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―――朝、登校風景。

「ハロー、シンジ。グーテンモルゲン。」

「おはよう、惣流さん。英語かドイツ語かはっきりしたら。第一ここは日本だよ。日本語を使おうよ。」

「うっさいわねぇ、第一その惣流さんって硬いわねぇ。アスカって呼びなさい、私の事。」

「わかったよ。」

「ところで、ファーストって何処にいるの?」

「えっ、レイ?レイは隣の学校だよ。」

「隣って小学校じゃない。」

「小学生だもん。」

「そうなの?」

「そうなの。」

 

 

 

―――NERV、リツコの部屋。

計算機に向かってキーボードを叩いているリツコ。

そのリツコに男が後方から手を回す。

「少し痩せたかな。」

「そう……?」

「悲しい恋をしているからだ。」

「どうしてそんなことが分かるの?」

「それはね、涙の通り道にほくろのある人は、一生泣きつづける運命にあるからだよ。」

「これから口説くつもり?でも駄目よ。恐いお姉さんが見ているわよ。」

入り口には恐い顔をしたミサトがいた。

「久しぶりね。加地君。」

「や、しばらく。」

「けど、加地君も意外とウカツね。」

「こいつの馬鹿は相変らずよ。大体あんた、弐号機の引き渡しは終わったんでしょ、さっさと帰りなさいよ。」

「今朝、転勤の辞令が出てね。諜報部の部長になったよ。又昔みたいに三人でつるめるな。」

「誰があんたなんかと。」

その時、当然、警報が鳴り響いた。

「「「敵襲!?」」」

 

 

 

―――発令所。

「警戒中の巡洋艦『はるな』より入電。我、紀伊半島沖にて巨大な潜航物体を発見せり。データ転送す。」

「受信データ照合。パターン青。使徒と確認。」

「総員、第一種戦闘配置。」

 

 

 

地上に初号機と弐号機の姿がある。

いつもと違うのはアンビリカル・ケーブルの先が移動型発電設備であることだが。

『いい、ふたりとも、先の戦闘によって受けたダメージによって、第三新東京市の迎撃システムは役に立たないわ。だから敵上陸直後を一気に叩くわ。シンちゃんはATフィールドの中和、アスカがコアへの攻撃。いいわね。』

「わかりました。」

「わかったわ。あーあ、日本でのデビュー先だってのに、どうして私一人に任せてくれないのかしら。」

「確実に勝つためだよ。」

「なに?私一人じゃ、勝てないって言うの?」

「損害も少ない方がいいしね。」

「わかってるわよ。いい、足手纏いにだけはならないでね。」

会話しながら、臨海部へ移動する二人。

シンジは考え事をしていた。

(こないだの戦いでも思ったけど、このアンビリカル・ケーブルってつくづくEVAの弱点だよな。内臓電池じゃ5分程度しか持たないし、発電機能を持たせるにしてもこれを動かせるだけの電圧を得られる物をコンパクトにするのは難しいし、核は危険だし。ん?まてよ、あれを使えば何とかなるかな?AEの地下金庫の中にあるはずだよな.。優の言うとおりの力を持つ物なら使えるな。ティアさんに相談してみるか。)

臨海部へつくと臨時に用意された専用電源のアンビリカル・ケーブルにつなぎかえる。

「二人がかりなんて、卑怯でヤダな。趣味じゃない。」

『私たちには選ぶ余裕なんて無いのよ。生き残るための手段をね。』

「アスカ、おしゃべりの時間は終わりだ。使徒が現れたよ。」

(おかしい、武器らしい武器が無い。でも第五使徒の例もあるか。)

「そうみたいね。」

『攻撃開始。』

ミサトのその声を聞いて、弐号機が飛び出した。

まだ上陸していない使徒に対して、ライフルを連射する。

それに対し、最初から重火器を装備しなかった初号機は使徒の上陸を静かに待つ。

これまでの戦闘から、使徒に対して、ライフル程度の重火器では牽制にしか使えない事を知っていたからだった。

かわりに初号機はプログレシブナイフを装備していた。

使徒が上陸する頃には、弐号機のライフルの弾は切れ、ソニックグレイブを装備し直していた。

初号機が使徒に近付き、ATフィールドの中和をする。

弐号機は中和を確認した後に、接近して、ソニックグレイブを振り下ろす。

意外なほどに抵抗なく、使徒がまっぷたつになる。

「はん、てごたえないわね。」

「おかしい、あっけなさすぎる。」

使徒を倒したと言う安心感がアスカに隙を作った。

それに引き換え、シンジは弱すぎる使徒に違和感を感じていた。 

しかし、真っ二つになった使徒は地面に倒れなかった。

断面から修復していき、二体の使徒へなっていった。

そして、それは弐号機へと襲い掛かった。

気を抜いていたアスカは、それに対応できなかった。

緊張感を保っていたシンジはすかさず弐号機を押し飛ばした。

使徒の攻撃を弐号機のかわりに受ける初号機。

しかし、初号機はその攻撃によって、飛ばされてしまった。

再び、無防備になる弐号機。

再び、使徒の攻撃が弐号機に迫る。

アスカは目前に迫る使徒の腕に恐怖を覚えていた。

その恐怖の中で、アスカはシンジを求めていた。

そして思いだしていた。

先の戦いにおいて、感じたシンジの温かさ、力強さを。

そして、シンジに教えられたATフィールドのはり方を。

アスカは攻撃を受けたと思って体を硬直させた。

しかし、使徒の攻撃は弐号機にまで届かなかった。

使徒と弐号機の間にはATフィールドがあった。

弐号機が張ったATフィールドが。

「は、張れた!?」

しかし、まだATフィールドの展開になれてない事もあってアスカは長時間の維持ができなかった。。

使徒の攻撃に数度は耐えたが、その後は消滅した。

しかし、アスカにとってはそれだけの時間、初号機が駆けつける時間が稼げれば十分だった。

ATフィールドが破られる一瞬前に、初号機が使徒の片方を倒していた。

いや、倒すと言うよりそれはまさに消滅と言う感じだった。

空気に解けるかのように消えていったのだった、初号機の攻撃がコアに届くと共に。

残った一体ならば弐号機で相手をする事ができた。

「リツコさんっ!どうなってるんですか?」

『分析中よ。とりあえず時間を稼いで。』

初号機と弐号機は使徒との交戦を続けた。

 

 

使徒は幾度と無く分裂したが、その度に倒された。

分裂中はやたらと弱く、簡単に倒せるのだがどうしても一体が残ってしまうのだった。

『シンジ君、とにかく時間が欲しいわ。使徒を海上に押し戻せる?シンジ君。』

「できると思いますけど………どうするんですか?

『N2兵器で、使徒の足止めをするわ。』

「分かりました。じゃあ、ライフルをお願いします。」

「ライフルなんてあいつにはきかないじゃないのよ。」

「ライフルの攻撃中は動きが止まる。アスカ、僕が使徒を海上に連れ出すから僕が戻る間ライフルで援護を頼むよ。」

「分かったわ。」

弐号機はライフルを受け取るために、リツコから指示されたポイントへ向かった。

初号機はプログナイフで使徒に攻撃を仕掛けつつ、巧みに海上にと誘い出した。

初号機の上空にはN2兵器の投下のために爆撃機が編隊を組んでいた。

初号機は予定ポイントまで使徒を見事に誘導した。

「アスカ、頼む!!」

「りょーかい。」

初号機が使徒から離れると、弐号機が使徒をライフルで足止めする。

その間に初号機は岸まで退却をした。

「リツコさん、お願いします。」

シンジのその声に反応してはるか上空からN2兵器が使徒めがけて降り注ぐ。

初号機はその爆風に備えてフィールドを張る。

結果、沿岸部への被害はN2兵器によるものは一切なかった。

使徒は自己修復に入り、NERVは「時間」を手に入れた。

 

 

 

「何とか足止めはできたわね。」

「そうね、でも何かいい作戦でもあるの?ミサト。」

「あいつの弱点か何かの情報はないの?リツコ。」

「それは今のところないけどね、関係各省からの抗議文と被害報告書はたくさん来ているわよ。」

「………。」

「ま、とりあえず第一会議室に行くわよ、ミサト。」

「はい?なんで?」

「さっき、メールが来たでしょ。至急対策会議をするって。」

「………その系統のメールは日向君とこにフォワード組んであるから。」

「あきれた、自分で読まずに日向君にチェックさせてるってわけ?」

 

 

 

―――NERV会議室。

「それで、われわれに与えられた時間はどれだけあるのかね?」

「MAGIのシミュレートの結果によりますと、最短で605238秒、最長で1210395秒です。」

「わかりやすい単位に直してくれんかね?」

「約7日から14日といったところです。」

「ふむ、最悪の場合を想定して、7日であの使徒を撃退でき得る状態にせねばならんな。赤木君、MAGIの解析結果はどうなっておるのかね?」

「使徒の分裂能力についてですが、使徒は分裂することにかなりの力を消費している模様です。」

「どういうことかね?」

「分裂しているときの使徒の戦闘能力が分裂する前に比べると極端に低下していることが確認されました。」

「ああ、僕も戦っている最中にそう感じました。あと、コアの輝きとATフィールドも弱くなっていたようでした。」

「本当かね?赤木君。」

「ええ、MAGIも確認しています。」

「使徒の分裂の条件はわかったのかね?」

「それについても・・・・・・・アスカ、戦っていて何か気づかなかった?」

「はぁ?戦うことに夢中でそんなこと考える余裕なんてなかったわよ!」

「シンジ君は?」

「そうですね。コアに対しての直接攻撃ですか?」

「さすがね、シンジ君。MAGIも同じ回答をしているわ。」

「ふんっ。それで、どうやって倒すのよ。使徒を倒すためにはコアを破壊しなくちゃいけないんでしょ。」

「そのとおりよ、アスカ。今のところ我々に解っている使徒の倒し方はコアを破壊すること。だけでも今度の使徒はコアの攻撃に反応して分裂する。」

「ちょっと待ってよ、リツコ。それじゃあ、あの使徒は倒せないの?」

「いいえ、倒す方法はあるわ。分裂した使徒が一体に戻るときにタイムラグが確認されたわ。そのあいだにコアを破壊すれば倒せるはずだわ。」

「そのタイムラグはどのくらいあるのかね?」

「はい、それにつきましてはこちらの表をご覧ください。」

前方にあるスクリーンにグラフが映し出される。

「なんだね?これは。」

「先の戦いにおいてのタイムラグをグラフにしたものです。ご覧の通りにその時間は徐々に短くなって来ています。」

「次の戦いでの予想され得るタイムラグは?」

「MAGIの計算によると0.15秒です。」

「なるほど、葛城君。これを元に作戦を立てなさい。今は碇もいないことだし、君にすべてを任せる。」

「わかりました。」

「あの、いいですか?」

「何だね?シンジ君。」

「第3使徒との戦いのデータを見ていたら、N2兵器の使用後に使徒に進化が見られたとあったんですけど。」

「ふむ、確かに。赤木君、MAGIにシミュレートさせてみてくれ。葛城君はとりあえず、進化を考慮に入れないで作戦を立ててみてくれ。赤木君のほうの結果が出たらそれにあわせて作戦を変更するように。では、以上。」

 

 

 

マンションに帰ってきたシンジ。

部屋の中で物音が聞こえ、不審に思った。

「あれ?ミサトさん帰ってきてるのかな?まだのはずだけど。泥棒?……がNERVの警備を突破できるとは思えないし。」

そんなことをつぶやきながら、シンジはドアを開けた。

そこには裸にバスタオルを巻いただけのアスカがいた。

キャー、なに見てんのよスケベ!!」

その叫び声と同時に、あまたの飛来物がシンジを襲った。

「ちょ、何でアスカがここにいるんだよ。」

「さぁ?私はミサトから言われたからここに来たんだけど。」

「ミサトさんが?」

「そうよ、私がアスカに命令したのよ。」

その声と同時にその部屋にミサトが現れる。

「「ミサト(さん)!!。」」

「シンちゃんのことだから察しはついてるんじゃない?」

「ユニゾン、ですか?」

「あったりー。」

「なによ、ミサト。ユニゾンって?」

「今日の会議で言ってたでしょ。今度の使徒に対して有効なのは二個のコアを同時に砕くこと。そのために二人の息を合わせなきゃね。」

 

 

 

シンジとアスカの訓練が始まって数日、優とジャンが女性陣に連れられて陣中見舞いに現れた。

「まぁまぁ、できてるんじゃない。ねぇ香穂。」

「本当、上手、ねぇ理恵ちゃん。」

「本当ね。」

「やっぱり、あなた達にはそう見えるのね。でも、後の3人は意見が違うみたいよ。」

「ああ、ぜんぜんだめだ。」

「ユニゾンって言葉を理解してるの?アスカ。」

「うるさいわね。シンジがどんくさいのよ。」

「いや、シンジはよくやっている。悪いのは惣流だ」

「なにを根拠にそんなこと言うのよ。」

「ミサトさん、二人のダンスの記録はありますか?」

「あるわよ。」

「見せてもらってかまいませんか?」

「いいわよ。」

ミサトがリモコンをいじるとテレビに二人のダンスが映された。

全員がそれを見る。

「ほら、悪いのは私なのよ。」

「ミサトさん、シンジの一回目とCGの模範を一緒に流してみてください。」

それは寸分たがわず同じ動きだった。

「「「「「…………うそ。」」」」」(ミサト、アスカ、笹原姉妹、理恵)

「それじゃあ、二回目のシンジと、一回目のアスカ。」

これまたまったく同じ動きであった。

「わかったか。シンジは寸分違わず同じ動きをすることができる。そして、惣流に合わせようとしている。」

「なんで、そんなことができるのよ。」

「そういうふうに訓練されたからだよ。僕も優も。」

「訓練って?」

「昔の話だよ。」

「惣流が正確に動ければ、それで解決するんだ。」

「ちょっち、いい?」

「なんですか?」

「優君とシンちゃん、二人でちょっちやってみてくんない?」

二人はその求めに応じてやって見せた。模範のCGと寸分違わぬ動きを。

「………ふんっ。」

そのダンスの最中アスカは部屋を飛び出した。

シンジはそれを見て動きが止まる。

ERRORの警告音が鳴り響く。

「アスカを追いかけてきます。」

シンジはそういうと部屋を飛び出した。

 

 

 

アスカが一階にたどりつくかというとき(急いでいたので、階段を使った)、アスカの左手をシンジがつかんだ。

「アスカ。」

「なによ、笑いに来たの?」

「話を聞いてほしいんだ。」

「いいわよね。能力のある人は。」

それは禁句であった。シンジは思わずアスカに平手打ちをかましていた。(当然手加減はしてある。)

そして、そのまま屋上にアスカを引っ張っていった。

アスカは叩かれたことが信じられないと言った感じで呆然としていた。

「アスカは僕の力をどう思う。」

急に質問されたのでアスカは一瞬うろたえた。

「……すごい能力(ちから)じゃない。」

「すごい能力…か。いつ何時切れて殺人機械になるのかわからない僕が…か。」

「………」

「僕も、優も、ジャンも。普通の人からかけ離れた能力を持っている。でも僕らはそんな力なんて望んじゃいない。能力に振り回されて、いつ自分が自分でなくなるか解らない。」

「あんた……」

「でも、レイを、アスカを、ミサトさんをそして僕の大切な人達を守るのに今はこの力が必要なんだ。」

そういって振り返ったシンジは夕日も手伝って、アスカの目にとても輝いて見えた。

(………なんで、こいつの顔見てこんなにどきどきするの。)

 

 

 

その後はあすかもシンジと合わせようとし始め、誤差はほとんどなくなった。

 

 

 

作戦当日、二人のダンスは見事使途を打ち破った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


NEXT
ver.-1.01 2000/03/18
ver.-1.00 1999_02/07公開
ご意見・ご感想などは m-kaz@helen.ocn.ne.jp まで!!
 

<いいわけ>

……………すいません。

大見得きっておいてこんなに送れまくって、

バイトに成人式に正月にレポートにとさまざまな要因が私の邪魔をしました。

実は今もまだ試験期間中なんですよね。

試験が終わったら毎日バイト。

次がいつになるのか。

今度は正直にいつになるか解りませんが

がんばって書きますので

メールよろしくお願いします。

 

From Kaz


 Kazさんの『His Past Record.』第九話、公開です。
 
 
 
 
 

 分裂使徒も一蹴!

 やるね、シンジ達!!
 

 1回戦目は苦労後一時撤退だったけど
 再選の場では。
 

 1回戦目がじっくり描かれたいるのは珍しい(^^)

 ああなって
 こうなって
 最後こうなって−−

 格好いいです〜
 
 
 

 オリジナル兵曹も出てきそうな回でした〜
 
 
 

 さあ、訪問者のみなさん。
 忙しいKAZさんをメールで応援しましょう!
 
 


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