めぞん / 何、帰るだと? / 何、戻るだと? / 許さん!後編も読んで行くのだ


「ガギエル・・・・・・」
「ここに、父様」
「シャムシエルが返り討ちにあった・・・・今度は君が行ってくれないか」
「わかりました」
「君は戦いの技に長けていても呪力に欠けるからね、三人衆を連れていくといい」
「はい、ありがとうございます」


「ただ・・・・君も死んでくれないと、困るんだけどね」




「ご先祖様・・・レイは大丈夫なんでしょうか」
 客間の布団に寝かされたレイを心配そうに見つめながらマヤが言うと、冬月はこれ以上
ないと言うほど無造作な口調で応じる。
「ふむ? そう言えばマヤ、おまえはレイがこんな深手を負ったところは見たことが無か
ったね」
「ええ・・・・以前もこんな怪我を?」
「昔はこんなもんじゃなかったよ。この程度なら二、三日で完治するだろう」
 温厚そうな老紳士の言う「この程度」の負傷とやらがどれほどのものかと言えば、腹を
ダンビラで刺されて内臓にも損傷が及び、さらに全身の打撲に加えて骨折、とどめが出血
多量である。
 マヤは過去の戦歴がどんなものだったのか聞く気にもならなかった。
 孫娘の沈痛な表情に気詰まりなものを覚えたのか、冬月はついたての後ろから出て、レ
イを運んでくれた少年達の前の座椅子に座る。
「ところで・・・・君たち」
「え? ええ」
「はい」
 不意に声をかけられておどおどと答えるどこか少女じみた少年と、それとは対照的に落
ち着き払った・・・・しかし何故か敵意に近い警戒心をにじませる美女。
(この少年・・・・使徒ではないようだが、稀にみる極上の魂だな。魔物好みだ。お守り
ぐらい渡して置いた方がいいか)
 そう思いながらもレイやロンギヌスの槍の事を他言しないように釘を刺そうとした時だ
った。ついたての影で眠っていたはずのレイが幽かな声を上げる。
「エルラッハ様・・・・」
 その言葉を聞いた途端、少年の顔に疑問符が浮かび、美女の顔は迷惑そうに不快そうに
しかめられる。
「あ・・・また」
「また?」
「何でもありません!」
 激しい口調で追求を封じる。
 その様子に冬月は雛を守るためにキツネにさえも立ち向かって行くと言うある種の鳥類
の姿を連想していた。
「で、でも・・・・」
「いいから!」
 何やらもごもごと抗弁しかかる少年をも小声で叱りつけて黙らせる。
 その様子にマヤは子離れのできない母親と気の弱い子供を連想し、不快な気分になった。
「・・・・まあいい。言うまでもないこととは思うが、君達が今日見たことは、決して他
言しないで欲しいのだ」
「分かってます。この町に住んでいて貴方達を敵に回したいとは思いませんから」
 皮肉な笑みを浮かべて言うミサト。
 何故ミサトがこんなにもとげとげしい態度を取っているのか、シンジには分からなかっ
た。
「それは良かった。・・・・もしこの件に関して何事かトラブルに巻き込まれたら、私の
所に電話してくれ、警察や学校の先生にではなくね」
 ずいぶんと奇妙な要求だとシンジは思った。
 そして驚いたことにミサトもそれに従う様子を見せている。
(一体何がどうなっているんだ?)
 彼には理解出来ないことばかりだった。
 老人は座椅子の肘掛けから二枚の名詞を取り出し、それを差し出している。
「いえ、一枚だけで結構です。私はこの子の担任ですから」
 これでシンジをこの町の暗部に関わらせずにすむ、と言う安堵からか、ミサトはどこか
得意げに微笑しつつ名詞を受け取った。
(教師、か。それでか)
 冬月は先ほどからのミサトの拒絶するような態度が生徒をトラブルに巻き込むまいとす
る立場から来る物だと知り、納得していた。
(そうだな、これで良いのだ。こんな血生臭い世界に彼らを巻き込む事はあるまい)
 レイの寝言・・・・・明らかに日本語だった。祖国の言葉を忘れるほど長い人生を、彼
女は復讐のために捧げて生きて来たのだろう・・・・・の人物が何者であれ、目の前の二
人に関わりがあるなどと、この時冬月は夢にも思っていなかった。
 それが間違いだと彼が知る機会はついに無かった。
 だがアリアンロードの糸車は着実にスピードを上げながら回り続け、そして運命は
紡がれてゆく。
 この二人が再び出会うまで、そう長い時を必要とはしなかった・・・・・・

 

呪われの魔女

拉致・監禁・洗脳

前編





 あーん、あーん
(ダレ・・・・・)
 ひどいよ、どぉしてじょーをころしたのさ!
(アア・・・・コレハ・・・・・ボクダ・・・・)
 しかたがなかったんだよ、じょーはもうとしだったんだ。
 あんらくしさせるのがじょーにとってもいあわせだったんだ。
 うそだ! じょーがそういったの!?
 いぬははなしたりはしないけど、そうにきまってる。
 どうしてわかるのさ、そんなこと。
(ヤメロ・・・・・)
 みてればわかるよ、いつもくるしそうにしてただろ? しんじくんとあそぶのだって、
さんぽだってもうできなくなってたんだ。
 わかんないよ! わかってたまるもんか!
(ヨセ!)
 じょーにきいてやる!
 むりだよ・・・あ、あぁ!? しんじくん?
(ヤ・メ・ロ・!)





 壁紙も剥がれ、壁板自体にもあちこちに穴の空いた部屋の中、破れかけた天井を見上げ
ながらレイは丈夫さだけが取り柄のパイプベッドの上でひとり呟いていた。
「・・・・わたし・・・・何をしているの・・・・・」
 当座の塒である、それこそお化けアパートと言うのが相応しいような廃墟の一室には、
レイのその独白に応える者はいなかった。
 タブリスから受けた傷が癒えてからもう3日、普段のレイならもうとっくに使徒を狩り
に出ている頃だ。
 それなのに何もする気が起きない。
「・・・・わたし・・・・何をしているの・・・・・」
 この独白は既に両手の指どころか足の指まで動員しても足りないほど繰り返されている。
惑乱のあまり、ロンギヌスの精霊を呼び出して彼女(?)に問いかけてしまったのだから、
レイの苦悩のほどが知れると言うものだ。
 下級精霊如きに悩み相談室が開けるわけもなく、案の定「何もしていない」と言う表面
的な事実を(はやく血をすわせてよー、おなかへったよぅー、という要求付きで)指摘し
たに過ぎなかった。
「・・・・・・」
 本当のところはわかっていた。
 気になるのだ、あの少年が。
「碇シンジ・・とか言ってた・・・あの子・・・」
 シャーロックホームズ並みの記憶力など求めはしないが、もしもレイが常人の半分でも
他者に関心を持っていたら、あの日冬月の家で会った破戒僧加持神父御自慢の養い子の名
前が「シンジ」であることを憶えていただろう。
 無論の事、タブリスへの復讐に生涯を捧げたレイに、そんなことの為に割く記憶領域が
用意されているはずはなかった。
「・・・・・どうしてしまったの・・・・・・わたしは・・・・・・・」
 かくて呪われの魔女はひたすら襖悩のドツボにはまり続けることとなる。




 何故、かのひとが死なねばならなかったのだ・・・・・・・
 私にとって、女神にも等しい存在であったあの方が・・・・・・・
 呼び戻してやる、何としても・・・・・・・
 例え悪鬼外道にこの身を堕としても・・・・・・・
 私はかのひとを取り戻してみせる・・・・・・・
 絶対に・・・・・・・




「・・・・卵焼き、焦げてるぞ」
「え・・・うわあ!」
 不意に背後からかけられた声に我に返り、台所中に充満した煙と焦げ臭い匂いに慌てて
火を止め、換気扇のモードを弱から最強に上げる。これだけ煙を立てているのにも気付か
ないほど常ならぬ自己の精神状態になんとも言えない苛立ちのような感情を感じた。
「どうしちゃったんだろ・・・・・僕は・・・・・」


「どうしたんだ、最近変だぞ?」
 作り直した卵焼き(味付けに砂糖と醤油でなくそばつゆの素を使っただだ甘のもの)を
朝食のテーブルに置いたシンジに加持が気遣わしげに問うた。
 しかしその目は、この上もなく雄弁に表情を裏切っていた。
 面白がっている。
(この人は・・・・)
「別に・・・・なんでもありませんよ」
「あんたバカァ? そんな眉間にシワ寄せて「何でもない」って言われても心配してくれ
って言ってるようなもんじゃない」
 もしここに檀家・・・もとへ信者が居合わせたら目を丸くし、そして上の方へ代わりの
神父を要求することだろう。
 テーブルに用意された席は3つ。一つは神父、一つは孤児、そして最後の一つは直立す
れば身長90cmほどになるであろう人形のために用意されていた。
 しかし、今彼女が話したのが人形フェチの変態神父の腹話術でないことを知ったなら、
今度はエクソシストを呼ぼうとするかもしれない。
「押し付けがましいことを・・・・」
「なんか言った?」
「いえいえ、地獄の大公爵様に心配して頂くようなことじゃありませんよ」
「あんた、あたしにケンカ売ってるわね?」
 アンティックドールの硬い皮膚がまるでモーフィングでもかけたように滑らかに動き、
険悪な表情を形作る。
 それを見て慌てて加持が仲裁、と言うよりも話題をそらそうとする。
「まあまあ・・・・・しかし夢見が悪いようなら、いい占い師を紹介してやろうか?」
「加地さん・・・・・お願いですから、もう少し神父としての自覚を持って下さいよ・・
・・・」
「しかし俺には相談出来ないようだからな」
「スネたフリしても教えません・・・・・・・・・って、なんで僕が夢のことで悩んでる
って知ってるんですか?」
「あんたバカァ? あれだけポルターガイストやっといて気付かれない訳が無いじゃない
のよ」
「え? でも部屋は・・・・・」
 シンジの周りで怪奇現象が起きるのは珍しいことではない。しかし今朝目覚めた時は確
かに、寝る前と同じく彼の部屋は奇麗に整頓されていたのである。
「・・・・・そんな時でも後片付けは忘れないの? マメってゆうか、細かいとゆうか・
・・・」
「人間が小さい?」
「そう、それ!」
「こらこら、自分で言うんじゃない」
 冗談に紛らわせているが、この奇妙な後片付けはポルターガイストやラップ音などの現
象ゆえに疎まれ親戚を転々として育ってきたシンジが何時の間にか身に付けていた悲しい
特技だった。
 けれど新しい家族は、加持達はそれらの現象に何の恐れも抱いたりはしない。
 世間一般の常識からはかなりズレた日常に身を置きながら、シンジとって今の平穏な生
活は限りない幸福だった。
(なのにどうして今になってあんな夢を見たんだろ・・・・・)
 正直言って食欲もあまり無いのだがこれ以上付け入る隙を与えたら養父に強制的に相談
させられてしまうだろう。
 千切ったトーストを牛乳で胃袋に流しこんでニンジンとレタスのサラダをバリバリと噛
み砕く。
(見え見えなんだけどな・・・・)
 加持は内心で苦笑していた。
 別に無理に青少年の悩みを聞き出すような下世話な趣味があるわけではないのだが、シ
ンジという少年は親戚の家を転々として育ったせいか多分に「良い子」で・・・・・良い
子過ぎて、自分から悩みを相談したり出来ないところがある。
 多少は強引に聞き出さなければならない時もあるのだが・・・・今回はそこまでする必
要もないだろうと加持もアスカも楽観していた。
 そんな事は知らないシンジが気管に入ったニンジンのかけらにむせ返っているのを、だ
から二人ともにやにやと眺めている。
「ご馳走様! 行ってきます!」
「おう、しっかり勉強して来いよ」
 食器洗いは学校や会社の無い加持の分担である。
 ぱたぱたとシンジが部屋に駆けて行くと、アンティックドール(に化けた悪魔)が無精
髭の神父と会話するというかなりシュールな光景が再び繰り広げられる。
 先ほどまでと違うのはアスカ(というのは彼女の「本名」をもじって加持がつけた愛称
だが)の声に露骨に含まれるようになった甘さだ。
「今日は何をするの?」
「うん。檀家の皆さんへのご挨拶は終わったから、まずは大掃除だな」
「・・・・信者だってば・・・・・」
「おう、そうだったな」
「でも、別に急ぐ訳でもないんでしょ」
「まあね」
「じゃあさ、体力が有り余ってるんならあたしと・・・・」
「あ」
「え?」
 自室から鞄を取って来たのであろうシンジが、扉の向こうの廊下で慌てて駆け出す気配
があった。
「あんの変態! 痴漢エロガキ覗き魔どすけべぇ!」
 魔界の大公爵ともあろう者がそこらの小娘のように怒号する。
「おいおい、たまたま通りかかっただけだろ? 悪気は無いよ」
「どうだか・・・・・それにしても気配の薄い奴・・・・・」
「? そうか?」
 加持の見る限りではシンジの運動神経は並で、気配を殺すような器用なことを日常的に
やっているとは思えなかった。
「そうよ。魂が無いとまでは言わないけど、薄いと言うかなんと言うか・・・・・」
「そこまで言うか?」
「やぁん、おこんないでよぉ(はぁと)」
 自慢の養子をけなされて加持が憮然とすると、アスカは即座に「ぶりっ子モード」に切
り替えて甘えにかかる。
 やはり惚れた弱みか、どうしてもアスカの方が加持の反応に過敏に反応してしまう。
 魔界でも女公爵と恐れられる、かつてはシュメールやバビロニアはおろかエジプトや地
中海にまでその信仰が及んでいた女神であった大悪魔が一介の神父に使役されているの
も、ひとえにその一念ゆえであった。



「やれやれ、朝っぱらからいちゃつかないでほしいな・・・・・」
 学校への通学路を自転車で移動しながら思春期の少年は呟いた。
 最近はまだ良い方で、以前は子供の前でもお構いなしだったからそれを思えばどうと言
うこともないのだが、いかんせん中学2年にもなるとそう言ったことの知識が否応なく身
につき始める。
 だからたまに「大人の世界」を垣間見るたびに、思春期の清少年はどぎまぎとうろたえ
てしまう。
「考えてみりゃ、まだガッコ始まるまで時間が有るんだよな・・・・・」
 夢の話題に触れられたくないので、つい早々と出て来てしまったのである。
 2,30分程度コンビニで立ち読みでもしようかとシンジは思い、いつもの通学路から
大通りを通るコースへと向きを変えた。
 とりあえず大通りに出て最初に目に入った店に入ることにする。
 今日は火曜日なので本日発売の週刊少年誌は無い。それにまだ早い時間なので客は少な
い。
 たまに入ってくる客もサンドイッチやオニギリと言った定番の軽食を買う者ばかりで、
立ち読みの客は殆どいない。
(ジャンプ・・・・・は最近つまらないからな・・・・)
 そう思いつつも、かつてはトップに君臨しつづけたマンガを手に取った。
(・・・・・・・・・・・・・・・・この本には失望した。もう読むこともあるまい)
 料理マンガなどと言うイカモノを掲載しているのを見て、シンジは手にした雑誌を平積
みの台に戻した。
(マガジンには不良チンピラゴロツキチーマーゾクと?マークと!マークが跳梁
跋扈していて好きになれない。
 サンデーは・・・・・・・・無いな、売り切れてる。出たのが6日前なんだから当たり
前か? 仕入れ自体マガジンと比べて少ないからな。
 チャンピオンは・・・・なんか奇妙なマンガばっかなんだよな)
 どの雑誌も読む気にはなれない。
 単行本のコーナーを見ても面白そうなのは無いので、諦めて店を出る。どうやら奥手な
少年はもとよりヤング誌など眼中に入れていなかったようだ。
(ふう・・・・・気が重い)
 低血圧と言うわけでもあるまいに、晴れ渡った気持ちの良い朝だと言うのにひどくテン
ションが低い。
 どの雑誌を見る気にもならなかったのも、内容がつまらないからと言うよりもシンジ自
身のこの気分のせいだった。
(あの夢のせいだ)



 幼い日のこと・・・・・母が死んだ後最初に引き取られた親戚の家で、シンジが唯一心
を許していたのはその家で飼われていた老犬だった。
 その老犬が死んだ時に初めて「妖力」が発現した。
 老犬は二度の生を受けた・・・・・ゾンビとなって。



 その時の夢を見るのはこれが最初ではなかった。
 だが今朝の夢には続きがあったのだ。
 ふと気付けば目の前の物言わぬ死肉の固まりは老犬ではなく、美しい女性。
 周囲は怪しげな雰囲気のこびりついた洞窟。
 蝋燭の明かりにに照らし出された、慟哭する彼自身の姿も大人の物。
 げっそりと削げた頬に不健康そうな顔色、男になりきらぬままに背だけが伸びたような
不自然な姿。
 身に纏っているのはまるでファンタジーに出てくるような魔術師・・・・と言うには薄
汚れた、呪い師のごとき装束。
 悲痛に慟哭し、運命を呪詛し、狂気に駆り立てられるままに魔道に魂を売った男の姿・
・・・・


(あれは・・・・・僕の前世なんだろうか)
 シンジは輪廻転生と言う考え方はあまり好きではなかった。
 それを口にする者の多くが現実逃避のために、それを信じたふりをしていたから。
 シンジは現実に立ち向かうほどの勇気も無かったが、虚構の中に逃げ込むのは好きでは
なかった。
 けれど全く否定している訳でもない。
 第一、あの時ゾンビ化した犬を科学的に照明出来るのならしてみるがいい。
(ネクロマンサーが僕の前世なら・・・・・ゾンビやポルターガイストも説明がつくよな
・・・・・)
 シンジはそんなことを考えながらスタンドを外し、サドルにまたがり、自転車を走らせ
ていた。
 何者も逆らい得ぬ宇宙の真理たるマーフィーの法則によれば、そういう時にこそ普段な
ら回避出来るような些細なトラブルが発生するのである。


 どん
 前方不注意のシンジの自転車はコンビニエンスストアの隣の古本屋の脇の路地から出て
来た通行人にまともにぶつかってしまった。
 シンジの意志によらずハンドルが強い力で右に振られ、自転車が横転する。
「いたた・・・・・すみませ・・・・・・」
 肩を押さえながら謝ろうとしたシンジは絶句する。
 目の前に立っているのは身長こそ170センチ程度であるものの、それを補って余りあ
る威圧感を備えた人物だった。
 平均的なサイズより大きめの頭は青々と剃った跡もまぶしいスキンヘッド。
 顔面中央に居座った鼻の上にはレンズの大きな濃いサングラス。
 鼻の下にはりついた薄い口髭。
 濃いグリーンのワイシャツのボタンを一番上までかけ、その上からネクタイのように髑
髏のミニチュアをあしらったチョーカーをしている。
 そして、サングラスの上の眉間にくっきりと刻まれた縦ジワ。
「あ、あの、ご、ごめんなさい・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
 男はむっつりと押し黙って立っている。
「あの・・・・・」
 おそらくはそれを楯代わりにして自転車を押し返したのであろう鞄を軽くはたきながら、
サングラスの下の目の動きは見えないがこちらを睨んでいるようにシンジには思えた。
「・・・・すみません・・・・・・・・・・」
 とっとと逃げ出せば良いものを、素直と言うか鈍臭いと言うべきか、シンジはその場に
とどまって謝罪し続けている。
 まさに「いじめてくん」的な行動と言えよう。
 いきなり殴り付けるほど怒り狂ってはいないスキンヘッドだが、敢えて許してやる、あ
るいは無視するほど温厚な人間でもなかった。
「・・・・・・・・・知ってるか? 道交法では自転車も車として扱ってるんだよ。歩道
を走るのは違反なんだ」
 低い声でかなり無茶なことを言うサンプラザ中野もどき。発明された当初は自転車にも
教習所があったと言うが現代ではほぼ無法状態である。そんな些細なことを気にしている
者など、休日の渋谷駅ハチ公口前にいる群集の中から捜しても一人もおるまい。
「すいません・・・・・」
「おいおい、おっそろしいやっちゃなお前は。そんくらいほっといたれや」
 偽サンプラザの連れらしい、若いようにも中年のようにも見える教師風の男があきれた
ような声を上げる。だがそれは無視され、眉間の縦ジワは消えずサングラスもシンジに向
けられたままだ。
「大体歩行者に迷惑だ。車道を走れ!」
 男はちょっと言い過ぎたかなと自省しつつも、胸中の怒りはなおもおさまらない様子だ
った。
 その時、不意に飛び込んで来る一陣の疾風。
 ぱしん!
 ずだん!
 靴底がアスファルトを叩く音と同時にスキンヘッドの腹に掌がめりこむ。
「ぐえっ!」
 悲鳴一つあげて崩れ落ちる似非サンプラザ。
「な、なんや!」
 腹を押さえ前かがみになって、そのまま意識を失ったのか頭から地面に倒れ込むスキン
ヘッド。
 唖然としてそれを凝視するシンジの手が不意に強く引っ張られた。
「あ、君は・・・・・」
「行きましょ」
 シンジの視線の先でそう囁いているのは、あの時の蒼銀色の髪の少女だった。




後編も読むのだ!
ver.-1.00 1998+09/18公開
何、つまらないだと? ならば批判のメールを書け! 良い作品を読もうと思うのならボーッと見てないで読者の側からも良い作家を作るよう働きかけるのだ! 何、わざわざそんな事しなくても面白いSSはいっぱいある? そりゃまあ、そうなんだけどよ・・・・t2phage@freemail.catnip.ne.jp
新「ムハハハハ! おしおきだべー!」
旧「あ、あなたは似非サンプラザ中野!」
新「(ごす)だれが似非サンプラザだ、大体我輩は中学生にからんだりせん!」
旧「な、何ですかいきなり。それにこの名前は一体・・・・・」
新「ええい未熟者! ギャグをかまされたらツッコミを入れんか!」
旧「はぁ・・・・・タイムボカンシリーズですか?」
新「・・・・くっ、ブザマな。貴様はミスを犯した」
旧「何なんですか一体!」
新「聖アリアンロードなる聖人は存在しない。聖ブリージットならいるがな」
旧「・・・・・げっ」
新「貴様まだ懲りていなかった様だな、うろ覚えの知識をもとに書くからこういう事になるのだ。・・・・・・・・お仕置きだ」
旧「う、ううう・・・・」
新「逃げたいのだろう! 少しも動くことは出来ぬぞ! お前が叫ぶ最後の言葉・・・・・(溜め)あ・・・・」
旧「悪夢だぁーっ!」
新「・・・・ちっ。前回は水滴垂らしと言う、ビジュアル的なインパクトに欠けるお仕置きだった。が、覚悟するがいい! 今回は思いっきり視覚に訴え(何、見えない? 馬鹿者! 心の目で見るのだ!)、なおかつ効果は前回以上だ」
旧「い、一体何を・・・・」
新「出でよ三銃士!」
弾劾翁「だれが三銃士ぢゃ、だれが」
02「レイの、じゃなかった例のブツ持ってきたぜ」
04「この時点で元ネタもろともバレバレよね、演出がなってないわ。それにあの映画は期待したほど面白くなかったわ」
旧「こ、この展開は・・・・」
新「そう! 鉄仮面だ! 貴様はこの仮面を被り、幽閉されるのだ!」
旧「いやだ! やめろ、やめてくれ、あの牢屋には戻りたくない!」
02「ノリのいいヤツ・・・・・てい」
 がぽっ!
新「ムハハハハ! 今日から我輩が03;プリーチャーだ、ムハハハハ!」
04「実質的には何一つ変わってないんだけどねー。これ、どうしましょ?」
旧「むー! むがむがー!」
新「口の利けぬ者を雇い・・・・・・いや、いざと言う時の人身御供に使う事にしよう。その辺に置いて行くのだ。・・・・・・・・さすがにこの手をもう一回使う訳にもいかんから、多田も少しはミスに対し用心する様になるであろう」
02「であろうってアンタ、他人事みたいに・・・・・」
04「責任逃れ以外の何物でもない様な気がするけどねぇ」
多田「大きなお世話だ」






 03;プリーチャーさんの『呪われの魔女』2前編、公開です。





 人形、
 悪魔、
 ポルターガイスト。

 映画『エクソシスト』あたりの感じですね。


 元ネタのゲームはほとんど知らないんですが、
 こういう方向なのかな?



 ちょっと軽く、
 ちょっとコメ入りで、

 ベースでシリアス。


 こういうかんじなのかな(^^)






 火曜発売の少年誌といえば、
 『サンデー』と『マガジン』が頭に浮かぶ・・・地方によってかなり違うんだね。
 ちなみに、『ジャンプ』は土曜。『チャンピオン』は知らない(^^;



 さあ、訪問者の皆さん。
 9月中旬の連発、03;プリーチャーさんに感想メールを送りましょう!




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