好き?好き?大好き?
白い部屋の中
小さなテーブルとベッドとイスが置かれている
ベッドには女が一人、上半身を起こしてついている
ぼんやりと、白い壁に目を向けている女
イスには男が一人、静かに座っている
ぼんやりと、女を見つめている男
部屋に入ってくる少年と少女
少年
「「こんにちわ」」
少女
きれいにユニゾンして挨拶する二人
男 「ああ………………君たちか」
男 「あの子たちが………来てくれましたよ
あなたに会いに」
女に二人を紹介する男
女 「え、と………………その、こんにちわ」
ぼんやりと、とまどいつつ挨拶する女
男 「………………………」
少年「こんにちわ、ミサトさん」
少女「ハロ〜、ミサト」
女に挨拶する二人
男 「………………………」
女 「いやあ………えっと………あなたたち、どちらさまでしたっけ?」
少年「ミサトさんの家族ですよ、ミサトさん」
少女「そ、一緒に暮らしてたじゃない
家族だったでしょ?あたしたち」
女 「あら、まあ
わたしのかぞくだったの?」
少年
「「そうです(よ)、ミサト(さん)」」
少女
きれいにユニゾンして返事を返す二人
女 「ところで………おなまえはなんて言いましたっけ?」
少女「アスカ
セカンドチルドレンのアスカよ」
少年「シンジ
サードチルドレンのシンジですよ」
男 「………………………」
女 「わたしの家ぞくのアスカね」
少女「そうよ、ミサト」
女 「わたしの家族のシンちゃんね」
少年「そうですよ、ミサトさん
ミサトさんの家族のシンジですよ」
女 「あなたたちはいつも、わたしと一緒にくらしていたわよねぇ
あなたたちにまた会えるなんて、思いもよらなかったわ」
心底嬉しそうな様子の女
男 「………………………」
少女「だからさ、こうしてここに来たわけよ
ミサト」
女 「あなたたちにまた会えるなんて、ホントによかったわぁ
シンちゃん、アスカ」
少年「ミサトさんにまた会えるなんて、ホントによかったですよ
ミサトさん」
女 「ところで、今もずっと一緒にいるわけぇ?アスカにシンちゃん?」
いたずらっぽく笑って問い掛ける女
少年
「「ええ、そう(です)よ、ミサト(さん)」」
少女
きれいにユニゾンして返事を返す二人
女 「んじゃぁ、もう結婚も時間の問題ってわけぇ?」
ニタニタ笑いを浮かべて問い掛ける女
少年
「「な、何言ってるんですか(のよ)!ミサト(さん)」」
少女
きれいにユニゾンして返事を返す二人
女 「あ〜ら、そうなんだ、そりゃ残念っていうか意外よねぇ
ま、それはそのうちお楽しみってことよね
で、これまでどんなことをしてたの?」
少年「あちこち、旅をしてまわっていました」
少女「遠い、ホントに遠いところを、色々とね」
女 「で、うまくやってきたってわけね?」
少年「ええ、これまでのところはですけどね」
女 「それはいいわね、それはすばらしいわぁ
ところで、今もずっと一緒にいるわけぇ?シンちゃんにアスカ?」
いたずらっぽく笑って問い掛ける女
少年
「「ええ、そう(です)よ、ミサト(さん)」」
少女
きれいにユニゾンして返事を返す二人
男 「………………………」
女 「んじゃぁ、もう結婚も時間の問題ってわけぇ?」
ニタニタ笑いを浮かべて問い掛ける女
少年
「「な、何言ってるんですか(のよ)!ミサト(さん)」」
少女
きれいにユニゾンして返事を返す二人
女 「で、今はどんなことをしてるの?」
少年「世界を、見て回ってるんです
色んなものを見たり、色んな人と逢ったり
まあそんな感じで、今は旅を続けてるって感じです」
女 「へぇ〜、そうなんだぁ
シンジ君はずっとそういうの苦手な感じだったのに
変われば変わるもんよねぇ」
少女「でも結局、バカシンジな中身はそのまんま
言葉もろくすっぽしゃべれない癖に、旅に出ようなんて生意気なのよ
こういう事してるのも、まあ今のうちはいいかもしれないけどさ
この先どうするかぜんっぜん考えてないあたりが、相変わらずバカなのよね
ホント、先が思いやられるってやつよ」
女 「ふぅ〜ん、そうなんだ
それは困ったシンちゃんよねぇ………
で、そういうアスカは、そのシンちゃんと一緒に何してるってわけぇ?」
ニタニタ笑いを浮かべて問い掛ける女
少女「え?あ、あたしは………その………あの………」
少年「………アスカは、ぼくの側にいてくれてます
いつも、一緒にいてくれるんです
だから、ぼくは………その、どんなところでも、歩いていけるんです」
少女「………………………」
女 「そう………本当によかったわね、アスカ、シンジ君
必ず、絶対に幸せになるのよ」
優しい笑みを浮かべる女
少年
「「………ありがとう(ございます)、ミサト(さん)」」
少女
きれいにユニゾンして返事を返す二人
男 「………………………」
女 「ところで、今日は、長いこといられるわけ?」
少女「あと四・五分もしたら、帰らなくちゃいけないのよ」
女 「あらら、そうなの
それは残念ねぇ
でも、あなたたちに会えて、ホントにうれしかったわよ
シンジ君、アスカ」
少年「ミサトさんに会えてホントにうれしかったですよ
ミサトさん」
少女「ミサトの方は、どんな感じ?」
女 「ここだとえびちゅが飲めないってのが寂しいわねぇ
ま、わたしの方も、彼がいつも一緒にいてくれるし、ね
ホント、何とか頑張らないとねぇ」
微笑んで男の方を見る女
男 「………大丈夫ですよ
きっと、良くなりますよ」
笑みを浮かべて答える男
少年「そうですね、きっと良くなりますよ、ミサトさん」
少女「そうそう、色んな意味でしぶといもんね、ミサトは
すぐに良くなるわよ」
男 「………………………」
女 「………妙に引っかかる言い方するわね、まったく
あいっかわらず可愛くないんだから
ま、そのうち良くなったら、おぼえてなさいよぉ」
少女「でも、ホントはどこも悪くないんでしょ」
女 「………そうだっけ?」
少年「そういえば、どうしてここにいるんでしたっけ?」
男 「………………………」
女 「えっと………確か………そうそう、怪我しちゃったのよね」
少女「で、いつどこでそんな目に遭わされたわけ?」
女 「………えっと………あれ?
たしか………すっごく痛くて苦しかったってのはおぼえてるんだけど………
どこでだったかしらねぇ………?」
少年「どうして、そういう事になってしまったんですか?」
女 「………あれ?………あれ?あれ?あれ?
ついさっきまで、出かかってたのに………あぁ、もう、イライラしちゃうわねぇ
だから………その………あれ?あれ?あれ?」
男 「………………………君たち」
堪り兼ねたように声をかけようとする男
少女「ま、何でもいいけど、とっとと良くならないとね、ミサト」
少年「そうですよ、ミサトさん
いつまでもこんなところにいてもしかたがないですからね
みんな待ってますから、早く良くなってくださいね」
女 「………そうよねぇ、いつまでこうしててもはじまらないし
ちみっときあいいれて、なんとかしないとねぇ
………でないと、あんたたちのけっこん式にもでれないしねぇ」
いたずらっぽい笑みを浮かべる女
少女「おあいにくさま
年上のおねぇさまをさしおいてそういう事はできないでございますでしょぉ?
ただでさえ賞味期限切れ気味なんでございますから
人の事よりご自分の事をご心配なさったらいかがなものでしょうかぁ?」
女 「ぐぐっ………おのれぇ………いたいところをぉ
………いいわよ、いいわよ、わたしだってわたしだって………ねぇ」
男の方に無邪気に笑いかける女
男 「………………そうですね」
苦笑いを浮かべる男
男 「………君たち、もうそろそろ………」
女 「そういえば………あなたたちはチルドレンでいらっしゃいますよね」
男の言葉を遮るように話し掛ける女
少年
「「そう(です)よ」」
少女
男 「………………………」
女 「わたしの家ぞくのシンジ君とアスカはチルドレンだったんですよ
あの子たちをごぞんじでしょうか?」
少年「さあ、どうでしょうね」
男 「………………………」
女 「あのこたちはあちこち旅をしてまわっていましてねぇ
いろいろありましたけど、いまはしあわせにくらしてるらしくて
ホントのところ、あのこたちをごぞんじありませんか?」
少年
「「ぼく(あたし)たちが、そのあの子たち(です)よ」」
少女
きれいにユニゾンして返事を返す二人
男 「………………………」
女 「あらまぁ
ってことは、あなたたちが、そのあのこたちなのね」
少年「ミサトさんの家族のシンジですよ」
少女「ミサトの家族のアスカよ」
男 「………………………君たち」
女 「わたしのかぞくのシンジくんとアスカね
あなたたちにまたあえるなんて、おもいもよらなかったわ
シンジくん、アスカ
ホント、うれしくなっちゃうわねぇ!いまのはなしをおききになりましたか?
あのひとたちがわたしのかぞくのシンジくんとアスカだそうですよ」
心底嬉しそうな様子の女
男 「………………………」
少年「シンジとアスカというご家族がいらっしゃったんですか?」
女 「それがわたしのかわいいかぞくなのよ」
少女「シンジとアスカのことをどう考えているの、ミサト?」
男 「………もうたくさんだ」
声を絞り出し、二人を遮ろうとする男
少年「どうかしましたか?」
男 「君たち、それはもうやりすぎだろう
………いい加減にしてくれないか」
少女「おたおたしないでよ、いいんだってば」
男 「僕だけの問題じゃないだろう」
少女「口を出さないでってば」
男 「どうして、そっとしておいてくれないんだ」
少年「シンジとアスカのことをどうお考えですか?」
女 「………ホントのとこいっちゃうとさぁ
いろいろムダにくろうさせられちゃったってかんじなのよねぇ」
照れ笑いを浮かべながら、頭をかきつつ答える女
腕を伸ばして、女の口を掌でふさぎ、そのままの姿勢で少年に声をかける男
男 「こんな酷い事は、もうやめてくれ!」
男に目を向ける少年
ものも言わずに精いっぱい頑張るが、結局はその両手を膝の上に組んで置かされる男
女 「ホント、ひつようだったとはいえいろいろたいへんだったのよ
ま、はじめはそれなりにたのしかったんだけどさぁ」
懐かしそうに、やや苦笑しつつ答える女
男 「………もういいだろう、やめてくれないか」
少女「アスカのことをどう考えてるの?」
男の方に向き直りつつ、女に話し掛ける少女
女 「………あつかいにくいこだったわよねぇ、たいしたこともできないくせに
へんにプライドばっかりたかくて、怒りっぽくて
そのくせひとりでかってにこわれて、くるって
あげくにとびだして、じさつみすい、やってらんないわよね
ホント、どうしようもないこだったわ」
眉をひそめて苦笑しつつ答える女
男 「お願いだから、もうやめてくれないか」
少年「シンジのことをどうお考えですか?」
男を見つめたままで女に話し掛ける少年
女 「………しんきくさいこだったわよねぇ、さいしょっからさいごまで
うじうじしてて、にげてばっかりで
そのくせびょうしつでわるさしたり、アスカのくびしめたり
とにかくどうしようもないおばかなちゅうがくだんし、ってやつよね
さいごまでぐじぐじしてて、つかえなくて
ホント、どうしようもないこだったわ」
苦々しく笑いながら答える女
男 「………お願いだから、後生だからもう許してくれないか」
少女「………………………」
表情を崩さず、男を見つめる少女
少年「………………………」
表情を崩さず、男を見つめる少年
少年「いいんですよ、もういいんです
どのみち、そろそろ行かなくちゃいけませんから」
女の方を向く少年
少年「ぼく、シンジですよ
もう行かなくちゃいけないんです、ミサトさん」
女に話し掛ける少年
少女「あたし、アスカよ
もう行かなくちゃダメみたいなのよ、ミサト」
女に話し掛ける少女
女 「そうなの
あなたたちにあえたんで、ほんとうにうれしかったわ
シンジくん、アスカ
あなたたちにまたあえるなんて、かんがえもしなかったわ」
やや残念そうな嬉しそうな様子の女
少年「さよなら、ミサトさん
ミサトさんにまた会えてとてもうれしかったですよ」
少女「バイバイ、ミサト
ミサトにまた会えてとてもうれしかったわ」
女 「さよなら、シンジくん、アスカ
ホントにうれしかったわよ」
心底嬉しそうに、極上の笑みを浮かべて見送る女
少年「さようなら、それじゃ、またお会いましょう」
少女「バイバイ、じゃ、またね」
男に別れを告げる二人
男 「………申し訳ないけど………もう来ないで欲しい………頼む」
少女「………どうして、そういう事言うの?」
無表情なままの少女
男 「………………………頼む………お願いだから
僕をそっとしておいてくれないか………頼む」
少年「………考えておくよ」
薄く笑みを浮かべたままの少年
男 「………許してくれ………………頼む」
少女「………じゃ、さよなら」
部屋を出て行く二人
暗転
ほんとうに 好き?好き?大好き?
−終劇−
………悪い人じゃ、ないんだ 嫌なのよね、生き方わざとらしくってさぁ |