だが、再会したシンジへの言葉は再会を喜ぶものではなく、「汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオン初号機」に乗れというものだった。
碇シンジが「人造人間エヴァンゲリオン」に搭乗し、使徒と戦うことを拒否していたところ、一人の少女が担架に乗せられ運ばれてきた。
体中に巻かれた包帯が痛々しい。
そして開口一番こういった。
「私が初号期に乗るの?パパ。」
『ど、どうしてこの子が父さんのことをパパって??』
少女のその一言を聞いて、碇シンジは完全にパニックに陥っていた。
まあ、初めてあった女の子が自分の父親を、そう呼んだのだから当然といえば当然だろう。
その前に「人造人間エヴァンゲリオン」に乗って、「使徒」と呼ばれている巨大な生物と戦えといわれていたせいもあるが・・・。
「そうだレイ、シンジが初号機に乗ることを拒否してしまったからな。」
「え、シンジって・・・お兄ちゃん!」
それを聞いてますます混乱するシンジ。
『な、何で僕のことを・・・。それよりお兄ちゃんて・・・。』
しばらく考えていたシンジだが、ある結論にたどり着いた。
「父さん!!僕だけじゃなくて母さんまで裏切ってたんだ!!」
シンジの言葉に周りの空気が凍り付く。
「どう意味だ、シンジ。」
碇ゲンドウはいち早く立ち直るとシンジに聞いた。
「だって、僕と同じくらいの年齢の子供がいるってことは、浮気をしていたとしか考えられないじゃないか!!」
「ふん、くだらんことを。」
しばらく二人はにらみ合っていたが、ゲンドウの方は多少動揺しているようだ。
「お兄ちゃん、パパのこと誤解しているみたいだから、私から話そうか?」
ギスギスした空気に耐えられなくなったのか、レイがゲンドウに問いかけた。
「いらん。それよりシンジ、おまえはいつまでここにいる気だ?初号機に乗らないんだろ。」
「乗ります。」
「シンジくん、どうして・・・。」
いきなりシンジが乗るといったので、驚くミサト。
「だって、僕が乗らなかったら僕の妹が乗ることになるんでしょ。そんなこと、できるわけないですよ。」
シンジの言葉を聞いて、ミサトは決心が変わらないうちに初号機に乗せることに決めた。
「冷却終了。ケイジ内すべてドッキング位置。」
「パイロット・・・エントリープラグ内コックピット位置に着きました!!」
「了解、エントリープラグ挿入!」
オペレーターの声とともに、初号機の軌道準備が滞りなく進んでいく。
「プラグ固定終了。」
「第一次接続開始!」
「エントリープラグ注水!!」
エントリープラグ内にLCLが満たされていく。
シンジはLCLの水かさがどんどん増えていくのを見て、おぼれてしまうのではないかと思いパニックになった。
「な、何ですかこれ。」
シンジの問いにリツコは落ち着いて答える。
「大丈夫、肺がLCLで満たされれば直接血液に酸素を取り込んでくれます。」
そう言っている間に、エントリープラグの中いっぱいにLCLが満たされた。
シンジは空気を吐き出すと、一言
「気持ち悪い」
とつぶやく。
ミサトはそれを聞いて、シンジをしかった。
「我慢しなさい、男の子でしょ。」
シンジは心の中で、
『ミサトさんは乗ったことないからそんなことがいえるんだ』
そう思ったが、口には出さなかった。
「主電源接続、全回路動力伝達、起動スタート。」
「A10神経接続異常なし。」
「初期コンタクトすべて問題なし。」
「双方向回線開きます。」
初号機のシンクロ率を見て、リツコは驚きの声を上げた。
初号機に初めて乗ったシンジのシンクロ率が、40%を越えていたからだ。
「すごいわ・・・・・。シンクロ誤差0.3%以内よ。いけるわ。」
「エヴァンゲリオン初号機!発信準備!!」
ミサトの命令とともに、次々に初号機の拘束具がはずされる。
そして、射出口に移動する。
「5番ゲートスタンバイ!」
「進路クリア、オールグリーン!」
「発進準備完了」
「了解」
初号機の発進準備が整ったのを確認して、ミサトはゲンドウに確認をとった。
指令としてではなく、父親としてのゲンドウに。
「碇指令、かまいませんね?」
だが、ゲンドウは躊躇せずあっさりと答える。
「もちろんだ。使徒を倒さぬ限り、我々に未来はない。」
「発進!!」
そして、初号機が発進された。
初号機が地上にでると、目の前に「使徒」がいた。
『シンジ君、死なないでね』
ミサトは心の中でつぶやく。
「いいわね、シンジくん。」
「はい。」
「最終安全装置、解除。」
初号機を拘束していた、最後の安全装置が取り外される。そして、
「エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ。」
初号機が解き放たれた。
「シンジくん、今は歩くことだけ考えてちょうだい。」
どうしていいかわからないシンジに、リツコから指示が飛ぶ。
それを聞いて、心の中で「歩け、歩け」とシンジは念じる。
初号機は、それに答えるように一歩を踏み出す。
オペレーター室の中で歓声が起きる。
「歩いた!」
だが、すぐに初号機はバランスを崩して倒れてしまった。
「しっかりして!早く、早く起きあがるのよ!!」
だが初号機は「使徒」に捕まってしまう。
「使徒」は、初号機の頭をつかみ、軽々と持ち上げる。
そして、左手をつかみ引きちぎろうとする。
シンジの腕に走る激痛。
「シンジ君、落ち着いて!あなたの腕じゃないのよ!!」
ミサトの声は全くシンジの耳には届いていない。
「エヴァの防御システムは!!」
「シグナル、作動しません!!」
「シールド無展開!」
「だめか!!」
そして初号機の、腕は折られてしまった
「左腕損傷!!」
「回路断線!!」
全く無抵抗の初号機に、「使徒」はさらに攻撃を加える。
初号機の頭をつかんでいた手に、エネルギーが集まる。
「シンジ君、よけて!!」
ミサトは叫ぶが、初号機は「使徒」から頭何度も攻撃を受ける。
今度は頭に激痛を感じるシンジ。
「頭蓋前部に亀裂発生!!」
「装甲がもう持たない!!」
「使徒」の攻撃が、頭を貫通する。
初号機はビルにたたきつけられ、大量の体液が吹き出す。
「頭部破損、損害不明!!」
「制御神経が次々断線していきます!!」
「パイロット反応ありません!」
「シンジ君!!」
「は!!」
シンジが目を覚ました場所は、真っ白な病室だった。