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「好き…か。」

シンジは息をつくとゆっくり起きあがる。
窓から吹きこむ風がカーテンをゆらゆら揺らす。
カーテンを開け薄く開ける。
窓から見える景色はいつもと同じ。
しかし、薄い月が今にも沈んでいこうとしていた。
あの時、僕は…
どうしてなんだろ?
アスカは僕のこと好きでいてくれた。
それがわかった時、僕は…

やっぱり僕は嫌なヤツだ。
自分では何もしないで…
相手のせいにして…
シンジはベッドから降りて、ドアに向かう。
部屋から出て、リビングを抜けてベランダに向かう。
ベランダからは月が見えなかった。
満天の星を見つめシンジはまた息をつく。
そう、わかっていたんだ。
なのに僕はわからないふりをしていた。
あの時、ちゃんとした行動をとっていれば、
こんな事にはならなかったのかな?
わからない。
考えがまとまらない。
アスカに好きと言われた時、まるであの時に戻ったようだった。
二人の時が交わっていたあの時。
一緒に学校に行って、たわいのないことでケンカしたりしていたあの時。
ずっと、このまま二人の関係は続くと思っていたあの時。
アスカは僕の傍にいてくれると思っていたあの時。
でも、今は…
二人の歩く道は離れてしまった。
アスカは自分の道を歩き始めた。
僕はアスカと同じ道を歩くことは出来ない。
それはアスカもわかっているはずだ。
それでもアスカは、僕のことを思っていてくれる。
アスカの気持ちに答えるのは簡単だ。
しかし、心の中のどこかで、それを妨げるものがある。
それは…
ひとりの女の子が僕の心に住みついてしまったから…
マナ…
僕はマナとアスカ、どちらかを選ばないといけないのか?

僕はどうすれば…いや、僕はどうしたいのだろう。



ふいに口元をゆがめるシンジ。
僕は卑怯な奴だよね、実際。

二人ともだなんて考えるなんてね。
どちらかを選ばないといけない。
それはわかっている。
でも、僕はどこかで、このままでいたいと思っている。
このままが一番じゃないかと思っている。
アスカとマナ二人とも…
好きだから。
顔を上げるシンジ。
しかし、そうしたところで結論を出すのが、先に伸びるだけ。
あの時のように真実から目をそらすだけ。
だから、僕は見つけなければいけない。
自分の本心を。
 
 
 
 
 
 

Time Capsule
TIME/99
 
 

第21話
ただいま
 
 
 
 
 
 
 

その日、シンジは遅い朝食を取っていた。
さすがに夜遅くまで寝ないで起きていたせいか、
いつもの時間に起きることが出来なかった。
リビングに入ってきたアスカはシンジに声をかける。

「おはよ。シンジ。」

シンジはアスカの方を確かめないで答える。
少しぼんやりした表情でシンジは味噌汁をすすった。

「おはよ。」

アスカはシンジの隣に座る。
そして、シンジの顔をじっと見つめる。

アタシ…
好きって言っちゃたんだよね。
シンジはどう思ってるのかな?
あの時何も言ってくれなかったけど。

これで…
先に進めると思ってた…
でも…
どうなんだろ?

「どうかした?」

シンジにそう尋ねられて、アスカはにっこり微笑んで首を振る。

「なんでもない。」

「変なの。」

シンジは首をかしげる。
キッチンを片付けたユイがシンジの向かいに座る。

「何時くらいに出るの?」

シンジは振り向いて時計を見て少し考え込む。

「10時かな?」

不思議そうにアスカは尋ねる。

「どこか行くの?」

「うん…今日、マナが帰ってくるんだ。」

その名前を聞いた時、アスカの呼吸が止まった。
マナ。
あの子…今日帰ってくるんだ。
シンジ、迎えに行くの?

どうしてだろ。
すごく胸が痛い。
シンジ…

「い…」

アスカは思わず息を呑む。

アタシ、今何を言おうとしたの?

「どうしたの?何か顔色悪いよ。」

シンジが心配そうにアスカに尋ねる。
アスカはふるふる首を振る。

「ううん。大丈夫。」

ユイが心配そうに尋ねる。

「少し横になったら?」

「いいえ、大丈夫ですから。」

アスカは慌てて手を振って微笑む。
 
 
 
 

アスカは自分の部屋に入ってベッドに横になる。
アタシ…
あの時、どうして…
行かないで…
って言おうとしたの?
シンジが彼女を迎えに行くって聞いた時…
胸が痛い。

はぁ…
どうしてだろ?
胸が痛いよ

アタシはシンジに好きって言ったけど、
シンジはアタシのこと好きって言ってくれなかった。
それはわかっていたことなのに。
だって、シンジには…

わかってたはずなのにね…
やっぱり…
アタシ…
駄目なのかな?

シンジにアタシの思いを知ってもらえればいいって思っていた。
だって、それはアタシがずっと胸のうちに秘めていたこと。
これを言わないと、次の一歩が踏み出せないと思ったから。
でも…
次の一歩は…
やっぱりシンジに向いているのかな?
アタシ…

どうすればいい?

自分から関係を壊したのに。

その関係をいまさら望んでも、戻ってこないのに。
なのに、アタシは…
やっぱり…
シンジが…
好きなんだ…
 
 
 
 
 
 

二週間か…
シンジは車内から外の風景をぼんやりと眺めながらそう考えた。
クーラーの風が額に当って気持ち良い。
なにかすごく昔の気がする。
マナが行ってから、レイが来て、そしてアスカが帰ってきて…
すごくいろいろあった気がする。
でもまだ二週間しか経っていないんだよな。
マナはこの二週間はどう思ったんだろう?
長かった?
それとも短かった?

どうしたんだろ?
思ったより冷静だな。
もっと、落ち着かないと思っていたのに。
待ってたのに、この日が来ることを。
マナが帰って来る日を。
その時、急に電車が揺れシンジは慌てて踏ん張る。

そう…
あの時も電車が揺れて、思わず…
抱きしめちゃったんだよな…
あの時の感覚は今でも覚えている。
視線を右手に向けるシンジ。
マナの顔がすごく近くにあって、
すごくどきどきしてしまった。
マナがいつまでも僕の傍にいてくれる。
そう思ってた…
僕は…

比べてたのかな?
ずっと傍にいてくれる…

でも…

結局、僕はまだ子供で、何も成長していない…
顔を伏せるシンジ。
まだわからない
どう理由をつければ良い?
僕は…



 
 
 
 
 
 
 

シンジ…
マナは空港のロビーできょろきょろと周りを見まわす。
まだ来てないのかな?
さらにあたりを見まわすが、捜し求める影は見えない。
時計を見る。
うーん。
まだあと15分くらいあるか…
マナはふうと小さく息をつき、手近な椅子に座る。
そしてうつむいて組み合わされた手をじっと見つめる。
シンジ…
もうすぐ会えるね…
二週間…
長かった…
すごく長かった…
やっと会えるよ…
話したいことがいっぱいあるよ。
シンジはどうだった?
このに週間は長かった?
それとも短かった?
アタシに会えなくてどうだった?
寂しいって思ってくれてた?
アタシは寂しかったよ。
すごく会いたかったよ。
途中で何度このまま帰れたらと思ったか。

すごくどきどきしてきた。
あ〜ん。
早く来てくれないかな?
待ちきれなくなってきたよ…
マナは顔を上げきょろきょろとあたりを見まわす。
そして時計に視線を向ける。
む〜。
まだ10分もある。
どうしよ。



待ち合わせってここで良いんだよね。
そう思ってマナが立ちあがったとき。
その声はマナに届いた。

「マナ!」

マナは声のした方を振りかえる。
この声は…
間違えるはずは無いよ…
ずっと聞きたいと思っていた声…
そこには一人の青年の姿が見えた。

「シンジ…」

マナは小さく呟くような声で名前を呼ぶ。
シンジは微笑みながら、マナの元へ駆けてくる。
最後に別れたときと同じだ。
何も変わっていない。
…シンジだ。

「シンジ…」

マナは思わず駆け出す。
一歩、また一歩。
少しずつシンジとの距離が近くなる。
あと一歩…
マナは手を伸ばす。
そしてシンジの胸に飛び込むマナ。
しっかりと抱きとめるシンジ。
抱き合い、お互いを感じながら、二人は顔をじっと見つめ合う。

「シンジ…会いたかったよ…」

マナはそう小さく囁くと、シンジの胸に顔をうずめる。
シンジだ。
やっと会えた。
会いたかった。
寂しかったよ。

「会いたかった。」

シンジはそうマナの耳元に囁く。
こっくりと小さくうなずくマナ。
シンジの鼓動が聞こえてくる。
小さく息をつく。
シンジなんだね。
会いたかった。
会いたかったよ。
そして顔をあげてシンジの瞳を見つめる。
シンジは何も変わってないね。
少し、やせたように見えるのは気のせいかな?
でも、瞳の輝きは変わっていない。
見ていると吸い込まれそうな瞳。
ずっと見ていたいと思う瞳。
手を伸ばし、シンジの顔に触れる。

「シンジだ…」

シンジはにっこり微笑んで、うなずく。
そのシンジの瞳を見つめているマナの瞳が涙で潤む。
そして、大粒の涙が頬を伝った。
ごめん…
泣かないつもりだったのに…
うれしくて…

やっぱり…
私にとって…
二週間は…
すごく…
すごく…
長かったよ…
シンジはやさしくマナの涙をぬぐう
髪切ったんだね。
それ以外は何も変わらない。
その笑い方。
そして瞳。
髪からほのかに香るその香り。
何も変わってない。
マナだ。
シンジは無意識のうちに肩を抱く手に力を込める。
シンジの瞳を見つめてマナは口を開く。
いっぱい話したいことがある。
でも、今の私はこの言葉が言いたい。

「…ただいま…シンジ…」

そう言ってマナはにっこりと微笑んだ。
そう…
帰ってきたから。
シンジの元に…
約束通りに…
帰ってきたから。
シンジも笑みを浮かべて答える。

「お帰り…マナ…」
 
 
 
 
 
 

満員の電車の中で二人は身体を寄せ合いドアの近くに立っていた。
二週間の出来事を順を追って語って聞かせるマナ。
シンジはにこやかに相槌を打っている。
ふと話が途切れたときにマナがくすりと笑った。
不思議そうにシンジは尋ねた。

「どうかしたの?」

マナはこっくりうなずいて答える。

「うん…だって、あの時と同じだなぁって。」

シンジはちょうど両手をドアについて踏ん張っている形だ。
その両手の中にマナが立っている。

「あの…時か。二人で買い物に出かけたんだよね。」

「うん…」

「そういえば、あの時何買ったの?結局教えてくれなかったね。」

そう、帰りに何を買ったのか聞いたが、マナは教えてくれなかった。

「え…」

マナは少し驚いた表情をして口篭もる。

「ちょっと…それは…」

シンジは肩をすくめて答える。

「まぁ…どうしてもって訳じゃないけど。なんとなく思い出しただけだから。」

「うん…ごめんね。」

沈黙が降りる。

「…あのね…」

「うん。」

「さっき、笑ったのは、あの時と同じだなぁ…っていうのと。」

「うん。」

「こんなにシンジの近くにいるのに、
あの時みたいにどきどきしないなぁ…って。」

マナははにかんでうつむきながらそうつぶやいた。
そう、こんなに近くにいるのにあの時みたいに、
どきどきしてない自分が少しおかしいなって思ったの。
それよりもすごく安心しちゃってる自分がいて、すごく不思議。
どうしてかな?

「そう…か。」

シンジの声が少し動揺してるように聞こえた。
ちょっと大胆なこと言っちゃったかな?
マナは上目使いでシンジを見つめる。
シンジは少し戸惑ったように視線を違う方向に向けていた。
でも…
マナは顔を上げてシンジをじっと見つめる。
シンジもマナを見つめ返す。

「慣れちゃったのかな?」

そういってにっこり微笑んでみせる。
その笑みでペースを取り戻したのかシンジは苦笑を浮かべて答える。

「そりゃ、空港のロビーであんなことしてたらね。」

先ほど、マナがシンジに抱きついたことをさしていつようだ。
マナは思わず頬を染める。
そんな事言われたって…

「あの時は…その…すごく…嬉しかったから…」

しどろもどろに答えるマナ。

「でも…」

マナは顔を上げてシンジに顔を寄せる。

「あんなことするのは…シンジだけだよ。」

「え?」

今度はシンジが赤面してしまう。
それを見てマナはくすりと微笑む。
そう。
シンジだから…
ちゃんとわかってる?
誰にでもするわけじゃないよ。
シンジだから。
それだけはわかって欲しい。
恥ずかしそうに鼻をかくシンジを見てマナは息をついた。
ずっと、このままでいたい。
シンジと一緒にいたい。
神様。
お願いします。
私をシンジから引き離さないで。
ずっとシンジの傍にいさせてください。
私がずっとシンジのこと見ていられるように。
 
 
 
 

「お帰りなさい。マナちゃん。」

自宅に着いた二人。
ドアホンを鳴らしてドアロックを解除してもらう。
玄関に迎えに出てきたユイにマナは微笑んで答える。

「ただいま帰ってきました〜。」

元気の良いマナの返事にユイは笑みをもらす。

「またよろしくね。」

「はい、よろしくお願いします。」

ぺこりとお辞儀をするマナ。
ふと、ユイの後ろにいた女の子を見てマナは首を傾げる。
背後で荷物で靴を脱いだシンジが声をあげる。

「アスカ?身体のほうは大丈夫なの?」

そのシンジの声ににっこり微笑んで答えるアスカ。

「ええ、大丈夫よ。横になったら大分楽になったから。」

そして、マナに微笑んで見せる。

「はじめまして、惣流・アスカ・ラングレーです。
シンジくんの家の隣に住んでいます。」

そして、手を差し出す。

「はじめまして、霧島マナです。」

手を握りながらマナはじっとアスカの瞳を見た。


この人…
シンジのこと…

手を離して、シンジに視線を向けるアスカ。
そしてマナもシンジに視線を向ける。

好きなんだ…

「ほら、さっさと荷物運んであげなさいよ。」

アスカの言葉に、やれやれと首を振りシンジは答える。

「はいはい。わかってるよ。」

シンジはトランクケースを持ってマナの方を見る。

「とりあえず、部屋の前に持っていくね。」

マナは少し慌てたように答える。

「…え?う、うん。お願い。」

そんなシンジを見送ってマナはアスカに視線を戻す。

「長旅で疲れたでしょ?こっちに来て座ったら?」

「は、はい、そうします。」

ダイニングのテーブルを挟んで座るマナ。
やっぱりそうだ…
なんとなくわかる。
アスカさんはシンジが…
好きなんだ…
だって、瞳が…
私と同じ感じがする。
好きな人がいる瞳。
そして、シンジを見る瞳。
でも…
あの時、シンジは…
 

「シンジ。手紙来てるんだけど。」

マナがうすいブルーの封筒をシンジに見せる。
シンジは首をかしげて答えた。

「誰からなの?」

「惣流さんて人。」

マナはそれだけ言って、シンジの反応をじっと見詰める。
シンジは少し驚いたように、目を見開く。

「…アスカ…か。」

マナはシンジのその表情をじっと見詰める。
シンジは封筒を受け取って、差出人を確認する。

「…」

くすり微笑むと、シンジは封筒を机に置く。
マナは不思議そうにシンジに尋ねる。

「読まないの?」

シンジはにやりと笑って答える。

「まあね…」

そのシンジの表情を見て、
この人と何かあったのかな?
マナはそう感じた。
どうしようか迷ったが、マナは聞いてみることにした。

「ね、このアスカさんて人って誰?」

シンジは少し考えてから答える。

「マナには教えておいた方がいいね…
アスカはお隣の惣流さんとこの娘さんなんだ。
今はドイツに留学しているんだけどね。
僕とトウジ、ケンスケ、洞木さんは中学3年間一緒のクラスだったんだ。」

マナは探るように上目使いでシンジを見る。

「ふうん…で?」

「で、も何も、それだけだよ。」

シンジはおかしそうにマナに答える。
そして、マナをまじまじと見つめる。

「本当にそれだけだよ。」

いつものシンジの笑みが浮かべて、答えるシンジ。

「そう。」

マナはとりあえず納得することにした。
 

少なくとも、それだけの関係ではないと思う。
ユイとにこやかに話しているアスカを見てマナは確信した。
どうして、シンジはちゃんと話してくれなかったんだろ?
それとも私が聞かなかったのがいけないのかな?
ふと、アスカがマナを見て、首を傾げる。

「大丈夫?少し疲れてるみたいだけど。」

「あ、いえ、大丈夫です。」

「アタシもドイツから来たんだけど、日本って遠いわよね。
なんで、こんなに遠いんだろって思っちゃうくらい。」

そうか…
アスカさんって今ドイツに留学してるんだっけ?
でも、シンジは卒業してから戻ってきていないって話してたけど。
どうして、今年は戻ってきたのかな?
ユイが立ちあがってキッチンで何かを準備し始める。
入れ替わりにシンジがやってきてマナの隣に座る。

「ふう…で、アスカはどうしてここに?」

「あのね…ヒカリから連絡があったんだけど…」

アスカはメモを取り出して二人に見せる。
そのメモを見てシンジは呟く。

「…キャンプ…か。二泊ね。メンバーはいつものメンバーだね。」

「私、行きたいな。前のときはシンジが風邪でお休みしたときだったし。」

シンジも軽くうなずく。
そして、視線をアスカに向ける。

「そうだね。アスカも行くよね?」

「もちろん、行くに決まってるわよ。」

何度かうなずきシンジは言う。

「じゃあ、決まりだね。とりあえず、トウジかケンスケに連絡取れば良いのかな?」

「うん。相田のところに連絡して欲しいって。」

「了解。じゃあ、今から連絡するよ。」

シンジは立ちあがって電話をかけにリビングに入っていく。
そして、キッチンにいたユイがやってくる。
二人の前にガラスの器を置く。
そこにはシャーベットが盛り付けられていた。

「スイカシャーベットよ、召し上がれ。」

マナはそのシャーベット見て尋ねる。

「これって、おば様が作られたんですか?」

「そうよ、結構簡単なのよ。」

アスカがにこにこしながら、一口食べる。

「なつかしいです。この味。
アタシがまだこっちにいた時のこと思い出しちゃう味です。」

なつかしい…か。
私にとっては始めてでも、アスカさんには懐かしい味。

何考えてるんだろ?私。
マナも一口食べて、にっこり微笑む。

「すっごくおいしいです。」

「お気に召して良かったわ。」

ユイはにっこりと微笑んだ。
 
 
 
 

マナはベッドの上で寝返りを打った。
眠れない。

やっぱり私、気にしてるんだ彼女の事。
惣流・アスカ・ラングレーさん。
お隣さんで、中学時代はずっと同じクラスだった。
彼女は、アタシの知らないシンジを知っている。
私とは比べ物にならないくらい、シンジの傍にいてシンジを見ていたんだ。
そして、シンジの事を…
好きなんだ。

シンジはどう思っているのかな?
アスカさんのことやっぱり好きなのかな?
だったら、私の事は?

胸が痛い。
苦しいよ。
どうしてだろう?
シンジが他の女の子のこと…
好きかもしれないって思ったら…

心の中のどこかで泣いてる私がいるよ。
その子はすごく悲しんでる。
そんなの悲しいよ…
私よりも…
他の女の子を…
好きだなんて…って、すごく悲しんでる。
マナは手をぎゅっと握り締めて瞳を閉じる。
私…
なんて嫌な女の子なんだろう。
…だって、私。
私。
シンジに私だけを見ていて欲しいって…
他の女の子を好きになって欲しくないって…
ずっと私のそばにいて欲しいって…

どうして?


私、このままじゃ…
どうにかなっちゃうかも。

私が私じゃなくなるみたいで怖い。
どうすればいいの?
シンジはアスカさんのこと好きなのかもしれない。
それが本当だったら、私はどうすればいいの?
笑って、素直に引き下がれる?
この家を出てシンジとさよならして…
シンジのこと忘れられる?



マナの瞳に涙が浮かぶ。
そして、その涙は頬を伝ってシーツに小さなしみを作った。


無理…だよ…
そんなこと…
できるわけないよ…


だって…
こんなに…
好きなんだもの…
忘れるなんて無理…
なかったことなんかにできない…
忘れるって考えただえで…
こんなに胸が痛むんだよ。
心が冷たくなって何も感じなくなりそうなのに。

忘れられないよ…

じゃあ、どうすればいいの…

私はどうすれば…
 
 
 


NEXT
ver.-1.00 1999_05/29公開
ご意見・ご感想は sugimori@muj.biglobe.ne.jp まで!!


あとがき

どもTIMEです。

TimeCapsule第21話「ただいま」です。

さて、やっとマナが帰ってきました。
シンジと会えて、喜びもつかの間、
アスカの登場に波瀾の予感です。
#修羅場ですねぇ。

帰りの二人の会話で出てきた、
第5話で二人で行ったお店でマナが何を買ったのか?
ですが、後の話で出すつもりがすっかり忘れていました。(^^;;
ということで次回以降に出します。
#まぁ、大した物ではないんですが。

さて、次回ですが、キャンプでの話です。
とあるキャンプ地に出かけるいつものメンバー。
シンジ−マナ−アスカの関係に進展が?

では次回TimeCapsule第22話「波紋」でお会いしましょう。
 






 TIMEさんの『Time Capsule』第21話、公開です。







 マナちゃんリターンズで、
 アスカちゃんステイズで、

 こりゃこりゃこりゃで

 大変そうです〜



 一難去ってまた一難

 ・・・だったらまだ良いけど、

 一難去らない内に更にまた一難

 ・・・どころか

 一難去らないまま更に2難3難4難



 大変そうです〜




 さあ、訪問者の皆さん。
 更新ペースはどうなる!?TIMEさんに感想メールを送りましょう!








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