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−私にこのSSを執筆、発表する勇気をくれた短編小説「シャー・ギード・G」と、その著者にしてSF界に燦然と輝く偉大な巨星、ロシア出身ユダヤ系アメリカ人でボストン大学生化学準教授、科学評論家にしてロボット3原則の考案者たる故アイザック・アシモフに捧げる−
やおい
「お早うシンジ君!」
「わああああああ!」
私立新星大学付属慶神学園中等科男子寮410号室の朝は嬌声とも悲鳴
ともつかぬ大声と共に始まる。
「カ、カヲル君!」
「今日もいい天気だよ、シンジ君」
「いや、それはいいんだけど・・・」
ぼす
「ええかげんにせんかい! 毎朝毎朝・・・・」
いつもの事ながら何故かシンジのベッドにいるカヲルの後頭部に枕を投
げつけ、トウジは叫んだ。
「ははは、軽いジョークじゃないか」
歯など光らせつつ爽やかな笑顔で言うのは2年A組出席番号17番渚カ
ヲル(15)だ。
「そらあ一回目はジョークですむけどな、おどれは毎日やないか!」
「いやいや、シンジ君が驚いてくれる間はまだ旬なのさ」
「アホかあ! 朝が来る度にお前等の大声で起こされる身にもなってみい!」
「いいじゃないか、おかげで碇もトウジも渚が転校してから一度も遅刻は
おろか朝御飯を食べそこなったことさえないんだから」
「そ、そうだよ。カヲル君だって悪気があるわけじゃない、と思う・・・」
まだ早鐘のように打っている心臓を押さえながら弁護するシンジ。
「何言うとんねん! センセがそんなやからワシは心配なんや!」
「まあ、確かにな・・・」
苦笑するB組出席番号1番合田ケンスケ。
「人事みたいに言いよって。ケンスケは組が違うからええけどな、休み時
間もこいつらはこんなやで。同室のワシまで同類に見られてるんやないか
と思うと・・・」
「安心しろよ、高等部にまでそんな噂が広まるもんか」
「なな、なんで高等部がここに出て来るんや?」
「皆まで言わせる気か?
「「「葛城先輩の胸、葛城先輩の尻、葛城先輩の・・・・・」」」
トウジ以外の3人が完璧なまでに声の揃ったユニゾンを披露する。
そして耳の先まで真っ赤になったトウジが叫ぶ。
「だぁまぁれぁー!」
その喧噪は隣の部屋どころか、あらかじめカヲルによって開け放たれた
引き戸を通して廊下中に響きわたっていた。
「毎朝よくやるよな、あいつら・・・・」
「ま、目覚ましがわりにゃ丁度いいさ。日曜日にゃやらんし」
進級と共に渚カヲルが転入して来て以来、4階の遅刻者は激減していた。
それでいて「あいつらは本気(マジ)モンのホモだ」という噂があくま
で少数派に留まっているのはカヲルの如才なさと言うべきか。
しかし、それはあくまで男子寮に限った話だったりする。
「惣流! 惣流はおるかー!」
「へ、編集長を守れー!」
「我々は暴力には屈しないぞー!」
「じゃっかましいわ、このイエロージャーナリズムが!」
怒号と共に有象無象どもを蹴散らす怪傑黒ジャージ。
所詮体育会系バリバリの健康優良児たる鈴原トウジに常日頃徹夜や食事
抜きが当たり前という不摂生を重ねている新聞部員が勝てるわけもなく、
あっと言う間もなくトウジは新聞部部室への侵入を果たす。
その漆黒の怒濤の前に紅蓮の閃光が立ちはだかった。
「こんのぉー!」
「だぁぁぁぁ!」
電光の如き打ち込みをとっさに交差させた双腕ではさみこむようにして
受けるトウジ。
「くくく・・・今宵のドラ猫小鉄は血に飢えておる・・・」
「ぬうぅ・・・あほな知識を仕入れよって・・・」
「毎度毎度人騒がせなことばっかりして・・・一体何の用よ・・・」
「何抜かす・・・人騒がせなんはおどれの方じゃ・・・なんやあの記事は!」
怒号と共に両腕の前腕にはさんだ木刀にひねりを加えてアスカの手から
弾き飛ばす。
ジャージのズボンに突っ込んでいた新聞部が誇る壁新聞「ウイークリー
慶神」を引っぱり出すトウジ。
その紙面にはでかでかと
「スクープ!
やっぱり男子寮に広がっていた精神汚染」
の極太明朝体が踊っていた。
「ああ! あんたそれひっぺがして来たの!? なんてことすんのよこの
野蛮人、言論の自由ってモノ知らないの!!」
「やかましいわ! いっつもいっつもゴシップばっかり載せよって! 名
誉毀損で訴えたろか!」
「お生憎様! うちは事実しか載せてないわ!」
「ウソつけぇ! 何処が事実や、誰がホモや!」
「あんたよあんた! バカシンジが作った弁当食べてるって、ネタはあが
ってんのよ!」
「あ、あれは大会に向けた減量メニューや! べつに愛情弁当って訳やな
いわ!」
「は! 語るに落ちたわね、このホモ! 減量メニューですって!? そ
んなもんとヒカリの愛情弁当を天秤に掛けた時点でホモ確定よ!」
「な、なんやそらあ!」
「少なくとも健全な男ならば、女の子の作ってくれたお弁当と男の作った
弁当の、どっちを選ぶかなんて問題じゃないわ! あんた、ヒカリが弁当
持ってくのにどれだけ勇気を振り絞ったと思ってんの!」
「あ、いや、その・・・」
「おおかた硬派ぶって「ワシはヒカリに弁当作って貰えるような男やない」
とでも言ったんでしょうが! あんたらなんて自分の美学のことばっかり!
ヒカリの気持ちってもん考えたことないの!」
親友のために身勝手な男を難詰する鬼編集長の目には涙さえ浮かんでい
たという。
「うぐぐ・・・」
どうやら今回はトウジの負けのようだ。
この結果、彼らの戦歴はトウジの12勝20敗47引き分け(アスカに
言わせると「あたしの67勝12引き分け」)となる。
後にトウジは「あいつ、意外に友達思いなとこあるやないか」と語った
という。
しかし彼がアスカの忠告(?)を受け入れ、シンジのではなくヒカリの
弁当を選んだかどうかは定かではない。
本当に定かではないのだ。
なぜなら・・・・
「ああ、それじゃ駄目だよ。マヨネーズは酢で薄めておかないと」
ここは慶神学園中等科女子部校舎。
授業が始まる前の早朝の調理実習室で、シンジとヒカリは仲良くトウジ
の弁当を作っていた。
「え、そうなの? でもこれ油分2分の1って書いてあるわよ」
「その2分の1をさらに薄めないと駄目なんだよ。マヨネーズなんて油と
酢と卵の黄身のミックスなんだから」
ちなみに卵の黄身には脂肪分が多く、卵の白身は蛋白質が多い。
したがって運動選手、特に筋肉を付けたい種目の競技者は卵の白身ばか
り何個分も食べたりするのだが・・・これは実は体に悪いのである。
そもそもどんなに蛋白質を摂取したところで、実際に筋肉になるのはそ
の内のほんの僅かな分量なのである。
では余った分はどうなるのか?
蛋白質はカロリーとしても消費されるが、これは炭水化物や脂肪からの
カロリーが少ない場合に限られ、脂肪に変換されて貯蓄されることはない。
カロリーとしても筋肉としても、皮膚や内外分泌系の代謝のためにも消
費されれなかった蛋白質はユリアの形で排出されるのだ。
ユリアと言っても北斗の拳のヒロインではなく、尿素のことである。
即ち、過剰な蛋白質の摂取は過剰な尿素の排出によって腎臓を疲労させ
るだけなのである。
「ふぅん・・・それでお肉がそんなに入っていないのね」
「前にテレビでアメリカのバスケットボール選手の食事を紹介してたけど、
そんなに肉はなくってデザートにでっかいケーキとか食べてたんだ。ハー
ドなトレーニングをしているから、それくらい食べないと筋肉までやせて
しまうんだ。だからカロリーを過不足無い様にする方が大切なんだよ」
体重が減るときには脂肪だけでなく筋肉まで減っている。
従ってトレーニングによる筋肉の増加分を減量による減少分が上回らな
いように、かつ体重自体は減ってゆくように適切なカロリーの計算が必要
なのである。
「わかったわ。でも凄いのね、碇君って。そんなに色々知ってるなんて」
「・・・本当は全部保健室の赤木先生の受け売りなんだけどね」
なかなかに和気あいあいとした雰囲気である。
実習室の扉の影からその2人を羨ましそうに見つめるいくつもの視線が
あった。
密かに結構いるヒカリとシンジの隠れファン達であった。
その中にカヲルの姿はない。
ではその時彼は何をしていたかというと・・・
「さあいらはいいらはい、碇シンジのエプロン姿だよ」
女子達にシンジの写真を売り飛ばしていた。
女子にも人気のあるカヲルの方がケンスケよりも売り上げが伸びるので
ある。
正直、いっそのこと彼自身の写真を売った方が早いような気がするのだ
が・・・
もっと確実なのはシンジとのツーショット写真を扱うことであろうが、
さすがに女子部に流れる噂に油・・・と言うよりもニトログリセリンを注
ぐ気にはならなかったようだ。
それに何故かカヲルは写真を撮られることを酷く嫌っていた。
おそらくはその肌と髪、そして瞳の色がコンプレックスになっているの
だろう。
ケンスケもそう言う事情があるものを無理に撮ろうとはしなかった。
そのケンスケは男子部でヒカリのエプロン姿を売り飛ばしていたのだが、
アスカに見つかりボコボコにされたあげく、ロープでグルグル巻きにされ
て日章旗の代わりにぶら下げられていた。
(何だか一人だけ扱いが酷いなあ・・・)
「うう・・・まだ頭に血がのぼってる気がする・・・」
浴場が閉まる11時間際(我々の感覚では少し遅すぎるが、2016年
では平均的な時間である)まで待ったが、まだケンスケはアスカから受け
た暴行から回復しきってはいなかった。
「おいおい、大丈夫かいな。今夜は風呂は止めといた方がええで」
「うん、でも体だけでも洗っておくよ。惣流の奴、手加減ってものを知ら
ないからなぁ・・・」
ぶつぶつとぼやきながらトウジと連れだって部屋を出るケンスケ。
途中の廊下でシンジとすれちがう。
「お先に、お休み」
「おう、お休み」
「お休み」
私立心星大学付属慶神学園中等科男子寮410号室の夜は静かに暮れる。
なぜなら長風呂のカヲルがギリギリまで粘ってから部屋に帰って来るこ
ろ、碇シンジはもうすっかり熟睡しているからである。
おわり
リツコ「ちょっと作者」
03「なんでせうおぜうさん」
リツコ「このSSのどのあたりが「やおい」なの?」
03「んー、これは異なことを。
「や」 山場が無い
「お」 オチが無い
「い」 意味が無い
と、このように、どこから見ても「やおい」な作品ではありませんか」
リツコ「それは元々の意味ではそうだけど、今時やおいと言ったら男同士
の恋愛をネタにした話のことだわ」
03「さればこそ、冒頭にアイザック・アシモフとシャー・ギード・G
に捧げると書いたのです」
リツコ「シャー・ギード・G・・・シャギー・ドッグ(つまらない駄洒落)!?」
03「アシモフの短編に、そういう話があるのです」
リツコ「・・・まあ良いけど・・・これをアシモフに捧げるの?」
03「ちょっと後悔・・・まあシャレですノデ」
リツコ「そうやってまた新しい後悔のネタを作るのね」
03「どうせ僕の人生は後悔と愚痴で出来ているのです」
03;プリーチャーさんの『やおい』、公開です。
た、たしかにオチがない(爆)
で、でも、
何気ない日常を描いていると言うことで
・
・
・
OKかな?
ドタバタした楽しそうな学校ですね(^^)
さあ、訪問者の皆さん。
1発目の短編、03;プリーチャーさんに感想メールを送りましょう!
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[03;プリーチャー]の部屋