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最近、良く同じ夢を見るの。

小さい私が誰かと約束を交わすの。

すごく大切な約束。

すごく幸せだった。

このまま続けば良いと思っていた。

でも、ある時、交わした約束が破られてしまった。

それで、アタシはずっと悲しくて泣いて気がする。

別れ際、その彼から貰ったもの。

すごく大切なものだった。

でも、その後が思い出せない。

約束を交わしたのが誰なのか?

貰ったものは何で、その後どうなったのか?

その約束は何だったのか?

すべて、忘れてしまった。

思い出せるのは、その時の約束がすごく大切なことで、
アタシの存在全てを賭けてでも守り通すべきものだったということ。
ただ、それだけ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Moon-Stone
TIME/99
 

最終話 
重なる想い
 
 
 
 
 
 
 
 
 

うん。そうだね…しかたないよ…

シンジはうんうんうなずきながら答える。
その様子をソファからレイが見つめている。
TVでは台風情報を流している。
ときおり窓が強い風で音を立てる。
まだ、雨は降っていなかったが、空はどんよりと曇っていた。

…え?そうなんだ、そんなことできるの?…うん。そうか、じゃあそれで…

シンジは受話器を置いて、レイに肩をすくめて見せる。
レイは大きくため息をついて答える。

やっぱり中止?

うん。台風直撃じゃね。

レイはもう一度残念そうに息をつきうなずくと、視線をTVに移す。
ちょうど、先ほどから流れている台風情報を聞く。

しかし、見事に直撃コースだったね。

TVを見て、なかばあきれてシンジは言う。
レイもこくこくうなずく。

あと、2,3日遅いか早ければ良かったのに。

まぁ、その代わり、来週に延ばせないか調整してみるって、トウジが。

シンジの方を向いて少し驚いたように尋ねるレイ。

延期にするの?

うん。せっかくだしね。

シンジはうなずいて、トウジから聞いた話を始めた。
話を聞き終えて、レイはうなずく。

それだったら、良いけど…

レイは、すごく楽しみにしてたよね。

レイは嬉しそうににこにこしながら答える。
本当に嬉しそうに笑うよね。
最近、特に以前にも増してよく笑うようになった気がする。
シンジはレイの笑顔を見てそう思った。

だって、お泊りでみんなと旅行に行くの初めてだし。

そうだね、そういえば、レイは始めてだっけ?

そうよ…誰と勘違いしてるのかな?

シンジは苦笑を浮かべて答える。

別に誰とも間違えてないよ。

その答えにレイがぷいっと横を向く。

ホントかな?なんとなくアヤシイんだけど…

TVの台風情報が終わり、CMに入る。
車のCMを何げなく見つめるシンジ。
しかし、レイがシンジの前に座ってじっとシンジを見る。

本当に?

本当だよ。

にっこり微笑んで、レイの頬にキスをするシンジ。

僕が嘘言ったことある?

いっぱい。

レイはきっぱりと断言した。
 
 
 
 
 
 
 

泣きじゃくるレイに父親は途方にくれた様子で話しかける。

レイ…どうしてそんなに泣いているんだい?

レイは泣きじゃくりながら、途切れ途切れに話す。

ぐすっ…だって、だって…

…くんと別れるのが寂しいのかい?

こくこくうなずくレイ。

うん…明日も遊ぼうって約束したのに…
ずっと、一緒にいてくれるって約束したのに…

レイはあの子の事が好きなのかい?

レイはしばらく沈黙して何かを考えていたようだったが、
泣き止んで、父親を見上げる。

…………うん。

そうか…

約束…したの…お嫁さんになるって…

先ほどとは明らかに違う反応を見せる父親。
それもそうだろう、まだ5歳の女の子とはいえ
自分の愛娘が結婚の約束をしたのだから。
父親が返事をするまでちょっとした間があった。

…そうなのかい?

うん…

レイは首にかけていたペンダントを見せる。

これはその約束なの…

これは…ちょっとお父さんに見せてくれるかい?

うん…いいよ。

レイはペンダントをはずすと父親に渡す。
父親は受け取り、そのペンダントをまじまじと見つめる。

キレイでしょ?

満面の笑みでレイは父親に笑いかけた。
 
 
 
 
 
 

レイは自分の部屋のベッドに横になっていた。
はぁ、残念だな。
せっかくお泊りの旅行だったのに。
台風が来るなんて最悪だね。

母さん達はしばらく北海道に出張だし。


ということは…しばらくシンジと二人きりってこと?
レイはその考えにどきりとする。
そうだよ…ね。
もともとアタシ達もキャンプに行くはずだったから…
レイは落ち着こうと、胸に手を当てて大きく深呼吸する。
二人きりって、まずくないかな?
もし、シンジが…


でも…
大丈夫だよね。
だって、シンジは…

って、シンジだって普通の男の子だし、アタシだって…

どうしよう?
そんなこと無いと思うけど…

と、部屋のドアがノックされる。

は、はい?

妙に声が高くなってしまった。
どうしよ、何かアタシ変だよ。
大きく深呼吸してみるレイ。
しかし、それでも何か落ち着かない。

入っていい?

シンジの声だ。
って、この家には二人しかいないから当然なんだけど。

返事しないと。
レイはなるべく声が震えないようにして、答える。

うん。どうぞ。

ドアを開けてシンジが部屋に入ってくる。
ベッドに座っているレイを見て微笑む。

どうかしたの?頬が真っ赤だよ。

レイは慌てて両頬に手を当てる。
本当だ…
すごく火照っちゃってる。
どうしよ〜。
そんな様子のレイを見て、シンジはレイの隣に座る。
え?
どうかしたの?
まさか…
レイのおでこに手を当てるシンジ。

う〜ん。
別に熱っぽいわけでもないよね。
じゃあ、風邪って訳じゃないんだ。

そりゃ、そうだよ。
だって、こうなったのは…
じっと自分を見つめるシンジの瞳を見てうつむくレイ。
そんなに見ないで。
恥ずかしいよ。


どうしたのかな?
すごくどきどきしちゃってるよ。
シンジ、変な風に思ってないかな?
どうしよ〜。
少し不思議そうな表情を浮かべていたが、
思い出したようにレイに話しかける。

さしあたっては今日の晩御飯だけど、何にしようか?

それを聞いてレイは少しだけ落ち着いたのか、
小さく息をついて、顔を上げてシンジを見る。
まだ、少しだけ頬は赤い。

そうね…買い出しとかはいかなくていい?

幸いというか、ユイさんが買い出ししてくれてたみたい。
まるで、こうなるのを予想していたみたいに。

シンジは苦笑を浮かべながら、そう答えた。

そうなんだ…
じゃあ、どうしよっか?

そして、しばらくは二人であれこれと相談して夕食のメニューを決めた。
とりあえず、メニューを決めた後、シンジは眠そうにあくびをして背伸びをする。

う〜ん。
今日は早起きしたんで、眠くなってきたよ…

じゃあ、少しだけお昼寝すれば?

その言葉に、シンジは何気なくレイを見て答える。

レイも一緒に寝る?

え?

またしてもレイの頬が赤く染まる。
そんな…
一緒に寝るなんて…
と、シンジが立ちあがる。

冗談だよ、冗談。
とりあえず、何時間か寝るね。

レイは小さく息をつくうなずく。

う、うん…

もう、シンジのイジワル…
 
 
 
 

これは?

お父さんに貸してあげる。

レイはにっこり微笑みながら、そのペンダントを渡す。

でも、これはレイの宝物じゃないか。

うん、でもね、このペンダントは持っている人を守ってくれるから、
だから、お父さんに貸すの。

そうか…

父親はレイからペンダントを受け取って、首からかける。

だから、ちゃんと帰ってきてね。

わかった。必ず帰ってくるから、
ママの言うこと聞いておりこうさんで待ってるんだよ。

レイを抱き上げて、頬にキスをする父親。

これがあればパパは百人力だよ。
ありがとう、レイ。
 
 
 
 
 

シンジ?寝てる?

ドアから顔を出して小さな声でベッドで眠っているシンジに声をかけるレイ。
あれから3時間ほど経って、いよいよ台風が近づいたせいか、雨と風が強くなってきていた。
レイは他の部屋の雨戸を閉めて最後にシンジの部屋にやって来た。
ベッドの近くまで来て、シンジの様子をみる。
ぐっすりと眠っているシンジを見て、仕方なく肩をゆすってみる。

ねぇ…シンジ、起きて。

しかし、シンジは起きない。
どうしよ、すごく眠そうだったし、起こしちゃ悪いかな?
でも、今のうちに戸締りとかちゃんとしておいた方が良いし。
と、シンジが小さく寝言を言って、寝返りを打つ。
レイはその寝言を聞いて真っ赤になる。
え?
今、シンジ、アタシの名前を呼んだ?
レイはベッドの端に腰掛けシンジの顔に掛かった髪をかきあげる。
そして、唇に軽く触れる。
そのままじっとシンジを見つめるレイ。

どうして、こんなにシンジのこと好きなんだろ?
まだ知り合って数ヶ月しか経ってないのに。
こんなに胸が痛くなるほど好きなんだろう。
まるで…
この人しかいないかのように思いこんでしまって…
冷静になって考えると少し怖くなってくる。
こんなに好きなってしまって。
もし、二人が離れてしまうようなことになったら…
アタシ…
どうなっちゃうのだろう?
しばらくそのままシンジの顔を見つめていたが、
レイは首を振って、シンジの肩をゆさぶる。

シンジ…起きて…

すると、シンジが目を覚まし、ぼんやりとした表情でレイを見る。
しばらく、レイの顔をまじまじと見つめた後、にっこり微笑む。

おはよう…

おはよう、シンジ。

どうして…
こんなに胸が痛むのだろう?
どうして…
こんなに好きなんだろう?
レイはシンジの微笑をみてそう思った。
シンジは起きあがって時計をみる。

もう4時なんだ…

あのね、台風が近くなってきてみたいだから、雨戸を閉めてたの。
それで、後この部屋だけだから。

わかった。じゃあ、ここを閉めればいいんだね。
シンジの部屋にはベッドが置かれている側の壁に窓が一つと、
机が置かれている側に窓が一つあった。
シンジはベッド側の窓を開けて驚く。
外の風景をひとしきり眺めてシンジがため息を漏らす。

すごいね〜。本当に台風が来るんだね〜。

そして、雨戸を閉める。
レイも机側の雨戸を閉めた。
と、当然部屋の中が真っ暗になる。
シンジは苦笑する。
確かに灯りをつけていない状態で、雨戸を全部閉めればこうなるよね。

う〜ん。お約束だな。

シンジは部屋の電灯のスイッチを探す。
う〜ん…
どこだろ?
確か、この辺にあったはず。
と、シンジの身体にレイがぶつかってくる。

へ?

あれ?

態勢を崩して、ベッドに倒れこむ二人。
シンジの上にレイが折り重なる。

ご、ごめん。

シンジの耳元で上に乗っかったレイが囁く。
レイの体を抱きとめ、シンジは小さく息をつく。

レイは大丈夫だった?

身体を少しひねって、シンジの上から身体を下ろす。
そして、シンジの頭を抱え込むように抱いて顔を覗きこんだ。

うん。だいじょぶだよ。ごめんね。

シンジは少し照れくさそうに微笑んで、うなずく。

だったら、良いけど。

シンジの腕がレイの腰に回される。
軽く抱きすくめられるからちになって、レイは恥ずかしそうに顔を伏せる。
雨戸の合わせ目から少しだけ外の光が指しこんできて、
お互いを表情が見ることができる。

どうかした?

シンジの問いかけにレイが恥ずかしそうに答える。

だって、シンジの顔が近くにあったから?

恥ずかしい?

こくりとうなずくレイ。

レイの鼓動が聞こえてくるよ…ちょっとどきどきしてるね。

シンジの胸の上に頭を乗せてレイが囁く。

うん…こんな風に抱かれてたらどきどきもするよ。

…そう?

くすりと笑ってレイが答える。

シンジだってどきどきしてるよ。

そうだね…好きな子を抱きしめてるから…かな?

二人はそのままで黙っている。
外はさらに風が強くなってきたのが、風の巻く音や、木々が葉を揺らす音などが聞こえてくる。
それとは対照的に部屋の中は静かだった。
レイはシンジの鼓動を感じ、シンジはレイの鼓動を感じている。

重くない?

ふいにレイがそんな事を聞く。
シンジはレイの髪を撫でながら答える。

そうでもないよ。レイって軽い方だよね?

そうかな?

前、抱きかかえたときも軽かったよ。

…もう、思い出させないで。

レイが恥ずかしそうに首を振る。
そして、顔を上げてシンジを見る、

ねぇ…シンジ…

何だい?

見詰め合う二人。
お互いの瞳の中に自分を見つける。
そして、レイは囁くような小さな声で続ける。

アタシ…

と、急に電話のなる音が二人の耳に入る。
顔を見合わせて、慌ててシンジから離れて立ちあがるレイ。

アタシが出るね。

うん。

レイを見送り、シンジは起きあがり、灯りをつける。
そして、自嘲気味に小さく笑って息をつく。
電話が掛かってきたのは二人にとっては良かったのかもしれないな。
 
 
 
 
 

夢を見ていた。

ずっと昔のこと…

まだ、僕が小学校にも言っていなかったときのこと。

ある夏、僕は砂場で一人で遊んでいて。

その子に会ったんだ。

長い髪と、澄んだ瞳が印象的だった。

「ねぇ、一緒に遊ぼ?」

そういって、手を差しのべてくれた彼女の笑顔を今でも覚えている。

僕達はすぐ仲良くなったんだ。

そして、毎日ずっと、夜遅くまで一緒に遊んだ。

砂場で遊んだり、

ブランコに乗ったり、

一緒に野原を駆け回ったり、

セミを捕まえたり。

かけがえの無い日々だった。

ずっと、このまま続けば良い。

ずっと、この子と一緒にいたい。

そう考えていた。

でも…

それは長く続かなかったんだ。

だから…

僕は…
 
 
 
 
 
 
 

食事後、二人はリビングでTVを見ていた。
しかし、二人とも上の空で考え事をしている。
台風の接近に伴い、いよいよ雨も降り始め、序所に強くなる風とあいまって、
大きな音を立てて雨戸に当っている。
ちらりとシンジの方を見るレイ。
何か雰囲気が変。
アタシが意識しているせいかな?
それとも周りがうるさいからそう思うのかな?
何かすごくどきどきしてくる。
いつもとは違う気がしてしょうがないよ。
どうしよ…
時間的にはお風呂に入らないと…
でも、何か言い出し辛い。
アタシからお風呂入りたいなんて言い出すの…
何か誘っているみたいで…

って、何考えてるんだろ?アタシ。
やっぱりおかしいね。
二人きりだから…
変に意識しちゃうのかな?
前はそんな事無かったのに。
やっぱり好きな人と一緒にいるとこうなっちゃうのかな?

と、シンジは顔を上げて、時計を見る。

もう、こんな時間だね。そろそろお風呂とか入る?

そ、そうね。

少し、頬を赤く染めてレイがうなずく。

じゃあ、レイから入ってよ。

うん。わかった。

レイが経ちあがり自分の部屋の戻っていくのを見送ってシンジも苦笑する。
やっぱりレイも意識しちゃってるのかな?
二人きりだし…
その…


シンジは首を振る。
はぁ、どうしてそんな事考えちゃうんだろうね。
好きって想いだけでは駄目なのかな?
やっぱりそれ以上を求めちゃうのかな?
 
 
 
 
 
 

お父さんが…

そう言ったきりレイはうつむいた。
学校で呼び出されたとき、ある程度予想はできた。
でもやっぱり、それが事実だと知ると…
やっぱり、我慢できない。
泣かないでいよう。
そう思っていたのに
やっぱり、胸が痛い。
心が痛いよ。

お父さんが…

いなくなるなんて…

信じられないよ…

どうして?

泣きじゃくるレイにユイは囁くように話しかける。

これが遺品だそうよ。
遺体の回収は…できなかったって…

ユイの声が震える。
机の上には壊れたカメラと、指輪、ペンダントが置かれていた。
そして、レイに手渡されたものは。

ペンダント?

淡く輝くムーンストーンのペンダントだった。
 
 
 
 
 
 

シンジはベッドに寝転がって、部屋の蛍光灯の灯りを見つめていた
台風は相変わらず接近しているようで、さらに風雨が激しくなってきている。
とてもじゃないけど寝る気分じゃないよな。
レイと僕の二人きり。
この家には二人しかいない。

苦笑を浮かべるシンジ。
何意識してるんだろ?
今までだって何回か同じ状況になったじゃないか。
でもないか。
お互いの思いを知ってからは、
こんな状況が無かったから…
だから、すごく意識するんだよね。
と、ドアがノックされる。

はい。

アタシです。

当然と言えば当然だが、それはレイだった。

開いてるよ。

ドアを空けてレイが部屋に入ってくる。
起きあがってベッドの上に座るシンジ。

どうしたの?

シンジは時計を見て続ける。

もう遅いよ。

レイは少しはにかんで答える。
いつもの華やかな笑顔とは少し違う、憂いを秘めたような微笑み。

寝つけなくて…
それで、部屋の明かりが漏れてたから、起きてるのかなって。

シンジもうなずき返して答える。

そうだね…僕も何か寝つけなくて。

うつむいて小さな声でレイは尋ねる。

そっちに…いっていい?

シンジは少し驚いた表情をするが、こっくりとうなずいた。
ゆっくりとシンジの元に歩いてきて、その隣に座るレイ。
風が雨戸をがしゃがしゃ揺らして音を立てさせていた。

凄い風になってきたね。

そうだね、あと何時間かで最接近だって。

そうなんだ。

うん…

会話が途切れて黙ってしまう二人。
風が雨戸を叩く音が部屋に響く。

シンジは台風って平気?

ふと、レイが顔を上げてシンジを見る。

うん。そんなに怖くは無いけど。
レイは怖い?

ちょっとだけ。怖いと言えば雷の方が嫌い。

なるほどね。

また会話が途切れて黙ってしまう二人。
何か、いつもと違うな。
シンジはちらりとレイを見る。
レイは首元に下げているペンダントを見つめる。
ペンダント…か。
と、ふいに何処からか声が聞こえたような気がする。

「本当に戻ってきてくれる?」

今の…
なんだろ?
きょろきょろあたりを見まわすシンジを不思議そうに見つめるレイ。

どうかしたの?

いや…いま、誰かの声が…

そう?

シンジは苦笑を浮かべて首を振る。

まぁ、気のせいだろうけど。

そう。

レイが小さく息をつく。

どうしたの?

そんなレイを見て今度はシンジが不思議そうに尋ねる。
レイが顔を上げてシンジをみてはにかむ。

ちょっとだけ、緊張してるみたい…

緊張?

首を傾げるシンジ。
レイが顔を伏せて小さな声で囁く。

だって、二人きりなんだもの…

レイの頬が赤く染まる。

二人きり…

シンジも自分に確かめるように囁く。
レイがシンジの肩に頭を乗せる。
そのレイの肩を抱き寄せるシンジ。

どうしてなのかな?
シンジと一緒にいるとすごく安心するけど、
すごく胸が苦しくなるの。
シンジがアタシのこと思っていてくれるって思うとなおさら。
以前の好きとは違う「好き」になった気がするの…

ぼくだって、そうさ。

不思議だね。

それは…

言いよどんだシンジにレイはくすりと笑い声をもらす。

それは?

シンジはレイの頭を撫でながら続けた。

情熱…だと思う。

情…熱…

レイもその言葉を確かめるようにゆっくりと囁いた。

そう…情熱。

シンジはやさしく、レイにキスをする。
そして、背中に腕を回してベッドに押し倒す。
レイはされるがままにベッドに横になる。
そして、シンジの瞳を見つめる。
シンジはやさしくレイを抱きしめる。
レイはシンジの首に手を回す。

好きだよ…

レイの耳元でシンジが囁く。
もう…
どうして、こんな時にそういうこと言うのかな?
すごく嬉しくなっちゃうじゃない。
絶対わかってやってるよね、シンジは。

アタシも…シンジのこと…大好きだよ。

唇を重ねる二人。
さっきよりも少しだけ長いキスの後で、シンジはレイの髪をなでる。
ずっとこのままでいたい。
シンジの背中に手を回すレイ。
こうして抱きしめるのすごく好きなの。
シンジを感じることができるから。
シンジのこと一人占めしていると思えるから。
でも…
どうなるんだろう?
アタシ達?
急に寒くなったようにレイは身震いした。
シンジが顔を上げてレイを見る。

寒いの?

レイはふるふる首を振って答える。
髪がさらさらと揺れる。

ううん。大丈夫。

そうか…

シンジは小さく息をつく。
そしてかすれるような小さい声で尋ねた。

いい…かな?

少し驚いたように瞳を見開くレイだったが、
小さくうなずくことで答えたとした。
見詰め合う二人、お互いの瞳に自分の姿を認める。
そして、シンジの手がレイのパジャマのボタンにかかる。
ボタンを一つはずすごとにレイの裸が現れる。
この誘惑に勝てるものなどいるのだろうか?
自分の一番大切な人を…
僕には無理だ。
レイが好きだから。
だれよりもレイのことだけ見ていたいから。
だから…
僕は…
レイが恥ずかしそうに肩を抱いてはにかむ。
外で風が巻く音が聞こえる。
雨も風もさらに強くなってきていた。

そんなに見つめないで。

そのレイを包み込むようにやさしく抱きしめるシンジ。
レイもシンジの背中に手を回す。
肌を重ねる二人。
レイが小さな声でシンジの耳元に囁く。

どうしよ…すごく…どきどきしてる…

僕もだよ…

鼻が触れそうな距離でお互いの瞳を見詰め合う。

シンジ…放さないで…

レイが小さな声で囁いた。

あぁ、絶対に放さないよ…
 
 
 
 
 
 
 

「これは?」

泣きじゃくっていた女の子は男の子の差し出したものをまじまじと見た。

「ペンダントだよ。僕の宝物。君にあげる。」

そのペンダントを受け取って、不思議そうに男の子の顔を見る。

「本当?貰って良いの?」

「うん。このペンダントは、持ってる人を守ってくれるんだって。」

「守る?」

「そう…僕が戻ってくるまで、このペンダントが君を守ってくれるから。」

その言葉にペンダントをぎゅっと握り締めてうつむく女の子

「本当に戻ってきてくれる?」

「うん。約束だよ。必ず君のところに帰ってくるから。」

「…」

「だから、泣かないで。」

「…」

「…」

女の子は目をこすって、顔を上げる。

「指きり…」

そして、小さな小指を男のに差し出す。

「わかった。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

シンジ…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

やっと会えたね…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Fin.
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

最後までお付き合い下さった方々に尽きない感謝を。

TIME/99













ver.-1.00 1999_07/19公開
ご意見・ご感想は sugimori@muj.biglobe.ne.jpまで!!





 TIMEさんの短期集中連載『Moon-Stone』最終話、公開です。









 長い時間を超えて、
 ついについにで
 やっとやっとです(^^)


 よかったね。





 もうほんと、ちいさいころからの・・・


 兄妹になっちゃって、

 近くにいられるようになって、
 しかしそれで
 ほんとにちかくになれなくなっちゃってて、、



 でも、やっと、

 ホントよかった☆

 会えて







 さあ、訪問者の皆さん。
 完結!TIMEさんに感想メールを送りましょう!









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