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刹那か、或いは幾千か、どれだけ刻が流れたのかさえ分からない、暗黒の深淵。
光はおろか、闇という概念すら存在しない夢幻の空間の果て。
―――「無」―――
思考の概念さえも存在しない、永遠の終焉がここにある。
ここが、僕が僕で居る事の許される、ただ一つの場所の筈だった。
だけど、
全身を駆けめぐる灼熱のようだった激痛は、何時しか彼方に消え果て、
今もただ無機的に全身を流れ落ちるこの血糊も、もう僕の乾いた心に何の感慨も起こしはしない。
自分を苛む自責の思いさえも、やがて明け方の霧のように姿を消し、
気が付けば、もう脳裏には何も思い浮かばない。
あれだけ抱いていた心の痛みも、辛さも、寂しさも、悲しさも、口惜しさも、
……愛しささえも。
この「無」の空間に於けるたった一つの真理。
「『無』に物質は存在しない、故に『無』の空間に生命は存在できない」
実際この世界に辿り着いてから後、僕の躯は足下から徐々に灰燼となって風化しつつある。
……違う、僕の身体自体はとっくに死滅してる。ここに残っているのは砕けた魂のカスに過ぎない。
だけどそれも、全て消え去ってしまえば同じ事。遅かれ早かれ……これで全てが終わる。
これでもう、僕には本当に何も無くなってしまうんだ……
でも、もうそれでいいんだ。
僕の刻がいつ止まろうと、魂が何処へ消え果てようと、
もう誰にも関係ないんだから。もう誰も何にも苦しまずに済むんだから。
僕は、救世主なんかになりたかったんじゃない。
本当は……もう一度だけ彼女の笑顔が見たかった……
つくづく未練がましいけど、たったそれだけだったんだ。
見る者全てを癒すような、あの、光り輝く真夏の太陽のように暖かい笑顔だけが……。
……もし、もしも願いが叶うのなら……赦されない事だと……判ってはいても……
……もう一度だけ、……もう一度だけ…………もう……い………………
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「…………アスカ…………」
―――永遠に叶わないと知るからこそ、最期の瞬間にふと呟いたその一言と、
瞳からふと流れ落ちた一筋の血に、僅かに混じっていた涙こそ、彼の想いの全てだった。
今回、拙作の読者でおられます緑の珍獣さんという方から、拙作向けの綺麗な挿絵CGを頂きました。
私の作品の雰囲気がとても出ている素晴らしいCGでしたので、今回は私の不出来な独白文を添えて(^^; 一緒に投稿させていただいています。
宜しければ、是非イラストのご感想を緑の珍獣さんに送って差し上げてください。
(但し、このCGの第三者への配布、無断転載等は固く禁じさせていただきます)
シチュエーションからして彼は「ゼロ」であると一目でお分かりだと思います。
これは「シンジ」ではなく「ゼロ」の筈なのに、何故彼はこんな想いを抱いているのか……。
その顛末は、第四部までお待ち願います(^^;
(何時になるやら……)
それでは、本編の方でまたお会いしましょう。
(これを機に、アスカと「金髪の少女」のツーショットイラストとか、来ないかな……(←ばか))