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「碇くん、これ。チョコレート。」

クラスの中で1,2を争う美少女、そして「エヴァンゲリオン零号機パイロット」綾波レイ。

彼女が「エヴァンゲリオン初号機パイロット」碇シンジにきれいに包まれたものを差し出した瞬間、クラスの中は騒然とした雰囲気に包まれた。

「あ、ありがとう。」

それをもらう本人も驚いたらしく、こういうのが精一杯だった。

「ちょっと、ファースト!!」

そこへ、いつものように、いや、いつも以上に怒りのオーラを発した惣流・アスカ・ラングレーが怒鳴ってきた。

「なに、弐号機パイロット。」

いつものようにさらりと返すレイ。

「あ、あんた、今日が何の日かしってんの!!」

「2月14日。それがどうかした?」

「そうじゃなくて、何の意味があるのかしってんの?」

「いいえ、知らないわ。」

「なら、どうしてチョコレートを馬鹿シンジにあげようと思ったの?」

「葛城三佐に言われたから。」

「そうなんだ。」

レイの言葉を聞いて、少し落ち込むシンジ。

「どうしたの、碇くん。」

レイは少し落ち込んだシンジに話しかけた。

『何だ、ミサトに言われただけか』

一方のアスカは、内心ホッとしていた。

「ミサトに言われたからシンジにやったわけね。」

念を押すアスカ。だが、返ってきたのは思いがけない言葉だった。

「いいえ、違うわ。葛城三佐は、こういった。「2月14日にシンジ君にチョコレートをあげたら、絶対喜ぶわ」だから私はあげようと思ったの。碇くんが喜んでくれるなら、そう思って。」

それを聞いてシンジは、つくづく自分がいやになった。

『綾波は僕のためにくれたのに。』

『それをミサトさんに言われたからくれただなんて思ってしまって』

落ち込んでいるシンジを見て、レイはよけいなことをしてしまったのではないかと、心配になった。

『碇君、うれしそうじゃない、どうして?』

「ごめんなさい、碇君。迷惑だった?」

「「そんなことない、うれしいよ。それより、僕のほうこそごめん。」

「どうしてあなたが謝るの?」

「綾波は僕のためにくれたんだよね?」

「そうよ。」

「それなのに、僕はミサトさんに言われたから、仕方なくくれたんだと思ってしまって・・・。だからごめん。」

「碇君は、私からもらってうれしい?」

「もちろんだよ。」

「それならいいの。」

レイはそう言うと、ゆっくりと微笑んだ。

シンジはヤシマ作戦の時以来、久しぶりに見る笑顔に、素直に喜んだ。

『綾波が笑ってくれた』

『やっぱり綺麗だよな、綾波の笑顔って」

レイの笑顔につれられて、シンジも微笑む。

『碇君が喜んでくれた』

『私もうれしい』

『私の好きな、碇君の優しい笑顔』

『心が温かくなる』

『どうしてなの?』

『わからない』

『でも。いやじゃない』

二人はどんどん自分たちの世界に入っていく。

だが、クラスメートの反応は違った。

『嘘・・・。あのファーストが笑ってる。』

『綾波さんたら、あんなにうれしそうに・・・。』

『綾波が笑ってる・・・。っと、それより、カメラカメラ。』

『シンジのやつ、あないにうれしそうに・・・。よっぽど植えとったんやな・・・。』

皆、驚いていた。初めてみる綾波レイの笑顔に・・・。(約一名をのぞいて。)

その中でいち早く立ち直ったのは、アスカだった。

「ちょっとシンジ、それ開けてみなさいよ。」

「え、ど、どうしてだよ、アスカ。」

「いいじゃないの。別に減るもんじゃないし。それとも私の言うことが聞けないって言うの?」

「わ、わかったよ。ねえ、綾波、開けてもいいかな?」

「ええ、いいわ。」

シンジは丁寧に包まれた包装紙を取る。

そして箱のふたを開けて中を見た瞬間・・・

真っ赤になって、うつむいてしまった。

シンジの様子を見て不思議に思ったアスカは中を見て、そのまま固まってしまった。

続いて、何人かが箱の中を覗いたが、一目見ると、信じられないような顔をしたまま友人たちのところに報告しに戻っていく。

その後少しして、クラス所から冷やかしの声が挙がった。

箱の中はハート型のチョコレートでその上に

「I LOVE YOU」

と書かれていた。

呆然としていたアスカは、やおら自分の席に向かって歩くと、横にかかった鞄から箱を取り出し、ケンスケに向かって放り投げた。

「な、何だよ惣流。」

「それ、あげるわ。」

「い、いいのか?」

「義理よ、義理。一つももらえないんじゃ、かわいそうだと思って、シンジに上げるつもりだったけど、その必要ないみたいだし・・・。」

「え、で、でも・・・。」

だが、それは義理というには、あまりにも綺麗すぎた。

「いいからとっときなさいよ。どうせあんたももらえないんだから。」

『どうせもらっとかないと、叩かれるだろうし、とりあえず貰っておくか。』

「わかった、ありがたく受けとっとくよ。」

しばらくして、冷やかしの声に絶えられなくなったのか、シンジはチョコレートを持ったまま、レイの手を引っ張って、教室から出ていってしまった。

 

 

「どうしたの碇君、顔が赤いわよ。」

教室を飛び出した二人は、屋上にきていた。

「どうしたのって、普通、こんなこと書かれたら、赤くなっちゃうよ。」

「これは普通の飾りではないの?」

シンジは書かれている「I LOVE YOU」という言葉について説明しようとしたが、あまりにも照れくさいので、話を逸らすことにした。

「それより綾波、これって手作りだよね?」

「ええ、私が市販のものを買ってきて、溶かして型に入れて固めたの。」

「よく知ってたね、そんなこと。」

「碇指令に聞いたの。そしたら、快く教えてくれたわ。」

「え、と、父さんが!!」

シンジは一瞬、エプロンをつけて楽しそうにチョコレートを溶かしている、父ゲンドウの姿を思い浮かべかけて、やめた。

「そのときに、碇指令に「I LOVE YOU」とつけるのが普通と教わったの。碇君、これはどういう意味なの?」

『どうして嘘を教えるんだよ、父さん』シンジはそう思いつつ、このままではらちがあかないと思い、覚悟を決めて話すことに決めた。

「いい綾波、この「I LOVE YOU」っていうのは、普通好きな異性に言う言葉なんだ。」

「好きってなに?」

「好きって言うのは、たとえば・・・。」

「たとえば?」

「その人と一緒にいたいとか・・・。」

「・・・・・・。」

「その人のことを考えるだけで、心が温かくなるとか・・・。」

「・・・・・・。」

「その人がいなくなることを考えると、寂しいとかc・・・。」

「・・・・・・。」

「その人を守ってあげたいとか・・・。」

「・・・・・・。」

「その人のそばにいると、安心できるとか・・・。」

「・・・・・・。」

「ごめん、ちょっとうまく説明できないや。」

「・・・・・・。」

「どうしたの、綾波?顔が赤いけど・・・。」

「それが好きっていうことなの?」

「うん、たぶんそうだと思う。」

「それなら、私は碇君のことが好き。」

「え、え、え〜!!」

「私は碇君と一緒にいたい。碇君のことを考えると、心が温かくなる。碇君がいなくなることを考えると、寂しい。碇君を守ってあげたい。碇君の近くにいると安心できる。」

「・・・・・・。」

「これは好きってことなんでしょ?それとも、私にこう思われるのは迷惑?」

「そんなことない!!僕も、僕も、僕は・・・。」

シンジは言葉が続かない。

少しの沈黙。そして、シンジははっきり嫁げた。

「僕は綾波のことが好きだ。」

と。

 

 

エピローグ

 

 

結局、シンジ達は授業が始まって終わるまでの間、戻ってこなかった。

そして休み時間。

「ガラッ」

教室に誰か入ってきた。

それがシンジ達だと気づいたアスカは、今までどこにいたのか問いつめようとした。

「シンジ!!、ファースト!!あんた達いったい今までどこに・・・。」

ここまで言いかけて、声を失ってしまった。

ほかのクラスメートも同様に、声を失っていた。

そこにとても信じられないものを見たからだ。

教室の入り口にいたのは、顔を赤くしているシンジとレイが、仲良く手をつないでいる姿だった。

「ちょっと!!ファースト!!あんたシンジから離れなさいよ!!」

「いや。」

はっきりと拒否するレイ。

それが気に障ったのか、ますます怒るアスカ。

「なによ!!私に逆らう気?それにシンジだっていやがってるじゃない!!」

「いいえ、碇くんはいやがらないはずよ。」

「ど、どうして!!」

「私たち、恋人同士になったの。」

その言葉に、クラス中が凍り付いた。

「ちょっと、シンジ!!それどういうことよ!!」

「あ、そ、それは、その・・・。」

シンジは少し言いよどんだが、不安そうなレイの目を見て、決心が付いたのかはっきりと言った。

「僕は、綾・・・レイとつきあうことにしたんだ。」

「あんた、それ本気?」

「うん。」

しばらく二人を見比べた後、アスカは、こう言った

「ふん!!馬鹿シンジにはファーストみたいな女がお似合いよ!!」

「碇くんは馬鹿じゃない。」

シンジはなにも言わなかったが、レイのことを馬鹿にされたと思ったのか、少し怒ったような目をしていた。

「なによ、二人して!!ばっかみたい!!」

こう言い残して、さっさと自分の席に戻っていった。

シンジとレイは何か言おうとしたが、あっという間にクラスメートに囲まれて、なにも言えなかった。

「ねえ、アスカ、いいの?碇君のこと。」

自分の席で一人きりになったアスカに、洞木ヒカリが声をかけてきた。

「シンジが自分で選んだもの、私がなにも言えるわけないじゃない。」

「それはそうだけど・・・。」

「ま、馬鹿シンジよりいい男なんて、どこにでもいるわよ。」

アスカはそれっきり口をつぐんでしまった。

ヒカリもそれ以上は声をかけなかった。

 

 

お・ま・け

 

 

ネルフ本部司令室

 

「碇指令、何のようでしょうか。」

バレンタインデーの翌日、レイは碇ゲンドウに呼び出された。

「レイ、チョコレートはどうした。」

「あれは碇くんにあげました。」

それを聞いたゲンドウの眼鏡が少しずり落ちた。

「そ、そうか。で、シンジはなんと言っていた?」

「とても喜んでくれました。それに私のことを好きだと言ってくれました。」

頬を少し染めながら答えるレイ。

心なしか、ゲンドウの肩がふるえているような気がする。

「レイ、おまえはどうだ?」

「私も碇くんが好きです。ずっと側にいてあげたいと思います。」

「そ、そうか、わかった。もう帰っていいぞ。」

「では、失礼します。」

レイは司令室から出ていった。

「碇、ふられたな。」

ゲンドウの隣で話を聞いていた冬月が、声をかける。

「かまわん。何事にも、イレギュラーは存在する。」

「そうか?まあ、いい。それより孫の顔が楽しみだな。」

「冬月、気が早いぞ。」

「なに、どちらに似ても、ユイ君そっくりになるだろうと思っただけだ。」

「どうしてだ?」

「シンジ君はどちらかといえば、ユイ君に似だし、レイはあれだからな。」

「サードインパクトなど起こさなくても、ユイにあえるかもしれんと言うことか。」

「まあな。それに、「おじいちゃん」と呼ばれるのも、悪くはないぞ。」

「ふん、今更私にそんな資格はない。」

「それを決めるのは、シンジくんたちだ。」

「私の孫か・・・。」


 
あとがき(のようなもの)


 

とりあえず、みなさん初めまして。

この話を何とかバレンタインデーに間に合わせようとしましたが、ちょっと無理でした。

まあ、何とか形になったので、これで良しとします

この話も、最初はこんなにLRSな話にするつもりではなかったんですが・・・。

自分の文才のなさが、にじみ出ています(^_^;)。

このSSの感想を、文句でも何でもいいので送ってください。

でわまた次の話で・・・。




 てっちゃんさんの『I LOVE YOU』、公開です。



 バレンタイン記念・バレンタインネタ、
 今年最後の話です(^^)


 たぶん唯一のLRS物かな?!



 幸せになった人だけでなく、
 そうならなかった人や
 まわりの人も書いているので、

 深くなったかな?



 さあ、訪問者の皆さん。
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