ずっと側にいると誓った
この年でこんなこと、笑われるかもしれない
でも、そう決めた
今も未来も生まれ変わっても
ずっと側にいる
ずっと側にいて欲しい
それだけが、僕の望み
永久に想う
君が望むなら幾らでも繰り返そう
愛の囁きを
心の愛撫を
僕は君なしでは生きられないのだから
出会った偶然に喜びを抱き
出会った必然に身を委ねよう
いつも二人でいる
確実な約束
この想いに偽りはない
今一瞬を悔いなく過ごし
永遠に飛び続けよう
独りぼっちの君へ
想う
僕達はまた一つ年をとった。
アスカは先を越されて悔しがっていた。
毎年のことだけれども。
でも一番祝ってくれたのもアスカだった。
その日のためにレストランを予約して、プレゼントを贈ってくれた。
黒の時計。
どんな衝撃にも耐えるという、高耐久性の時計だった。
プレミアがついていてなかなか手に入りにくいものだと、僕は知っている。
アスカが平然と渡すその笑顔の下で、どれだけ苦労したのかも僕は知っている。
純粋なその笑顔が愛らしい。
人目をはばからず僕は抱きしめた。
その夜の寝る間際に、”アタシは紅が良いな”と言っていたのは気になったが。
そしてもう一つのプレゼントのおかげで、僕達は徹夜した。
僕は君にとって何になりたいのだろうか。
その次の日、夢うつつに授業を聞きながら僕は考えていた。
心の支えになると誓った。
その誓いは破っていない、が、過保護にし過ぎてはいないだろうか。
アスカが想ってくれる以上に僕は彼女を想えているだろうか。
僕がどうすればアスカが喜んでくれるのだろうか。
僕は何をすべきなのか。
考える。
考える。
考える。
・・・想え
消えゆく意識が、最後にそう告げた。
どうなってしまうのか結果を恐れるより、どうすればいいのか考える方が気が楽だった。
トウジあたりに言わせれば、これも恋する者のノロケになるのだろうか。
ふと横を見ればアスカがいる。
そんな毎日がとても心地よい。
例え口を利かなくても愛おしさが浸みだしてくる。
幸福な気分で空を歩いている感覚になる。
アスカとの毎日はほぼ代わりはない。
憎まれ口を聞いて、笑って、喧嘩して、泣いて、交わる。
ここだけの話、父さんと母さんが泊まりの夜は、必ずと言っていいほどシテいた。
堅く誓わされた通り、避妊はキチンとしている。
いつかは授かればいいとは思うけれど、さすがにまだ早かった。
周りもようやく普通になった。
初めは大変だった。
一度押された烙印はなかなか消えないものだ。
友人達の助けがなかったら、まだまだ引きずっていたのではないかと思う。
何もかも元通りとはいかないけれど、以前の生活に近いものにはなったと思う。
たった一つを除いて。
綾波レイ。
アスカに出会わなかったら、もしかして僕は・・・という女の子。
僕達の仲が蜜月になるにつれて、彼女は変わっていった。
普段話している時は何ともない。
瞳。
本当に時々その紅い瞳が煌く。
僕とアスカが話していた時。
連れ添って歩いていた時。
何気なく綾波を見ると、彼女の瞳が透き通るような紅さになっていた。
例えば、アスカが燃える太陽の輝く美しさだとする。
そんな時の綾波は、闇夜に青白く光る月の儚い美だった。
普段は何ともない。
ごく希になのだ。
気のせいだ。
そう思った。
いや、そう思おうとした。
その結果、あの時なぜと後で後悔することになる。
「ほら」
家に帰ろうとする路上でアスカが繋いだ手を振り回す。
「何だよ」
一瞬肩が抜けそうになった。
「何だってコレよコレ」
そしてまた振り子のように手を回し始める。
顔に疑問符を張り付かせてアスカを見つめた。
眼を馬鹿にするように細めて見つめ返してくる。
「アタシ達が手を繋ぐ時って、同時なの」
顔に付いた疑問符が倍増した。
「だから、いつもアタシ達って無意識に手を繋げているのよ」
アスカが焦れったそうに口を尖らせている。
理解した。
目線を合わせるでもない、口にするわけでもない、僕達は気が付くと手を結ばれているのだった。
疑問符の取れた顔を見てアスカが大きな眼をさらに広げた。
「そういう時って凄い幸せな気持ちになれるの」
そしてどんなときに幸せに慣れるのか二人で羅列し始めた。
キスしている時、リクエスト前に夕飯がハンバーグだった時、腕枕している時。
結論が出たのは、A4レポート用紙が全部埋まるくらいのリストが口にされた後だった。
何でもないようなことに幸せがある、それが二人の結論だった。
「普通恋人同士ってお互い他人でしょ」
家に帰ってから2時間後、僕達は台所に立って夕食の支度をしていた。
「他人同士だと分かり合えないことがあるかも知れないけれど、アタシ達の場合最初が家族だったわけだから、普通の恋人よりお互いをわかり合えると思うの」
今やすっかり手慣れた手つきで、アスカがニンジンを刻んでいる。
「充分わかり合えていると思うけど」
少し剣呑な雰囲気を背後に感じながら冷蔵庫から牛乳を取りだした。
「だからお互い知らないことがないってことは、秘密が持てないってことよね」
いつの間にか包丁の音が止んでいた。
牛乳パックを片手に振り向くと、目の前には刃物の尖った切っ先があった。
「ア、アスカさん?」
声がうわずってしまう。
「アンタ今日下級生に告白されていたでしょ」
手から取り落とした牛乳パックが、床の上に染みを作り始めた。
「そういうことあったって一言くらい話してくれてもバチ当たんないわよね、お兄ちゃん?」
包丁を手元でもてあそびながら小首を傾げている。
「隠していたわけじゃなくてそのあのつまりそのなんだ、つい、言いそびれちゃっちゃれら」
まずい、動揺が隠し切れていない。
「シンジのこと信用していないわけじゃないけどさ、まだアタシ達の評判ってアレだから」
そう言い淀ませたアスカが目を伏せた。
その仕草を見て胸の奥からこみ上げてくるものを感じた。
「・・・シンジ」
僕は胸の中にアスカを抱き寄せていた。
「ゴメン、ちゃんと言わなかったのは僕が悪かったです」
顔を上げたアスカが薄く微笑む。
「またすぐ謝る」
さらに笑みを広げ、視線を絡ませ、僕の背中に回した手の力を強めてきた。
僕はゆっくりと唇を合わせた。
キスが濃厚なものになっていった時、痛みを背中に感じた。
「どうしたの、アタシ舌強く噛みすぎた?」
顔をしかめる僕に気が付いたアスカが、とんでもないことを口走る。
「いや、背中が何かちょっと」
そしてアスカが僕の脇の下に目を向けた。
「「あ」」
僕はアスカの右手の包丁を、アスカは僕の脇に染み始めている紅の塊を見て声を上げた。
傷の治療や床の掃除、・・・で、すでに夜食としか呼べないシチューが出来上がったのは、それから三時間後だった。
「ごめんね」
アスカが背中に巻かれた包帯の上を指でなぞる。
キレイな身体を起こし、傷口周辺にキスをしてきた。
交わった後の心地よい疲労感が僕を包んでいた。
こそばゆいような気持ち良いような感触が背中を這い回る。
気がつくとアスカの細い体を抱き倒していた。
甘い吐息を漏らしてアスカは僕を受け入れる体勢を整えた。
「・・・また、遅刻しちゃうよ」
形だけの抗議も、僕の進入によってかき消された。
次の日、今学期十二回目の遅刻をした。
僕達は平穏無事な生活を、日々味わっていた。
幸せという名の甘い果実を、二人でむさぼり食べていた。
ひたすらお互いを想いあっていた。
忍び寄る悪意に、僕達はまだ気がついていなかった。
やっと帰ってきました。
三ヶ月ぶりの更新。
第一部終わってからだと何ヶ月になるのか。
やっと第二部スタートです。
あれからしばらく時を経たところから始まります。
コンセプトは今まで通り、シリアスにラブコメ大さじ山盛り三杯。
次回は途切れずに、早めに更新いたしますのでしばしお待ち下さい。
これだけ間が空いたのは一応理由があります。
自宅Mac大クラッシュ。
天に召されましたんで、買い換えました。
中古だけど。
それに伴いプロバイダ変更とか、仕事とか色々あったんで。
やっと一息。
そういうわけです。
”TrueLove”もしばらくしたら後編を書きます。
元ネタクイズなんですけど正解者がいらっしゃいました。
ジェフリー・アーチャーの”ある愛の歴史”とずばり当てたのは、”nulさん”でした。
まだ何かを送っていませんが、ご用意出来次第差し上げますので、もうしばらくお待ち下さい。
今作品二日間で仕上げたためあちこちほころびがあるかもしれませんが、また読んで頂ければ幸いです。
次回第拾四話 ”Silent jealousy.”でお会いしましょう。
新展開(?)のご感想頂いて参考にしたいんで、よろしくお願いします。
それでわ。
ZERO