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「二人の補完」

 

  第二話 「偽りの再生 - Love is destructive - 」

 

 

 

シンジ…、

あたしから全てを奪った男。

あたしのプライドを粉々に打ち砕いた男。

あたしの人生を、あたしの生き方を嘲弄した男。

 

あたしにとってエヴァは全てだった。

ママはあたしを愛してくれなかった。

パパはママとあたしを捨てて愛人の元に走った。

あたしの家族はあたしを見てくれなかった。

誰もあたしを見てくれなかった。

だからあたしはみんながあたしを見てくれるようにした。

寝る間も惜しんで勉強して13歳で大学を卒業した。

セカンドチルドレンとしての厳しい訓練にだって耐え抜いた。

勉学と訓練。それだけがあたしの7年間の青春だった。

つらかった。でもこれでみんながあたしを見てくれる。

みんながあたしを必要としてくれる。それだけで十分だった。  

 

それにあの人に出会う事ができた。

加持さん…。

あたしの好きな人。

あたしの憧れの男性。

あたしの人生の中で唯一人あたしを普通の女の子として見てくれた人。

唯一人あたしが心を許した男。

あたしは嬉しかった。あたしが誰かを好きになる。誰かに夢中になる。

そんな事は一生ないと思っていたから…。

けど加持さんは最期まであたしの想いに答えてくれなかった。

加持さんの心の中にはいつもあの女が住んでいたから。

結局、加持さんにとってあたしは妹のようなものだったんだ。

そしてあたしにとっても加持さんはただの年上の異性に対する憧れでしかなかった。

シンジに出会ってからしばらくしてあたしはその事に気づいた。いや気づかされた。  

 

 

サードチルドレン碇シンジ。

初めてその名前を聞いたときあたしは敵としてその名前を認識した。

敵。そうあたしのポジションを脅かす敵。

何の訓練もなしに実戦でいきなりエヴァとシンクロした?

あたしだってエヴァとシンクロするのに半年はかかったのに。

その時のシンクロ率は軽く40を超えていた?

嘘でしょ?

あたしがその数値を出すのに何年かかったと思っているの。

あたしはまだ見ぬその少年を憎悪した。

そいつの存在自体があたしの人生を、私の7年間の努力を嘲弄しているように思えたから…。

 

初めてそいつを見て、あたしは肩の力が抜けるのを感じた。

ナニコイツ?

これが選ばれたサードチルドレンですって?

こんな冴えない奴が使徒を3匹も倒したんですって?

笑わせるわ。どうやらあたしの勇み足みたいね。

こんなのどう頑張ったってあたしの敵にはならないわ。

まぬけそうな面しちゃって…、頭脳では13歳で大学を卒業したあたしとは較べものにはならないわね。

運動神経もたいしてよくなさそうね。一見してトロそうだもんね。だいたい何の戦闘訓練も受けてないんでしょう。素手で一対一で戦えばいつでもあいつを殺せそうだわ。

顔も平凡だし絶世の美少女であるあたしとくらべたら引き立て役にしかならないわね。

何よりあの臆病そうな他人の顔色を窺うような目は何よ。そんなに他人が怖いの? あたしの一番嫌いなタイプね。

結局あいつにあるのはエヴァとシンクロする才能だけね。認めたくはないけどそれだけに関しては一種の天才だわ。けどだからこそ許せない。

セカンドチルドレン。

あたしがこのポジションを手にするのどれだけの努力をしてきたと思っているの。 あたしが自分がエヴァのパイロットであることをどれほど誇りにしているかわかっているの。

あいつはあたしが7年かけて死に物狂いで手に入れたものを才能の一言ですんなり手に入れてしまった。しかもその事にちっとも感謝していない。むしろ嫌々しかたなくエヴァに乗っているという感じだった。

それはあたしの存在意義(レゾンデートル)を嘲弄する行為だった。

あたしはあいつの存在を認めない。あいつを認める事はあたしを、今までのあたしの生き方を否定する事になる。誰があんたなんかに負けるものか。あたしの方があんたより優秀だってみんなに認めさせてやるんだから。  

 

シンジと一緒に住み始めてからあいつにはもう一つ別な才能がある事がわかった。

家事の才能。

シンジの作る料理は確かにうまい。掃除や洗濯も面倒臭がらずによくやっている。

作戦が終わった後もあたしはそこに留まった。

何てことはない。シンジがいると便利だからだ。

朝食も夕食も昼飯の弁当だってシンジがいればうまいものを作ってくれる。掃除だって洗濯だって自分でしなくていい。あたしが頼めばシンジはたいていのワガママは聞いてくれる。あたしが暴力をふるったって、理不尽な要求をして喧嘩になったって、あたしが怒ってみせればシンジの方から「ごめん」と謝って折れてくる。シンジがあたしに手をあげることは決してない。

本当に便利な「下僕」だ。むろんそれ以上でもそれ以下でもありえないはずだった。  

 

なのにシンジがファーストと楽しそうに話しているのを見ているとイライラする。

シンジの煮え切らない態度を見ていると本当にイライラする。

なぜイライラするの?

シンジの事なんかどうだっていいはずなのに・・・。

あたしがシンジに何か期待しているというの?

そんな事はないと思っていた。

けどシンジといると楽しかった。自分を偽らずに思う存分好き勝手に振る舞えるのはすごく気持ちが良かった。

こんな事は加持さんの前ですらできなかった事なのに・・・。

あたしのワガママを聞いてくれるシンジに心の中で感謝した。

結局言葉で伝えることはできなかったけれど…。

 

けれどそんなシンジにもまだあたしは本当のあたしを見せていない。

弱い自分。

泣き虫な自分。

そしていつのまにかシンジに惹かれている自分。

けどそれだけは見せるわけにはいかなかった。そうあたしは輝ける強気の天才少女でなければならなかった。

自分の本当の姿を知られたらきっとあたしは嫌われてしまう。

シンジはあたしに興冷めしてあたしから離れていってしまう。

そんなの嫌!

だから隠すの。一生シンジに本当のあたしを隠し通すの。大丈夫よ。今までずっとそうやって生きてきたのだから。  

 

 

 

けど楽しかった日々は突然に終わりを告げた。

あたしはシンジに負けてしまった。シンクロ率でシンジに抜かれてしまった。

それだけじゃない。使徒に2回も続けて負けてしまった。しかもその使徒をシンジが倒してしまった。

悔しかった。

何もできなかった事が。

そしてバカシンジに負けたことが。

あいつは誰もが認めるエースパイロットになってしまった。

そしてあたしのシンクロ率はどんどん落ちていった。

あたしの居場所がなくなっていく…。

あたしが苦労して積み重ねてきたものが音をたてて崩れ落ちていく。

みんながあたしを見てくれなくなった。あたしは一人になってしまった。

どうして?

何故こんな事になってしまったの?

シンジのせいだ!

シンジさえいなければあたしがエースだった。

シンジさえいなければみんながあたしを見てくれていた。

あたしはシンジを憎んだ。

他にあたしの怒りをぶつける場所は存在しなかったから。

あたしはシンジを傷つけた。

軽蔑、暴力、卑下、拒絶、嘲弄…思いつく限りの手段を尽くして…

そして傷つくシンジを見てあたしは喜んだ。

醜い感情。こんな自分をあたしは嫌悪した。あたしは自分をアザ笑った。

「ふん、自分でさえ好きになれないあたしを他人が好きになってくれるはずないわよね」  

 

 

それからのあたしは坂道を転がるように…、いや滝から垂直に落下するように堕ちていった。

使徒に心を犯された。

けれどシンジは助けにこなかった。

「よかったね」ですって?

ふざけんじゃないわよ! 嫌い! 嫌い! 大嫌い!

 

それなのにシンジはあの人形女を助けるために出撃した。

何よ!

あたしの時にはださなかったくせに・・・

ちくしょう! ちょくしょう! ちくしょう!  

 

 

 

シンクロ率ゼロ。

セコンドチルドレンたる資格なし。

もうあたしがこの世に存在する意味もないわ。

誰もあたしを見てくれないもの。

もうシンジもあたしを見てはくれない。シンジはあの人形女のものになってしまったから。

あたしも人形になりたかった。あれだけ嫌悪していた人形に…。そうすれば何も考えずにすむから。何も考えなければ、何も感じなければもうこれ以上傷つかなくてすむから…。  

 

しばらくしてシンジがあたしの病室にやってきた。

今更のこのこと何しにきたのだろう?

ボロボロになったあたしを笑いにきたの・・・。

それとも哀れんで憐憫でもかけにきたの・・・。

もうどっちでもいいわ・・・。好きにして。

え?

「助けてくれ」ってどういう意味よ?

ファーストが怖い?

ミサトが怖い?

何よそれ?

シンジの奴、あたしとは違った意味で壊れているみたいだった。

いつもワガママをいうのはあたしだった。シンジがあたしを求めてきたのは初めてのことだった。

あたしは嬉しくなかった。誰でもいいんだ。シンジにとっては…。別にあたしじゃなくたって…。ミサトやファーストが怖いからあたしに逃げているだけなんだ。

突然衣服がはだけた。

胸が露出していたが今のあたしにとってはもうどうでもいい事だった。

シンジの奴どうするつもりかしら?

このままあたしを犯すの?

それとも衣服の乱れを直してくれるの?

どちらでもなかった・・・。

あいつは病室のドアの鍵をロックしたと思うと、おもむろに自慰行為を始めた。

「最低だ。俺って!」

本当に最低よ! バカシンジ!

これが壊れたあたしに対するあんたの態度というわけね。

あたしの事が大切でもないし女としても認めていない。

ただのはけ口にすぎないわけね。

悔しい!

あたしこんな奴に負けたの?

あたしはこんな奴の事が好きだったの?

壊れた女の子に対して優しい言葉の一つもかけられない情けない男。

身動きが取れない半裸の女を犯すことはおろか触れることさえできない情けのない男。

こんな…、こんな…、出来損ないみたいな奴をあたしはいままで相手にしていたっていうの?

もう嫌!

何もかも嫌!

加持さんもバカシンジも誰もあたしを助けてくれない。見てくれない。

ママ…、助けてよ。

あたしをこんな世界から救いだしてよ。

ママ……。  

 

 

  

 

 

 

 

 

生きてる?

ここはどこなの?

ギャ! ああ、あ・・・!!

何が起きてるの?

あたしは死ぬの?

イ、イヤ・・・死ぬのはイヤ・・・!

死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ!

死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ!

死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ!

死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ!

死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ!

死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ!

死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ!

死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ!

死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ! 死ぬのはイヤ!

「まだ・・・生きてなさい」

「まだ、死んではダメよ」

「殺させないわ」

「まだ・・・死なせないわ」

「死んでちょうだい一緒に」  

 

死ぬのはいやああぁぁっ〜!!  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え!この感じは…! そうママここにいたのね!  

 

 

 

 

 

 

 

 

 




母との再会




狂気




偽りの再生




 

 

 

 

 

 

 

 

うふふふふ…!

あははははは!

死ね! 死ね! 死ね!

もう何もいらない!

ママさえあたしを見てくれていればいい。

バカシンジなんていらない。

誰もあたしを見てくれなくてもいい!

ママがいるから! ママがあたしを見てくれているから。

あたしは何で戦っているのかしら?

何の為に使徒ではなく同じ人間を殺しているのかしら?

もうどうでもいいわ。きっとママがあたしを守ってくれるから。

あたしは無敵よ!

あはははは!

みんな死んじゃえ!

みんな死んでしまえ!

 

 

 

 

 

 

敵は全て消えたわ!ママとあたしの勝利だわ!

えっ、何あれ?

エヴァシリーズ! 完成していたの?

関係ないわよ!敵が何匹いたってあたしとママに勝てるはずないもの!

ほらごらんなさい!しょせんあたしの敵じゃないのよ。

なのに本当にしつこいわね!

バカシンジなんてあてにできないのに。

ママが見てるのよ。負けてられないのよ!あんた達なんかに!

 

これでラスト!

終わったわ!

今度こそ本当にママとあたしの勝利だわ!

えっ!

何これ?

ロンギヌスの槍?

ぎゃああああああ!!!

痛い! 痛い! 痛い! 目が! 目が…!  

 

え!?

今度は何なの!?

ぎゃあああああああああぁぁ!!!!

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!

全身を食いちぎられるおぞましい感覚・・・。

あ…ああ…ううう…う…

・・・マ・・・ママが…ママが…消えて行く…。

何で! 何であたしがこんな目に会うの!?

畜生! ママを返せ! 痛いよ! 苦しいよ! 畜生!

殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!殺してやる!

殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!殺してやる!

殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!殺してやる!

殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!殺してやる!

殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!殺してやる!

殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!殺してやる!

殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!殺してやる!

殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!殺してやる!

殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!殺してやる!

殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!殺してやる!

殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!殺してやる!

殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!殺してやる!

殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!殺してやる!

殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!殺してやる!

殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!殺してやる!

殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!殺してやる!

殺してやる!

 

 

 

突如右手が真二つに裂ける感覚!

次々にあたしの体に槍が刺さっていく・・・。

薄れゆく意識の中であたしは思った。

シンジ…、

どうして助けにきてくれなかったの?

どうしてあたしとママを見殺しにしたの?

あたし何か悪いことした?

こんな酷い死に方しなきゃいけないほど悪い事したの?

あたしはただあたしを見てほしかっただけなのに…。

次の瞬間あたしの五体がバラバラに引き裂かれる感触がした。

と同時にあたしの意識はそこで停止した。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………ここはどこなの?

あたし生きてるの?

どうして…?

あたしたしかにエヴァ量産機にママごと陵辱されて喰い殺されたはずなのに…。

 

え…!?

苦しい…。

誰かがあたしの首を絞めている…。

シンジ?

シンジなの…?

そう…それがあなたの答えというわけなのね…。

 

あたしは気がつくとそっとシンジの頬を撫でていた。

すると突然シンジは手をゆるめそしてすすり泣くような嗚咽が聞こえてきた。

あたしは持てる負の感情の全てを込めてつぶやいた。

 

「気持ち悪い!」

 

 

 

 

 

 

シンジ…。

あたしから全てを奪った男。

あたしのプライドを粉々に打ち砕いた男。

あたしの人生を、あたしの生き方を嘲弄した男。

あたしを見捨てた男。

あたしを汚した男。

あたしを見殺しにした男。

そしてあたしの首を絞めて殺そうとした男。

 

 

気持ち悪い!

大嫌い!

いえ憎いわ! 殺してやりたいぐらい憎いわ!

 

一人じゃなんにもできないできそこないのような分際で

あたしの事を気にするようなそぶりを見せて

あたしにやさしくして

それなのに何喰わぬ顔してあたしから全てを奪って

それでもあたしにやさしくする。

許せない!  

 

あたしはあんたのせいでなにもかも失ったのよ!  

あたしはあんたのせいで使徒に心を犯されたのよ!

あんたがあたしを見てくれないからあたしの心は壊れたのよ。

あんたが助けにこないからあたしの体はエヴァに汚されたのよ!

あんたのせいでやっと手に入れたママを永遠に失ったのよ!

あんたのせいで…!  あんたのせいで…!  あんたのせいで…!

許せない!

あいつさえいなければ…。

 

あたしは13歳で大学を卒業した天才少女だったのよ。

7歳の時からすでに適格者だった人類を守るエヴァのエリートパイロットだったのよ。

あんたさえいなければみんながあたしを見てくれていたのよ。

そうよ。エヴァのエースパイロット、そしてこの世界を救った天才美少女として輝ける人生を送れるはずだったのよ…。

けどあいつとかかわってあたしはどうなったの。

あいつのせいであたしはエースの座を失ってしまった。

あいつのせいであたしは壊れて役立たずの烙印を押されてしまった。

あいつのせいであたしはエヴァに陵辱されまるで虫けらのようにバラバラに解体されて殺されてしまった。

あいつのせいであたしは誰にも見てもらえなくなり一人になってしまった。

あいつのせいであたしの人生はもう修復不可能な程めちゃくちゃになってしまった。

許せない。

あたしはシンジを許さない。

あたしの一生を貶めてだいないしにしたシンジを絶対に許さない!

殺してやる!

いえ、殺すだなんて生ぬるいわ…!

そんなんじゃとてもじゃないけど憎み足らないわ!

そうよ!憎んでやる!

復讐してやる!

一生苦しめてやる!

一生つきまとって苛めてやる!

そうよ! あいつのせいであたしはもう幸せにはなれないのよ!

あたしの心と体にこびり付いた汚れはもう永遠に洗い流すことはできないのよ。

あんたのせいで…!

 

シンジ…、死んじゃだめよ!

あんた一人が楽になるなんて絶対に許さないわよ!

ましてやあんた一人が幸せになるなんて誰が許してもあたしは許さないわよ!

あんたにはあたしと一緒に堕ちてもらうわよ!

あたしにはもうあんたしかいないのよ!

もうあんたを憎むことでしか生きていけないのよ!

あんたは一生あたしのものよ!

あたしを捨てるなんて絶対に許さないわよ!

絶対に逃がさない!

どこへ逃げたって必ず探し出してあんたを不幸にしてやる!

嬉しいでしょう? シンジ…。 あたしにずっと側にいてもらえるのよ!

そのかわりあんたには何一つ与えない!

あんたの持っている物は全て奪ってやる!

うふふふふふ…。 あははははは…。

愛してるわよ。シンジ…。

一緒に不幸になりましょうね…。  

 

 

 

アスカの心の中にはシンジしか住んでいない。

アスカの目にはシンジしか写っていない。

だが今のアスカにとってシンジは慈しむべき対象ではない。

憎悪の対象。

復讐の対象。

そして自分自身の堕ちた人生にシンジを道連れにすることが今の彼女のたった一つの生きる支え…歪んだ存在意義(レゾンデートル)なのだ…。

惣流・アスカ・ラングレー…。

彼女の心は未だ補完されていない。  

 

つづく・・・  

 

 

 

 

 

 


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ver.-1.11 1997-12/24レイアウト修正
ver.-1.10 1997-12/21修正
ver.-1.00 1997-12/19公開
ご意見・ご感想・誤字情報などは itirokai@gol.com まで!!

 

 

後書きというか言い訳

どうも めぞんEVA102人目の男 けびんです。

前回は入居をあっせていたため後書きは申し訳程度にしか書かなかったので今回いくつか補足させていただきます。

 

まず最初に前回 二人の補完 第一話「シンジ邂逅・・・」で一ヶ所だけ表記のおかしなところがありましたがどうやらメールに貼り付けた時に文字化けを起こしたみたいです。大家さんをはじめとして多くの方にご迷惑をおかけしたことを不覚お詫び申しあげます。

 

ちなみに文字化けしたのは

僕はトウ
遠に…。

のところで実際には

僕はトウジを…友達を失った。アスカを…家族を失った。そして綾波を失った。永遠に…。

の文が入ります。

大変失礼いたしました。

(ちなみに現在は大家さんのご厚意によりこの誤植は修正済みです。大家さんありがとう(^^;)

 

さて前回の後書きを無視して今回も前回のような一人称形式(今回はアスカバージョン)ではいりましたがこれには理由があります。

こんな作品を書いていたら誰も信じてくれないとは思いますが(アスカちゃんの下僕からのカミソリメールが恐い・・・)実は僕は生っ粋のLAS人です。(やっぱり信じないだろうな・・・)
本当ならシンちゃんとアスカちゃんのラブラブのお話を書きたいのですが例の夏映画の毒電波に当てられて以来、「気持ち悪い」の言葉が頭から離れずに二人の明るい未来を信じることができなくなってしまいました。それどころか本編中盤での二人の友達以上〜恋人未満のほのぼのとした雰囲気さえ「今はああでもいずれは必ず「気持ち悪い」に行き着いてしまうんだ」といった具合にそこから分岐することさえかなわなくなりました。(ハッキリ言って病気です。(^^;)

というわけで一度まじめに夏映画に取り組んでみようと思って書き始めたのがこの「二人の補完」です。
夏映画の残酷な結末を受け入れた上でその後の二人の展開を自分なり考えてみるつもりです。もちろん夏映画後の二人の心の補完に焦点を絞ったお話なのでハッキリ言って序盤は重いです。暗いです。
しかしあの夏映画の絶望のラストから無理なく二人の心を補完出来たときはじめて自分の心も夏映画から開放されるような気がします。(そうなればもっと明るいLAS作品を書けるようになるかも・・・)
そのような理由からシンジとアスカの心理描写に重点を起き作品の序盤に一人称の形式を多めに取り入れた次第です。  

 

この「二人の補完」は自分の処女作品です。正直な所最後まできちんとした形で終わらすことができるのか自信がありません。けどこうして公の場に作品を公開した以上、出来・不出来はともかくとして可能な限り頑張ってみますので最後までお付き合いしていただけると嬉しいです。

めぞんEVAの99%のシェアを占めていると思われるLAS読者の皆様。こんな作品を書いていますが自分は本当にLAS人です。信じて下さい。なぜなら自分は

「最後がハッピーエンドなら途中でどんな酷い事をしても許される]

と信じているとんでもない作者だからです。(^^;

だから

見捨てないでくださいね〜(爆)  

 

次回からは今度こそ本当に(たぶん)まともな形で話を進行させていきたいと思います。(それにしても一人称って状況説明が不親切だからエヴァをまったく知らない人(そんな人がここに迷い込むとも思えないけど・・・)がこのSSを読んでも何のことかさっぱり分からないだろうな・・・。うーん〜。 反省。)

応援・叱咤・感想・・・どんな形でもいいのでメールお待ちしております。

それでば 二人の補完 第三話(今度こそ一人称をやめて話を進めないと・・・)で会いしましょう。

さようなら〜                        BY けびん

 

追伸:後書きver.-1.00 1997-12/21

けびんです。前回で懲りたはずなのに今回も大量の文字化けなどを起こしてしまい大家さんに頼んで第二話を差し替えさせていただきました。

大家さんをはじめとして多くの方々に迷惑をおかけした事を深く深くお詫びいたします。本当に反省しています。

次回からはこうしたことのないよう細心の注意を払って投稿しますのでお見捨てなきようお願いします。

本当に失礼しました。 ごめんなさ〜い。

 

 

 


 

 けびんさんの『二人の補完』第二話、公開です。

 

 

 

 前回のシンジに続いて、
 今回はアスカ。

 一人称であり、
 独白。

 

 あの時どう考えていたのかが
 けびんさんによって語られているとも言えるかな(^^)

 

 決意をしたアスカと、
 シンジ。

 動き出すストーリを待ちましょう(^^)/

 

 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 乗り越えようとしているけびんさんに感想メールを送りましょう!

 

 

 


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