「ラッキー。加持さんとデートできるなんて!」
「それで、今日はなにを買いたいんだ?」
「ここ。」
アスカの指差した先にはスポーツショップがあった。
「なんだ、運動部にでも入ったのか?アスカ。」
「冗談っ。もうすぐ修学旅行なのよ。」
「へー、修学旅行か。ってアスカは修学旅行が何なのか知ってるのか?」
「要するに二年生が一緒に旅行に行くんでしょ。」
「……そうだけど、何処に行くの?」
「沖縄よ。」
「そうか。でも、葛城の許可はもらったのか?」
「へ?ミサトの許可?なんで?」
「そりゃあ、ここ(第三新東京)の守りの要であるチルドレンが二人も旅行に行くなんて。その間に使徒が来たらどうするんだい?」
「………考えてなかった。」
それでもしっかり水着を買うこと(加持に買わせること?)を忘れないアスカだった。
―――ミサトのマンション。
「………やっぱり駄目?」
「駄目に決まってんじゃない。レイ一人に任せるつもり?彼女が一番経験がないのよ。」
「ミサトさん、僕が残って、アスカが行くっていうのは。」
「うーん、それなら考えてみようかしら。」
「もう、いいわよ。シンジに恩をきせられたくないわ。(シンジが来なけりゃ楽しみが半減以下じゃない。)」
「しょうがないよ、アスカ。使途がいつ来るかわからないんだから。」
「そこよ、たまには敵の居場所を突き止めて、攻めに行ったらどう!」
「それができればやってるわよ。」
「EVAの電源、兵装ビル、設備の充実しているここ以外で戦うのはあんまり得策とはいえませんよ。」
「安全策ばかりじゃ駄目よ。シンちゃん。」
「そうよ、シンジ。」
「はぁ。(成功率が>10%に満たない作戦ばかりなのにどこが安全策なんだろ?)」
「それよりもアスカ。ちょうどいい機会なんだから学校の勉強しなさい。あなた達の成績なんてこっちには筒抜けよ。」
「いいじゃない、中学校の成績なんて。私は大学を出てるのよ。」
「へーアスカって大学でてるんだ。」
「その大学出てる娘があんな成績でどうするの?」
「日本語がわかんないだけよ。」
「じゃあ、日本語の勉強しなさい。」
「ふん、私なんかよりシンジはどうなのよ。」
「シンちゃんはこないだのテスト(も、それ以前も)満点よ。」
「うっそー。シンジが?」
―――NERV、トレーニングルーム。
他の話では泳いでいるはずのレイはここでは小学校に行っていていない。
シンジは出された宿題(出したのはティア・フラット)を黙々と解いている。
アスカはと言うと、つまらなそうにプールの中からシンジを眺めている。
「ねーシンジ。何してるの?」
「ティアにもらった論文を読んでるんだけど。」
アスカがプールをあがってシンジに近づいてくる。
「何の資料?」
そういってシンジのノートパソコンを覗き込む。
「………なにこれ?」
「S・キョウコ・ツェッペリン博士の書いたA10神経接続に関しての論文だけど。」
「S・キョウコ・ツェッペリン?私のママじゃない。」
「あ、そうなの。」
「何であんたがママの論文を持ってるの?」
「ティアにもらったから。」
「ティアってAE会長の?」
「そうだけど。」
「なんでそんな人と知り合いなの?それになんでそんな人がママの論文を持っているの?」
「AEはティア、ナオコさん、キョウコさん、そして僕の母さんの4人で作られた会社だからね。」
「ママが?」
「知らなかったの?」
「ふーん、まぁいいわ。それで、その論文読んでどうするの?」
「EVAってシンクロ率が高いほどスムーズに動くよね。」
「ええ。」
「でも、フィードバックも大きくなる。」
「それが欠点ね。」
「フィードバックにリミッターをつけることができないかと思ってね。」
「一定以上の痛みはフィードバックされなくなるってこと?」
「それとか、通常時もフィードバックのシンクロ率を制限できるとかね。」
「それ、いいわね。でも………」
「なに?」
「何であんたにこんな論文が理解できるの?あんた中学生でしょ。」
「ここに来る前、ティアの元にいたんだけど、そこでいろいろ勉強したから。」
「へー。」
そのときシンジの鞄の中から携帯の着信音が聞こえた。
「はい、シンジです。………リツコさんですか。………あれが届いたんですか。………解りました。そちらに向かいます。」
「シンジ、『あれ』って何?」
「行けば解るよ。アスカも行こう。」
二人はリツコの実験室に向かった。
トントン。
「シンジ君?ロックはしてないから入っていいわよ。」
ドアが開き、リツコの目にアスカとシンジの二人が写る。
「あら、アスカも来たの?」
「そうよ。悪い?」
「別にかまわないわ。」
「ところで、リツコさん。実験はいつします。」
「マヤにもう準備をさせているわ。20〜30分後にはできると思うわ。」
「そうですか。あれが本当に使えればいいんですが。」
「そうね。そうすればEVAの弱点がひとつ克服されることになるわね。」
「ねぇ『あれ』ってなんなのよ。」
「『水晶のドクロ』よ。」
「イギリスの大英博物館にある?」
「あれは昔の人が作った偽物。」
「本物は一定の振動に対してエネルギーを発生するんだ。」
「どのくらい?」
「正確な数字がわかってないんだ。」
「だからテストする必要があるのよ。」
「でも、どうせ初号機に装備するんでしょ。」
「結果次第よ。」
「ドクロは二個あるんだ。一個で一体のEVAの電力をまかなえたら2体に装備できる。」
「ふーん。で、二個目は私の弐号機?ファーストの零号機?」
「アンビリカルケーブルの代わりに接続するようにしたいと思っているんだ。」
「だから、そのとき出撃するEVAに装備ね。」
「ふーん。」
「先輩っ、実験の準備ができました。」
実験は成功だった。
実験に使用したEVA機動実験用の部屋を一個めちゃくちゃにしたことを除けば。
EVAの運用に充分な電力を発電できることが判明した。
技術部も実用化に向けて動き出した。
「ねぇ、リツコ。シンジって何者なの?」
「NERV総司令の息子。EVA開発者であり、テストパイロットであった碇ユイの息子。そして、サードチルドレン。」
「そうじゃなくて、あの知識よ。」
「私も知らないわ。けど、たぶん、シンジ君のEVAに関する知識は私よりも上よ。」
「リツコよりも?EVAってリツコが作ったんじゃなかったの?」
「EVAを作ったのは司令達よ。弐号機以降の量産型なら大体把握しているつもりだけど零号機と初号機には、いえ初号機にはブラックボックス部分がごろごろしているわ。」
「ちょっと、ってことはNERVって理解してないものを使っているの?」
「司令は理解しているのかもしれないわ。」
「………。」
「ねぇシンジ。」
「ん、なに?アスカ。」
「あんたってさ何でEVAに乗ってるの?」
「守るため、いや、守られるため、かな。」
「守られるって、あんたそんな必要無いぐらい強いじゃない。」
「……かもね。」
「なによ、かもねって。」
Prrrrr
「はい、シンジです。……はい、……解りました。……アスカも一緒にいるので一緒に向かいます。」
「なによ、シンジ。」
「リツコさんがブリーフィングルームまで来いって。」
「これが使徒ですか?」
「そう、まだ生体になってない、いわばさなぎよ。」
「よく見つけたわね。」
「ここの地震観測所が偶然見つけたのよ。」
「で、こいつを倒すんですか?」
「いいえ、今回の作戦は使徒の捕獲を最優先とします。」
「絶好のサンプルってわけですか。」
「そうよ。」
「できない時は?」
「即時殲滅。」
「要するにできたら捕まえろ。無理なら倒せってわけね。」
「そう、それで作戦担当者は・・・・・・。」
「はーい、潜りたい。」
「アスカ。局地専用のD型装備は弐号機用しかないの。」
「シンジ君は初号機でバックアップ。レイと零号機は本部に待機。」
「「はい。」」
「A− 17を発令しているからすぐに出るわよ。二人とも準備して。」
アスカとシンジがプラグスーツに着替えて戻ってきた。
「なによ、D型装備用プラグスーツっていったっていつものとかわんないじゃない。」
「右のボタンを押してみて。」
見る見る間に膨らんでバランスを保つのも厳しい格好になるアスカ。
「きゃぁぁぁー。なによー、これ?」
「冷却のためにしょうがないんだと思うよ、アスカ。」
「いいえ、それには何の能力もないわ。冷却の能力はD型用エントリープラグに備わっているわ。」
「それじゃぁ、何でこんな格好しなくちゃいけないのよ。」
「弐号機がその格好だから感覚がつかみやすい用によ。」
「私の弐号機もこの格好・・・・。」
「耐熱、耐圧の関係上どうしてもね。」
「いやっ!私降りる。こんな格好で人前に出たくないっ。」
「それじゃあ、レイ。お願いできるかしら?」
「はい。赤木博士。」
「うーー。わかったわよ。小学生に任せて置けないわ。私が乗るわよ。」
さすがにEVA二機の輸送、活動のための電源の確保。潜行のための冷却材の確保にいささかてまどったが数時間後には準備が整った。
「ねぇねぇ、ミサト。何で戦時の飛行機がいるの?」
そう、上空には大型、ガルダ(何人がわかるか?)クラスの飛行機がいた。
「えっと・・・。」
「僕らが失敗したときにN2を落とすんでしょ。」
「・・・そう。ごめんね」
「人類がかかってますからね。」
「それにしてもひどいじゃない。こっちは命をかけてるのよ。」
「アスカが失敗しなければいいんだよ。だからあれは気にしなくていいよ、アスカ。」
「ふんっ、当然よ。私が失敗するわけないじゃない!!」
「そうそう、アスカだったら大丈夫よ。ところで潜る準備ができたわよ、アスカ。」
「それじゃあ、行くわね。」
弐号機が徐々に火口へと近づいていく。
「弐号機、溶岩に入ります。」
「シンジッ。」
「ん?」
「ジャイアント・ストロング・エントリー。」
そういって二号機は背中から溶岩に入っていった。
「ストロングじゃなくてストライドじゃなかったっけ?」
弐号機は順調に潜行していった。
予定地点で無事に使徒をキャッチし上昇していった。
後少しで地上というとき、それは起こった。
溶岩の中から何かが出てきたのだ。
それはまるで龍、いや八岐大蛇(やまたのおろち)のようであった。
「・・・まさか、炎蛇?」
その場にいるものの中でその物体が何かを知っているのはシンジだけであった。
もっとも、シンジ自身それを直接見たことはなく、話に聞いただけであった。
それはかつて優が巻き込まれた事件であった。(SPRIGAN第一巻、炎蛇の章)
地脈とともに存在し、地球内部で生まれた超生命体、炎蛇。
かつてはそれを制御するための遺跡をめぐっての事件であった。
そのときは制御する遺跡が溶岩に飲まれて終わった。
優は何も手が出せなかった。
シンジはどうであろうか?
優とは違って彼はEVAに乗っている。
しかし、炎蛇は超生命体である。
死があるのかどうかもわからない。
どう考えてもシンジに勝ち目はない。
当然、シンジもそれに気づいている。
「なぜ?ここに炎蛇が・・・。地球(ガイア)が使徒を守りたがっている?いや、この使徒の能力が炎蛇を操ることか。」
シンジは自分の考えに結論付けるとこの場を打開する為に行動をとった。
使徒が炎蛇を操っているのなら使徒を倒せば、炎蛇は消える。
そうでなくても、とりあえずは使徒を倒さないといけない
そう考えている間にも、炎蛇は弐号機へと襲いかかろうとしていた。
しかし、初号機の動きはもっと速かった。
炎蛇より早く、弐号機のキャッチャーの中にいる使徒へと襲い掛かった。
自分自身では動けず、炎蛇を操る使徒である。
初号機の渾身の一撃の前ではあっけなく敗れ去った。
初号機が使徒を倒すと、炎蛇も溶岩に戻って崩れていった。
初号機は無謀にも耐熱装備も命綱も装備せずに飛び込んだのだが、弐号機に抱きかかえられて無事であった。
もっとも、短時間とはいえ溶岩の中に飛び込んだので救出されたときには意識がなくなっていた。
―――近くの温泉宿。
「ねぇ、ミサト。あれはなんだったの?」
「さぁ、あれを作っていたのが使徒だったのは間違いないと思うけど。」
「ええ、AEの書類で見たことがあります。もっとも詳しいことは分かってないみたいですけど。」
『そう、ティアさんにたずねてみるわ。』
<あとがき>
日付だけ見れば一ヶ月ちょいぶりですね。
本当は丸一年の間がありますけど。
ごめんなさい。
読み直して漢字のミスや細かい修正をしました。
続きはそんなにかからずに出したいと思います。
Kazさんの『His Past Record.』第十話、公開です。
まず、形から。
そうだったのか・・・
アスカの風船プラグスーツは形からだったのか。
思わず納得です (^^)
耐熱を考えたら、頭が出ているあの形はおかしいもんね。
なるほどなるほどです〜
一気に倒せた感じの今回の使徒。
みんな無事でよかったよかったです☆
つぎはなにがくる???!
クリアしていきましょうです〜
さあ、訪問者のみなさん。
一年ぶりのKAZさんに感想メールを送りましょう!