだ。 好きという気持ちは本当だった。 僕たちの間に憎しみはなかった。 ただ共存することが不可能だっただけなんだ。 人間と使徒では…。

 

「さあ、僕を殺してくれ。でなければ君たちが死ぬことになる。滅びの時を免れ未来を与えられる生命体は一つしか選ばれないんだ。そして君は死すべき存在ではない。」

カヲル君は本当に僕を好いてくれていたんだ。 性別や種族を超えて…。彼が死を選んだのは僕のいない世界を生き残ることに何の意味も見いだせなかったからだと思う。 そして僕がカヲル君を殺したのはこの戦いがすでに僕とカヲル君の二人だけの問題ではなかったから…、僕個人の感傷で人類の未来を消すなんてできなかったからなんだ…。 その結果僕は決して失ってはならない大事なものを失ってしまった。 カヲル君の死はボロボロに弱りきっていた僕の心に止めを刺した。

 

だけどカヲル君は再び僕の前に現れた。 彼はリリスの中にいた。 嬉しかった、再び彼と巡り会えた事が…。 嬉しかった、一度失ってもう二度と手に入らないと思っていたものを取り戻せたことが…。

カヲル君は自分を希望だといった…。 人は再び分かり合えるかもしれないという…。

そう、人間と使徒との間でさえ共存できないにしても心を交わすことができたんだ。 同じ人間同士で分かり合えないはずなどないんだ。 たとえATフィールドが再び僕を傷つけたとしても…。

「生と死は等価値なんだ、僕にとってはね。 遺言だよ。 ありがとう、君に出会えて嬉しかったよ。」

僕もカヲル君に出会えて嬉しかったよ。 好きだといわれた時は本当に嬉しかった。

そうだよ、黙っていたって気持ちは伝わらないものなんだ。 言葉で言わなきゃ分からないものなんだ。 誰も僕のことをわかってくれない。 当然だ、僕が言葉で説明しなきゃ分かるはずはないんだ。 まず自分が心を開かなきゃ相手だって開いてくれない。 本当に当たり前のことなんだ。

カヲル君に出会ったおかげて今ならその当たり前だけど、とっても大事な事がわかったような気がする。

ありがとう、カヲル君。 ありがとう、僕の希望…。

 

 

 

父さん…。

結局最後まで何もしてくれなかったね。

その事を今更恨むつもりはないよ。 父さんは本当に母さんの事が好きだったんだね…。 決して失ってはならない大事なものを失ったから、総てを犠牲にしてでももう一度会いたかったんだね…。

 

父さん…、本当はとても不器用な人。 本当は僕から逃げていただけの誰よりも心の弱い人。 僕と同じだ。 僕も心が弱かったからあんなとんでもない事をしてしまったんだ。 父さんの心の弱さを詰る資格は僕にはない。

 

「この時を再び待っていた。ようやく巡り会えたな。ユイ。」

「シンジが怖かったのね…」

「俺が側にいるとシンジを傷つけるだけなんだ。だったら何もしないほうがいい。」

「私が人に愛されるなど信じられない。自分にその資格はない。」

「ただ逃げていただけなんだ。自分が傷つく前に世界を拒絶していただけなんだ。」

「その結果がこの有様か…、すまなかったな シンジ…」

 

父さんはもう一人の僕だ。

僕を怖がり、自分が傷つけられる前に僕を拒絶した。 その結果、僕は本当に傷つけられた。 けど僕もそうだった…。 父さんが僕にしたことと同じことを僕がアスカにしていたとすれば、僕はどれほどアスカの事を傷つけていたんだろう…。

馬鹿だな…。 本当は好きなのに…、好きだと言葉で伝えれば分かり合えたかもしれないのに…。 その可能性を自分で閉ざしたんだ。 父さんのように…。

 

僕と父さんとは結局最後まで分かり合うことは出来なかったけど…、僕とアスカとはまだ手遅れじゃないよね…。

父さん…。 父さんが母さんを失ったように僕も今最愛の人を失った…。 僕自身の心の弱さから…。

けど僕は必ずもう一度アスカを取り戻してみせる!

父さんとは違ったやり方で…、

そして必ず幸せになってみせる!

その時には母さんと一緒に祝福してくれると嬉しいな…。

 

さようなら、父さん。

本当に何もしてくれなかったけど、最後の言葉は嬉しかったよ。

ありがとう、父さん。 そしてさようなら、母さん。

 

 

 

 

 

 

シンジはそこで邂逅を停止した…。

だがシンジの心はすでに温かい想いで満たされていた。

シンジは何かを決意するように扉から背を向けた。

その時のシンジの瞳に迷いはなかった…。

 

 

 

 

こうして考えてみると、本当にたくさんの人が僕の事を支えてくれていたんだな…。

それなのに僕はそれに気づかずに、その人たちの好意に甘えて、そして大事な人たちの想いを傷つけていたんだ。

馬鹿だったな…。

僕はもう自分がいらない人間だなんて思わない。

そんな事を考えること自体が、僕を命がけで守ってくれたくれた人たちの想いを嘲笑することになるからだ。

僕は不幸だって? 冗談じゃない!

父さん、母さん、ミサトさん、加持さん、綾波、そしてカヲル君…。

自分の命を捨ててまで僕を愛してくれ人たちがこんなにたくさんいたというのにどうして不幸だっていうんだ。

それに死んだ人たちだけじゃない。 冬月さんも日向さんも青葉さんもマヤさんも僕たちの事を守ってくれている。 エヴァのない今もう僕に利用価値なんてないはずなのに、それでも日本政府を敵にまわして僕たちの安全と自由を守るために全力を尽くしてくれている。

トウジ、ケンスケ、洞木さん。 僕やアスカを対等の友人として見てくれる親友がいる。

そして僕にはアスカが、今ならハッキリと好きだと言える最愛の女性がいる。

 

もう迷わない! もう絶対に逃げたりしない!

確かに僕の手は血で汚れている。 心の弱さゆえに僕が犯した罪は決して許されるものじゃない! 僕には幸せになる権利なんてないのかもしれない。 けど僕がそれを引きずれば、そしてそこから逃げ出せば、僕に好意を抱いてくれている多くの人をまた傷つけることになるんだ。

 

人は他人を完全に理解することは出来ない。 だから死んだ人達の心を完全にはかることなど出来るわけはない。

けど、それでもミサトさん達がどんな想いで自分の命を捨ててまで僕を助けてくれたかぐらいはわかる。 きっと僕に幸せになってもらいたかったからだ。 決して重い業を背負わせ一生苦しませるためなんかじゃない。 そんなことを考えること自体がミサトさん達の人格と好意と命がけの行動を侮辱することになるんだ! いくら僕が馬鹿でもその程度のことはわかる。

もし僕が自分の罪を儚んで自殺を決意して、あの扉をくぐってミサトさん達に会いにいったらどうなるだろう?

喜んでくれるだろうか?

いや、きっと思いっきりひっぱたかれて泣いて罵られるだろう。

「シンジ君! あなた、自分が何をしたかわかってるの!? あなたはあたし達が命がけでやったことをまったく無意味にしてくれたのよ! 返してよ! あたし達の人生を返してよ! 許さない!あたし達はあたし達の一生を嘲笑したあなたを永遠に許さない!」

まず間違いなくそう言われるだろうな…。 今なら本当にその事がよくわかるよ…。

 

そうだ! 僕の命は…僕の一生はもう僕一人のものじゃないんだ。

僕には僕を愛し守るために死んでいった人たちと、生きて僕のことを見守ってくれている人たちに対して責任があるんだ。

 

けど…僕にいったい何が出来る?

無力な僕に何が出来る?

無力か…。 かつての僕は無力ではなかったんだよな。それなのに僕は何もしなかった。みんなを守れる力を僕は持っていたはずなのに何も出来なかった…いやしなかったんだ!

その結果がこの有様か…。

たくさんの親しい人を永遠に失い、今なお僕に負い目を感じている大人達に負担をかけている。

 

自分が憎い。

僕の大切な人を見殺しにした自分を殺したいほど憎い!

生きているのがつらい。

けど生きることから…自分の罪から逃げることは許されない。

もうこれ以上罪をかさねることは…まだ生きている大切な人たちを傷つけることは絶対に許されないんだ!

 

今の僕は無力だ。

何もない。

けどそれでも生きている。

僕はまだ生きているんだ!

 

「あんたまだ生きているんでしょう! だったら精一杯生きて、それから死になさい!」

 

そうだ。精一杯…、一生懸命生きること!

今の僕に出来ることはそれしかない!

今は何も出来ない…、

けどいつか誰かを支えられるぐらい強くなれるかもしれない…。

そのためにはまず自分を支えられように自分を変えていかなきゃならない。

そうだ! 自分を支えられない人間が他人を支えることなど出来るはずはないんだ!

それはかつての自分を見ればよくわかる…。

神にも等しい力を得ながらも、結局誰一人救うことが出来なかった弱い自分を見れば…。

まずは自分を好きになることから始めよう。

僕は自分が嫌いだ。

だから他人を好きになれないんだ。

時間はかかるかもしれない。

けど自分を変えていかなきゃ…いつまでたっても僕は今のままなんだ!

僕は本当に自分が嫌いだ!

だったら嫌いな自分を一つずつ消していこう。

そうやって自分の嫌いな所を一つずつ直していけば、僕はいつかは自分を好きになる事が出来るかもしれない。

そして他人を好きになれるかもしれない。

そうだ、僕はここにいてもいいんだ!

 

 

 

「え!?」

その瞬間、世界が変化した。

シンジを覆っていた闇は消滅して、明るい光がシンジの視界に射し込んできた。

シンジの後方にあった扉は何時の間にか消滅していた。

 

 

そしてなつかしい人々が再び姿を現して、心からの笑顔でシンジの周りを取り囲んで、シンジを祝福した。

 

 「おめでとう。」

ミ…ミサトさん。

 

 「おめでとう。」

加持さん。

 

 「おめでとう。」

リツコさん。

 

 「おめでとう。」

綾波…。

 

 「おめでとう。」

カヲル君…。

 

 「おめでとう。」

母さん…。

 

 「おめでとう。」

と…父さん…。

 

 「「おめでとう。」」

ありがとう…。

 

シンジは微笑んだ。 彼がはじめて見せる心からの感謝の笑顔で…。

 

 

 

そして一同を代表するようにミサトがシンジの正面に現れ、心からの祝福の笑顔でシンジを見下ろした。

「シンジ君、おめでとう…。あなたは今とっても大切な事に気づいたのよ…。 そう、あなたがこれから生きていく上で最も大事なことに…、本当におめでとう、シンジ君…」

嬉しそうなシンジの顔を見てミサトは顔をほころばす…。

 

だが次の瞬間にはミサトはやや憂いを帯びた表情をすると

「けど、だからこそ一つ忠告させてもらうわ…。あなたの決意に水をさすつもりはないけど、これで現実に還ったら総てが解決するなんて思わない方がいいわよ…。」

その言葉にシンジはビクッとした。そしてわずかだがその瞳に戸惑いの色が浮かんできた。

 

「言ったでしょう。 あたしの人生はぬか喜びと、自己険悪の繰り返しだって…。 “思う事”と“実際にそれをする事”との間には天と地以上の開きがあるのよ。 ヒトが心の中で抱いた希望と、そして現実の姿の間には、本当に大きな隔たりがあるのよ。
そして人間は心の中で決意したことを、十分の一も現実の世界で実行することは出来ないわ。
だからあなたはきっとまた何度でも同じことを繰り返してしまう…。
それが人間というものなのよ、シンジ君。」

 

「………………………………………………。」

シンジは何も答えない。

 

「特にシンジ君、あなたは純粋すぎるわ…。
だからあなたは誰よりも世の中の…、他人の…、そして何よりも自分自身の醜悪さに耐えきれず目をそむけてしまう傾向が強いのよ。
だからきっとあなたはまた何度も疑ってしまうと思う…。
自分の存在意義も、そしてアスカに対する想いさえも…」

シンジは黙ってミサトの話を聞いていたが、その瞳にはだんだん迷いの色が濃くなってきた…。

 

そんなシンジの態度を見て、ミサトは今度は慰めるように暖かく微笑むと

「けど、だからといってあなたが気づいたことは決して無駄なことではないわ…それはあなたが自分で決めたことだから…。
あたしはこうも言ったわよね。
それでもそうやって同じ過ちを繰り返しているうちに、一歩一歩前へ進めたような気がするって…、
たとえどんな事でも自分で決めたことなら…、そしてそれを自分の意志でやりとげられたなら、それは本当に価値のあることなのよ…」

「ミサトさん……。」

「だからシンジ君。 まずは自分で悟ったように、自分をしっかり支えられるよう強くなりなさい…。 今のあなたにはアスカを支えることは出来ないわ。
けど、何年かして自分を支えられるくらい強くなれれば、その時こそ本当にアスカの全てを受け止めてあげられるようになれると思うわ。
生きることも…、アスカのことも…、総てはその最初の一歩からはじまるのよ…」

シンジは顔をあげてミサトを見上げた。

そして

「はい!」

と大声でミサトの想いに答えた。

その時のシンジの瞳に迷いはなかった…。

 

それを見てミサトは思わずシンジを抱きしめた。 ミサトの瞳からは涙がこぼれていた…。

「ごめんなさいね…、シンジ君。 本当はまだ強くなんかならなくたっていいのよ…。 だってあなた達はまだ14歳なんだから…。 本当はもっと親元で甘えていていい年齢のはずなのに…。 本当にごめんなさい…。 私達があなた達にこんなつらい道を歩ませてしまったのね…。」

そう言ってミサトは嗚咽を漏らしたまま、強くシンジを抱きしめた。

「ミサトさん……。」

「けど、わかって…。 それでも私達はあなたに想いを託すしかなかったのよ。 それがあなたを縛りつけ苦しめている楔だという事も知ってる…。 本当に私達の勝手な思い込みだということもわかっている。 けど、お願いよ、シンジ君。 信じさせて…。 私達がやってきたことは、決して無駄ではなかったということを…。そして私達が守ったモノには…、私達の一生には…本当に命を懸けるに値しただけの意味があったということを、私達に信じさせてちょうだい。 あなたのこれからの人生でそれを証明して見せてちょうだい。 お願いよ、シンジ君。」

 

シンジはミサト達の自分に対する強い想いを感じ取って顔を上げた。

その時のシンジの瞳の中には今までにない強い意志が宿っていた。

「わかりました、ミサトさん。 僕は弱虫だから、たぶんミサトさんが言うようにこれから何度もくじけてしまうと思う…。 そして、自分の存在意義についてもまた悩んでしまうかもしれません…。 けど、例えそうなったとしても、これだけは決して忘れません! 僕にはかつて命懸けで僕のことを愛してくれた、ミサトさん達のような素晴らしい家族がいたんだということを…。 その事を忘れない限り僕は何度悩んでもまた立ち直れると思います。 ミサトさん達に出会えたことは本当に僕の人生の宝物でした。 本当にありがとうございました、ミサトさん!」

ミサトはそんなシンジの凛々しい顔を見て本当に嬉しそうに微笑んだ。

「そう、ありがとう、シンジ君…。」

 

シンジとミサト達の心は今、完全に通いあっていた。

今この場には他人と自分とを引き離すATフィールドは微塵も存在していなかった…。

 

シンジはずっと微笑んでいたがやがて寂しそうな顔をすると

「もう逢えないの?」

とミサトに訴えた。

ミサトはその言葉に

「私達はシンジ君の心の中にいるわよ…、いつまでもね…。」

精一杯の笑顔でそうシンジの想いに答えた。

「そうですよね…。」

そう肯いたシンジの顔は前より少し大人びて見えた。

 

 

 

そしていよいよシンジはみんなに別れを告げることにした…。

 

「もういいのね? 碇君…。」

「うん、ありがとう。 僕は本当に君のことが好きだったよ、綾波…。」

その言葉に赤い瞳の少女ははじめて微笑んだ。

 

「アスカを私みたいな女にしては駄目よ、シンジ君。」

「はい、リツコさん。」

白衣の女性は総てを吹っ切た笑顔で少年を見つめた。

 

「アスカによろしくな、シンジ君。 結局何もしてやれなくてすまなかった…と、そう俺から謝っていたと、アスカに伝えてくれ。」

「はい、加持さん。 でもミサトさんにこそ、先に伝えなきゃいけない言葉があるんじゃないんですか? 確か8年前に言えなかったっていう…。」

その言葉に無精髭を生やした男は苦笑した。

 

「あたしの事なら心配しなくていいわよ。 あたしはあたしでこの馬鹿としばらく楽しくやる事にしてるから…。 だから十代やニ十代の若さで会いに来ちゃ駄目よ! いいわね、シンちゃん。」

「はい、けど僕がもう一度ミサトさんに会うときはやっぱり14歳の時の姿が一番いいですね。その時はもちろんアスカと一緒に…。」

その言葉に黒髪の女性は優しく微笑んだ。

 

「これでお別れだね、シンジ君。 レイには僕がついているから心配しなくていいよ。」

「そう言ってくれると嬉しいよ。カヲル君と綾波って本当にお似合いだと僕は思うよ…。」

その言葉に銀髪の少年は照れ笑いを浮かべた…。

 

「もう大丈夫ね、シンジ…。最後まで何一つ母親らしいことをしてあげられなくて、本当にごめんなさいね。」

「ううん、分かっているから…。 母さんがずっとエヴァの中で僕を見守ってくれていたのは分かっているから…。 だから、ありがとう、母さん。 そして、さようなら…。」

レイに似た女性は慈愛の目でシンジを見つめて、そしてはじめてシンジを抱きしめた。

 

そして最後にシンジは自分が今までずっと怯え続けていた父親に正面から向き直った。その時の父を見るシンジの瞳に臆する色はなかった…。

「父さん…。」

彼の父親はいつも通りの厳しい目でシンジを見下ろしていたが、突然その瞳を緩めると

「シンジ…。 本当にすまなかったな。 おまえをこんな運命に巻き込んだ私が今更こんなことをいうのは図々しいのは分かっているが、それでも言わせてほしい…。 シンジ、強く生きろ! そして本当に大切なモノがあるのなら絶対に死んでも手放すな! でないと一生後悔することになるぞ…、かつての俺のようにな…」

シンジはそのゲンドウの言葉が何を指しているのかを理解して

「うん、分かっているよ。 今度父さんに会いにいくときは必ずアスカも連れてくるよ…。だから父さんも今度こそ母さんだけを見てなきゃ駄目だよ。今度浮気なんかしたらきっと母さんに殺されるよ。」

そう言ったシンジだったが、次の瞬間にはすでにゲンドウは死んでいることに気がついて頭を掻いた…。

それを見て彼の父親はニヤリと笑った。

 

 

 

 

シンジはだんだん、自分の視界がぼやけていくのを感じた。

もう、これ以上ここにはいられないんだ!

そう感じ取った時、彼を囲んでいた親しい人達は次々に消えていった。

これでもうみんなと逢えなくなる…という一抹の寂しさと共にシンジの涙腺が緩みはじめたが、懸命にシンジは泣くのを堪えた。そして今彼が出来る精一杯の笑顔で、もう一度自分を支えてくれた親しい人達に感謝の言葉を陳べた。

 

 

みんな本当にありがとう。 もう大丈夫だよ。 もう絶対に逃げたりしないよ。 たぶんこれから先も、つらいことはいっぱいあると思う。 けど負けないよ。 みんながくれた僕の生命…。 これから精一杯生き抜いてみせるよ! みんな本当に…本当にありがとう…、そして…さようなら……。

 

 

こうしてシンジは長い間彷徨っていた夢の世界から決別した。

この時、シンジが夢で出会った人々は何だったのか?

かつてシンジを守る為に命を落としたシンジの親しき人達が、落ち込んだシンジを励ますためにあえて死者の国からシンジを尋ねてきたのだろうか?

それとも、もう一度現実へ立ち返ろうとしたシンジの心が、シンジにとってもっとも受け入れやすい形…つまり死者の形をとって現れただけのただの幻にすぎないのだろうか?

 

真実は誰にもわからない…。

 

けど、確かな事実がある。

彼らとの出会いはシンジにとって、非常に重要な意味があったという事だ…。

それは、「シンジには自分を命懸けで愛してくれていた多くの人間がいた」という紛れもない確かな事実にシンジ自身が気がついたこと…。

それにより、「多くの人間が生命を懸けるに値すだけの価値をシンジ自身に認めていた」というその事実が、もう一度シンジに現実に立ち向かおうという勇気を与えて、そして自分自身を肯定する事が出来るようになったという事だ。

 

こうして碇シンジの心は補完にまた一歩近づいた…。

しかしそれでも、シンジの人生は…シンジの本当の試練はこれから始まるのである。

 

 

 

シンジは再び還ってきた。

彼の現実に…。

いったいどのくらい眠っていたのだろう。

目を開けるとすぐに僕の視界に何かが飛び込んできた。

マヤさんだ。

泣きながら僕のことを抱きしめてくれている…。

僕は自分を最初に出迎えてくれたのが、自分の良く知る蒼い瞳の少女でなかったことに大きな失意と微かな安堵を同時に感じながらも、それでも今自分ができる精一杯の笑顔で微笑んで、僕の本当の世界に挨拶した。

 

「ただいま…。」

 

二人の補完 前章「AIR」編 完

 

 

 

 

 

 


NEXT
ver.-1.00 1997-1/29公開
ご意見・ご感想・誤字情報などは itirokai@gol.com まで!!

 

 

けびんです。

何とか「二人の補完」も前章である「AIR」編を完結させることが出来ました。これもひとえに執筆の機会を与えてくださった大家さんと、こんな自分の作品を応援してくれた多くの読者の皆様のおかげだと自負しております。本当に感謝しています。

前章「AIR」編のラストは、けびん十八番(?)である、やや変則型のシンジ一人称で締めてみました。

これはいうまでもなく、テレビ版ラストである第25話・26話を自分なりに少しアレンジしてみたものです。

今回こういうラストを採用したのは、自分はテレビ放映が終了してから友達に勧められてエヴァを見始めたクチなので、リアルタイムに本編を追っていった読者に比べたら比較的あのラストに嫌悪感を持っていなかったので、(というよりはむしろお気に入りです(^^;)正直あのラストを夏映画の分岐で終わらせるのはもったいないなあ〜と密かに考えていたので、何とか無理なく本編へ組み込めないかと思い、こうして「実はあのシーンはEOE終了後のシンジ復活の為の一描写だった」という設定で使わせてもらいました。

もちろん、この様なラストを採用した事に関して、今まで以上に言いたいことがある読者がたくさんおられると思いますので、その際は否定感想の類でも一切かまいませんので、思った事を正直に書いてメールでお送り下さい。お待ちしております。(^^;

これで前章は終了しましたので、次は後章である「まごころを君に」編へ続きますが、その前にいろいろと設定とかで勉強してみたい事があるので、後章がスタートするまで少し時間がかかると思いますが、しばらくお待ちして戴けるようお願いします。

そういえばとうとう自分の部屋も1万ヒットに達したので(未だに信じられません。本当にありがとうございます(^^;)先輩投稿者を見習って何か記念になるような事をやりたいとは思っているのですが、今の所何も思い付きません。(笑)しばらくお待ち下さい。

さて、本当に多くの方から感想のメールを戴き大変感謝しています。戴いたメールには全て返事を書いたのですが、宛先不明で戻ってきたメールがいくつかありますので、今ここで紙面をお借りしてお詫びさせて戴きます。

y.bさん、UNさん、UN.GGGさん、名無しのコンベエさん(笑)(メールフォームで名前を記入しなかった読者様です)。もしよろしければもう一度、メールアドレスを記載の上、メールを下さい。必ずご返事を書きますのでお願いします。

では次は後章で再びお会いしましょう。(その前に1万ヒット記念に何かやりたいのですが・・・)
舞台は一旦二人が離れてから3年後を予定しております。自分を肯定できるようになってちょっぴり強くなったシンジと、ようやく狂気状態から解放されて少し素直になったアスカの恋物語をご期待下さい。(^^;

ではであ(^^;

 

 

 


 

 けびんさんの『二人の補完』第十話、公開です。
 

 

 いよいよ前章、完結。
 

 

 他人との邂逅の中で、
 自己との対話の中で

 自分を見出したシンジ。
 

 死んでいった人達、
 生き残った人達。

 自分が傷つけた人、
 自分を傷つけた人。
 

 

 戻ってきたシンジ。
 

 ・・・今度こそ・・・
 

 

 復活への助走、
 長かった助走に比例して、素晴らしい未来が待っていることを−−

 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 ペースを保って書き続けているけびんさんに感想メールを送りましょう!


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