レイをお供に道のど真ん中を進む上機嫌のアスカである。
それに対してレイはかなり不機嫌だが。
この二人、いつのまにやら仲良くなってしまった。
やはりユニゾン特訓がきっかけだろう。
「レイー♪ 次は水着よ水着ッ!」
「はいはい、もうどこでもいいわよ…。」
「なによ? 今日はえらくご機嫌ナナメじゃない?」
「気持ちよく寝てたところをたたき起こされりゃ不機嫌にもなるわよ…。
大体、久々に訓練もなにも無い日なのに何が哀しくてオンナ二人でショッピングな訳?
それだけならまだいいわよ…。
なによ…? この量…。」
そうなのである。
アスカの買い物の量はハンパではなかったのだ。
色々な店の一番大きな紙袋を両手に三つずつほど持ってたりする。
「しょうがないじゃない? 荷物持ち担当のシンジは訓練、ヒカリは旅行の準備で忙しいんだから。
おまけに加持さんもつかまんないし…。」
「そうなのよね…せっかくシンちゃんに甘えようと思ってたのに…。
よ〜し、こうなったら買って買って買い倒してやるわ!」
「その意気よ、行くわよっ!」
「お〜!」
そして場面はとあるデパートの水着売り場。
大胆なカットの水着を持ってくるレイ。
「へへ〜ん♪ これ着てシンちゃん誘惑しちゃおっかな?」
アスカはそう言って水着を見せてくるレイの胸を無言でつかむ。
「な…なにすんのよっ!?」
「アンタねぇ…。それ着るにはかなり足りないんじゃない?」
この一言で石化するレイ。
「ま、アタシは大丈夫だけどね〜♪」
「ヒ…ヒトが気にしてる事を…。」
トコロ変わって屋上の喫茶店へ。
「せっかくの修学旅行だもん。パァーッと気分を解放しなきゃ。」
「修学旅行行けるのかな?」
「そう、そこが問題なのよね…。
仮にミサトはいいと言ったして、大体あのリツコがそう簡単に了承すると思う?」
「………思わない。」
「………。」
「………。」
「「…はぁ〜。」」
葛城家、バスルーム
ペンペンが気持ちよさそうに浴槽で浮かんでたりする。
いいね、鳥は…。
「ええ〜〜っ!!」
隣の部屋からのアスカの叫び声で溺れかける楕円系のナマモノ。
ペンギンの癖に溺れるなよ…。
シンジの部屋、ダイニング
「ホントに修学旅行に行ってもいいの!?」
「そうよん。」
食ってかかりそうな勢いのアスカとは対照的に信じられないと言った感じのレイ。
シンジはお茶を飲んでいる。
第七使徒との戦いの後、結局アスカはそのままここに居着いてしまった。
「ホントにいいの!?」
レイとしてはそりゃ信じかねるだろう。
「ホントにいいわよ。」
「「やった〜!」」
「ただし!」
「「ただし?」」
「もし使徒が出たら速攻で帰ってきてもらうわよ。
後、シンちゃんはお留守番ね。」
アスカはシンジを横目で見る。
「あんたはそれでいいの?」
「…別にいいよ。」
視線をレイに向ける。
「レイは?」
「シンちゃんには悪いけど…行くっ!」
「よ〜し、そうと決まればさっさと準備するわよ!」
「お〜!」
完全に舞い上がるアスカとレイ。
二人はドタバタと部屋に帰っていった。
「…やれやれ。 よっぽど嬉しかったみたいね。」
「で、僕を残す本当の理由は?」
「やっぱり解っちゃうのね。
じゃあ、はっきり言うけど…リツコの実験に付き合って欲しいの。」
「そんな事だろうと思いましたよ。」
同時刻、トウジの家。
「おに〜ちゃ〜ん、お客さんやで〜。」
「わしに客? 誰や?」
ここに銀髪緋眼の少年の姿があった。
「オマエか…。
ま、あがれや。」
「修学旅行だって?
準備に忙しいところ悪いけど…ってその様子だとわかってたみたいだね。」
「ああ、そろそろ来る頃やと思ってたからな。
それに準備はもうおわっとる。」
空港
「二人ともいっしょに行けて良かったね。」
「おーーっ。シンジ、残念だったな。」
「お前の分まで楽しんできたるわ。」
口々に勝手なことをいって出発するクラスメートたち。
その様をシンジは穏やかに見送った。
ネルフ内、リツコの部屋
分厚い強化ガラスで隔てられた実験室でシンジが翼を展開している。
リツコ達は遮光フィルタが降りているにもかかわらず、尚も漏れてくる光で目をやられない様にサングラスをしていた。
「フィルタを三重に掛けているのにまだ光が見えるなんて…。
マヤ、計測値は?」
「ご…5670000TAHです。」
「…信じられないわね。
これだけのこれだけのエネルギーなのに熱量がゼロだなんて…。」
「ちょっち解らないんですけど?」
「ミサトでも解るように言えば、太陽を間近で見ているのに全然熱くないってことよ。」
『あの〜…何時までこうしてればいいんですか?』
「じゃあ、次のフェーズに移るわよ。」
二時間後、作戦会議室
その頃、この作戦会議室では冬月、リツコ、青葉、マヤ、シンジが偵察ヘリから送られてきた写真を見ていた。
「これではよくわからんな。」
「しかし、この影は気になります。」
「もちろん、無視はできん。」
「MAGIの判断は?」
「五分五分です。」
「シンジ君、どう思う?」
「間違い無いですね。」
「現地へは?」
「既に、葛城一尉と日向二尉が到着しています。」
「ファーストとセカンドは?」
「先ほど在日国連軍機で空港に到着しました。 今はVTOLでこちらに向かっています。
ただ…。」
「ただ、なんだね?」
「…二人とも気絶してます。」
浅間山、地震観測所
ミサトと日向がモニターを凝視している。
しかし、これと言った変化みられない。
徐々に警告灯が点灯していく。
たまらず所員が声を上げる。
「もう限界です!」
「いえ、あと500お願いします。」
さらに潜っていく観測機。
バシッと言う音が室内に響く。
「深度1200。耐圧隔壁に亀裂発生。」
「葛城さん!!」
「壊れたらウチで弁償します。あと200。」
その時、日向が叫んだ。
「モニターに反応!」
「解析開始。」
しばらくして、ついに観測機は圧壊した。
「観測器、圧壊」
「解析は?」
「ギリギリで間に合いましたね。パターン、青です。」
「まちがいない。使徒だわ。」
ミサトは振り向き、よく通る声で言う。
「これより、当研究所は完全閉鎖。
ネルフの管轄下となります。一切の入室を禁じた上、過去6時間以内の事象は全て部外秘とします。」
研究所にサイレンが響く。
同時にミサトは足早に部屋を出ていき、電話をかける。
「碇司令あてにA−17を要請して、大至急。」
『気をつけてください。これは通常回線です。』
「わかってるわ。さっさと守秘回線に切り替えて!」
会議室
「A−17! こちらから打って出ると言うのか!?」
「そうです。」
驚いている委員会の面子に比べ、冷静そのもののゲンドウ。
「ダメだ危険すぎる。15年前を忘れたとは言わせんぞ。」
「これはチャンスなのです。これまで防戦一方だった我々が、初めて攻勢に出るための。」
「リスクが大きすぎるな。」
「しかし、生きた使徒のサンプル。その重要性はすでに承知のことでしょう。」
「…失敗は許さん。」
消えるモノリス。
「失敗か。その時は人類そのものが消えてしまうよ。
碇、本当にいいんだな?」
「…ああ、シンジがいるからな。」
ネルフ
チルドレンたちに写真を見せるリツコとマヤ。
巨大な胎児のようなものが写っている。
「これが使徒?」
「そうよ。まだ完成体になっていない。蛹のような状態ね。
今回の作戦は、使徒の捕獲を最優先とします。
できうる限り原形をとどめ、生きたまま回収すること。」
「できなかった時は?」
「即時殲滅。いいわね。」
「はい。」
「作戦担当者は――」
「はいはーい! アタシが潜る!」
リツコの言葉を遮って、手を挙げながら元気に立候補するアスカ。
「アスカ。弐号機で担当して。」
「は〜い。こんなの楽勝じゃん。」
「私は?」
静かに聞くレイ。
「プロトタイプの零号機には、特殊装備は規格外なのよ。」
「それにこのフィールドではキミのチカラが十分に発揮できないしね。」
リツコとシンジの発言にこくりと頷くレイ。
「レイと零号機は本部での待機を命じます。」
「はい。」
「全く、ついたと思ったら国連軍機が待機してるんですもの。
温泉くらい行かなきゃやってられないわ。」
アスカの台詞にこくこくと頷くレイ。
そーだそーだと言いたいらしい。
「やっぱり…時間からしてそうかなとは思ってたけど。
でも、10分足らずでここまでこれるんだから終わってから送ってもらえば?」
この台詞を聞いて二人の顔からサァッっと血の気が引く。
「フライトジャケットは重いし…。」
「荷重で胸は潰れるし…。」
「「あんな思いはもうこりごりよ!」」
「A−17が発令された以上、すぐに出るわよ。支度して。」
ロッカールームへ向かう通路
シンジとレイが沈痛な面持ちで歩いている。
「…今度は誰が送られてきたんでしょうか?」
「おそらくは………サンダルフォンだろう。」
会話はしているが二人ともその視線は前を歩くアスカに向けられている。
「彼が…ですか。」
「ああ…。」
「アスカ…いえ、彼女はなにかきっかけさえあれば覚醒する段階まできています。
おそらくは今回の戦闘で…。」
「………そうか。 できれば思い出してもらいたくは無いが…な。」
「ええ…思い出したとき彼女はかなりショックを受けるでしょうね…。」
二人はアスカの背中を哀しい目でただ見つめていた…。
ロッカールーム
いつものようにプラグスーツを着るアスカ。
傍らにはリツコがいる。
「…耐熱仕様のプラグスーツって言っても、いつもと変わらないじゃない。」
「右手首のスイッチを押してみて。」
書類に目を通しながら言うリツコ。
言われた通りにスイッチを押すと、プラグスーツがドンドン膨れ、ダルマのようになってしまった。
「イヤアアァァ! なによ! これぇ!」
「弐号機の支度もできてるわ。」
かなりおかしい姿のアスカを見ても冷静なままのリツコ。
ケイジ
「なによ! これえぇっ!!」
アスカの叫び声が響く。
潜水服のようなものを着ている弐号機。
なぜか猫背気味に、座って両足を伸ばしている。
それはもう、ぬいぐるみのように。
その姿はかなり…笑えてしまう。
「耐熱耐圧耐核防護服。局地用のD型装備よ。」
「これがわたしの弐号機…。」
呆然となるアスカ。
「…イヤだ。アタシ降りる。
こんなのはシンジと初号機がお似合いよ。」
「そいつは残念だな。」
遠くから響いてくる加持の声。
「せっかくアスカの勇姿が見れると思ったんだがなぁ。」
「イヤアァッ!」
叫びながら隠れるアスカ。
でもやっぱり膨れたお腹は隠れてない。
「でも、こんなダサイの着て、加持さんの前に出る勇気ないわ。」
「困りましたね。」
「そうねぇ。」
本当に困った様子のシンジ。どうやって説得しようか考えていたら、レイが先に口を開いた。
「私がいこうか?」
その瞬間、アスカはとたんに笑顔になる。
「そうしましょう。
じゃそういうことで、アタシ着替えてくるわ。」
そう言ってケイジを出ていこうとするアスカ。
「さっき言ったでしょ? 規格外だって。
もちろん初号機にもね。」
アスカは出ていこうとしたまま固まっていた。
浅間山仮説基地
「エヴァ弐号機及び初号機、到着しました。」
「両機はその場にて待機。
レーザーの打ち込みと、クレーンの用意急いで。」
弐号機、エントリープラグ
「あれ? 加持さんは?」
『あのヴァカはこないわよ。仕事ないもの。』
「ちぇっ。せっかく加持さんにいいとこ見せようと思ってたのに。」
どこかのロープウェイ
加持と一人のおばはんが乗っている。
「A−17の発令ね。
それには現資産の凍結も含まれてるわ。」
「お困りの人のさぞや多いでしょうな。」
「なぜ止めなかったの?」
「理由がありませんよ。
発令は正式なものなんでね。」
「でも、ネルフの失敗は世界の破滅を意味するのよ。」
「彼らはそんな傲慢ではありませんよ。」(それに、シンジ君達がいるからな…)
浅間山、火口付近
戦闘機が数機飛んでいる。
シンジはそれを見て表情をゆがめる。
「…国連軍…。」
リツコとマヤから通信が入る。
『そう。作戦が終わるまで空中待機してるのよ。』
『手伝ってくれるの!?』
アスカが明るい声を上げる。
「いや、後始末でしょう?」
『ええ、そうよ。』
『わたしたちが失敗したときのね。』
『どういう事よ。』
「使徒を僕たちごとN2爆雷で処理するつもりでしょう。」
『そうよ。』
『ひっどい! 誰がそんな命令出すの?』
『わたし達、大人よ。』
やがて、準備が整った。
「外部電源、異常なし。」
「発進準備完了。」
「了解。アスカ、準備はいい?」
『いつでもどうぞ。』
「では、エヴァ弐号機。発進。」
ウインチが回り、弐号機が徐々に降下していく。
「見て見て! シンジ!」
『ん?』
「ジャイアント・ストロング・エントリー!」
『オキナワ行けなかった事まだ根に持ってたのか…。』
浅間山火口内
「現在、深度170。沈降速度20。各部問題なし。
視界はゼロ。なにもわからないわ。
CTモニタに切り替えます。」
モニタが切り替わる。
「これでも透明度120か…。」
現在の深度を伝えるマヤの声だけが響いている。
いつも以上に皆、緊張している。
やがて、深度が1000を越える。
『深度1020。安全深度オーバー。』
しかし、なにも発見できない。
『深度1300。目標予測地点です。』
『アスカ。なにか見える?』
「反応なし。いないわ。」
『思ったより対流が速いようね。』
『目標の移動速度の再計算を行います。』
『おねがい。再度沈降、よろしく。』
また、マヤのカウントだけが響く。
突然、何かが割れる音が響く。
『第二循環パイプに亀裂。』
『深度1450。限界深度、オーバー。』
『目標とまだ接触してないわ。続けて。
アスカ、どう?』
「まだ、持ちそう。さっさと終わらせてシャワー浴びたい。」
『近くにいい温泉があるわ。終わったら行きましょ。』
しかし、あちこちから破砕音が響いてくる。
そして、ついにナイフの留め具も弾ける。
『設計ミスね。』
『ええ…。』
そして、最大限界深度をも超える。
『葛城さん! もうこれ以上は!
今度は人が乗ってるんですよ!』
日向がたまらず叫ぶ。
『この作戦の責任者はわたしです。続けてください。』
「ミサトの言う通りよ。まだいけるわ。」
強がりともとれるアスカの言葉。
だが、その直後にまたも破砕音が響き、一瞬焦るアスカ。
そして、ついに使徒を発見する。
「いた!」
『目標を映像で確認。』
『捕獲準備。』
キャッチャーのアームが伸びる。
『お互い、対流に流されているから、チャンスは一度しかないわよ。』
「わかってる。」
そして、見事に使徒を捕獲するアスカ。
「目標、捕獲しました。」
『ナイス、アスカ。』
ため息をつき、胸を撫で下ろす仮説基地の一同。
「捕獲作業終了。これより、浮上します。」
『アスカ、大丈夫?』
「当たり前よ。
案ずるより生むが安しってね。やっぱ、楽勝じゃん。」
『まだ終わってないよ。 この間の使徒の事忘れたの?』
「うるさいわねぇ。」
仮設基地
「緊張がいっぺんに解けたみたいね。」
「そう?」
「あなたもホントは今回の作戦、怖かったんでしょ?」
「まあね。下手に手を出せばあれの二の舞ですものね。」
「そうね…。
セカンドインパクト。二度とゴメンだわ。」
突然鳴り響く警報。
浅間山火口内
「なによ!これぇ!」
動き始めている使徒。
『マズイわ! 孵化を始めたのよ! 計算より速すぎるわ!』
『キャッチャーは?』
『とても持ちません!』
『捕獲中止! キャッチャーを破棄!』
素早いミサトの判断とそれに従うアスカ。
電磁柵を突き破って出てくる使徒。
『作戦変更。使徒殲滅を最優先。
弐号機は撤収作業をしつつ、戦闘準備!』
『アスカ、ナイフを落とす。受け取れ!』
弐号機がナイフを落としたことに気づいていたシンジが迅速に動く。
「了解!」
しかし、使徒はもう目の前まで迫っている。
「正面!
バラスト放出!」
重りを切り離し、浮き上がる弐号機。
寸前で直撃を免れたが、使徒はあっと言う間に通りすぎていく。
「速い!」
初号機のナイフが到達し、それを構える。
「来たわね!」
再び迫る使徒。
ナイフで応戦する弐号機。
使徒は大きな口を開き、触手をくねらせている。
『まさか、この状況下で口を開くなんて。』
『信じられない構造です。』
ナイフで触手の攻撃を受け止めるが、D型装備に食いつかれてしまう。
そこに誰かがアスカにコンタクトを取ってくる。
(コ・・・ク・・レ。)
「なに?」
(・・ロ・・シ・・クレ。)
『アスカ、誰と喋ってるの!?』
(コロシテクレ…。)
(もしかして、使徒がアタシに話し掛けてるの!?
でも、この声…どこかで…?)
(ソシテ、アノオカタニツタエテホシイ…。)
「あの御方って誰よ?」
(アナタガカツテアイシタオカタダ…。)
「アタシがかつて愛したヒト…?」
徐々にアスカの蒼い瞳の色が変わって行く。
そして…いつか見た夢の内容が鮮明に蘇る。
『私には…主のお考えになる事など窺い知れない。』
『そう…では僕の邪魔をしないでほしい。』
『それは…できないわ、これは主に命じられた命令ですから。』
私は愛するあの御方…ルシフェル様と対峙していた。
『例え敵になる貴方でも。』
『ミカエル!』
ルシフェル様は目の前の私の名前を叫んだ。
それが戦いの開始の合図となった…。
戦いが始まる、天使対天使の哀しい戦いが。
神から生まれ、神に愛された者同士が。
地の天使の彼が、風の天使の彼が、水の天使の彼女が堕天使を蹴散らす。
私はルシフェル様といまだ対峙したまま動かない。
いや…動けなかったんだ。
両軍入り乱れる中、私達二人の周りだけは刻が止まっているかのように。
無限の時とも思えるその場に亀裂が生じる。
それは一瞬の出来事だった。
それは誰の目にも留まらない二人だけの瞬間。
私の持つ剣(つるぎ)がルシフェル様の胸を貫く。
彼は動かなかった。
全てを諦めたように。
おそらくは私を傷つけない為に。
私はは苦しみながら彼を貫いた。
絶対者の命には逆らえないから。
涙を流しながら。
彼女の愛する者の名を叫びながら。
そして…彼は堕ちた。
地獄の底に。
冥府よりもなお暗き所へ。
そうだ…アタシはルシフェル様をこの手で…。
『アスカ!アスカ!!』
「…そう、そうだったのね。
レイの…あの娘の言っていた意味がわかったわ…。」
「あなたの敵では無い事は確かよ。
それに、もうすぐ解るわ…あなたならもうすぐ…。」
アスカは使徒…サンダルフォンをじっと見据えた。
「言い残す言葉はある?」
(アア…アノオカタ…ルシフェルサマニツタエテホシイ…
サイシュウテキニドノヨウナハンダンヲクダサレタトシテモ…
オレハアナタヲソンケイシテイルコトニカワリハナイト…。)
「そう、解ったわ。
…ごめんね。」
(アヤマルコトハナイ…。)
アスカは使徒に手をかざす。
一瞬の後、サンダルフォンの身体は崩壊していった…。
(アリガ…ト…ウ…。)
軽井沢、日本旅館
「シンジ、ちょっと。」
アスカが旅館に入ろうとしていたシンジを呼びとめる。
「なに?」
「ルシフェル様、サンダルフォンから伝言があります。」
「!!………聞こう。」
「はい…、『貴方が最終的にどのような判断を下されたとしても…
俺は貴方を尊敬している事には変わりはない。』…と言ってました。」
「…そうか、ありがとうミカエル。 よく伝えてくれた。
そろそろガブリエルも来るはずだ。 今日はゆっくりしよう。」
「いえ…私は貴方のお側にてお仕えする事はできません。」
「…何故かな?」
「………私はこの手で貴方を…貴方を刺したのです。
そして貴方は墜天した…。」
「そうだな…だが僕はここにいる。 それでいいじゃないか。
僕は気にしてはいないよ。」
夕日を背にしてにこりと笑うシンジ。
そしてそれはアスカ…ミカエルが幼い頃からいつも見てきた笑顔そのものだった。
蒼い瞳に思わず涙が溢れる。
「は…い。」
「それとこれはガブリエルにも言った事なんだけど…
敬語を使う必要はないよ。 今は君と同じ人の身であり、同じチルドレンなんだからね。」
シンジはアスカの頭をくしゃくしゃっと撫でながら笑顔で言った。
「は…うん、わかった。」
そこにミサト登場既にオヤジモード全開だったりする。
「なぁに〜シンちゃんアスカにまで手ぇ出したわけ?
レイが見たら怒るわよぉ〜♪」
「な、ナニ言ってるんですか、ミサトさん。
手出したって、そんな事してませんよ。」
「そお〜? アスカの方はまんざらでもないみたいだけど?」
チラッとアスカを見るシンジ。
泣き笑いの顔でシンジの腕にしがみついている。
「シンジ君、もう一人のお姫様が到着したようよ。」
そう言ってリツコとミサトはしばらく傍観を決め込んだ。
温泉、女湯
アスカとレイの二人で入っている。
ちなみに男湯では、シンジがレイに連れて来てもらったペンペンが遊んでいる。
レイとアスカはゆっくりと沈んでいく夕日を眺めていた。
「思い出したのね…全てを。」
「ええ…。」
湯船を泳ぎ回るペンペンを静かに眺めるシンジの胸には、薄い痕が残っていた…。
秀真:ミレニアムだから…
SL:よく意味がわからんが、そう言うことにしておこう。
しかし、何で俺が今回のパート書かにゃならんのだ?
秀真:ふふ、それはね…誰にも知られちゃいけないことなんだ
SL:それがあったから今回から監修にまわったと言う事か?
秀真:そうにゃんです!
SL:それはそうと…なんでナリ言葉じゃないの?
秀真:年がかわったから
SL:あ…そう。
秀真:なに?
SL:いや、なんでも。
それにしてもなかなかOK出なかったけど…何で?
秀真:何でってそらあ〜たアレでしょ
SL:アレとわ?
秀真:納得いか〜んと思ったから
SL:そうか…で、やっとOKもらえたこれは納得いきましたかな?
秀真:まぁ納得ぐらい
SL:キビシイな…。
秀真:そうだね
SL:さて、今回から監修にまわるという事で何か言いたいことは?
秀真:すみません、としか言い様が…
SL:…だろうな。
ま、しょうがないけど。
秀真:そうね…
SL:さて、そろそろお開きにしますか?
秀真:そうっすね
SL:それでは、皆さん見捨てないでね〜〜〜〜〜〜〜〜!!
秀真:さようなら〜〜〜