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 ピンポンパンポーン、

 「文化祭実行委員会よりお伝えします。本日16時より、第二、第三会議室は一版生徒の立ち入りが禁止されます」

 ピンポンパンポーン、

 「長嶋先生、長嶋先生。お電話が入っています。至急職員室までお戻り下さい」

 ピンポンパンポーン、

 「プロパンを使用したクラスは、16時から校庭、体育館前で回収を始めますので返しに来て下さい」

 ピンポンパンポーン、

 「後夜祭実行委員会より連絡。前夜祭実行委員会より連絡。片づけなんかちゃっちゃと終わらせて、皆体育館に18時に集合してくれ。ダンパやるぞ!」

 ピンポンパンポーン、

 「2年C組の実行委員は職員室まで電話が、あれ、あ、第一会議室に、え、お、あ、生徒会室までだ、負傷者を引き取りに来て下さい」

 ピンポンパンポーン、

 「後夜祭実行委員会より通達。ダンスパーティーは、おめかししてきてね。待ってるからね」

 ピンポンパンポーン、

 「長嶋先生電話です!。彼女からですよー」

 ピンポンパンポーン、

 「第二、第三会議室でこれより生徒会による、え、違う?今のナシ。何でもありませーん!」

 渾沌の渦。

 校舎のあちこちで屋台を壊す音や、最後の最後まで売り上げを伸ばそうとする生徒達の叫び声が氾濫していた。

 廊下をプレハブの一部を担いで駆ける者。

 夕飯の買い出しに行く者。

 暴れる者。

 一年に一回のお祭り騒ぎで、皆浮かれまくっていた。

 しかしそれも終わりに近づき、残すイベントは後夜祭のメインであるダンスパーティーのみになっていた。

 会場の校庭では舞台がつくられ、音響のテストが繰り返され、照明が運び込まれていった。

 後は陽が沈むのを待つばかりであった。










Dancing with the Moonlight.










 お疲れさまでした、という乾杯の合図で皆でジュースでグラスを合わせる。

 アタシ達のクラスは、17時には早々に片づけも終わらせていた。

 お疲れ、お疲れ、とあちこちで声がかけられる。

 ま、一番疲れたのはコイツだろうけれどね

 傍らでペプシを飲むシンジを見ながらそう思った。

 へろへろね。

 良く言っても、車に轢かれて死にかけてるカエルね。

 しっかりしなさいよ、今日が最後なのよ、そう言ってシンジの背中を叩いた。

 木、金の2日間に渡って行われた文化祭も後はダンパだけ。

 乾杯が終わったこれからが、女の戦いよ。

 気合い入れなくちゃ。

 後でね、とシンジに声をかけてアタシは教室を出ていった。




 アタシ達のクラスは喫茶店と、タコ焼きの屋台を出店した。

 2日間とも売り上げは盛況で充分元もとれ、打ち上げ代も二次会まで出るだろうという程だった。

 やっぱ目玉商品があったから当たり前よね。

 アタシが作ったケーキ。(注 実際作ったのはシンジ)

 アタシが作ったスパゲッティ。(注 実際作ったのはシンジ)

 レイが淹れたコーヒー。(注 作ったのはシンジ)

 レイが淹れた紅茶。(注 実際作ったのはシンジ)

 ヒカリが作ったサンドイッチ。(注 これは本当)

 ヒカリが作ったパフェシリーズ。(注 これも本当)

 あったりまえよね。

 しかもアタシ達がウェイトレスまでやったんだもの。

 最高2時間待ちの大盛況。

 シンジは9時〜17時のシフトで死にそうになっていたけれど。

 バイトで慣れているから大丈夫よね。

 タコ焼きはどっかの馬鹿達が作って、それなりに女子に売れていたみたいだったけど。

 そんなこんなでクラスの売上額は、学校史上売上最高金額を軽く更新した。




 アタシ達は家から持ってきた一張羅を更衣室に持ち込んで着替え始めた。

 アタシとレイとヒカリは、三人で示し合わせてチャイナドレスを持ってきていた。

 アタシは赤というより紅の生地。

 レイはスカイブルー。

 ヒカリは黒。

 似合う、綺麗、可愛い、と感想を述べあって更に第二戦。

 備え付けの洗面所に移動してお化粧だ。

 片づけでクシャクシャになっていた髪を結い上げる。

 シンジに買ってもらったアイシャドウを薄く塗る。

 シンジに買ってもらった口紅を塗る。

 シンジに買ってもらったマニキュアを塗る。

 シンジに買ってもらったマスカラを・・・。

 以下30分化粧作業に入る。

 


 シンジに買ってもらったネックレスを首に下げる。

 シンジに買ってもらったピアスを付ける。

 シンジに買ってもらったシルバーリングを左手の薬指にはめる。

 シンジに買ってもらったコームで髪をまとめる。

 シンジに買ってもらった香水をさっと一振り。

 イイな、とクラスメートの女の子が、アタシの装飾品の数々を見てうらやましそうに言う。

 碇君に幾ら使わせてるのよ、と別の子が言う。

 言っとくけどね、確かにアタシは自分でアクセサリーなんて買ったことないわよ。

 シンジに全部買ってもらったけど、自分からせがんだことないわよ。

 誕生日や、バレンタインのお返し、クリスマスで買ってもらったものだけよ。

 安物でも悪趣味でも構わないの。

 自分で買ったものを身に付けるなんて不毛だわ。

 男に買ってもらうのが一番。

 女が男のために自分を飾り立てる。

 男が女のために自分を飾り立てる。

 恋愛感情を持っている者同士なら当然のことだわ。

 本当はね、アクセサリーを身に付けなくてもいい日が早く来ればいいな、と思っているのよ。

 好きな男のために飾り立てる必要がなくなる時、それは、・・・。

 その時を思い描いてアタシは赤面してしまった。

 と、とにかく、そういうことよ、アンタ達よく覚えておきなさい。

 その日が来るまで女は、きらびやかに自分を飾り付ける必要があるのよ。

 そう言うと、その子達を尻目にアタシは仕上げに入った。




 ようやく支度が終わり、アタシ達は待ち合わせ場所に向う。

 シンジ、鈴原、カヲルの三人がこっちに気がつき、ジッと見てた。

 お待たせ、そう言うとアタシはシンジの腕を組む。

 今日はちょっと大人っぽくね。

 何ボーっとしてんのよ。

 え?

 ・・・。

 ありがと。

 シンジもなかなかよ。

 ブラックスーツにまっさらな下ろし立てのYシャツ、黒の革靴。

 紫紺のネクタイ。

 鈴原とカヲルも同じような格好をしている。

 ぼーっとしてるアタシをレイが突いてくる。

 うっさいわね。

 そしてアタシ達はそれぞれのパートナーと会場に入って行った。

 メガネ?

 ああ、アイツは照明係らしいわよ。

 どうせあぶれてるし別に良いわよね。

 すでに校庭は参加者で一杯だった。

 舞台の準備も整ったようだった。

 そして18時丁度にパーティは始った。

 スポットライトが敷地を舐めるように乱れ飛び、DJが声を張り上げて開会を告げる。

 オープニングナンバーにSAMBA DE JANEIROが大音響で流れる。

 軽快なリズムに乗ってアタシ達は踊り始めた。




 最初は外気で寒かったが、時間とともに体が熱くなってくる。

 歌声と汗がライトに反射して幻想の世界にいるようだった。

 瞬く間に時間が過ぎていった。

 途中休憩を挟んだりドリンクを飲んだりしながらも、アタシ達は踊り続けた。

 カヲルや他の女がシンジに絡んできたりするのを、何とかアタシは防いでいた。

 レイもあんなので本当に良いのかしら。

 シンジは大丈夫だよ、という顔をしてアタシを見る。

 カヲルをスッ転ばしてアタシは頷いた。

 そして最後のチークでアクシデントは起きた。

 ラストナンバーのコールがかかったと同時にライトが消え、音楽が止まった。

 電源が焼けたらしい。

 あんなタコ配線だもの、今までもっていたのが不思議なくらいね。




 どうやら復旧は無理そうな気配が漂っていた。

 残念ね、と言いつつ暗闇をいいことにシンジに抱きついた。

 残念だね、と言いつつ暗闇をいいことにシンジに抱きついてきた馬鹿を蹴散らしながら。

 チャンスとばかりにシンジの顔を下から見つめ、唇を奪おうとする。

 あれ、顔が見える。

 そっか、月が出てるんだ。

 シンジもアタシが見てるのに気がつくと、月明かりの中微笑んだ。

 そしてアタシをしっかり抱き寄せると、歌を口ずさみながら体を揺らし始めた。

 When you wish upon a star.

 Make no difference who you are.

 Anything your heart's desire will come to me.

 聞きほれた。

 シンジ、良い男ね。

 昔からだけど、格好良くなったわよ。

 アタシが感動で、泣いてる。

 一緒に歌おうとするカヲルに膝蹴りをいれながら。




 ライトがなくても大丈夫。

 お月様が照らしてくれるから。

 音楽がなくても大丈夫。

 シンジが歌ってくれるから。

 月光を浴びて踊りましょう。

 アタシはシンジの耳元でそう囁くと、そっとキスした。


つづく
ver.-1.00 1998+11/02 公開
感想・質問・誤字情報などは こちらまで!

あとがきとお詫び


 "Dancing with the Moonlight."でした。

 そろそろ学祭シーズンかな、と。

 思いつきで書きました。

 出典はサードガールと、うる星やつらの映画。

 パクってます。

 はい。

 ま、アレンジしてるし良いか。

 このシリーズ一応10話で終わらせる予定です。

 Titleにも明記してあるし。

 しかし、オチつくのか。(--;

 残り2話じゃ終わらん気がしてならない。

 どおしよう。

 取り敢えず、年内に終わる予定、です。

 たぶん。

 自信ないけど。




 次は"Both Wings"を更新します。

 なるべく早くお届けするつもりです。

 でわ、その時まで。




 感想ありがとうございます。

 あまりのありがたさに、スーパーサイヤ人になりそうです。

 湖の水を飲み干すことだって、空を飛ぶことだってできそうです。

 前回返信率300%とあとがきに書きましたが、本当に三通送られて来た方々申し訳ないです。

 しかも同じ文面。

 ごめんなさい。

 返信率108%に修正します。

 ご意見も参考にしてます。

 またよろしくお願いします。

 じゃ。(--)/







 へっぽこおまけ 第1000876話

 誰もいない部屋。

 私は一人たたずむ。

 誰も帰ってこない部屋。

 私は膝を抱えて座っている。

 私って何?

 いらない存在なの?

 誰も私を構ってくれないの?







 お腹減った。

 富士の樹海と見まごうような部屋で、ミサトは呟いた。

 お星さま願いをかなえて・・・。




 カクッ、




 合掌。



 ZEROさんの『Dancing with the Moonlight.』公開です。




 私の通っていたのは男子高校。


 後夜祭・・・そんなんあったっけ?

 多分あったんだろうけど、
 空しいモノだったんだろうなぁ

 ちっとも覚えてないや(笑)


 友達んとこの文化祭にチケット貰って行ったけど、
 ・・・厳しい所だったし、夕方前に追い出されました(笑笑)



 あぁダンパだんぱ〜

 アスカちゃんもシンジくんも楽しそうぅぅ


 シンジくんの方は、
 なんやかやとあって”楽しい”一色ではないようだけど。。。

 いや。

 その”なんやかやも”も楽しいんでしょうね(^^)

 憎いよこの!


 キザなセリフも
 臭い言葉も

 アスカちゃんには♪♪♪





 さあ、訪問者の皆さん。
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   108%・・・返信と、あと、全然関係のない年賀状でも届くのかしら(爆)




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