エントリープラグの中にLCLが注ぎ込まれた。
「いつになっても慣れないよな、コレ」
ちょっと嫌そうに呟くシンジ。
やがてプラグが、続いてシンジの肺がLCLで満たされる。
するともう何もする事がない。
「ふー・・・母さんもこんな気分だったのかな」
ただただ準備完了のコールを待ってLCLを呼吸する事しばし、やがて通信ウインドウが開かれる。
サウンド・オンリー。
「(無言)」
誰だよ一体・・・・・
さすがにシンジが問い質そうとした時、闇の向こうから声が響いた。
「・・・・・いいんだな、シンジ」
「! い、いいぃも悪いも・・・・・そ、それより例の件は間違い無く頼んだからね」
「・・・・・・・・・わかった」
それだけ言って通信は切れる。
「・・・・何なんだよ、ホントに・・・・・」
ぶつぶつと呟いていると、再び開くウインドウ。
「準備、完了したわ・・・・・本当にいいのね? 戻れなくなるのかも知れないのよ?」
ふたりとも・・・・そんなに僕を不安にさせたいの?
「大丈夫ですよ。それに前だって・・・・・」
「前回とは状況が違うわ」
GREAT FALL
完結編1
ネルフ 新第一発令所
「おい、初号機のケージに司令や赤木博士が集まってるけど、何をしてるんだ?」
「さあね、知らんよ」
「知らんって・・・・・」
「まあ想像はつくけどな。初号機を起動させよってんだろ?」
「なんで・・・・・?」
「もしも京都に派遣したエヴァが起動しなかったら?」
「まさか、そんな事が・・・・」
「そのまさかに備えるのが俺達の仕事だろ? それにまさかって言うほどエヴァの出動成績は安定したものじゃないんだぜ」
やんわりと同僚をたしなめたシゲルだったが、内心では疑問が渦巻いていた。
(初号機は動かないはずじゃなかったのか?)
古参のオペレーターであるシゲルは、分厚いトップシークレットの壁の向こう側の事情をある程度は承知していた。
(だが、碇ユイの意志は消滅したはずだ・・・・・何故?)
エヴァの内に宿っている意志の正体についても・・・・・
(何故かはサードインパクトの真相同様薮の中だが・・・・・)
「知らぬが仏、か・・・・」
(その初号機を再起動するとなれば・・・・・「碇ユイ」の復活か? 司令はそれを望んでいるからこそ、新しいコアを移植しなかったんだろうが)
「え?」
(もしかしたら一縷の希望を捨てて新しいコアを移植したか?)
「何でも無い。じゃ、お先」
(しかしコアが残っているんだろうか? まさか新規に作った? まさか! 今のネルフは国連の監視下にあるんだ、人間一人消息不明なんて言う不審な行動をとったら、すぐに介入されるだろう)
「ああ、お疲れ」
(ゼーレが用意したコアが伍号機と六号機の他にも残っていたと考えるべきか。・・・・どっちにしても非人道的な話さ全く)
シゲルは仮眠室に向かった。
明日の作戦は久し振りの、本来の任務だ。
しかし裏の事情をある程度知っている身としては、高揚感より子供たちを戦わせる事への罪悪感の方が強かった。
いつかは、彼らがそれに耐えられるほど大人になったら秘密を教えるべきか?
(いや、それは俺のでしゃばるような事じゃない)
シゲルは一つ首を振って仮眠室の扉を開けた。
今は、明日に備えて寝るだけだ。
USSエンターブラウザ号副長 リョージ・ライターの回想
「こちらはUSSエンターブラウザ艦長のフユツキ・ピカドンだ。詳しい説明は省くが、我々の世界は君達の世界から生まれているため、君達の世界が消滅すると我々の世界も連鎖的に消えてしまうという事が分かった。そこで一緒に作戦行動を取らせてもらっている。…レイダー、引き続き全速前進。次元の亀裂に接近・・・・」
そこまでフユツキ・ピカドンが言った時、すでにノイズの走り始めていた双方向通信モニターに火花が走ったと思うと、煙を噴いて機能を停止する。
「むう・・・・」
憮然とする艦長。
エンターブラウザ号のあちこちで発生していた小規模な爆発が連鎖し始め、大規模な爆発が二つ、立て続けに起こった。
「やれやれ、この分では彼らより先にこちらが圧壊しますな」
自棄気味に言い放つリョージ・ライター副長。
「うむ。軍人として、艦長として認めたくはないが、彼らのほうが優秀な技術を持っているようだ」
モニターには壊れる寸前に映していた映像が焼付きになって残っていた。
そこに写っていた冬月と言う白い髭の老人、もう一人、なんとも忌々しい事に見事な銀髪をフサフサと生やした冬月、それに自分と同じ顔のフユツキ・コウゾウ・ピカード大佐と言う男・・・・・・
ふと、彼等はどんな人生を歩んできたのか? などと思うピカドン。
すでに鳴りっぱなしの警告音の中、新たに加わった音と光が故障箇所の増加を宣告する。
「艦長! 超空間航行システムが時空の亀裂の影響で暴走を始めました!」
マコト・T2・ファージが悲鳴に近い声で報告して来る。
「システムの暴走が亀裂にどんな影響を与えるか予測不可能です。危険過ぎます」
普段と変わらず感情の無い口調で、しかし少しだけ早口になって言うアンドロイド・レイダー。
「いかん! 何としても停止させろ!」
「間に合いません! N波フィールド、展開されます!」
艦腹の22層の特殊装甲をも吹き飛ばし爆発を起こす超空間航行システム。
同時にエンターブラウザ号本体は展開された超空間に吸い込まれていった。
宇宙艦エンターブラウザ号ブリッヂ
「副長、何を考えているのかね?」
砲術士官席の方からかけられた声に、はっと我に返るライター。
当直勤務中にぼんやりしているなんぞ、態度不良の謗りは免れない醜態である。
あわてて背筋を伸ばし、咳払いなぞしてから答える。
「いや、あの時の事を考えていてね」
「あの時の、か? 我々が消滅もせずにここに存在している以上、無事納まったのだろう」
「あっさり割り切るんだな、中尉は」
「ゼレンゴンだから・・・・と言うのは無しだぞ。単に目の前の事で忙殺されて、そんな事を考えている余裕が無いだけだ」
「そうだな・・・・・・」
確かに、今は地球に落下するのを回避する事こそが急務である。
だが・・・・・・
「だが考えた事は無いか? もしかしたら我々が元いた世界はオリジナルの世界もろとも消滅しているのではないか、いや、そもそも超空間航行システムが失われてしまった以上、元いた世界に帰る事など出来ないのではないか、と・・・・・」
今当直でブリッジにいるのが常に沈着冷静なゲンドウォーフだけだと言う事実が口を軽くしているのか、リョージ・ライターは自分でも止められない程の勢いで不安を吐露していた。
「ナンバー・ワン! それは今考えるべき事ではない!」
「・・・・・ああ、そうだな・・・・・」
「ライン・オフィサーがそんな事では、スタッフも動揺する。しっかりするんだ」
同艦 メディカルルーム
だが副長の抱いている恐怖は艦の乗員全員の胸に巣食っているものだった。
故郷に帰れないと言う恐怖・・・・・・・
その恐怖を諦めと言う形で受け入れてしまった者達が艦長に直談判をしていた。
「・・・・カウンセラー、私はここへストレスを増加させる為に来た訳ではないのだが・・・・・」
ミサト・ノロイは申し訳無いと言うように俯いたが、彼女も、他の者達もその決意は変わらないようだった。
メディカルルームはそれほど広くはない。
その中にドクター・リツコ・クラッカーとカウンセラーのミサト・ノロイだけでなく酒保のマユミ・ガイガン達厚生施設の添乗従業員、挙げ句に機関士のトージ・アブラアゲン、シロウ・オークライなどかなり大勢が集まっていた。
「ですが艦長、我々はこの地球に住む以外に手段が無いのではありませんか? 超空間航行システムを失った以上通常航行しか出来ませんし、まして元の、我々の世界に戻る事など出来ないはずです」
「そうです! 聞けば今回のプランは失敗の可能性が大きいと言うじゃありませんか! 地表に着陸すべきです!」
一斉に艦長に詰め寄ってくる水兵や添乗員達。
「だがそうすれば、本艦は二度と宇宙に飛び立つ事が出来なくなるのだぞ」
それは船乗りにとって最も忌むべき事態である。
だがエンターブラウザ号の乗員は生粋の船乗りばかりではない。
危険ではあるが安定した職業や高額の給金、今後の生活に有利な経歴や資格などに釣られて乗組員になった彼らにはそういった感傷は薄く、故郷に連れていってくれない船など無意味な危険を冒してまで守りたい物ではなかった。
「ですが危険過ぎます!」
船が無事ならこの地球に戻る事など何時でも出来ると言う艦長と、失敗の危険性を訴える乗員との話し合いは平行線を辿るばかりだった。
しかしながら、最終的な決定権はあくまでライン・オフィサー(兵科将校)に存在するのである。
士官扱いを受けてはいても艦の運営を補助するスタッフに過ぎないドクター、カウンセラーを含め、一般の水兵や添乗員にではない。
艦の行動方針は既に決定されており、彼らにそれを覆す事は出来ないのである。
彼らも勿論それは承知してはいるはずなのだが・・・・・。
(カウンセラーよ、こうでもせねば乗員がストレスに押し潰されてしまうと言う判断は理解できる。しかしだな、私のストレスの事も考えて欲しいな)
内心うんざりしながらも、これも艦長の勤めと思って乗員の抗議を聞きつづけるフユツキ・ピカドン。
(今度はライターやゲンドォーフにこの役を押し付けてやろう・・・・・いや、そういう訳にはいかんな)
艦長とはつくづく心の休まる時の無い地位である。
ネルフ 新第一発令所
「なに? ぼたもちが棚から落ちた?」
いきなり訳の分からん事を口走ったオペレーターに、発令所に居合わせた全員から緊張した視線が向けられる。
「観測センターからです! 宇宙船が大気圏突入!」
「よし、京都にデータを転送しろ。カウントダウン開始だ」
「了解!」
「それと観測センターに、ぼたもちなんぞと言う緊張感の削げるようなコードネームを付けるなと言っておけ!」
どうやら基本的には堅物の副司令には、時宜を心得ない悪ふざけはお気に召さなかったようだ。
京都 仮設デッキ
『見えるか? 今宇宙船が真上を通過中だ。あと一周したら来るぞ!』
指揮車からの日向一尉の通信に、ヤシマ作戦の際シンジ達がそうしていたように仮設デッキに座っていたトウジは、明けかかった夜空を振り仰いだ。
「まるで飛行機雲やな」
白々と強烈な光を放つ飛行機雲があれば、確かにそれは似ていただろう。
摩擦で白熱させた大気分子の長い長い尾を引いて、エンターブラウザ号は今火球と化す。
「22時間後、か・・・・」
必ず守ってやると思いながら心の中に思い描いているのが、洞木ヒカリ嬢ではなく妹の顔である事にトウジは我知らず苦笑していた。
「シスコン、か。否定できひんな、こら」
X−DAY
京都市左京区 下鴨神社
「なんだか随分と沢山の神社が集まっている所ですのね」
軽く目を細めてシェラは糺の森に対する感想を表明した。
下鴨神社、その境内には出雲氏の勢力の衰えとともに賀茂氏の賀茂御祖神社に吸収された比良木神社(旧名出雲井於神社)などというものもあり、鳥居の数はかなり多い。
日本文化には詳しくないシェラは、どうやら鳥居イコール神社だと思い込んでいるらしく、実際以上にいくつもの神社が集まっているように感じていた。
「みすぼらしい建物ですこと・・・・あの神社なんて、建物が無いではないですか」
西洋建築に慣れた者から見れば木造の神社は安っぽく見えるのだろう、もっとも比良木神社のたたずまいが国宝にも指定された下鴨神社本殿に比べてみすぼらしいのも事実ではあるが。
下鴨神社から糺の森を突っ切って南に下る長い参道、その西についでのように祭られた社。
その横手にシェラの「シャルロット」こと伍号機は鎮座していた。
南西の方向に京都御所が有り、そこから100メートルほど外れた所が落下予想ポイントである。
そのさらに南西には参号機が待機しているのだが、さすがにここからは見えない。
他の二機の待機場所はさらに遠く、弐号機は山が、見慣れた六号機はビルが視線を遮って見る事が出来ない。
「大丈夫よね、シャルロット・・・・・・」
インダクションレバーを握る手に力が込められた。
作戦開始まで残り1時間。
京都市 京都駅前
景観の破壊だの、京都らしくないだの、悪趣味だのと、一部の市民と観光客からは散々に言われている京都駅駅ビル。
そのガラス張りの北面に映るエメラルドグリーンの鎧を纏った巨神兵の背中。
大小三個の「目」を備えたその頭部は大きく反り、あたかも天を睨みすえているかのようだった。
「あと1時間で作戦開始・・・・・・失敗したら人類完滅・・・・・4機のバランスが合わなかったら失敗・・・・・・失敗したら人類完滅・・・・・バイオアンプが故障したら失敗・・・・・失敗したら・・・・・・・・・・・・はっ!」
我に返るナミ。
頭を振って不安を追い払うと、作戦内容のチェックを再開する。
別に今は何もせずに待機していればいいのだが、じっとして待っている事に耐えられないのである。
「駄目、こんなコト考えてたらますますシンクロ率が低くなっちゃう・・・・・失敗は許されないんだから、とにかく何とかしなくちゃ・・・・・・・・・失敗するわけにはいかない、あたしのシンクロ率は高い、だから暴走とか断線とかしない限り大丈夫・・・・・・・でも暴走したら失敗・・・・・・・・失敗したら人類完滅・・・・・ケーブルが切れたら・・・・・・・」
再びナミの意外に大きな胸の不安回路が発動し、広大でも複雑でもない思考の迷宮へと彼女を誘う。
ちなみにこれで5回目のダンジョン突入であった。
残り1時間、彼女は延々とこの自問自答を繰り返すつもりなのだろうか?
京都市右京区 二乗駅前
JR二条駅の駅舎の屋根は2枚重ねになっている。
一般的な、ホームと平行の長方形の屋根の上に木製のシェル状の屋根が乗せられているのだ。
木の雰囲気を残した屋根は、悪趣味な京都駅とは趣を異にしたいかにも古都の駅に相応しいデザインである。
南北に伸びた駅舎の東口前にはロータリー、その手前に立つ漆黒の巨人。
参号機改の頭部は双眸こそ弐号機や六号機の様な補助光学センサーでないものの、口部拘束具を開閉不能なタイプに換装したために初号機に似た凶暴なフォルムは大分薄くなっていた。
マッドマックスや北斗の拳に出て来そうな、悪役御用達の鉄仮面じみたような頭部は旧バージョンとは別の意味で狂暴そうに見えるのだが
「あの口がな、どうも「暴走するで暴走するで」ってゆうとるみたいな気ィするねん」
とは担当パイロットの弁である。
事実頭部を改造した前後で若干ながらシンクロ率が変化しているのだから外見的印象という物も侮れない。
それでもまだ鈴原トウジのシンクロ率は、母に依存する心が弱いが故に、であろうか? 4人の中では最も低い。
トウジの心にも母親の失踪が大きく影を落としているのだが、それは妹に対する過剰なまでの愛情となって代償されているのだろう。
そしてシンクロ率の低さはA.T.フィールドの出力の弱さとなって現出する。
なればこそ、距離によって出力差を補う為に彼の配置位置は落下地点に最も近いのである。
逆に弐号機と六号機はより大きな範囲をカバーする事が可能なためにかなり遠くに位置する。
弐号機に至っては京都市の北端どころか鉄鍋の縁にかろうじて引っ掛かった状態である。
「いざとなったらちょォ走らなあかんからな。いまは休んどくか」
などと言いつつトウジはモニターを切り、さらに目蓋も閉じて周囲を真の暗黒で築かれた結界にしてしまう。
やがてLCLを揺らすのは規則正しい呼吸音だけになった。
京都市北区 上賀茂ゴルフ場
弐号機は京都市の北の外れ、上賀茂神社のさらに北のゴルフ場に陣取っていた。
言うまでもなく殺虫剤と除草剤でやっと保たれていた、日本の気候には本来向いていない芝生は見事に踏み潰され、掘り返され、惨澹たる姿に成り果てていた。
そこからは駅伝や大学ラグビーで知られる某大学のキャンパスが一望できる。
「ふん・・・・三流大学の癖に、えらく立派な建物じゃない」
講演会に講師として招かれてやって来たデーモン閣下が「こんなでかい建物で話す事になるとは思わなかった」「ここでミサ(ライブ)をやろうかな」と仰せになられた神山ホール、コロセウムからマシンジムまである総合体育館、開架式の地上3階、閉架式の地下2階から成る校倉造りを模した図書館、最新型のパソコン、ワークステーションを揃えた情報処理校舎・・・・・・
どちらかと言えば学業より体育会系クラブの活躍で知られる大学には分不相応なまでの設備である。
もっとも当の学生からは「こんなん作るくらいなら授業料を安くして」と言われているのだが・・・・。
「大学・・・・ね・・・・・・・」
今頃は明日の入試に備えて単語帳でもめくっているのであろう(あの男にのんびり休養を取るような図太さが有る筈が無い)サードチルドレンの事を思い出し、ちょっと渋面になるアスカ。
「人類の未来と大学入試とどっちが大切だと思ってんのよ、あのバカ・・・」
忌々しげにぶつぶつと呟くアスカだが、本音の所では「人類の未来」よりも「チルドレンである事」を軽んじられた事こそが気に入らないのだろう。
「見てなさいよ・・・・作戦が終わったら、合格していようが落っこちていようが、あんたの生活を守ったのがあたし達だって事を思い知らせてやるんだから」
ネルフ 碇司令執務室
「中華連合には気を許さない方がいいかも知れません。今回も、我々に協力すると言うよりアメリカバッシングの一環として利用した様なフシが伺えますから」
男はどこか軽薄な印象を与える態度で報告する。
彼の外見も相変わらずの無精髭、だらしなく崩れたネクタイ、シャツに至っては裾がはみ出ている。
社会人失格と思えるスタイルだが、ミサトのようなナース気質の持ち主の目にはそれもチャームポイントとして映るのだろう。
ユイがゲンドウのような集団生活不適格者に引っ掛かったのも、ある意味ミサトやヒカリと共通するナース気質のせいである。
冬月はユイの恋愛対象になるには健全な大人過ぎたのであろう。
「ご苦労だったな」
「じゃ、俺はこの辺で」
「見て行かんのかね?」
「何、あの子達ならやってくれるでしょう。俺は死んだ事になってる身ですしね」
そう言うと男は踵を返し、足早に無意味なほど広い部屋を立ち去ろうとする。
その背中にゲンドウの声が投げかけられた。
「葛城君には会わんでいいのか」
そう、この男こそは3重スパイの「あの男」である。
「止めときますよ。往復ビンタじゃ済まないでしょうから」
「冷たいものだな」
「・・・・・ま、葛城だって父親の影をひきずったままじゃ自立出来ないでしょうからね。あいつは俺の後ろに親父さんを見ていましたから」
「ほう、それだけか?(ニヤリ)」
「え、ええ」
加持の軽快な表情が警戒の表情に変わる。
その分厚い面の皮を貫いてゲンドウの釘が突き刺さった。
「越中リョウコ中尉・・・・いや特務監査官と言った方がいいのかな」
「・・・お見通し、と言う訳ですか」
「あまり浮気ばかりしていると、そのうち誰からも相手にされなくなるぞ」
言葉の上ではともかく、ゲンドウは加持がミサトから新しい女に乗り換えた事を非難しているのではない。
特務監査官とは国連軍に浸透していたゼーレ(およびネルフ)の勢力を一掃する為に内務監査を目的として新設された監査局の裏の構成員である。
裏の顔を持つ女(美人であると言うのはこの際どうでもいい事で)と加持の交際が意味する物は一つしかなかった。
『今度は国連軍か?』
と、そう言う事である。
「以後、慎む事にしますよ。では・・・・」
加持の姿が執務室から消えると、あとにはゲンドウだけが残された。
「変わらんな・・・・・どいつもこいつも」
やがてゲンドウも立ち上がり、広大な執務室を後にした。
ごすっぶしっばきっどごっざすっぐしゃっぱきっぼきっぐきっごきっげしげしばすっごがっぼこっばこっめしゃぁっ!
身代わり人工知能ズ
弾劾翁「と、年寄りは大切に・・・・」
02「いてえ、いてえよぉ・・・・・」
旧03「うう・・・こんなのばっかり・・・・」
新03「ぐぶええ・・・」
04「ふ、普通ここまでしないわよぉ・・・・」
惣流アスカラングレー嬢「あんまり舐めた真似してんじゃないわよ! しまいには大家に言って追い出させるわよ!」
多田「(恐怖)わ、わかりました。次できっちり完結させましょう。しかしほとぼりが冷めたとは言え追い出しネタはちょっとまずいんですが」
アスカ嬢「ごちゃごちゃうるさいわねえ! とっとと書きなさいよこのグズ!」
多田「ひぃぃ・・・・みなさん、また公約違反をしてしまいました。誠に申し訳有りませんが、今しばし拙作にお付き合い下さい」