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------AD 2017 24 Oct------


彼は空を見上げた。
三日月が見える。
風はあまり吹いていない。
十月ということもあり、
少し肌寒いかもしれない。
彼は両手にコンビニの袋を持って歩き出す。
その先にはライトアップされた
第三新東京高校が見えた。


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Sweet-Dreams 第三章 「本心」
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時間は午後六時五十分を過ぎている。

スピーカからチャイムが流れる。
校内放送だ。

「学園祭実行委員会から連絡します。
滞在許可を受けていない女子生徒は
午後七時までに下校して下さい。
なお、滞在許可を受けている女子生徒は
規定処理を行ないIDカードを身につけて下さい。」

全ての稼働端末のコンソール上にメッセージが表示される。

「学内ネットワークシステムを夜間警備システム管理に移行します。
移行を希望されない場合は所定の手続きを行なって下さい。」
その下に数字が浮かび、カウントダウンされている。
「警備システムへの移行まで、286秒」

さらに校内放送が流れる。

「学内ネットワークシステムを警備システム管理に
移行しますが、次のサービスは警備システム管理に
移行した端末上でも使用可能です。
学内のみでのビデオシステム。
学内のみでのヴォイスメールの送受信。
学内のみでのメール送受信。
以上三サービスは使用可能です。
なお集中講義室のシステムGalaxyは明日からの
保守点検のため、すでにシステムは停止されています。
ご注意ください。」

「学園祭風紀委員会から連絡します。
今夜宿泊を希望する女子生徒は
サーバConstitutionにアクセスし、
所定の手続きを済ませ、午前十時までに
取得した部屋に入室してください。
宿泊を希望しない女子生徒は
午後九時迄に下校して下さい。
その際にはサーバExcelsiorにアクセスし、
所定の手続きを行なって下さい。
この手続きを行なわないと、重大な問題が
発生します。注意して下さい。」

「職員室から連絡します。
2-A クラス委員長の洞木ヒカリさん、
2-A クラス委員長の洞木ヒカリさん、
担任の葛城ミサト先生まで出頭して下さい。」

「・・まったく、面倒臭いわね。なんで、女子だけ
こんな手続きしないといけないわけ?」
一人一台配布されている、ノート型端末に向かって、
滞在手続きをしながら、面倒臭そうにアスカは言った。
「まぁ、しかたないよ。アスカ。
いくら学祭の準備だからって女の子が夜遅くまで、
学校にいたんじゃ、父兄が心配するからね。」
学祭に使用するホログラフプロジェクターを
調整しながら、シンジは答えた。

シンジがスイッチを押すと、教室の壁一面に
さまざまな星座が映し出された。
教室内で、他の作業していた生徒達が
それを見て喚声をあげる。
「うーん。ちょっとピントが甘いかな?どう思う、ケンスケ。」
シンジは横に立っているケンスケに聞く。
映し出された画像に、目を凝らしながらケンスケが答える。
「そうだな。もう少しシャープにしたほうがいいかな。」
シンジがプロジェクターのスイッチを切り、映像を消す。
ケンスケは腕を組んで、ノート端末まで歩いていく。

「でも、生徒の学園祭の自主的運営っていう
大原則を踏みにじってない?これって。」
アスカは不服そうだ。手続きを終え
アスカがシンジのそばにやってくる。
「まぁ、いくら学校でも、父兄が文句を言い出したら、
どうしようもないからな。」
ノート端末に向かいながら、ケンスケは答えた。

「よし、これでどうかな?」
ケンスケは端末脇に積み重なられている
DVDケースの山から一枚を取り出し交換して、
ノート端末に何かを入力する。
そして、シンジに向かって、声をかける。
「シンジ、ちょっと写してみてくれ。
モードはヘッディング2.1マーク0.8で。」
シンジがプロジェクターを調整する。
「OK。じゃ、写すよ。」
ケンスケは映し出された画像を見つめながら、
「うーん。まぁ、こんなところかな?」
と答えた。
シンジもうなずいて、
「そうだね、後は、暗幕を張って細かい所を
調整することにしよう。」
シンジにくっついて様子を見ていたレイが聞く。
「もういいの?」
「うん。とりあえずはね。微調整は、
明日、暗幕張ってからにしようってことで。」
不思議そうに首をかしげながらアスカがケンスケに聞く。
「どうして、ホログラフなの?別に映写器でもいいんじゃない?
プラネタリウムみたいなものだし。」
ケンスケが端末からこちら側を見て、指を振って答える。
「ただのプラネタリウムじゃ面白くないだろ?
だからちょっとした工夫を入れようと思ってね。」
「そうなんだ。どんな仕掛けなの?」

シンジが嬉しそうに答える。
「例えば、そこに地球のホログラフとかを浮かべたりするんだ。」
シンジの指を指した先に、
ふっと地球のホログラフが浮かぶ。
「うわぁ、すごいね。」
レイが嬉しそうにそれを見つめる。
「これだけじゃなくていろいろ出す予定なんだけど。
どんなものを出すかはまだ全部決まっていないんだ。」
「それを今からやろうってことさ。
シンジ、ちょっとこっちに来てくれないか。」
ケンスケがシンジを呼ぶ。
二人は何か話しながらノート端末に向かって作業を始めた。


ヒカリは職員室に入り、ミサトの席に向かった。
「なんですか、ミサト先生?」
額に手を当ててかがみ込み、何かを読んでいた
ミサトは振り返って答えた。
「あぁ、洞木さん?今日の宿泊者リスト
なんだけど、これでいいのかしら。」
ヒカリはミサトから書類を受けとって目を通し、うなずく。
「はい、これでいいと思います。」
ミサトはコーヒーカップに手を伸ばし尋ねる。
「そう。じゃいいんだけど。今日は少ないわね。」
「そうですね。さすがに三泊目となると親が心配しますし。」
納得したように答えるミサト。
「確かにそうね。じゃ、これで提出しておくから。」


「おい、食いもん買ってきたぞ。」
トウジは教室の中央にある机に、買ってきたものを置いた。
そこに生徒が集まる。
シンジが近寄ってきて、トウジに話しかける。
「またいっぱい買ってきたね。」
腕を組んでトウジも答える。
「ま、手当たり次第買ってきたからな。これで、
朝まで持つやろ。」
そこにミサトが現れる。
「もうそろそろ時間よ。泊まらない子は帰らないとね。」

それに合わせるかのように校内放送が入る。
「学園祭風紀委員会から連絡します。
本日宿泊しない女子生徒は午後九時までに
下校して下さい。・・・」

レイがシンジとアスカに話しかける。
「じゃあ、アスカ、シンちゃん。そろそろ帰ろうか?」
端末から目を離しレイの方を見て、答えるシンジ。
「うん。そだね。」
アスカも答える。
「そうね。帰りましょ。」

シンジは端末に向かっているケンスケに声をかける。
「じゃ、ケンスケ。後は、明日ということで。」
ケンスケは端末を見たままシンジ達に手を振る。
「そうだな、こっちは結構時間がかかりそうだから、
俺は泊まることにするよ。じゃ、おやすみ。」
「わかった。また明日。おやすみ。」
シンジもそう言うと、レイとアスカと一緒に出ていく。
それを見つめるトウジがぽつりひとこと。
「毎日、毎日センセも大変やなぁ。
ま、両手に花やから、しんどくはないか。」


三人は暗くなった道を並んで歩いている。
暗いと行っても、月が出ているので、それなりにまわりが見渡せる。
「ねぇ、シンちゃん。」
レイは隣を歩いているシンジに話かける。
三人で歩く時はいつもシンジが中央で
レイが左、アスカが右である。
「なんだい?レイ。」
「あのね。学祭の打ち上げの話、聞いた?」
「ううん。全然聞いてないけど。」
「あのね。じぱんぐで打ち上げしようって言ってるんだけど。」
腕を組んで、うなずくシンジ。
「まぁ、あそこだったら、お酒も出ないし、生活指導の先生も
文句は言わないね。」
少し不満そうなアスカ。
「なんで、お酒飲めないのがいいのよ!!」
首を少し振って答えるシンジ。
「まったく、今年の花見のこと全然凝りてないようだね。」
シンジ達はこの年の春、花見で酒を飲んで、大騒ぎしてしまい。
警察に世話になっている。その一件以来彼らは、生活指導の先生に
マークされているのだ。
その時のことを思い出して、くすりとレイが笑う。
「まぁ、アスカは全然大丈夫だったから。」
シンジも思い出して、微笑む。
「そういえば、そうだったね。」
アスカは不満そうな顔を変えずに答える。
「なんか、アタシがヘンみたいじゃない。
飲めないみんなが悪いんでしょ。」
シンジは少し考えてから答える。
「まぁ、花見のこともあるし、うちのクラスは特にマーク
されてるだろうから、今回はおとなしくした方がいいんじゃない?」
微笑みながらレイは答えた。
「うん。アタシもそう思うんだけど。」
アスカもため息をつきつき、納得する。
「わかったわよ。今回はお酒なしでいきましょ。」


「じゃあ、また明日ね。」
レイの家の前で、レイは二人に小さく手を振る。
そして、レイは玄関に行き、ドアを空けようとするが、
なぜかドアには鍵がかかっていて、開かない。
不思議そうにレイに声をかけるシンジ。
「どうしたの。レイ」
レイは首を傾げ、二人のところに戻って来る。
「うん。ドアに鍵がかかってるの。」
アスカも首を傾げて聞く。
「いつもはかかってないの?」
レイはうなずいて、
「うん。アタシが帰ってくるまで鍵なんてかけないんだけど。」
シンジは腕を組んで考えながら聞いた。
「もしかして、おばさん、帰ってきてないのかな?」
「うーん。ちょっと見てくるね。」
レイは家の庭の方にまわっていった。
確かに二人の位置からは家の灯りが見えず、誰もいないように見える。
しばらくして、レイが戻ってくる。
「やっぱりまだ帰ってきてないみたい。どうしよ。」
アスカは少し考えてから、レイに聞いた。
「もしよかったらうちに来ない?二部屋ほど空いてるし。」
レイは少し考えてから答えた。
「・・うん。迷惑じゃなかったら、そうさせて貰える?
このまま待ってるのも恐いし。」
「そうね。じゃあ家に電話するわ。」
アスカはPHSを取り出し、自宅に電話するが、誰も出ない。
「・・どうしたの?」
「誰も出ないのよ。」
シンジが困ったように答える。
「どうしようか?」
アスカが腕を組んで歩き回りながら考える。
「うーん。そうね。とりあえず帰りましょ。まぁ、いないならいないで、
好き勝手できるから、そのほうが都合がいいし。」
シンジが不安そうに尋ねる。
「あの、好き勝手って・・」
アスカがにこりと笑って答える。
「まぁ、いいじゃない。とにかく行きましょ。」
「あっ、ちょっと待ってね。おばさんに書き置きしておくから。」
レイはノートに何か書くと、それを玄関の目につくところに挟んでおいた。
「さあ、行こっか。」
三人はシンジの家に向かって歩き始めた。


結局アスカの母親のマキは、まだ帰ってきていなかった。
同僚であるシンジの母親のユイが何か知っているのでは
ないかということで、とりあえず先にシンジの家に行くことになった。
ドアの前で、シンジは呼び鈴を押す。
その後ろでレイは深呼吸をしている。
始めて、シンジの両親に会うのだ。緊張せずにはいられない。
ドアが空いて、ユイが顔を出す。
「お帰りなさい。あら、お客さん?」
シンジが事情を話す。
それを聞いてユイは残念そうに答える。
「マキはねぇ、多分今日は帰ってこれないんじゃないかしら。
急に仕事が入ってね。徹夜仕事になりそうだっていってたから。」
アスカがうなずく。
「そうですか。」
ふとユイが何か思いついたように二人に聞く。
「ねぇ、シンジもそちらに泊まらせようかしら。」
アスカとレイが顔を見合わせる。
シンジもびっくりしてユイを見る。
ユイはにっこりと笑って二人に聞く。
「女の子二人だけじゃ心細いでしょ。どうかしら。」
アスカが少し考えた後、答える。
「そうですね。貸して貰えます?」
「ええ、大歓迎よ。」
その会話を聞いていたシンジは呆然としてつぶやいた。
「僕の存在って・・」

「なんか修学旅行みたいだね。」
旅行気分でアスカとレイは二人で湯船につかっている。
浴槽はそんなに大きくないが二人が並んで座れる
ぐらいには広かった。
二人で一緒にお風呂に入るのは初めてであったため、
最初は二人とも遠慮していたが、お互いの背中を
流しあったりしているうちに、二人共いつもの調子に戻っていた。
「ねぇ、アスカ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」
レイは浴槽の端に顎を乗せて、幸せそうな顔をしているアスカに聞く。
なぜかアスカもレイもタオルを頭の上に乗せている。
「なあに?」
アスカはすっかり寛いでる様子で答える。
レイは今まで確かめようとして、確かめられなかったことを
ふうとため息をつき尋ねる。
「アスカって、やっぱりシンちゃんのこと好きなんじゃないの?」
がばっと起き上がって、アスカはレイの方を見る。
顔は真っ赤になっているが、それは湯船につかっていたせいなのか、
今した質問のせいなのかはレイには分からなかった。
「な、何言ってるのよ。前もいったじゃない。シンジとは
幼馴染みなだけだって。」
レイはアスカをじっとみつめて聞く。
いままでのアスカの態度を考える限り、
アスカがシンジのことを意識していないとは考えにくいからだ。
「ほんとに?」
アスカはうつむいて考え込む。
「・・・」
レイはやさしく聞く。
「ほんとは好きなんでしょ。」
「・・わからないの。」
「どうして?」
アスカは壁を見つめて、ひとつひとつ言葉を選びながら答える。
「だって、今アタシがシンジに対して抱いている、
この気持ちがどういうものなのかよくわからないの。
ただ幼馴染みだから気になるのかもしれないし。」
「そうなんだ。二人の距離が近過ぎるのかな?」
少し考えてから答えるアスカ。
「そうね。アタシもそう思う時もあるわ。ね、レイはどうなの?
やっぱりシンジのことが好き?」
嬉しそうに答えるレイ。
「うん。アタシは好きだよ。大好き。この気持ちは特別なの。」
「そうなんだ。」
それっきり二人は黙りこくってしまう。


シンジは困っていた。
確かに女の子二人だけでは心細いであろうが、
そこに自分がいてもいいのだろうか。
まがりなりにもシンジは男だ。
いくら理性で押えても、
狼になってしまうことだってありえる。
まだ二人きりでないということが唯一の救いではあるが、
それがいい方向に行くとは限らない。
そんなことを湯船につかりながらシンジは考えるのであった。


アスカとレイはパジャマに着替えて、居間に来ていた。
アスカはクリーム色のオーソドックスなもので、
レイは薄いブルーで裾に少しフリルがついている。
なぜレイがパジャマを持っているかといえば、
ここ数日学校に泊まっていたため、
着替えと一緒に学校に持ってきていたためである。
アスカは冷蔵庫から牛乳のパックを取り出すとそのまま
飲んでしまう。それを見たレイが注意する。
「もう、アスカ。ちゃんとコップに入れてから飲みなさいよ。」
アスカは我関せずといった表情だ。
「いいじゃない。誰が見てるわけでもなし。」
そこにチャイムが鳴る。
「きっとシンジね。」
アスカは玄関に行ってドアの鍵を開ける。
「こんばんわ。アスカ。とりあえず来たよ。」
シンジは居間にやってきて、レイとアスカに聞く。
シンジは普段着でこようと思っていたが、
ユイにどうせ寝るんだから、パジャマで行きなさい。
というひとことによって、ブラウンのパジャマを着ている。
それに紺のはんてんを重ね着している。
「で、寝る場所とかはどうするの?」
レイが少し恥ずかしそうに答える。
「うん。せっかくだからここで、三人で寝ようかって思うんだけど。」
少しうろたえるシンジ。
「え?」
「いいでしょ、シンジ。まさか嫌とは言わないでしょうね?」
アスカに詰めよられて、後ずさりしながらシンジは言う。
「で、でも。」
「でもも、かかしもないの。今日は三人で
一緒に寝るって決めたんだから。」
あきらめたようにシンジは答える。
「・・わかったよ。」
「じゃあ、とりあえず寝る前に。」
「どうせ飲むんだろ?」
「そう、やっぱりこういう時は飲まないとね。」
アスカはキッチンに行き、ワインボトル二本とグラスを三つ持ってきた。
「ワインでいいわよね。」
そう言うとコルクを抜き、グラスの半分ぐらいにワインを注ぐ。
シンジとレイはそれぞれグラスを持つ。
アスカも自分のグラスを持って、
「学園祭の成功を祈って乾杯。」
と言って、シンジとレイのグラスに自分のグラスを合わせる。
「まったく、何か理由つけては飲むんだから、アスカは。」
すましてアスカが答える。
「いいじゃない。理由もなく飲むよりは、理由があった方が。」
レイもうなずく。
「そうね。まだ、ミサト先生みたいに、
飲むのが日課というのよりはマシかも。」
「そうかな?」
「そうよ、シンジ。アンタもぐずぐず言ってないで飲みなさい。」

・・・シンジは目を覚ました。
意識があまりはっきりしないのは、少ししか寝てないせいなのか、
ワインのせいなのか、シンジには分からなかった。
シンジはソファにもたれている。
アスカは向かい側のソファで丸くなっている。
レイはシンジにもたれかかるように横で寝ている。
シンジはそっとレイを寝かすと、床にたたんであった毛布を
レイとアスカにかけてやる。
そして、キッチンに行き、水を少し飲んだ。
シンジは少し頭を振って椅子に座り、壁に掛けてある時計を見る。
時刻は三時二十分を指していた。
シンジはかけてあったはんてんを着て、静かに外に出ていった。

アスカは何かの物音で目が醒めた。
起き上がると、誰がかけてくれたのか自分が
毛布を被っていることに気がついた。
周りを見回すと、レイがソファで毛布を被って寝ている。
だが、シンジは見当たらない。
不安になったアスカはキッチンの方へ行く。
しかし、ここにもシンジはいなかった。
玄関に行き靴を見たが、シンジの靴がない。
アスカもサンダルを履き、外に出る。
ドアの前で、左右を見て、シンジを探すが、
それらしき人影は見当たらない。
ふいにアスカは以前にシンジに聞いたことを思いだし、
屋上に向かう。

シンジはてすりから、街を見ていた。
この時間になると、さすがに街の灯りも少なく、
星に手が届くような感じがする。
「・・シンジ?」
シンジは後ろを振り返る。そこにはアスカがいた。
「アスカ、起こしちゃった?」
「やっぱりここだったんだ。」
「うん。星が見たくなってね。」
アスカはシンジの側にやってきて、街を見下ろす。
「さすがにこんな時間になると、灯りもすくないわね。」
「そうだね、そのおかげで、星がよく見えるよ。」
アスカは夜空を見上げる。
「きれいね。ねぇ、輝いてる星は全部太陽みたいに恒星なんだよね。」
シンジも同じように夜空を見上げて答える。
「そうだよ。そのまわりに惑星があって。そこには僕らと同じような
生活をしている人がいるかもね。」
ふと顔を見合わせてくすくす笑う二人。
「なんだか、おかしいね。」
「そう?アタシは大真面目よ。」
その時少し強い風が吹き、アスカが少し寒そうなそぶりをみせる。
「アスカ、それだけじゃ寒いだろ。これ着なよ。」
シンジは自分が着ているはんてんをアスカにかける。
「いいの?シンジ寒くない?」
「だいじょうぶだよ。」
シンジはそう言い、ふいにアスカを抱きしめる。
何か起こったのか理解できないアスカ。
ただ感じるのはシンジの鼓動だ。
「こうすれば寒くないよ。アスカを抱きしめてるから。」
アスカは抵抗せずにシンジに抱かれたまま聞く。
「・・どうして?」
シンジは抱きしめる力を少し弱くして答える。
「さあ、どうしてかな。よくわからないよ。」
アスカはいつもより甘える口調で聞く。
「シンジはレイのこと好きなんでしょ。キスしてるんだし。」
「・・そうだね。好きだと思うよ。」
「じゃあ、どうしてアタシにこんなことしてるの?」
「・・どうしてだろ。」
シンジに抱かれて、妙に安心しながらアスカは聞いた。
「アタシとシンジは幼馴染み、ただそれだけでしょ?」
「アスカはそう思ってる?」
「よくわからないの。」
「僕もそう。よくわからないんだ。」
「幼馴染みということ以外に何かあるのかな。」
「じゃあ、ちょっと勇気を出して確かめてみる?」
「何を?」
アスカがシンジを見上げる。
次の瞬間、アスカの唇はシンジの唇にふさがれていた。
とっさにシンジの胸に置いた手に力を込めるアスカ。
しかし手から力を抜き、そして、目を閉じた。

「もう。いきなりなんだから。」
アスカはうらめしそうにシンジを見つめる。
「じゃあ、目をつぶってって言ったら、
アスカは言うこと聞いてくれた?」
「そういう問題じゃないでしょ。どうしてキスしたの?
アタシのことからかってるんじゃないでしょうね。」
慌てて首を振るシンジ。
「ただ、僕とアスカの関係を確かめたかっただけだよ。」
首を傾げるアスカ。
「関係って?」
「幼馴染みなだけなのか。それとも・・」
「それとも?」
「異性として意識しているのか。」
「・・どう思った?」
「アスカこそどう感じた?」
うつむくアスカ。
「・・内緒。」
「じゃあ、僕も内緒にしておくよ。」
そのまま二人は黙って、星を眺めていた。

翌朝、学校へ向かう途中で、アスカはレイにこっそり話しかけた。
「ねぇ、レイ。もしかしたらアタシ達、
お互いにライバルになるかもね。」
不思議そうに聞き返すレイ。
「どしたの、アスカ。」
嬉しそうに微笑むアスカ。
「とりあえず同じスタートラインには立てたよ。ってこと。」
何を言っているのか理解できないレイ。
「えっ?何が。」
「これ以上は内緒。」
そう微笑みながらアスカは言い。シンジも元へと駆けていった。
「ねぇ、ちょっとアスカよくわかんないよ。」
レイもアスカを追いかける。
「さあ、なんでしょう?」
二人の明るい声がこだましていった。



NEXT
ver.-1.00 1997-12/04公開
ご意見・ご感想は sugimori@muj.biglobe.ne.jpまで!!
あとがき

ども作者です。

時間が空いてしまいましたが、Sweet-Dreamsの第三章をお届けします。
今回は一、二章とは違い、アスカの話になっていますが、
いかがだったでしょうか。どうも作者の書くアスカは少しおとなしめに
なってしまい、破天荒さが出ないような気がするんですが。(^^;;

さて、これで同じラインに立ったアスカとレイですが、
まだまだ油断はできません。すぐに強敵が現れたりします。

さて、次章ですが、シンジとレイとの出会いを書こうと思っています。
中三の春、桜が舞い散る中、少年はある少女と出会います。

では次章、第四章「出会い」でお会いしましょう。

 TIMEさんの『Sweet-Dreams』第三章、公開です。
 

 レイとに続いて、
 アスカとも。

 シンジの気持ちはどこにあって、
 どこに向かうのでしょうか。

 アスカとレイ。
 部分では同じ位置、
 また全然異なる位置。
 

 微妙な三角関係ですね。
 

 さらに強敵も現れるそうですので、
 ますます絡む関係に心が揺れます。
 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 色々な場面を書いているTIMEさんに感想メールを送りましょう!


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