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さて、どうしようか。
授業中そっちのけで彼はデートのプランを練っていた。
遊園地とか水族館が好きだって言ってたから、
やっぱメインはそっちだよな。
うーん。
どっちもってわけにもいかないし。
情報誌を取り出してぱらぱらめくる。
何かイベントとかやってないかな?
そういうのがあるといいんだけど。
そーいえば、確か水族館が
改装されてオープンしたって話を聞いたっけ。
どれどれ。
何ページかめくると、
特集記事で、その水族館のことを解説していた。
結構面白そうだな。
よし、ここに行くか。
彼はうんうんとうなずいた。
彼女は彼のそんな様子を目ざとく見つけていた。
 

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Sweet-Dreams 第八章 「はじめて」
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「シンジ先輩。」
放課後クラブが終って帰ろうとしたシンジは
たまたまツカサと出会って 一緒に帰ろうということになった。
もちろん「たまたま」とはシンジにとってのことで、
当然ツカサはシンジがクラブを終るのを待っていたのだったが。
「何かな?」
シンジはツカサを見る。
「あの、あのですね。」
シンジはにっこり微笑む。
その後ろで太陽が沈んでいくのが見える。
「うん。」
ツカサは小さくため息をついて言う。
「あ、あの・・・やっぱりいいです。」
シンジはふと思い出したようにツカサに言う。
「そういえば、ツカサちゃん今週の土曜日はヒマかな?」
「えっ、どうしてです。」
びっくりして聞き返すツカサ。
自分からデートに誘おうと思っていたのが、
シンジから都合を聞いてくるとは意外だった。
「ほら、忘れたかな、一緒にどっか遊びに行こうって約束してたじゃない。
それで、今週ダメかなって思って。」
何週間か前にシンジがアスカ達と遊びに言った話をツカサにしたが、
ツカサが私も一緒に行きたかったです。と泣きそうに
なったのをみかねて、シンジは約束をしたのだった。
「はい、すっごく暇です。」
ツカサは両手を組んで、瞳はうるうる状態である。
「そんなに強調しなくてもいいってば。」
苦笑して答えるシンジ。
「そうです?」
「じゃあ、いいんだね。」
ツカサを見てにっこり微笑むシンジ。
「はい、いいです。」
一も二もなく了承するツカサ。
「詳しいことは金曜日にもう一度お話しようか。」
「はい。」
嬉しそうにツカサはうなずく。

「ねぇ、それで、それで?」
受話器の向うからからかうようなレイの声が聞こえる。
「うん。とりあえず土曜日の昼に待ち会わせして
撮影場所一緒に探そうって。」
ミカはベッドに横になってファッション雑誌を
めくりながら答えた。
「もしかして相田君、ミカに気があったりして。」
日頃からミカにはシンジのことでさんざんからかわれているレイ。
ここぞとばかり反撃をする。
「もう、そんなわけないじゃない。」
ミカはあっさり答える。
「で、服とかはどーするのよ。やっぱり普段着って
言われてもがんばるんでしょ。」
「うーん。でも、あんまり頑張っても相田君が困るだろうし。
とりあえず、ワンピースだけは買ってきんだけどね。」
ミカはちらりと掛けてあるワンピースに目を向ける。
「へぇ、わざわざ、服買ってきたの?」
「いいんじゃない。せっかく写真撮ってくれるんだし。」
「ふーん。まぁ、そういうことにしておくわね。」
「ところで、そっちはどうなのよ。碇君とはどうなの?」
「それがね、シンちゃんね、何かアタシ達に隠し事してるみたいなの。」
「もしかして、下級生のツカサちゃんって子がからんでるとか?」
「なんでアンタがツカサちゃんを知ってるのよ。」
「あったりまえでしょ。アタシがそーいうことで
知らないことはないんだから。」
「もう、しようがないなぁ。」
「そうか、碇君はアスカやレイに飽きて、
下級生の美少女に走ったって訳ね。」
「だーかーら。そーいう言い方するかなぁ。」
「ごめん。ごめん。でも、なんか大変そうね。」
「そうよ。アスカだけでも大変なのに。」
「とかいいながら、仲いいのよね、アスカとレイって。
普通、同じ男を取り合ってるんだから険悪にならない?」
「いいの、アタシとアスカは特別だから。」
「そうかなぁ。」
「そうなの。」
「ま、いいけどね。」
毎日、教室で修羅場を見るよりかはずっとマシね。
ミカはそう考えていた。

「先輩!!」
シンジは呼び止められ振り向く。
そこにはツカサがにっこり微笑みながら立っていた。
ツカサはブルーのワンピースだった。
「あれ、早いね。」
シンジは時計を見る。
待ち合わせの時間まで、あと十五分ほどある。
「じっとしていられなくて。」
ツカサはシンジの隣に来た。
「じゃあ、行こうか。」
ツカサが両手を組み合わせて聞く。
「今日はどこへ連れていっていただけるんですか?」
「中央水族館に行こうと思うんだけど。」
ツカサは嬉しそうに答える。
「イルカさんとかいるんですか?」
「そうだね、いると思うんだけど。」
二人は並んで歩きはじめた。
それを見つめる二組の瞳。
「やっぱり、ツカサちゃんだったのね。」
「そうね。」
うなずくアスカ、レイの二人。
「さて、どうしようか?」
「・・そうね。」
アスカは腕を組んで考えていたが。
「とりあえず、追跡ね。シンジがどーいう行動取るのか確かめないと。」
首をかしげてレイは聞く。
「それってどーいう意味?」
アスカはシンジから見えない場所に移動しながら答える。
「だから、シンジが確信犯なのかどうか確かめるの。」
レイはまだ納得いかないようだ。
「もし確信犯だったら?」
おそるおそるアスカに聞くレイ。
「その時は死刑ね。」
アスカの瞳が暗く輝く。

シンジとツカサは水族館にやって来た。
さすがにシンジ達の他にも大勢の人がやって来ている。
「結構人が多いですね。」
「そうだね、さすがにリニューアルしたばかりだからね。」
シンジ達は入場券を買い、館内に入る。
「すごい水槽ですね。」
ゲートを超えてまず目に入ったのは大きな水槽だった。
その中にさまざまな魚が泳いでいる。
「そうだね、ものすごく大きいね。」
ツカサは水槽に駆け寄っていく。
「うわぁ、大きいですね。あっ、向こう側からも見えるんですね。」
ツカサは水槽を嬉しそうに見ている。
「さて、どこから見ていこうか?」
ツカサは振り返ってシンジを見て答える。
「私、イルカさん見たいです。」
「イルカか。・・えーっとこっちだね。」
シンジは案内パンフを見てそう言うと、ツカサの手を取る。
「あっ・・・」
ツカサはびっくりしてその場で固まってしまう。
「結構人がいるみたいだから、とりあえず手つないでおくね。」
シンジはやさしくツカサに言う。
ツカサはうつむいてこくりとうなずく。
シンジはそのままツカサの手を握りイルカの水槽に向かって歩きはじめる。
ツカサはシンジに引かれるまま黙ってついて行く。
どうしよ、シンジ先輩と手つないでる。
何かすごくどきどきしてる。
恥ずかしい。先輩の顔も見れない。
先輩は迷わないようにって手つないでくれてるだけなのに。
どうして、こんなにどきどきしちゃうのかな。
すごく嬉しいけど、やっぱり私からは何もできなかった。
私ってどうしてこう臆病なんだろう。
もっと勇気出さないと。

「あっーーー、シンちゃん、ツカサちゃんと手つないでる!!」
レイはつい大きな声を出してしまった。
「こ、こらレイもう少し小さい声で話なさいよ。」
「だ、だってーー!!」
レイはふくれっつらである。
「とにかく、落ち着きなさいよ。」
「で、でも。」
「どーせ、シンジのことだから人がいっぱいいてはぐれるといけないから。
とか言って手をつないでるだけよ。」
「どーして、そう言い切れるの?」
不思議そうにレイは聞く。
「だって、アタシの時もそうだったから。」
「・・・それどういうこと?」 
「だから、アタシとシンジが遊びに行った時も、
やっぱり人が多いとはぐれるといけないからって、
手をつないだりしたから。」
「・・ふーん。」
レイはしぶしぶ納得した。
「さ、とにかく追うわよ。」
アスカはレイを引っ張って行く。

「これイルカさんですか?」
ツカサは水槽に駆け寄る。
「うーんと、これはスナメリっていうイルカの仲間みたいだね。」
大き目の水槽にスナメリが四頭ほど、気持ちよさそうに泳いでいる。
天井は密閉されていないようで、太陽の日差しが差し込んでいる。
スナメリ達は水槽の縁沿いに泳ぎ回ったり、
ボールをつついて遊んだりしている。
「へぇーかわいいですね。」
ツカサが水槽に張り付いてスナメリを見ていると、
一匹がツカサの前に来て、水中でまっすぐ立って、
じっとツカサを見つめる。 ちょうど、ツカサの顔の位置に
そのスナメリの顔がくる。 見詰め合う一人と一匹。
「こっちが見えてるんですか?」
ツカサはシンジに聞く。
「さぁ、目は開いてるみたいだけど。」
シンジは肩をすくめる。
「確か、イルカって水中では目を閉じてるんじゃなかったっけ?」
ツカサはスナメリに手を振ってみる。
「こんにちわ。スナメリさん。」
すると、そのスナメリは少し頭を傾けた。
人間で言うと、首をかしげるといったしぐさだ。
「見えてるみたいですよ。」
嬉しそうにシンジの方を向き、ツカサは言う。
「そうだね。」
ツカサは手を水槽に当ててみる。
と、スナメリはその部分に鼻を近づける。
「うわぁ、かわいい。」
すっかりご機嫌のツカサ。
しばらく、そのスナメリはツカサの側を離れなかった。
ツカサが水槽の前を反対側へ歩いて行くと、
それにスナメリもついていく。
「なんか、気に入られたみたいだね。」
微笑むシンジ。
「私もこの子好きになりました。」
ツカサはスナメリを見つめている。
しばらくシンジ達はその水槽ですごしたが、
「次はどこに行こうか。」
というシンジの一言に、
ツカサは名残惜しそうに小さくため息をつく。
「そうですね。ジュゴンさんとかいるんですよね。その子を見に行きましょうか。」
「ジュゴンね。」
シンジはうなずき、またツカサの手を取って歩き出す。
またもや、固まってしまうツカサであった。

「もう、また手なんかつないじゃってぇ。」
レイは不機嫌そうに言う。
「まぁ、しかたないよ。」
アスカはあっさりと言う。
「ねぇ、アスカ。」
「・・何?」
「アナタ結構平気そうな態度とってるけど平気なの?」
「・・平気なわけないでしょ。」
しばらく黙った後、ジロリとレイをにらむアスカ。
「そ、そうよね。」
慌てて答えるレイ。
「そうよ、このアタシにこんな事させるなんて。」
アスカの目つきが恐い。
「今日は帰ったら、半殺しなんだから。」
レイは驚いて答える。
「そ、それはちょっとやりすぎじゃ。」
「いいの、アイツにはそれぐらいやらなきゃ駄目なの。」
きっぱり言い切るアスカ。
こうなってはレイも何も言えない。
「う、うん。」
「もちろん、レイにも手伝ってもらうから。」
レイに向かってアスカはにやりと微笑む。

「ここですか?」
入り口でツカサがシンジに聞く。
「そうだよ。」
中に入ると、巨大な水槽とそこにいる白い生き物が目に入る。
水槽の中には小さな魚がたくさん泳いでおり、
ジュゴンの食料の水草が何個所かに植えられているが、
その他には岩場などもなく、すっきりしている。
「大きいですねぇ。」
ツカサが関心したように言う。
「うん。そうだね。」
シンジもあっけにとられている。
「この子って大きさどれくらいですか?」
水槽前の説明板を見て答えるシンジ。
「体長が三メートルで体重が四トン近くあるんだって。」
「三メートルで四トンですか?」
「うん。確かにそれくらいはありそうだよ。」
二人は水槽に近づいていく。
「水草を食るんですね。」
「うん。草食性なんだって。」
「なんかのんきそうな顔してますね。」
「そう?」
しばらくジュゴンを見ている二人。
十分ほど経過して。
「まだ、食べてますね。」
「そうだね。」
さらに五分経過する。
「いつまで食事なんでしょう?」
「ずっとだったりして。」
「そうなんですか?」
ツカサは不思議そうにシンジに聞く。
「いや、なんとなくそう思っただけだけど。」
少し迷ってから答えるツカサ。
「うーん。じゃあ、次行きましょうか?」
「そうだね。、もう十分見たし。」
二人は移動しはじめた。

「どうして、この子って食べてばっかりなのかしら。」
レイはジュゴンを見て、不思議そうに言う。
「まぁ、こんなに大きいんだから、体を維持しようとすると
どうしても食べてばっかりになるんじゃない?」
「そうかも。」
「さあ、行くわよ。」
アスカはレイを引っ張っていく。

その後、シンジとツカサは二時間ほどかけて水族館を回った。
「この子達ってイワトビペンギンさんですよね。」
「そうなの?」
「はい、CMで踊ってるんですよ。」
といった会話や、
「このカニさん達って食べるとおいしいんでしょうか?」
「さ、さぁ?食べたことないけど。」
といった会話があった。
水族館から出てくるともう時計の針は六時を指していた。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか?」
シンジはツカサに聞く。
シンジは食事を一緒にするかどうかツカサに聞いたのだが、
門限が七時ということで、今回は食事は断念ということになっていた。
「はい、そうですね。」
ツカサは少し残念そうに答える。
そして、二人は海岸沿いを歩いて行った。
西の海の方を見ると、太陽は水平線に沈んでいこうとしていた。
ツカサはふとシンジを見た。
シンジの顔は夕焼けでオレンジ色だった。
忘れない。今日のことはずっと忘れない。
ツカサは思い切ってシンジの手を握る。
驚いた表情をしてツカサを見るシンジ。
しかし表情をやわらげ、やさしく握りかえす。
「先輩。」
うつむいたままツカサはシンジに聞く。
「何?」
シンジは前を見つめたまま答える。
「あの、どうしてもお聞きしたいことがあるんです。」
「うん。」
ツカサは思い切って聞く。
「アスカ先輩とレイ先輩どちらをお好きなんですか?」
驚いたようにツカサを見るシンジ。
「・・・いきなり確信をつくんだね?」
「そ、そうですか?」
シンジは遠くを見つめるような瞳で答える。
「どちらが好きか、か。難しいね。」
「どうしてですか?」
「・・二人共同じくらいに好きだって気づいたから。」
確かめるように囁くツカサ。
「二人・・共。」
「そう、ずるいとは思ってるんだけど。」
「そうですね。先輩ってずるい人です。」
「そうだね。」
シンジはうなずく。
そのまま二人は堤防を歩いていった。

「やっぱり確信犯ね。」
レイが険しい表情でアスカに話しかける。
「・・・そうみたいね。」
アスカは無表情だ。
「どうするの?」
ちらりアスカの顔を見るレイ。
「とりあえず、シンジの家で待ってましょ。」
「ということは。」
レイはアスカを見た。
「・・もちろん、死刑よ。」

「今日は、ありがとうございました。」
ツカサは家の門の前で、シンジに頭を下げる。
「今日は楽しかったよ。」
にっこりと微笑むシンジ。
「それじゃ。」
ツカサはにっこりと微笑んでつないでいた
手を放し、門の中へ入っていった。
シンジはつないでいた手をじっと見つめた。
そして、ぽつりつぶやく。
「・・・ごめんね。」

夜、シンジの部屋。
アスカとレイに部屋に連れ込まれたシンジは今、椅子に座っている。
「ねぇ、シンちゃん、いったいどーいうつもり。」
レイが腕を組んで、シンジを見下ろす。
「いったいって言われても・・・」
「へぇ、まだしらばっくれるつもり。」
アスカもシンジに聞く。
「そ、そんな。」
「さぁ、全部話なさい。さもないと。」
シンジににじり寄る二人。
「た、助けてー!!」
思わず叫ぶシンジ。
そしてこの夜シンジは地獄を垣間見た・・・


NEXT
ver.-1.00 1998+01/14公開
ご意見・ご感想は sugimori@muj.biglobe.ne.jpまで!!

あとがき

ども、作者のTIMEです。

Sweet-Dreams第八章「はじめて」はいかがだったでしょうか。

年内公開って、間に合いませんでしたね。すいません。m(_ _)m

スナメリはイルカの仲間ですが、
普通バンドウイルカとかは水中で目を開けないんですが、
何故か彼らは目を開けてこちらを見ていたりします。
機会があったら確かめてみください、

で、次回ですが、S.Dでは久しぶりになりますが、LRSなお話です。
冬、雪、露天風呂、降るような星空。
二人の思いはどこに行くのか?
#って最近、作品中で雪降らせてばかりのような気が。(^^;;
では次回Sweet-Dreams第九章「星降る夜」でお会いしましょう。


 TIMEさんの『Sweet-Dreams』第八章、公開です。
 

 怖いよね−−

 他の子と一緒にいることをとがめる彼女が、
 二人もいるんですから(^^;
 

 すっごく怖いですよね−−

 ヤキモチを焼く子が
 平気で実力を行使するタイプなんですから(^^;;;
 

 いやいや。

 ”アスカとレイ”
 極上を二人もキープしておきながら、
 他の子を誘う罰当たり者には報いがあって当然か(笑)
 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 色々な場面を描くTIMEさんに感想メールを送りましょう!


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