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『巨神 エヴァンゲリオン』
・第1話 『運命の片道切符』

「起きなさいよ!バ・カ・シ・ン・ジ!!」
長い栗色の髪が良く似合う、背中に羽根があれば天使と見間違う様な美少女の第一声で、碇シンジの朝は始まる。

惣流・アスカ・ラングレー。この家の主、惣流・アレキサンデル・ジークフリード考古学教授の娘であり、シンジの十年来の幼馴染みである。シンジは現在、この家に居候の身であり、惣流家の一員として彼女と同じ家で寝起きを共にしている。惣流家の人たちは、シンジを同じ家族の一員としてごく普通に付き合っているがシンジ自身は、現在の境遇にいささか、肩身の狭い思いをしている。

さて、シンジはと言うと、幼馴染みの声に驚いて飛び起きると言う事はせず、布団の中から顔だけを出して、寝ぼけまなこでベッドの傍らに立つアスカを見つけると、

「・・・・ん、アスカ、おふぁよぅ・・・・」
と、まだ寝ぼけた声で答える。

「いい加減に目ぇ、覚ましなさいよ!学校に遅れるじゃないのよ!せっかく、こんなかわいい幼馴染みが起こしに来てるんだから!」
腰に手を当てて睨み付けるアスカに対してシンジはと言うと、

「・・・・うん・・・・だから、あと5分・・・・」
そう言って、再び布団に潜り込む。これにはさすがにアスカもキレた。実力行使である。

「いい加減に起きなさいよ!!」
怒鳴るが早いか、布団をひっぺがすアスカ。ベッドから、転がり落ちるシンジ。

「痛いなぁ。もう少し、静かに起こしてよぉ・・・」
シンジの抗議もアスカは聞いてなかった。顔を真っ赤にしながら、シンジの体の一部を見詰めたまま、硬直している。そして、次の瞬間。

バチン!!

アスカの平手打ちが見事に決まり、シンジの左頬に真っ赤なもみじの様な後が残る。

「エッチ!変態!!痴漢!!信じられなーい!!」

「仕方ないだろぉ!朝なんだから!」
シンジはアスカに抗議の声を上げる。もちろんこれは、男の朝の生理現象なのだが、シンジと同じ年のアスカに理解出来るわけも無い。アスカは顔を真っ赤にしながら足早に、下のダイニングに向かう。シンジも大急ぎで着替えて、同じくダイニングへ。

「おやおや・・・・」

二階の大騒ぎを聞きながら、祖母のシズカはテーブルに茶碗をならべていた。ちなみにシズカはアスカの母親の親で、母は父と同じ大学教授を務めているため、小さいころから彼女がアスカの躾や教育をしていた。

「おはよう!おばあちゃん!」
「おはようございます」
何時ものようにアスカは元気よく、シンジは少し遠慮がちに挨拶を交わす。

「おはよう、アスカちゃん、シンジちゃん」
これまた何時ものように、シズカは優しく微笑みながら挨拶する。彼女にとってアスカはもちろんの事、シンジもかわいい孫の一人であった。シンジは4歳の時に母親が死んでいたので、よく隣に住む彼女の元に預けられたものだった。

「ほら、シンジ!もたもたしてないで、早いとこ食べるわよ!」
アスカはシンジを引っ張ってきて、無理矢理席に付かせる。

「あらあら、アスカちゃん、あんまりシンジちゃんをいじめちゃいけませんよ」
「甘いわ、おばあちゃん。シンジは甘やかすと、何でもやる事が遅くなっちゃうんだから」
「そんなこと無いよ。いっつも、アスカがうるさいから・・・」
シンジが反論する。

「なんですってぇぇ!!」
アスカが、シンジを睨み付けて、大声を張り上げるが、そこまでであった。普段なら、間違いなくシンジを張り倒している。もちろん、シンジはその理由は知っている。シズカさんの前だからである。もっとも、その後でしっかりとお返しは来るのだが。

「さあ、早く食べないと、学校に遅れますよ」
シズカさんの声で、二人ともテーブルに向き直る。目の前には、ご飯に味噌汁、ほうれん草のおひたしに焼き魚と言う、純和風の朝食が並んでいた。

「「いっただきま〜す!」」
二人、声をそろえて挨拶すると、食事に集中する。アスカはもちろんだが、シンジもどんな豪華な料理よりも、シズカさんの手料理が好きだった。

「あっ、そうそう、そう言えばさっきキョウコから電話があってね」
食事の最中、シズカが思い出したように話し出す。

「えっ、ママから?」
アスカの箸の動きが止まる。

「ええ、何でも今日は二人にお話があるから、学校が終わったら真っ直ぐ帰ってきて欲しいって、言ってたわね」

「二人とも?」「僕も?」

二人とも何だろうと思ったが、帰ってきたらわかるだろうと思い、また食事に集中する。
やがて、二人とも食べ終わり急いで後片付けを済ませると、それぞれシズカさんから弁当を受け取ると、

「「それじゃ、行って来ま〜す!」」
と、二人とも元気良く、玄関を飛び出した。

(う〜ん、アスカならともかく、僕にまでなんてキョウコおばさん、何の用事だろう) 学校に向かう途中で、シンジは今朝、シズカさんが言っていた事を考えていた。

「ちょっとシンジ、なにボォ〜っとしてんのよ!」
後ろからアスカが、シンジの頭を小突きながら尋ねる。
「ん、いやね、キョウコおばさんが僕にまで何の用かなぁ、と思ってさ」
すると、アスカが一言。
「あんた、バカァ!そんな事、学校から帰ってくれば嫌でもわかるんだから。それよりも、今は急ぐの!残り二日で夏休みだからって、油断するんじゃないわよ!」
「あっ、ま、待ってよぉ〜」
脱兎のごとく駆け出すアスカと、情けない声を上げながら必死に追いかけるシンジであった。


間一髪、校門を駆け抜けた二人は、すばやく靴に履き替える。また、何時ものように、アスカの靴箱の中には、男子からのラブレターが溢れていたが、気にせず靴を取り出すと、入っていたラブレターをまとめてゴミ箱の中に叩き込み、教室へと急ぐ。

「「おはよう!!」」

2人揃って教室に入ると、

「おはよう!」「おはよう、惣流さん!」「おはよう!シンジ」
などと様々な声が返ってくる。しかし二人とも、なんか物足りない(?)と言うか、活気が足りないような気がしていた。だが、その原因も、シンジがすぐに気がついた。

「あれ、ケンスケ、トウジは?」
そう、シンジの幼馴染みの一人、鈴原トウジがいないのだ。いつもなら、アスカと二人で登校してくると、「なんや、夫婦そろって登校かいな〜」とまぜっ返すところなのだが、今回はそれがなかったため、なんか活気が無かったのだろう。

「おぉ、シンジ、なんか親父さんとおじいさんが仕事で南の島の方に行くとかで、ついて行っちゃったんだよ。『南国の食いもん全て食っちゃる』とかって言ってさ」
シンジの友人の一人、相田ケンスケが呆れ顔で説明する。

「あの食いしん坊のトウジらしいや・・・」
苦笑するシンジ。

「相っ変わらずね、あいつの食い気は!」
呆れるアスカ。
やがて、担任の先生が教室に入ってきたのでみんな、そそくさと自分の席に戻った。


そして、放課後。

「お〜い、シンジ」
ケンスケがシンジを呼び止める。

「今日、暇ならゲーセンに行かないか?」
「悪い、キョウコおばさんから、今日は早く帰ってくるようにって言われてるんだ」
シンジはケンスケの誘いを、すまなそうに断る。

「ふ〜ん、二人ともねぇ・・・」
ケンスケの眼鏡が怪しく光る。

「何よ」
アスカがケンスケを睨み付ける。

「いやね、夏休みに行く、新婚旅行の行く先でも決まったのかなっと思ってさ」
さりげなくケンスケが、爆弾発言を投げつける。

「「違うよ(わよ)!!」」

二人の叫びは見事にシンクロしていた。もちろん、顔は真っ赤である。
当然、その場に居残っていた男子達が追い討ちを駆ける。

「ひゅ〜、ひゅ〜」「お熱いよ〜、お二人さ〜ん」「子供は、いつ作るんだ〜い」等など。

男子の冷やかしに、黙っていたアスカが突然、男子の方に振り返るや否や、

「人が黙ってればいい気になって、いい加減にしなさいよ!あんた達!」
と、怒鳴り散らす。これを見ていたシンジ、
(こ、これはヤバい。このままだと間違いなく、八つ当たりが僕に)
などと思っていたら案の定、今度はシンジの方に振り返った。

「バカシンジ!元はと言えば、あんたがもたもたしてるのが悪いのよ!とっとと帰るわよ!」

と、見事に八つ当たりされるシンジ。

(とほほ・・・)
なんとも、不幸な奴である。


さて、学校からの帰り道。
「キョウコおばさんが待ってるかもしれないから、早いとこ帰ろう」
「うん」

アスカはシンジの話を、半分上の空で聞いていた。考えていた事はもちろん、先ほどのケンスケの爆弾発言である。

(シンジと・・、新婚旅行・・・。シンジとなら、いいかもね・・)
アスカは、顔を真っ赤にしながら後ろから付いて来ているシンジを、チラっと見る。相変わらず、何を考えているのかボ〜っとしている。

(・・・・でも、ほんとに鈍感よね、アイツは!私の気持ちに全っ然、気が付いて無いんだから・・・・)
思わず、大きな溜め息を吐くアスカ。
(もっとも、そんなとこも含めた全部が、好きなんだけどもね・・・・)

一方、シンジの方はと言うと、アスカの後ろ姿を見詰めつつ、彼なりに色々と考えていた。
(この所、アスカと二人っきりで居ると、妙にドキドキするな。以前ならそんな事、無かったのに・・・・。トウジ達が妙に騒ぐからつい、意識しちゃうんだよなぁ)
そんな事を考えていたら、アスカがチラっとこちらを向いたもんだから思わず、顔を赤くしつつ下を向いてしまった。
(でもこれって、やっぱり、アスカが好きって事かな・・・・。でも、アスカはどうなんだろう?アスカにとって、僕は単なる幼なじみでしかないのかなぁ・・・・)

お互いが、お互いの思いに気付かないまま、時は過ぎていく・・・・・。

「「ただいまぁ!」」
「あ、帰ってきたわね、二人とも。ちょっと、こっちに来てちょうだい」

奥から、キョウコの声が聞こえてくる。どうやら、すでに帰ってきていたらしい。
二人は、声のしたリビングに行くと、キョウコとシズカの二人がお茶をすすっていた。二人は、向かいの椅子に、腰掛けた。

「それで、私たちに話ってなんなの、ママ?」
まずは、アスカが切り出した。

「それなんだけど二人とも、パパが南の方にあるグレンフォルトって島に行ってるのは知ってるわよね?」
「もっちろんよ!あの、この間、噴火した島でしょ?なんか、遺跡らしき物もあるって書いてあったけど」
アスカがそれがどうしたの、と言いたそうな顔を向ける。
「それがね、本当に遺跡を発見したらしいのよ。それも、パパたちが提唱していた、ムー文明のね」
「「えぇ〜〜!!」」
二人とも、驚きの声を上げる。
「でね、調査団の方から、私を含めた教授達を派遣して欲しい、って連絡が来たわけなのよ」
「それってつまり、またママが出掛けるから、おばあちゃんと仲良くしてなさいってことでしょ?いつもの事じゃない」

アスカに話の腰を折られたのが気に入らないのか、キョウコはちょっとムッとしていた。
「ちょっとアスカ、人の話は最後までちゃんと聞くものよ」
母親のお小言にアスカは、ちょっと首を竦める。
「それでなんだけど・・・・」
今度は、いたずらっぽく微笑むキョウコ。

「パパがね、あなたたちも、一緒に連れてきなさいって言ってたのよ!」
「ほ、本当!?」
アスカが素っ頓狂な声を上げる。
「ええ、本当よ。そう言えば、アスカはスクーバが好きだったわよね?あの近辺はサンゴ礁が多いから絶好のポイントかもね」
「やったぁぁ!!思いっきり潜るぞぉ!」

アスカのはしゃぎようと言ったら、これ以上の物はないと言うくらいだった。それに対して、シンジの表情は、いささか暗かった。

「あの〜、おばさん・・・・」
「なに、シンジ君」
笑顔で答えるキョウコ。
「僕も、一緒に行って大丈夫なんですか?」
シンジとしては、自分は惣流家の一員ではない、と言うのが頭にあった。そういう考えを持ってるせいか、どうしても遠慮がちになってしまうのだった。そして、その問いを真っ先に否定したのは、やっぱりアスカだった。

「な〜に、当たり前の事言ってるのよ!当然、あんたも行くのよ!」
「あのねぇ、シンジ君」
キョウコは腕組みしながら、シンジを見つめていた。
「あなたはどう思ってるか知らないけど、私達はね、6年前にゲンドウさんが行方不明になってから、ううん、ユイが死んでからず〜っとシンジ君の事を家族と思ってきたのよ。そしてもちろん、これからもね。だから、余計な遠慮は無しにしてね」

にっこり笑うキョウコ。シンジはただ、黙って肯いた。

「さあ、出発は二人が夏休みに入る明後日ですからね!しっかり準備しておきなさいよ!」
「「は〜〜い!!」」

二人は、旅の準備をすべく、お互いの部屋に戻っていった。テーブルの上には、オーストラリアまでの片道航空券が置いてあった。だが、この片道切符が、これから起こるであろう波乱の運命への片道切符になるであろうとは、この時は誰にもわからなかった。


第2話に続く
ver.-1.00 1997-05/18
ご意見・感想・誤字情報などは fwhs4222@mb.infoweb.ne.jpまで。

<言い訳 もとい 後書き>

皆さん、こんにちは、マサ・竹本です。ようやく、第1話をアップすることが出来ました。いやはや、連載小説なんて初めてなもんですから、頭の中では話が出来上がっていてもいざ、文章にするとなると思ったように表現できない物だと実感しました。しかし、こういう小説を週一ペースで書く人にはほんと、頭が下がる思いですm(_ _)m ヘ゜コリ 。
さて、今回のストーリーもまったくのオリジナル。一応、アスカやシンジの立場なんかを理解していただこうかなと思いまして書いてみました。一応、次回から本格的なストーリーになると思います。大家さんは、「巨神ゴーグ」のストーリーにどれだけオリジナルな物が出せるか、と言ってましたが正直な話、このアニメのストーリーの流れ自体も正確には把握していないため、4つのキーワード、つまり「巨人」「古代遺跡」「悪の企業」「少年少女」の4つを利用した90%オリジナルと言った感じかも(^^;。

<次回予告>

南の島グレンフォルト島にやってきたシンジ一行。紫の巨人を目の当たりにして、思わずその凄さに圧倒されてしまう。
そして、突如シンジを襲う身体の異変。島に近づく怪しい影とその正体とは?

次回、『忍び寄る 影』 お楽しみに!


 マサ・竹本さんの『巨神 エヴァンゲリオン』第1回公開です(^^)

 賑やかな朝の光景からはじまったシンジとアスカの日常。

 ベーシックな”幼なじみ”という設定と、
 オリジナルの”アスカの家族とそこに住み込むシンジ”。
 このオリジナル設定は今までにないパターンですね(^^)
 アスカの家族の中で気兼ねを感じるシンジ・・・・
 

 上手いアレンジで、この先ゴーグという元ネタをどう料理・利用してくれのか
 非常に楽しみになってきました。
 ”オリジナル度90%”に期待大です!
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 貴方も感想メールを書いて見ませんか?
 1通のメールからはじまる絆・・・魅力がありませんか?


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