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「え、温泉?」

 シンジが驚いて答える。

「そうよ。お・ん・せ・ん!!」

 会話の相手はもちろんアスカである。

「何よぉ、アタシとはいけないって言うの? 霧島さんとは行ったくせに。」

「・・・・そんなことないけど、その・・・・

 テストとかいろいろあるじゃないか。そんな暇ないよ。」

「んもう情けないわね。内緒で行けばいいじゃない。」

「でもミサトさんに怒られるよ、きっと。」

 

「アタシとは、行きたくないの・・・・?」

 アスカが澄んだ蒼い瞳でシンジを見つめる。

 もちろんシンジがこの瞳を前にして「No」と言える訳がない。

「・・・わかったよアスカ。行こうよ、温泉。」

「うん!!」

 アスカの瞳が輝いた。

 

 

 

 

 

シンジとアスカのお忍び温泉旅行 前編

 

 

 

 

 

ガタンゴトン

 列車の走る音が響く。

 

 今、シンジとアスカは目的地の温泉へ向かっている。

 もちろん、ミサトはもとより、トウジやケンスケ、ヒカリたちには内緒である。

 ネルフでの実験も学校も無断欠席。

 二人は誰にも知られることなく、この列車に乗っている。

 一種のお忍び旅行といったところか。

 

 

「ねえシンジ。」

 シンジと向かい合うようにして座っているアスカが口を開く。

「何、アスカ?」

「同じ部屋だからって、夜、変なコトしないでね!」

 ――― 二人が取った旅館は、ちょうど団体予約が入っていて 、別々に部屋をとれなかったのだ。

「ぶっ。いきなり何言い出すんだよ、アスカ!」

 真っ赤になって答えるシンジ。

「ほらやっぱり、何かたくらんでたんでしょ。」

「違うってばアスカ。冗談キツイよ、ホントに。」

 シンジは、さらに真っ赤になって否定する。

「ホントにアンタって、お子様ね。」

「・・・ゴメン。」

「ほらぁ、またそうやってすぐ謝る。いい加減に直しなさいよ、 もう。」

「・・・・」

 

 そんな二人へ他の乗客の視線が集まる。

 こんなハレンチな会話を列車の中でされたら誰だって気になる だろう。

 そして、当の二人は真っ赤になってうつむいてしまった。

 

「シンジ、お腹空いたね。」

 先ほどの会話からだいぶ経って、アスカがふと話しかける。

 時計の針は既に12時を回っている。

「うん、そうだね。」

 ちょうどそこへ

「弁当いかがすかー。」

 と、車内販売がやってきた。

 

「あの、すいません。」

 シンジが車内販売の人に声を掛ける。

「はい、何にしましょう。」

「えーっと、僕はこれ、アスカは?」

「うーん、アタシはねぇ・・・、これ。」

「あとお茶を二つください。」

「ありがとうございます。2500円になります。」

 

こうして二人はお昼を食べ始めた。

 シンジもアスカも駅弁は初めてだったらしく、興味津々であった。

「ふーん、なかなか気の利く列車じゃない。」

「うん。特急列車なんかではこうやって車内販売があるんだよ。

 それに、もっといい列車なんかにはビュッフェがあるらしいよ。」

「へぇー、シンジにしてはよく知ってるじゃない。」

「うん、前にテレビでやってたのを見たんだ。」

「ふーん。あ、シンジのそれ、おいしそうじゃない。アタシに頂戴ぃ。」

 アスカがシンジの弁当の中の一品をねだる。

 ・・・か、かわいい・・・・

 シンジはいつもと違って、甘えてくるアスカを見てボーッとしている。

「ちょっとシンジ、聞いてるの?」

 アスカはアーンと口を開けて、「早く頂戴!」と言わんばかりにシンジを促す。

「え、え、ちょ、ちょっと待ってよアスカ。こんなところで。」

 アスカのいきなりの行動に戸惑うシンジ。

 そんなシンジを見てアスカは、ギロッとシンジを睨む。

 天使と悪魔の両方の顔をうまく使い分けるアスカ。

「じゃ、じゃあアスカ、アーンして。」

「アーン。」

 パクッ。

「ど、どう、おいしい?」

 またもやシンジは真っ赤である。

「結構いけるわね。」

 おかずをほおばりながら答えるアスカ。

「じゃあシンジ、アタシのお弁当の中から好きなのあげる。どれがいい?」

「えっ?」

 シンジはアスカのちょっと意外な言葉に少し戸惑った。

「なによ、何か不満でもあるわけ?」

 戸惑った様子のシンジを見てアスカがすかさず突っ込む。

「別に、そんなんじゃ無いけど。

 えーと、じゃ、これ。」

「これね。じゃシンジ、アーンして。」

「ぼ、僕もするの?」

「そうよ。アタシだけにそんなことさせるわけ? アンタ、結構いい度胸じゃない。」

 有無を言わさない迫力でシンジに迫るアスカ。

 もちろんシンジがかなう相手ではない。

「うん、じゃ、アーン。」

「はい。」

 パクッ

「うん、おいしいよ。」

「そう? ま、アタシの選んだお弁当だから、まずいわけないけど。」

 ・・・こういうところは、いつものアスカだな・・・

 シンジは、いつもとちょっと違うアスカを見ながらそう思った。

 

 

 

こんな情景の中、列車は目的地へと到着した。

 

「うーん、気持ちいいわね。」

 アスカが背伸びをしながら、周りを見渡す。

 

 ―― 二人が選んだ温泉は、第三新東京市よりもだいぶ高いところにある。

 

「じゃ、行こうか。」

「うん。」

 二人は旅館へ向かって歩き出した。

 

 途中、商店街があり、アスカはシンジを引っ張り回して、ウィンドウショッピングを楽しんでいた。

 

とあるアクセサリー屋にて。

「ねぇシンジ、これどう? 似合う?」

 紅いブローチを手にしたアスカが話しかける。

「う、うん。よく似合うと思うよ。」

「んもう、はっきりと話しなさいよ。」

 ・・・ちゃんと言って欲しいんだから・・・

「ごめん・・・。」

「ほら、また謝る!!」

「・・・罰として、これ買って!」

「え・・・? うん、わかったよ。」

 

「ハイ、アスカ。買ってきたよ。」

「・・・・・」

「どうかしたの?」

「付けて・・・。」

「え?」

「そのブローチをアタシに付けてって言ってるのよ。」

「・・・うん。」

 ブローチをアスカに付けるシンジ。

 またもや、顔は真っ赤である。

「はい、付けたよ。」

「・・・・似合う?」

 またも同じことを聞くアスカ。

「・・・似合うよ、アスカ。」

「・・・・ありがと、シンジ。」

 シンジには聞こえないぼど、小さな声でアスカはつぶやいた。

「行こう、シンジ!」

「うん。」

 

 

 

静かな湖のほとりに旅館は建っていた。

 

二人の最初の感想はこうだった。

「へぇー。結構いいところじゃない。」

「そうだね。静かだし、なんかホッとする。」

とまあ、ごくありきたりだったけれど。

 

「ようこそおいでくださいました。」

 旅館の人が迎えてくれる。

「予約をしておいた碇ですけど。」

「かしこまりました。少々お待ちください。」

 旅館の中は日本風の作りになっていて、ドイツ育ちのアスカの興味を引いた。

「碇様のお部屋は、3階の松の間でございます。

 では、ご案内させていただきます。」

 

二人が案内された部屋は、湖が一望できる広めの部屋だった。

「では、ごゆっくりどうぞ。」

 案内の人が戻ると、アスカは畳の上にごろんと寝ころんだ。

「ふーん、これが畳ね。」

 玄関がそうであったように、この部屋も和室だった。

「いい眺めだね、アスカ。」

 シンジが話しかける。

「・・・・・」

「どうしたのアスカ。何か今日は変だよ。」

「・・・アンタの、シンジの・・・せいだからね・・・・。」

 いつものはつらつとしたアスカからは到底考えられないような声と表情だった。

「え・・・・・・?」

 

 

 

 

 


続く
Beta? Version 07/17 公開

Homepage : http://www.incl.or.jp/~ago/write/
E-Mail : ago@asuka.nerv.to

 

 

 

 

 

<あとがき>

はじめまして、AGOでございますぅ。

なんせ初めての投稿小説なので、緊張しまくりです。

この話は、『鋼鉄のガールフレンド』の設定を取り入れています。まぁ、アスカのやきもちなんかをうまく書けたらいいなって思ってます。ってわけで、残りも気合い入れて書きます。

誤字・脱字・ご意見・ご感想などをいただければ幸いです。


 本日2人目の御入居、通算47人目の新住人がやって参りました(^^)
 AGOさん、ようこそめぞんEVAへ!
 

 『シンジとアスカのお忍び温泉旅行』・・・なんて魅力的なタイトルなんでしょう(^^
 ”温泉”・”旅行”ときて、”お忍び”で、”アスカxシンジ”ですよ!

 本文に入ってからも
 食べさし合いっこや、
 イチャイチャした買い物、
 そして・・・・

 思いっきりラブラブしてますね。
 

 さあ、訪問者の、皆さん。
 ごろごろ転がった後には作者のAGOさんに感想メールを送りましょう!


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