TOP 】 / 【 めぞん 】 / [風奈]の部屋 / NEXT

Declination below adolescence!

第伍話 A/the mascot girl birth!


2015年4月6日。

ネルフ・テストコース併設の研究室。
開発部主任の赤木リツコは頭を悩ませていた。
ネルフのワークスチームとして国内レース、その後は国際レースに参戦する、という指令
が下った、ということもあるが、そのレーサーの人選に、である。
通常に乗りこなすだけであれば今、レースに参戦しているレーサーをスカウトし、引き抜
けばいいだけだが、この「エヴァンゲリオン」に関しては、そういう風にはいかないので
あった。
「エヴァンゲリオンには二つのインターフェースが搭載されている。一つは従来よりの操
作形態である、ハンドルコントロールタイプ。そしてもう一つは、ヘッドセットインター
フェースを使用したシンクロコントロールタイプである。ハンドルコントロールタイプで
は操作する個人の技術でその性能を引き出せるかどうかが決まるが、性能を100%引き
出せる可能性は低い。だが、シンクロコントロールタイプでは、イメージコントロール次
第で性能を100%引き出すことが可能となるのだ。
もっとも、「エヴァンゲリオン」のスペック上データを100%引き出すとすれば、その
レーサーの生命を保証できない、というのが開発部の総意でもあった。
しかも、公式テストドライバーである、渚カオルが見せた、「暴走」という要因がそれを
更に複雑にしていた。その時に取られたデータは、開発部で予想しているスペックをはる
かに越え、計測データ表示用のパーセンテージの限界である、200%を振り切っていた
のであった。その時に「エヴァンゲリオン」参号機は大破したのだが、乗っていた渚カオ
ルは無傷であったところが興味深い。その「暴走」はハンドルコントロールタイプのみで
起こったものであるが、シンクロコントロールタイプでも起こりうるもののため、開発部
としてはレースの参戦に賛同しかねていたのであった。
それでも、社命というものは絶対であり、リツコは限りなく危険を回避できうる、人選を
することに悩まされていたのであった。
一人、大丈夫そうな人間がいるのだが、その人物のことを考えると、頭が痛くなってくる。
その人物の名前は葛城ミサトといった。
頭痛の原因は彼女の性格と他を圧倒する行動力にあった。その二つで「暴走」自体も押え
込んでしまうように思えるのだが、逆に言えば、作戦にはまず従わない性格はチームとし
てもっとも嫌になるものであった。
以上の事からリツコはミサトを選ぶのを止めたのであった。
では、誰が?という問いに、リツコは頭を悩ませていたのであった。

ピッ

目の前のコンソールにメール着信のポップアップメッセージが表示される。リツコはメー
ルを表示させ、メッセージを読みはじめる。

「加持君からね。会長の意向ですって、何かしら?」

文面にはネルフ会長兼CEOである碇ユイ草案によるワークスチームスタッフ表が書かれ
ていた。

「はぁ、こういうことね。会長もいろいろと画策しているようね。社長の方はご存じなの
かしら。」

リツコは呟くと傍らのコーヒーカップに口を付けた。そして顔をしかめる。既に冷え切っ
ていて不味かったようだ。

所は変わり、第三新東京市立第一高等学校講堂。
入学式が開始される直前である。
父兄観覧席は既に一杯になっており、演奏を担当する吹奏学部はその演奏が始まるのを待
機していた。
司会であろう若い女性教師がマイクスタンドの前に立ち、

「これより、第三新東京市立第一高等学校第15期生入学式を執り行います。」

と開式宣言をする。それと同時に入学式は始まった。
淡々と式は進行していき、新入生の挨拶となった。
栗色の髪の少女はスクッと立つと、講壇上に上がり、マイクスタンドの前に立つ。そして、
よく通った声で挨拶文を読み上げる。

「・・・・・・・・・新入生代表、惣流=アスカ=ラングレー。」

その後も滞り無く式は進行し、新入生はそれぞれ振り分けられた教室へと入っていく。基
本的には中学校のときのクラス分けと変わっていない。アスカ達も変わらずに同じクラス
になったようである。クラスのメンバーは7割ほどがそのままで、あとは新規に入ってき
た者などである。

「カッコ良かったわよ、アスカ。」
「とーぜんじゃない。誰だと思ってんのよ。」

アスカは自慢げに言うと、隣に座らせているシンジの頭を抱えながら、

「ユイおばさま、ちゃんと来てくれたじゃない。よかったわね。」

と言う。シンジはそのことが嬉しいのか、何か顔を真っ赤にしている。アスカから離れた
がっているようにも見える。

「ちょっと、アスカ。胸が当たってるって。」
「えっ?エッチ、バカ。」

アスカは慌てて離れると強烈な右の張り手をシンジの左頬に見舞う。

「痛いなぁ、もう。そうそう、アスカ、今日の晩ご飯何がいい?」

もう、頬を張られることになれてしまったシンジには、痛みはあってもそれほどのもので
はないらしい。

「うーん、そうねぇ・・・。」
「アスカはハンバーグでしょ。」
「何よっ、レイ。それじゃ私が子供みたいじゃない。」
「でも、アスカの好きな食べ物って子供みたいよね。卵焼きにハンバーグ、唐揚げでしょ?」
「う、そういえばそうね。」

レイの反撃にアスカは切り返しが出来ずに納得してしまう。

「でも、僕の得意なのばっかりだね。」
「そ、そうよ。シンジが得意なのが子供の好きなものばかりだからよ。」

アスカはそういい、ごまかしてしまうつもりのようだ。

「それで、アスカは何がいいの?」
「むー。」

アスカはシンジの問いに再び考え込む。実際のところ、シンジの作った料理ならなんでも
満足していたアスカは好きな料理、と言われるとやっぱり、ハンバーグとかになってしま
うのだった。それを言おうにも、先程のこともあり、ためらってしまう。

「決まったらメールで送って。帰りに買い物していくからさ。」

シンジは悩むアスカの様子を見て、助け船を出す。それでこの場はおさまったようだ。他
のクラスでは担任となる教師が入って来ているようで静かになっていく。そして、アスカ
達のクラス、1−Aにも担任の教師がドアを開けて入ってくるようだ。それよりも前に生
徒は自分の席に急いで座る。
教室のドアを開けて入ってきた教師は、紫がかった黒髪と豊満な肢体をタイトな服装で包
み込んだ女性であり、クラスの生徒の大半は見覚えのある人物であった。
アスカは立ち上がり、叫ぶ。

「ミサト!なんでここにいるのよっ。」
「もち、ここの担任だからよ。アタシは高校の教員免許も持ってるのよん。」

ミサトはアスカの叫びに答えるとウインクをする。その様子を見て、クラスのほとんどは
唖然とし、ミサト自身はしてやったり、という表情である。

「さて、と。今日は簡単にクラスミーティングってことだけど、そんなすることないのよ
ね。どうしようかしら。」

ミサトは少し考えると、

「よし、今日は時間まで雑談ってことにしましょ。重要なことは明日のホームルームで決
めるんだし。」

と言うと、ドカッと教卓の椅子に座る。
その声に応じて、クラスは自然と騒がしくなっていく。

「うーん、ビーフシチューとハンバーグ、どっちがいいかしら。むー、迷っちゃうわ。」

アスカは依然、夕食のメニューで悩んでいる。アスカの真後ろに陣取ったレイはアスカの
耳元で、

「ビーフシチューなら何杯でも食べれるんじゃない?」

と囁く。アスカはその声にビクッとしながらも、レイの顔を見て、

「いいこと言うわね。ビーフシチューにするわ。」

と言うと、シンジへメールを送る。その時に送受信ウインドウが表示されるのだが、そこ
に受信メール1通と表示されるのを見て、意外に思う。

「メールがくるなんて珍しいわね。」

アスカはメールを表示させ、文面に目を通す。メールの差出人はヒカリであった。内容は
今日の午後、どうするか、ということである。

「うーん、今日は帰りに買い物で、あとは無かったわね。レイ、アンタは何かある?」
「別に無いけど。今日はカオル君とゲーセンに行くの。帰りはちょっと遅くなるけどさ。」
「ふーん、アタシは何しようかな。」

アスカはヒカリの所に歩いていき、ヒカリの前の席の椅子にヒカリの方を向いて座る。

「ヒカリは何か予定とかあるの?」
「お父さんにカラオケの無料券、貰っちゃったのよ。で、どうかな?と思って。」
「いいじゃない。トウジを誘えば?」
「アスカッ。」

ヒカリは顔を真っ赤にするとアスカの口を塞ぐ。すごく焦っているようだ。アスカは急に
口を塞がれたものだから、息ができなくて苦しくなり、ヒカリの肩をポンポンと叩く。ヒ
カリはそれでアスカの口をずっと塞ぎっぱなしであることに気付き、手を放す。

「もう、ヒカリったら。」
「ゴメン。で、どうする?」
「シンジが行くなら行くわ。あとは、ヒカリとトウジなんでしょ?」
「うん。でも、鈴原はまだ誘ってないの。」
「アタシに任せなさいって。」

アスカはそう言うと、シンジの所に歩いていく。

「シンジ、今日は買い物の前にカラオケに行くわよ。お金かからないから気にしなくても
いいから。」
「え?でも僕、歌うの下手だから。」
「何言ってるのよ。チェロがあんだけ演奏できて、歌が下手なわけないでしょ。アンタが
行くのは決定事項なのよっ。」

そこで声のトーンと声量を落とし、シンジの耳元で、

「ヒカリがトウジも誘いたいのよ。だ、か、ら、行くって言わないと、どうなるか分かる
かしら?」

と囁く。
シンジはその最後の言葉に身震いをする。そして頭の中を、去年からのアスカに食らった
技の数々を思い浮かべる。そして頭を左右に振ると、

「うん、じゃあ行くよ。」」

とアスカに答えた。満足げに頷いたアスカはトウジに向かって言う。

「トウジ、アンタ、カラオケ行くわよね。」
「なんで行かなあかんねん。ゲーセンのほうが・・・」
「ハンッ、勝負から逃げるわけね。」
「何やと。」
「カラオケで勝負だって言ってるのよ。そうねぇ、組み合わせはアンタとヒカリ、アタシ
とシンジってとこね。」
「よっしゃ、勝負や。」
「で、負けたほうは勝ったほうの言うことを聞くのよ。いいわね。」
「おう。」

アスカはヒカリの方を見ると、ウインクする。アスカの作戦は成功したようだ。ヒカリの
方は顔を赤くしてうつむいている。
その時、授業終了の鐘が鳴り、ミサトが立ち上がり、

「今日はこれで終わり。気を付けて帰りなさいよ。」

それだけを言うと、教室から出ていく。

「さて、と。行くわよ。ケンスケ、アンタは立会人になんなさい。いいわよね?」
「ああ。で、どこのカラオケなんだい?」
「えーとね、駅前の『ジオフロント』というカラオケよ。」

所は移り、ネルフテストコース。
コース上では「エヴァンゲリオン」とは異なるタイプのバイクがラップタイムの計測をし
ていた。それを開発室から横目で見つつ、無精髭を残したままの男は呟く。

「まだエヴァには届かないな。」
「引き離されるばかりよ。まだ、目覚めてないもの。」
「どういうことだい?」
「言葉のままよ。今日、初号機の封印を解除したわ。もっとも、封印は自動的に解除され
てたけどね。」
「会長も知らない秘密があるようだね。エヴァには。」

彼の正面の椅子に座り、コーヒーカップを片手に持った女性は一口飲むと、机の上にカッ
プを置く。

「それで、今日来たのは何の用かしら?」
「あぁ、ミサトがね、カラオケに行かないかってね。」
「ミサトが?飲みに行くんじゃないのね、珍しいわ。」
「あとで飲むんだろ?マヤちゃんも呼んだらどうだい?」
「そうね。これから行くんでしょ?場所は?」
「駅前の『ジオフロント』だそうだ。集合は13時。」
「あと1時間ね。入り口にいけばいいわね。」
「そういうことで。俺は迎えに行かなくちゃ。じゃあ、リッちゃん、後でね。」
「ええ、加持君。」

加持は片手を上げると、開発室から出ていった。しばらくし、低いエンジン音が鳴り響き、
遠くなっていく。
リツコは着ていた白衣を脱ぎさると、ロッカーから深紫色のジャケットを取り出す。それ
をはおりながら、端末でメンテナンスルームを呼び出し、

「マヤ、カラオケに行くわよ。ミサトが誘ってるから。」

とメッセージを送る。10秒ほど経ち、レスポンスが送られてくる。

「喜んで。15分後に入り口で待っていて下さい。マヤ。」

15分後、マヤの運転するカスタムカー、マヤ命名によるところ、『ドミニオン』がテス
トコースから駅前に向かって走っていった。

「冬月先生、霧島マナは到着しました?」
「先生ではないのだがね、ユイ君。霧島君は今朝、到着したそうだ。今、ここに来るそう
だよ。」

白髪が見えはじめた男は目の前のソファに座る女性の問いに答える。女性は38歳とは思
えない若々しさと美貌を兼ね備えており、二人を見ると、親子ほどに見えてしまうであろ
う。女性の方、碇ユイは外見は20代後半と思えるほどで、実際にその性格、言動も外見
とさほど変わらない、という。逆に冬月と呼ばれた男、冬月コウゾウは外見よりも老けて
見えるようで、趣味などもそれに相応したものらしい。二人は16年前は教え子と教授と
いう立場であり、現在はネルフの会長と社長という立場である。

コンコン

ドアをノックする音が響き、その後、

「霧島マナ、参りました。」

の声と同時に部屋に入ってくる。茶色の髪をショートカットにまとめ、スラッとしたスタ
イルの持ち主である。服装は真っ白なワンピースに同色のパンプスである。表情は明るく、
自分に自信を持っているように見える。
彼女の姿はブラウン管の中でよく見かけられる。また、雑誌などでもよく見ることができ
る。霧島マナ、彼女は現在最も人気のあるアイドルの一人であり、現在は長期オフを取っ
て海外旅行をしていたはずであった。

「随分とぐっすり眠っていたようね。少し寝癖がついているわよ。」

ユイはクスクス笑いながら、部屋の脇の洗面台でタオルを濡らすと、マナの髪を撫でる。
マナは恐縮そうに、

「あ、すみません。飛行機の中で眠れなかったので。」

と言う。

「そういうものよ。私はもう慣れちゃったけどね。」
「それで、私を呼んだ理由は何でしょうか?」
「今度、ネルフのワークスがレースに参戦するのよ。それで、あなたにマスコットガール
をして欲しいんだけど。どうかな?」
「私にオフを取り消させてまで参加させたいチームって見てみたいですね。」

冬月はメンバー表とそれぞれの資料を大型ディスプレイに表示させる。

「随分と若いチームなんですね。」
「嫌ならいいのよ。強制する気は無いから。」
「ネルフ会長がそこまで推すプロジェクトならばやりますわ。きっと退屈しないでしょう
し。」
「それじゃ、頼んだわよ。」
「はい。」

ユイはその答えに満足すると、携帯電話で誰かを呼び出す。

「加持君?最後の一人が来たわよ。そちらでアスカちゃん達をお願いできる?カオル君に
も手伝ってもらっていいから。」
「了解。これより接触します。」
「お願いね。」

It continues to the next time






NEXT
ver.-1.00 1998+02/20 公開
感想・質問・誤字情報などは こちら まで!
後書き

BGM:Active Heart(トップをねらえ!より)

今回の流れは次へとつなぐものです。
ついつい霧島マナをアイドルにしちゃいました。
というよりは、私のイメージでは彼女の方がアイドルって感じがしたんですよね。
アスカは美少女だけど、アイドル、ってイメージがわかないんです。
どうしてでしょ?
レイはマナに近い感じかな。

この作中では、原作のゲンドウにあたるのがユイです。
あとはたいして変わらないけど、カオルに関しては、
加持の役目も負ってもらおうと考えてます。

しかし、ヒロインドリーム2の静ってアスカそっくりですねぇ。
声がみやむーだったら、敗訴です(爆)

では、次回で。


 風奈さんの『Declination below adolescence!』第伍話、公開です。



 高校生になったみんな、
 同じクラスで楽しそうですね。

 先生もお馴染みのミサトさん(^^)



 NERVの方では
 レース参戦なんて面白そうなことも。

 マスコットガールは彼女。


 ゲームみたいにシンジに絡んでくるのかな?




 さあ、訪問者の皆さん。
 風奈さんへあなたの感想を送りましょう!



TOP 】 / 【 めぞん 】 / [風奈]の部屋