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彼女は今飛行機に乗っている。
窓から外を見ると雲しか見えない。
隣にはひさしぶりに見る彼女の父親、
そして母親が座っている。
もう一度窓の外を見る。
やはり雲しか見えない。
彼女はため息をつき、
アイツは今頃何やってるんだろ?
と考えた。


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Sweet-Dreams 第一章 「キス」
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「シンちゃーん。」

聞き慣れた声が背後から聞こえる。
碇シンジは振り返った。
そこには予想していた通りに綾波レイの姿があった。

都立第三新東京高校。午後。2-Aの下駄箱前。

「ねぇ、シンちゃんこれからヒマ?」
レイがシンジに声をかける。

制服は私服化されているため、学生の服はまちまちである。
レイはLove the Earthと印刷されたTシャツに
ショートパンツ姿で、すらりと伸びた白い足が
シンジにまぶしく写る。
周りの男子生徒も何人かが見とれている。
シンジは白のポロシャツにジーンズといういでたちだ。

「うん。部活も終ったし。今日は何もないよ。」
シンジはレイの足から視線をそらすように答えた。
もうレイってば、どうしてこんな
目線に困るもの着るんだろう?

「よかったー。それじゃあ、
今からアタシにつき合ってくれる?」
両手を後ろに組んで、シンジを
のぞき込むようにしてレイは聞く。

「でもどこにいくの?」
不思議そうにシンジは聞く。

「い・い・と・こ・ろ。」
指を立ててレイは答える。

「二人だけで?」

「そう。アスカも誘おうって思ったんだけど。

「家族旅行だよね。」
アスカはひさしぶりに帰国した父親と、
家族三人で旅行に出かけている。

「うん。そう。だーかーらー二人で。いいでしょ?」
そうそう、こんな時じゃないとじゃないと
シンちゃんと二人で何も出来ないんだから。
そうレイは考えていた。

「いいよ。」
にっこりと微笑んで、シンジは答える。
どうせ家に帰ってもすることがなかったのだ。

「じゃぁ、行こうか?」
レイも下駄箱からサンダルを出し履き変える。

「何もいらないの?」

「うん。とりあえず下見ってカンジだから。」

シンジは首をかしげて聞く。
「下見?」

「うん。さ、行こう行こう。」
シンジの背中を押しながらレイは外に出ていく。
それをうらやましそうに見つめる男子生徒が数人いた。



「どう?すごいでしょ?」
レイが自慢げにシンジに言う。

「こりゃ、すごいね。こんなところがあったんだ。」
まわりは木、木、木だ。

「昔からここに住んでるミカに聞いたんだ。」
そして、水が流れる音が聞こえる。

「そうか、僕達はこっちにきてまだ三年目だもんね。
でも三年もこんな場所があるって知らなかったのは、
もったいなかったかも。」

二人は今、とある川の上流に来ている。
かなり山の中ではあるが、バスで三十分ちょっとの所である。
近くにはキャンプ場もあって、バスは比較的近くまで出ていた。

レイが友人から、この川の上流は水が澄んでて、
泳ぐのにもいいと聞いて、シンジと様子を見に来たのだった。

今二人は少し緩やかになっている斜面を降り川のそばにいる。
回りは大きい石ばかりであり、裸足で歩き回るのは危なそうだ。
しかし、水はとても澄んでおり、ときおり、
小さな魚が泳いでいるのが見える。

少し川にそって上流に歩くと、ちょうど岩が重なり
水をせき止め、プールのようになっている場所があった。
深さは二メートルはあるだろうか。

「ねぇ。ここで泳ぐのって、いいカンジじゃない?」

「うん。そうだね。ちょうどその岩が平たくなってるし、
そこで休憩もできるしね。」

シンジが指す先に五、六人は座れそうな平らな岩がある。

二人でその岩に登る。

「こういうのっていいね。とっても。」

「そうだね。」

二人は並んで座って、しばらく回りの音に耳を澄ませた。

レイはすごく嬉しそうだ。
すごくいいなここ。
それにシンちゃんと二人っきりだし、
教えてくれたミカちゃんに感謝しないとね。
レイは親友に感謝した。
実はその感謝は長く続かなかったのだが。

「トリさんがいっぱいいるみたいね。」

「そうだね、いろんな鳥の鳴き声が聞こえるね。」

「水冷たそうだね。ちょっと足付けてみよ。」
そう言うとレイはサンダルを脱いで、
水際まで歩いていき、足をひざまでつけた。

「うーん。結構冷たくて気持ちいいよ。シンちゃんもやってみ。」

シンジも靴を脱いで、足をつけてみる。
「うん。冷たいね。」

「でしょ。すごいね。今日って結構暑いのに
川の水がこんなに冷たいなんて。」

「そうだね、不思議だね。」

シンジが底の方を覗いて言う。
「ねぇ、底の方に魚がいっぱいいるよ。」

レイも覗いてみる。
「ホントだ、小さいけどいっぱいいるね。」

少し休憩して、さらに上流へ歩いていく二人。

「すごいね。こんなに自然がそのままで残ってるなんて。」

シンジはくすりと笑うと答えた。
「今日は「すごいね」ばっかりだよね。レイって。」

レイが両手を腰に当てて、シンジの方を向く。
「だって、ほんとにすごいって思うんだもの。
シンちゃんはそう思わないの?」

「僕もそうは思うけどね。」

「じゃあ、いいじゃ、きゃあ!!」
「あぶない!!レイ!!」

シンジの方へ歩いてきたレイが岩に足をとられて転びそうになる。
とっさにシンジはレイが転ばないように抱きしめてしまった。

「・・ふう。だいじょうぶ?レイ?」

「・・うん。ありがと。」

レイはシンジの胸の鼓動を感じた。
シンちゃんすごくどきどきしてる。
あたしを抱きしめてるからかな?
・・・いけないあたしもどきどきしてきた。
でも、シンちゃんってとっても暖かい。
なんか抱かれてると気持ちがいいな・・・

シンジも自分の腕の中にレイを感じている。
なんか思ってたより華奢だな。
強く抱きしめたら壊れてしまいそうだ。
女の子ってこんなにかよわいのかな。
それともレイだからかな?

レイはふと顔をあげる。シンジと目線が会う。

少し頬を赤くしているレイがシンジを見ている。
シンジはレイの瞳に見入った。
レイの瞳ってすごくきれいだな。吸い込まれそうだ。

すこし戸惑った顔をしたシンジがレイを見ている。
レイはシンジの瞳に見入った。
シンちゃんの瞳ってやさしいね。誰にでもこんななのかな?

見つめ合う二人。そして、どちらからともなく目を閉じる。

どうしよう、いいのかなキスしちゃって。
・・そうだよね。僕はレイが好きだし、
レイも僕のこと好きでいてくれるんだ。

シンちゃんとキスしちゃうんだ。
まさかとは思ってたけど、
こんな場所でなんて・・

シンジの唇がレイの唇に触れる。

ふいにまわりの音は何も聞こえなくなる。

やわらかな唇の感触が全て。

そして二人は見つめ合う。

少しため息をつき、レイは思った。
シンちゃんとキスしちゃった。
すごく幸せ。

テレくさそうにシンジが話しかける。
「ねぇ、レイ。」

あわてて、答えるレイ。
「な、なに?シンちゃん。」

「・・帰ろうか。そろそろバス停に向かわないと。」

「そ、そうだね。そうしよっか。」

そして二人は手をつないで歩きだした。

「ねぇ、シンちゃん。」
しばらくして、バス停まで歩きながらレイが言う。

「なに?レイ。」

「あのね・・・」

「うん。」

少しの沈黙。

「あたし、始めてだったの、
抱きしめられるのも、キスされるのも。」
レイの顔は真っ赤だ。
シンジの方を見ないでうつむいている。

「うん。」

「・・シンちゃんは?」

「僕も初めてだよ。」

「えっ、アスカとは?」
ちょっと意外そうな様子のレイ。

「ないよ。」

「そっか。そうなんだ。あたしは
シンちゃんの始めての人なんだね。」
嬉しそうにレイは微笑む。

「そうだね。」
それを見てシンジも微笑む。

「ちょっと嬉しい。ううん。すごく嬉しい。」
レイはつないだ手をぎゅっと握った。
そうか、あたしの最初の人はシンちゃん。
シンちゃんの最初の人はあたしなんだ。
すごく嬉しいな。

二人はバスに乗るまで手をつないでいた。



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「あいかわらずドジよねぇ。シンジって。」

「なんだよ。ドジドジ言わなくてもいいじゃないか。」
シンジはむっとしている。

「ぼけぼけっとしてるから何回も転ぶのよ。」

「なんだよ。アスカがいっぱい荷物を持たすからじゃないかー。」

ここに来るまでに、シンジは何度も岩につまづいて転んでいる。
それを指して、アスカはドジと言っているのだ。

「まぁまぁ、アスカちゃん。シンジ君も機嫌直して。
みんなでご飯食べようよ。」
カヲルがきれいな笑顔で二人を見る。

「ところで、トウジと洞木さんは?」
並べられた弁当(ほとんどがヒカリが作ったものだ。)の
前に座りシンジが聞く。

「さぁ、二人でどっか行ったみたいね。」
レイがおむすびを食べながら答える。

「ふーん。ご飯と言えばまっさきに来そうなトウジがねぇ。」
シンジも卵焼きを食べながら答える。

「ところで、アスカ。」
レイがアスカの横に来て、小声で話す。

「なに?レイ。」

「最近ヒカリちゃんの様子がおかしくない?」

「うん。そう思う。なんかご飯も少ししか食べないし・・・」
ヒカリが作ったタコさんウィンナーを
パクつきながらアスカも答える。

心配そうにレイが聞く。
「もしかして、アレなんじゃないの?アレ。」

びっくりして、アスカが聞き返す。
「アレってもしかして・・。」

「そうアレ。」

信じられない様子でアスカは答える。
「えー。ほんと?」

レイは首をかしげて、
「アスカ、何か聞いてないかな?」

少し淋しそうにアスカが答える。
「ううん。全然。
でもそうだったとしたら、ちょっとショック。
ヒカリはなんでも話してくれると思ってたのに。」

「でも内容が、内容だから。」

「うん。そうだけど…。」

そこにトウジとヒカリが現れる。
ヒカリは普通だが、トウジの顔が青ざめている。

「トウジ、どうしたの。顔真っ青だよ。」
心配してシンジが聞く。

「ああ、なんでもあらへん。すまんな気い使わせて。」
トウジはシンジの隣に座ると、弁当を食べ始めたが、
いつものような勢いがない。

シンジ、ケンスケ、レイ、アスカが顔を見合わせる。

カヲルは何知らぬ顔で、
デザートのスイカの冷え具合を見ていた。

トウジの元気のなさは、その日解散するまで続いた。



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「ここって始めて来た時からそのままね。」

「そうだね。最初に来たのは六年前か。お互い若かったね。」

「そうね。高二だったかしら。」

「そうそう。あの時、ケンスケがDVD取るのに夢中になって、
岩から滑り落ちて、ビデオだめにしたかと思ったら、
ちゃっかり防水仕様で。みんなびっくりしたよね。」
くすりとその青年は笑う。

「・・・ねぇ、来年も来れるかしら?みんなで。」

「だいじょうぶだよ、結婚しても何も変わらないって。」

「そうよね。ごめんね、変なこと言って。」

二人の唇が触れる。女性の左手のくすり指には指輪が・・・



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ver.-1.00 1997-11/06公開
ご意見・ご感想は sugimori@muj.biglobe.ne.jpまで!!
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あとがき

どうも、作者のTIMEです。
さて、始まりましたSweet-Dreamsですが、
もう一つの連載のLove-Passionを
補間するのが主な目的です。
シンジ達の高校時代を主に書いていこうと
思っています。
で・・・

アスカ:ちょっと、あんた。
なんでアタシの出番が少ないのよ。どげし。

作者: ぐはぁ。
だって、L.P(Love-Passion)で全然レイを書けないから。
こっちではレイ主体で行こうかなって。
(注:L.Pの第二章もアスカ全開です。困ったもんだ。)

レイ: そうよそうよ。なにさアスカ、
L.Pでは出ずっぱりなんだから、
あたしに出番くれたっていいじゃないの。

アスカ:うっ、でもなんで時間すっ飛ばすのよ。
読者の皆さんがついてこれないでしょ。げしっ。

作者: ぐほ。だって、いろいろ設定作りすぎて
収集つかないんだもの。こうやってまとめて
出すのいいかな?って。

アスカ:たくもう。素人はこれだから困るのよ。大風呂敷
広げるのはいいけど、ちゃんとまとめなさいよね。

作者: うっ。了解。

 TIMEさんの『Sweet-Dreams』第一章、公開です。
 

 飛行機に乗っているアスカと、
 シンジとデートしているレイ。

 レイ、大きくリードっ

 

 

 1年後

 みんなで行く
 青ざめているトウジ。

 

 

 更に5年後。

 薬指に指輪を光らす女性と

 男。
 

 沢山の設定が・・・
 一気に出てきた沢山の設定が(^^;

 何が起こっているか(^^;;;

 次回以降の種明かしを楽しみにしています(^^)

 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 感想をTIMEさんにおっくりまっしょう!!


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