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変化をしていく体。
いや、変化をするのではない。元に戻るのである。

しかしその体は地球で著された「質量保存の法則」を一切無視する。
ただの脆弱な老人から、巨大な、それでいてみるモノすべてを畏怖させようとする体に。








閃光の中から6体の物体が現れる。
それは使徒と呼ばれるモノではなかった。
そう、それらはすべて「エヴァ」と呼ばれる。
微弱な力を持つ地球の人間が作った最高傑作。

それらがいる辺りは一色の光に包まれている。
それはすべて「金色」。
エヴァが放つ、「金色」。
そしてその色に呼応するがごとく、展開されている翼。

エヴァ初号機改は6対12枚の翼を。
ニュー・エヴァ弐号機、ニュー・エヴァ参号機、エヴァ参号機はそれぞれ3対6枚の翼を輝かせている。


感じるのは「神々しさ」。


見る者はエヴァを称してこう言い放った。

「熾天使」と。
















NEW TYPE EVANGELION
最終話
Return to the Earth
















辺りに静寂が訪れる。
その静寂こそが、勝利した側を褒め称える。

「・・・・・・」

NERVに居る人間は声を出そうとしない。
いや、出せない。

「・・・・・・・・・ぁ」

辛うじてアスカが声を出す。
それを切っ掛けにしてか、辺りから歓声が訪れる。

「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」」」

ただ、唯一この歓声に参加していないのはネルフ技術部部長、赤木リツコ。
それも当然だろう。
基礎システムを作ったのは自分ではないが、バージョンアップさせたのは間違いなく自分。
幾人かの手を借りてはいるが、自分がタッチしていないところはない。
しかし・・・今回起きた出来事は自分が知らない部分。
エヴァの未知の部分を垣間見た結果、参加できないでいる。

「・・・・そうか・・・・ようやく気づいたか」

これを分かっていたかのごとく、話し始める碇ゲンドウ。
辛くも脱出をしたゲンドウと冬月は、宇宙をノーマルスーツを着て漂っている。
冬月にはこの仕事はきつすぎたのか、気を失っている。
しかしそれを気遣うようにゲンドウは冬月を支え、NERVへと戻ろうとしていた。

「これならば心配ないな・・・・・・よくやった。本当によくやったな・・・・シンジ」

誰にも聞こえないように、独り言をはなす。
元来の照れ屋だから。




「やった・・・・んだよね、僕たち・・・・」

自分がやったことを分かっていない、と言う表情をするシンジ。
自分にこのようなことが出来るとは思っていなかったし、分かってはいなかった。
ただ・・・出来てしまった。
その結果がこのちょっとした放心状態である。

「そう・・・よね、アタシ達勝ったのよね・・・・・」
「えぇ・・・・勝ったわ。アスカが信じなくても私は信じる。シンちゃんが勝ったってこと・・・」

これが彼女たちの本心。
そしてシンジを想うが故の、レイの言葉。

「そう、やったの・・・・やったのよっ!終わったのよっ!シンジっ!」
「う、うん・・・・そう・・・だね、アスカ」

歓喜を声に出してシンジに訴えるアスカ。
それを自身の優しさで受け止めるシンジ。

「ふぅ・・・やっと終わったな。きっつい戦いやったなぁ・・・・・なぁ、シンジ」
「そうだね、トウジ。終わった」
「しかしセンセにはまだ残っとるで、センセの戦いが」
「?・・・何のこと?トウジ」
「はぁ・・・・ま、当分気づかんでもええやろ。どのみちきっついんはワシや無いからな・・・」
「?・・・何なのさ?」

微笑をシンジに投げかけるトウジ。
男が男に投げかける、少しばかりの冷ややかなモノを含めた微笑。
トウジはその微笑を作ることで、幾ばくかの心の安らぎを覚える。
















「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?!あ・・・・・エ、エヴァ各機より前方、約1000の位置に空間の歪みを確認・・・」
「えっ?!何っ?!」

NERVで観測された空間の歪み。

「司令達が起こした縮退炉の爆発の影響じゃあ・・・・」
「・・・・まさか。それは・・・・あり得ない。あっては・・・ならない」
「じゃあ一体・・・・・」

ここにいるいきるモノすべての目はその歪みへと向けられている。
その歪みはゆっくり。そしてだんだんと大きくなっていく。

「歪みのエネルギーレベル、Cレベルまで上昇っ!まだ上がっていきますっ!」

この変化により、ようやく自分たちの仕事を思い出したオペレータ達が役割を全うする。
青葉シゲルは空間の歪みを。
伊吹マヤはエヴァパイロット達の身体チェックを。
日向マコトはそれらを統括した全体認識、およびNERVを。

「歪みのエネルギー、この計器ではもう計れませんっ!MAGIの予想レベルはレベルZ+!」
「パイロットは全員身体機能に異常なしっ!若干の疲労が見られるだけですっ!」
「NERVは先の使徒戦において機能の5%も使用できません。サブ縮退炉は無事ですが、
 メイン縮退炉は何とか航行に間に合う程度です」

ネルフ側は準備万端。
出るのは邪か鬼か。








『ワシの邪魔をするモノ達に、メギドの火を』

刹那。

がぁぁぁぁぁぁぁんっっ!

「きゃぁぁっっっ!」
「わぁぁぁっっ!!」

光がNERVを掠める。

その光は、艦内に炎を与える。

その炎は、NERVの心臓をも掠めていく。


混乱。

怒号。

悲鳴。

そして・・・恐怖。


その混乱の中、平然としている者が二人。
シンジとゲンドウ。
何故平然としていられるのか。
その理由が分かるのは彼らの身内、すなわち碇ユイ以外にはいない。

ゲンドウは収容された対人用気密室で呟く。
「来るか」と。








強大なエネルギーが関知された空間ではエヴァ各機が見守る中、変化を遂げようとしていた。
その変化は単なる空間のエネルギー変化ではなく、辺り一帯を恐怖で縛るであろう、変化。

「何が・・・何が来るって言うの?」
「・・・僕にも分からない。けどこれだけは言えるかもしれない」
「何?シンちゃん」
「来るのは・・・ラストボスだよ。単純なロールプレイングゲームでよくあるような現象さ」
「な〜るほどね」
「何?何分かった顔してんのよ、レイ」
「簡単な事よ。ゲームでよくあるでしょ?敵がいっぱい出てきて、味方が疲弊したところでラスボスの登場。一昔前のRPGによく有るパターンだわ」
「よく知ってるわね。となると・・・出てくるのは今までにない強大な敵」
「そう。僕たちの・・・・最後の敵」

彼らが今の現象を話し合ってる最中。
その空間は変化を終了する。
現れたのは六角形。
シンジ達がよく知る六角形。
そう、それはATフィールド。

黒い影、ディラックの海よりいでしATフィールド。
そのATフィールドを放つ者。それがシンジ達の言う「ラストボス」
ソレは体の大きさにしてエヴァの2倍強。
形は大きな山のような形をしている。
中央には口らしき何かを発射する感じのする穴。








「・・・敵中央付近より圧縮されたATフィールドを確認・・・パターンブラック・・・」

話しているマヤの口調に生気はない。
その強大なレベル差を実感しているから。

そして。

ガァァァドガァァ・・・・・

「ち、直撃っ!」

再び火の手が上がるNERV。
剔れている艦。
鳴り止まない「EMAGENCY」のアラーム。

「第5から97番ブロックが被弾っ!」
「淑退炉チェック!・・・メインは機能停止していますっ!」
「サブはっ?!」
「ほぼ停止状態ですっ!が、辛うじて10%の機能は生きていますっ!」
「ならエネルギーは全てMAGIに回してっ!生命維持に支障がない程度にっ!」
「了解っ!」

彼らもプロだと言うことだろう。
自身に降りかかっている恐怖を分かっているはずなのに、自らの仕事に精を出す。
その作業をする中、エヴァ各機はミサトからの指示を待っていた。
今回の敵はエヴァの力だけでは勝てない。
それこそ戦闘のプロである、ミサトの指示が必要であった。
















『分かっているのか?おまえ達がしていること』

突如として暗転する世界。
そこにはNERVの面々、ゲンドウ以下NERVメインクルーと、エヴァパイロット全員が対峙している。
目の前にいるのは脆弱な老人。

『とりあえずは初めまして、と言うべきなのだろうな、NERVよ。ワシがこのゼーレを統括する盟主、キールだ』

いきなり目の前に現れたキールに驚く者。
リツコのように周りに空間の変化に驚く者。

『驚く必要はないだろう。この空間はワシが作り上げた空間だ』
「・・・・!」
『そう恐怖することもない。この空間ではワシはいっさい攻撃はできん』

その言葉を多少は信じるのか、有る程度落ち着くNERVクルー。
しかし、戸惑いを隠せないクルーも中にはいる。
当然だろう。
彼らがいる空間は重力がない。
すなわち、彼らは宙に浮いているような感じを持つ。
空間戦闘になれているエヴァパイロットならまだしも、それ以外の面々に関して慣れを強いるのは酷という物だ。

『さて、ワシのことを語ろうか』








一息ついたのであろう。
キールからの精神干渉がとぎれた隙に、一筋の光がキールに向かって走っていった。
そしてそれに続いてか、次々と光がキールに向かって走っていく。
その光の発信源は・・・エヴァ初号機改、シンジであった。

「このっ!このっ!」

執拗に光弾を発射するエヴァ初号機改。
しかし。

『無駄』

全てはキールの強大なATフィールドの前に、エネルギーさら消え去っている。
シンジの攻撃の全ては、届いていない。








再び暗転する世界。
キールからの2度目の精神干渉。

『無茶をする。無意味な攻撃は自身を滅ぼすというのに・・・ま、良いだろう』

何が良いのか分からないが、とにかくキールは話し始めた。

『まず御前達にATフィールドの意味を教えてやろう』
「ATフィールドの・・・意味・・・・」

身動きがとれないと分かっているため、素直にキールの話に耳を傾けるNERVの面々。
その話に真っ先に反応したのは赤木リツコ博士に他ならない。
彼女自身、エヴァや使徒に関して分からないことはあってはならないと自分で感じているから。

『ATフィールド。その意味はおまえ達なら分かっているだろう?リリスのコピーに乗る者達よ』

キールの視線がエヴァパイロットに向かう。
その視線に対し、肯定とも否定とも受け止められる視線を投げ返すシンジ。

『そうだ。ATフィールドとは心の壁。すなわち他者への拒絶』

心が他者を拒絶するとき。それは物質化する。
拒絶が強ければ強いほど、強力なバリアとして。

『我の下僕は全て単体。すなわち一人。その一人一人が単体であるが為、生じる他者への拒絶』

聞き入るNERVクルー。

『おまえ達のリリスコピーもそうだ。我の下僕を拒絶する。そのためにATフィールドが生成できるのだ』

そうなってくると当然ATフィールドを応用した平気も理論が分かってくる。
ATフィールドの剣やカノン砲と言った物は全て他者への拒絶を反映した者。

「・・・ATフィールドがそんな兵器なんて・・・・悲しいじゃないか」
「そうなるとあの爺さんのATフィールドも・・・・アタシ達への拒絶から?」
『それは違うな。赤きリリスコピーに乗る者よ。ワシのATフィールドはおまえ達への拒絶ではない。
 全ての・・・宇宙全ての・・・ワシを作った者達への拒絶がそうさせるのだ』








動きはない。
現実空間に戻る際、キールが見せた悲しき表情。
自身が作られた者だということへの悲しみ、そして拒絶。
それを知ってしまった今、シンジ達にキールを攻撃する理由はない。

キールが侵略者だと言うことを忘れてしまっているが為に。

他にキール自身から発せられる気迫という物に畏怖しているせいもあるか。








3度目のキールからの精神干渉。
キールの精神世界に入ったNERVの面々は、キールの姿にまず、驚く。

『どうかしたのかな?・・・・そうか、この姿か。これは・・・私の昔の姿。この精神世界では年は関係ないからな』

若々しい。
先ほどまで見せた脆弱な老人の姿は、今はない。
キールの姿は若々しく、それでいて理知にあふれ、無限の体力を感じさせていた。

『さて、そろそろ私が君たちをここに呼んだ真の理由。緑食に関して・・・話そう』

自分が緑を食す訳。
その理由が今、明らかとなる。

『おまえ達の母星、地球と言ったな。それが誕生する以前。私は生まれた』

彼の生まれたのは地球生成以前。
まず、これに驚く。

『ある星・・・もう忘れてしまったな、その星の名は。その星で私は生み出された。その星の人間達によって』

生み出された。
その言葉は彼が人造人間であることへの証明となる。
彼の悲しみはここから始まっている。

『自身の星の生命体を保存するためのプロトタイプとして私は生み出された。
 その星の人間は私にいろいろな物を付加させたよ。星最高の知恵、力。そしてそれらの対する副作用も付け加えさせられて』

副作用という言葉でリツコが反応した。
理解できたのだ。彼が緑を食す訳を。

「そう・・・その副作用というのが緑食」
『その通り。私の力は無限ではないのだよ。そして何より生命としての終着点、死が怖い。
 これを回避するために宇宙で最高の力を持つ緑を食す。単にこういうわけだ』

緑という生命力に満ちあふれた力、それを食すことにより得られてきた永遠の命。
しかし、その緑も当然、無限ではない。

『どの位前だったかもう忘れてしまったがな・・・私の生まれた星は滅んだよ。当然の結果として』
「滅んだって・・・あなたが滅ぼしたんじゃ・・・」

当然わいてくる疑念。

『いや、私が滅ぼしたのではない。自滅だよ。星が滅んだのはな』

自らの知力により科学が発達しすぎた星。
結果、その星は無機物の星へと進化した。
当然有機体である人間にはその星にすむことは出来ない。
そして人造生命体であるキールを残して、星は自滅した。

『私はその星から脱出し、この星へとたどり着いた。何もない、無機物だけが支配し、生命体が存在しないこの星へ。
 そして与えられた知力を生かし、生命体を作った。1番目に・・・アダム』

NERVの面々が「使徒」と呼んでいる生命体。
それはキールが作り出した人間。
そう、全て人間と呼ぶことが出来る生命体。

『リリス、サキエル、シャムシェル、ラミエル、ガギエル、イスラフェル、サンダルフォン、マトリエル、サハクイエル、
 イロウル、レリエル、バルディエル、ゼルエル、アラエル、アルミサエル・・・タブリス、そしてヒト』
「!・・・じゃあ・・・ヒトという種を作ったのは・・・あなただというの・・・・?」
『この星の種に関しては私が作った物だ。安心するが良い。地球のヒトは進化論に準じている』

それぞれに違った能力を秘めている使徒達。

『全ては可能性を試すために過ぎない実験体だ。最終的な生命体であるヒトに行き着くまでのな』
「そんな・・・魂を弄んでいるようなものじゃないっ!それはっ!」
『魂を弄ぶか・・・じゃあ貴様らが使っているそれ・・・エヴァはどうなのだ?それは魂が封入されているのだろう?』
「!!・・・そうなの?・・・リツコ・・・・」
「えぇ・・・そうよ。私たちは彼を攻めることは出来ない。事の大小に関係なく魂を弄んだことには変わりないわ」
「そ・・・そんな・・・・」
『そして私はこれらを使い、緑を集めさせた。実験体だが能力的には問題なかったのでな』
「ということは・・・地球へも・・・・」
『そこの人間は知っているだろう。おまえがあった使者こそ私の実験体の中の最高傑作、ヒトだ』

ゲンドウは動じない。
そのことに関しては知っていたから。
そしてその使者が全ての始まり、セカンド・インパクトを起こした切っ掛けと言うことも。








世界が現実へと帰す。
そこに現れたのは力を失っている・・・いや、力を出していない初号機改だった。

「・・・これが事実なんて・・・僕たちには戦う理由が無いじゃないか・・・」

当然、シンジにはキール達が征服しようとしていることなど忘れてしまっている。
ただ、キールが生きるために緑を食していることだけが頭を離れなかった。
その事実に、シンジは戦いを拒否した。

「・・・くぅっ!シンジっ!しっかりしなさいよっ!戦わなきゃいけないのよっ!アタシ達はっ!」

『・・・』

「ちっ!無線が切れてる・・・・アタシ達は戦わなきゃいけないのにっ!」

力を増すニュー・エヴァ弐号機。
輝きを失ったエヴァ初号機改に比べ、こちらは逆に輝きを増している。

「あいつらはアタシ達の星にせめて来たのよっ!守らなくてどうするのっ!シンジっ!」

当然、シンジは聞いていない。




「・・・私たちは攻められている側。守のは当然よね・・・」

レイは平然を保っている。
いつもの陽気さはどこへ行ったのか、このときのレイは冷静でいた。
もちろん、戦いにおいて冷静でいることは普通の人間には出来ない。
レイだからこそ、出来た所行なのかもしれない。




E−BITが輝きを増し、1対2枚の翼を展開する。
ダミー・プラグではあるものの、コアそのものはオリジナルのエヴァと同じ物。
翼の展開は出来て当然なのである。

「なんや、あのおっちゃんが言うとることはワシにはよう分からん。ケド・・・ここで逃げたらあかん、ゆうことはワシにも分かるわ」




無言の空間。
機械音だけがその空間を占めている。

「NERVにはあなた達をサポートするだけの機能しか残っていない・・・陽電子砲の1門も使えないなんて・・・」
「サブ縮退炉が10%維持できただけでも奇跡的よ。それに私たちにはまだMAGIがあるじゃない。
 あの子達のMAGIでのサポートだけでもしてあげないと」
「そうね・・・この戦い、もう作戦なんてものはないわ。ただ・・・勝てばいい。それだけね・・・」




「碇・・・俺達はこれしかできない・・・死ぬんじゃないぞ・・・碇」

マヤ達の居るオペレータルームの階下。
サブオペレータルームにケンスケは居た。
以前のJA騒ぎの結果、リツコからここにいることが認められたのだ。

「ケンスケ様ぁ・・・・」

彼女、マイコはケンスケの座席にしがみついてケンスケを見守っている。
彼女には、これしかできない。




「無事に・・・どうか無事に・・・・」

祈りを続ける彼女。
真っ先に脳裏に浮かぶのは彼の姿。
今戦っている彼の姿。
苦しんでいるであろう、彼の姿。

しかし、彼女には祈ることしかできない。








シンジ達がキールとの戦闘を膠着状態としている中、ケイジは慌ただしくなっている。

「BH機関出力正常。BHCコネクト完了。各部素体結合部正常。オールグリーン。何時でもOKだ」

『了解。カタパルトグリーン。射出します』

NERVカタパルトより発進される黒い機体。
当然ミサトの命令により、発進されるわけだが、この機体に込める願いは大きい。
戦闘空間の膠着。
これを変化させることだけを目的とされたから。
当然この機体で戦闘を勝利へと導くのは無理と分かっている。
だが、変化させるだけなら出来る機体だ。




戦闘空間上。
一体の機体がこの空間にたどり着く。
しかしキールは動かない。
この機体が自身を滅ぼすものではないことを知っているから。
しかし・・・

「BHCエネルギーレベル上昇・・・レベル限界。発射する」

音もなく発射される弾頭。
この機体から発射されたものは通常弾頭ではないからだ。
発射されたものはブラック・ホール・エネルギー。
通常兵器ならば触れただけで無に帰すエネルギーであるのだが・・・・

「・・・・・!!」

キールはエネルギーの方へ念を向ける。
自身のATフィールドを強化するために。
そして・・・・そのエネルギーは四散した。

不可侵領域、何人たりとも犯すことの出来ない絶対領域には最大のエネルギー兵器である
ブラック・ホール・キャノンでさえ犯すことは出来ない。
無論、普通の使徒であれば無に帰すことは可能だろうが、今回の相手はキール。
その絶対領域はかなり強力。

『・・・くぉ・・・』

しかし、キール自身を動かすことは出来た。
そう、蹌踉めいた。




「・・・イケるっ!」

ニュー・エヴァ初号機の放ったBHCの効果を知るやいなや、アスカは機体をキールに突っ込ませた。

「強大なエネルギーの前にはアイツ自身もATフィールドで防ぐことは出来ないっ!ならアタシがそれをやるっ!」

肩のウェポンラックからプログ・ナイフ2が用意される。
アスカの駆るニュー・エヴァ弐号機はプログ・ナイフ2を手に、キールへと突っ込んでいった。

「だぁぁぁっっっっ!アタシ達は、負けらんないのよぉっ!!」

キィィィィィィィィィィィィィィ

プログ・ナイフ2の振動とキールのATフィールドが互いに交錯する。

「ぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

ますます力を入れるアスカ。
それに呼応するかのように、弐号機も力を解放していく。
いつの間にか弐号機の顎部は解放され、4つの目が見え隠れし始めていた。

『・・・・・煩いな』

一瞬、ATフィールドを消去するキール。

「えっ?!」

戸惑うアスカを目に、キールは彼女に対して最後の砲撃を放った。

『不要だ。お前達は。私の生への執着を邪魔する者は』

キールの口部から放たれるATフィールドを利用したカノン砲。
そのカノン砲がアスカめがけて放たれる。

「え・・・・あ・・・・・・・・・」

アスカのニュー・エヴァ弐号機は、その光に包まれた。

「く・・・・ぐ・・・ぎゃぁぁぁぁっっっあぁっ!ぎゃぁっ!!!」

間一髪、機体をずらすことにより直撃を免れた弐号機。
しかし弐号機の右腕は消滅していた。
そう、そしてそれは・・・

「あぁっ!あぅ・・・ぁ・・・・・・」

フィードバック。
エヴァとシンクロするからには当然、フィードバックが帰ってくる。
ただ傷つくだけならフィードバックリミッターにより、それをパイロットにフィードバックすることはないが
消失というレベルとなるとそうもいかない。

「アスカのシンクロ切ってっ!早くっ!」

NERVのブリッジはすぐさま指示を与えるが・・・既に遅い。
シンクロ率が100%に近かったアスカの右腕は・・・・・・・・・壊死している。
彼女の右腕が動くことは・・・もう無い。




その光景を目にしたシンジ。
今まで戦意を喪失させていたシンジに、ある感情が発生する。

憎。

生涯シンジという人間が発生し得なかった感情が、ここに来て発生してしまった。

「うわぁぁっっ!ああっ!わぁぁっっ!!」

初号機のエントリープラグからは絶叫のみが音声として聞こえてくる。

そしてその絶叫が一段落ついたとき、それは起こった。

「はぁっ・・・はぁっ・・・・はぁっ・・・・!!!」

今まで光を失っていたエヴァ初号機改からの再びの発光現象。
しかし、先のそれとは違い、その光は金色ではなく赤色発光をしていた。
シンジの憎しみが具現化した光。
それがエヴァを通して赤色の発光を促していた。

「いかんっ!あれではシンジが呑まれてしまうっ!」
「えっ?!」
「本来あってはいけない発光。アレでは敵に勝つことなどできんっ!」

珍しく檄を飛ばすゲンドウ。
さもありなん。
あってはならない現象が自分の息子、シンジに起こっている。
檄を飛ばさすにはいられなかったのだろう。
しかし。

『死ねっ!死ねっ!お前なんか死んでしまえっ!』

NERVからの音声は断絶してしまっている。
NERVの不調からではなく、シンジからの一方的な回線切断により。

そしてエヴァ初号機改からは先のキールの攻撃と同様の攻撃がキールに対して繰り出し始めていた。
ATフィールドを利用したカノン砲。
ATフィールドを球状に固定し、それをエヴァの力で射出するという攻撃方法。

「ああっっ!!死ねっくたばれっ!居なくなれっ!!!」

普段のシンジからこのような口調が発せられることは先ず無い。
しかしこのときのシンジは憎しみに凝り固まった状態。
心のより所の一つであったアスカへ傷つけた事への怒り。
傷つけた当事者、キールへの怒りが先行している。
当然、シンジ自身の本来の心はこれを認識していない。
あくまで表層的な怒りに過ぎない。
何故なら・・・・




碇シンジの目からは涙が球状に流れていたから。




まさに悪鬼と化したエヴァ初号機改が放つATフィールドのカノン砲。
これが有効打となっているかと言えば、そうではない。
キールに対する攻撃は一切彼のATフィールドにより、阻まれている。

しかし、衝撃だけは受け止めきれるわけではなく、キール自身は蹌踉めいている。
先のブラック・ホール・キャノンの攻撃のダメージが残っているためと、エヴァ初号機改のカノン砲が意外にも攻撃力としては
かなりのものを有していたから。




何十発撃ったのだろうか。
全て阻まれた攻撃を止め、シンジはある行動に出た。

「殺してやる・・・殺してやる・・・殺してやるぅぅっ!!」

エヴァ初号機改の右手を振りかざし、キールめがけて一直線に突き進む。
振りかざした右手はキールに直接ぶち当たる・・・のではなく、やはりこれもATフィールドに阻まれてしまう。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっ!!!」

殴る。
ひたすら殴る。
自身の怒り、憎しみをぶつけるが如く、殴る。

これも阻まれている攻撃は、何時しかエヴァ初号機改の両腕を蝕んでいた。
エヴァ初号機改の両拳からは緑色の体液−エヴァの血液−が流れ始めている。
そしてパイロットであるシンジの両拳からも赤色の液体が流れ始めてしまっていた。
フィードバックリミッターは一切働いていない。
もはやシンジのシンクロはリミッターを動作させないレベルにまで到達していた。




この間、レイとトウジはただ傍観するだけにとどまっていた。
動けないのではない。
”動けさせられない”のである。
シンジの駆るエヴァ初号機改のATフィールドが彼らのエヴァをも動作不能に陥らせていた。
まさに蛇に睨まれた蛙の如く、彼らは動けないでいた。
それほどまでに凄まじいシンジのATフィールド、すなわち拒絶。

「・・・・」

レイはその光景にある意味魅了されている。
血飛沫を上げ、敵を殴りつけているエヴァ初号機改を。
当然、エヴァ初号機改とシンジを重ねて見ている。
そういう光景に、魅了されてしまっている。

「・・・・」

トウジの方はレイとは違い、親友の違った一面を垣間見てしまったことにより、金縛り状態に陥っている。
普段の心優しいであろう親友の違った一面。
これに恐怖せずに入られなかった、と言うのが現在のトウジの心境。




カノン砲と同じく、何十発殴り続けたのだろうか。
何時しかキールのATフィールドに皹らしき物が目立ち始めた。
本来ATフィールドに皹などは現れない。
ATフィールドは心の壁。
即ち心のあり方そのものがATフィールドになる。
キールは今、エヴァ初号機改に少しばかり恐怖していた。
シンジのとる特攻とも言える無謀な攻撃。
これに今日したが為、ATフィールドに皹が入ったように見えるのである。

「あ゛あ゛っ!あ゛あ゛っ!」

殴る。
何度も何度も殴る。
キールのATフィールドに皹は入っていくが、その反面エヴァ初号機改にも反動は来ている。
拳に見られる白きモノ。
それはエヴァ素体の骨格。
その骨格が見えると言うことは・・・当然シンジにもそれは来ている。





「だあ゛あ゛っっ!!!」

一瞬の静寂の後、それは起こった。

ぱりぃぃ・・・ん・・・

音にすればこんな感じだろう。
キールのATフィールドが粉砕する音は。




キールのATフィールドが粉砕されるのと同時に、エヴァ初号機改も活動を停止する。
エヴァ初号機改の右腕はニュー・エヴァ弐号機と同様、粉砕してその存在を無くしていた。
当然、パイロットであるシンジもアスカと同様、右腕が壊死している。
青黒く変色し、シンジは気を失っていた。




「・・・・!!今っ!」

その結果にいち早く気づいたのはレイであった。
レイはすぐさまニュー・エヴァ参号機を動かし、射軸をキールへ固定する。
そしてレイはエネルギーの充填を気にせず、ポジトロン・スナイパー・ライフル2を発射。
そのエネルギーは一直線にキールの元へ。

どぉぉぉぉん・・・

幾ら充填しなくとも、ポジトロン・スナイパー・ライフル2のエネルギー量は凄まじい。
フルならば小惑星の一つも簡単に破壊できるほどのエネルギーを擁している。
今回はその半分ほどのエネルギーだとしても、キールにダメージを与えるのは簡単なことであった。

『ぐ・・・・ぐぐ・・・・』

キールの体内に眠る絶大なエネルギー。
そしてレイの放ったポジトロン・スナイパー・ライフル2のエネルギー。
この二つが相殺し、エネルギーの奔流を作り出す。
行き場を失ったエネルギーはやがてディラックの海を生成。
そして空間が安定する。

キールはそれにより、風穴を開けられてしまっていた。

『ぐっ・・・・ぬかった・・・・』

開けられた風穴からは煙が充満している。
キールの身体が焼けた痕。
流石にこれだけのダメージは覆い隠しきれないだろう。

『流石にダメージが大きすぎる・・・これでは攻撃はしばらく無理だな。防御に専念するしか・・・無いか』

そう考えるや否や、キールは再びATフィールドを展開する。
先ほどエヴァ初号機改が破壊したATフィールドより強力ではないが、それでも強力であることには変わりはない。

そして再び戦闘は膠着状態になってゆく。
















「・・・・無い・・・・・」

黒一色の世界。
誰も居ない、一人だけの世界。

「・・・おかしいな、有るのに・・・無い。何故だろう・・・」

シンジは腕を見ていない。
先ほどの戦闘で失った右腕を。

「・・・左手で感じることは出来るのに右手で感じることは出来ない・・・・どうしたんだろう・・・」

気づいていない。
が、すぐに気づくことになる。

「どうした・・・・・・・・わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっ!!!!」

彼は再び絶叫した。

「どうしたんだよっ!僕の右手、どうしたんだよっ!」

自分の動かない、そしてどす黒い右手を見て絶叫する。

「アタシと同じじゃない・・・アタシと同じ境遇・・・・だから心配すること無いわよ」
「えっ?!」

振り向いた先にはシンジが心のより所とする者、アスカが傍らに座っている。
アスカの右手、自分と同じようになっている右手を見せながら。

「それは・・・僕が傷つけてしまった・・・・僕のせいで・・・傷ついた・・・・・・」
「そう・・・だからアタシはシンジも同じようにした・・・だからアンタの右手も動かないのよ」

優しく諭す。
しかし、それは逆にシンジを追いつめる結果となってしまう。

「やっぱり僕が・・・僕が傷つけたんだ・・・アスカを傷つけたんだ・・・・」
「そう。シンジの右腕が動かないのがその証拠。アタシと同じね・・・・・アタシと」

頭を抱え、うずくまる。
辛うじて動く左手だけで頭を抱え。

「良いじゃない・・・アタシと同じなんだから・・・・同じなら良いんじゃない・・・アタシと」
「駄目だよ・・・僕が傷つけたんだから・・・駄目だよ・・・」
「駄目なら・・・返してくれる?アタシの動く右手を。返してくれる?」

優しく、そして微笑みながらシンジに語りかけるアスカ。
それは本来のアスカではない。
シンジの心が作り出した幻像。
現実の世界でアスカの右腕が喪失した事への自己虐待。
自分をさらに追いつめるために自分が作り出した最愛の人、アスカ。

そしてシンジはさらに塞ぎ込んでいく。

いつしか幻像のアスカは消え去り、シンジだけがうずくまった状態で現れる。
その世界は全て黒。
まるでシンジの今の心をそのまま反映したかのように、一面が黒。
















力を無くし、漂っているエヴァ初号機改とニュー・エヴァ弐号機。
戦闘膠着状態の中、動いている物はこの2機とスペースダストだけ。

漂っている2機は、お互いに引かれているのか、徐々にその間が狭まっていく。

2機が重なったとき・・・・・互いに抱き合うように重なったとき、それは起こった。
















「何で塞ぎこんでんのよ、アンタは」
「だって・・・僕が傷つけたんだよ?僕が・・・」
「・・・ったく、アンタは変わらないわね・・・・アタシを抱いて少しは変わると思ったけど」
「傷つけたんだ・・・傷つけたくなかったけど・・・傷つけたんだ」
「いい加減にしなさい。シンジが傷つけたんじゃないわ。アタシがちょっと無謀なことをしちゃっただけなのよ。
 自業自得、ってやつね」
「でも・・・現にアスカの右手は・・・」
「確かにアタシの右手はもう動かないわ。アンタと同じにね」
「やっぱり・・・僕が・・・・」
「でもね、アタシは腕の一本や二本、無くても生きていけるわよ」
「傷つけたんだ・・・・」

強引にシンジの顔を自分の顔に近づけ、アスカは言い放つ。

「全てはアタシ自身のせいっ!アンタはアタシを傷つけてなんか無いわっ!いい加減に気づきなさいっ!」




アスカを中心に光が広がっていく。




「僕は・・・アスカが好きだ。だから傷つけたくなかった・・・」
「それは嬉しいわ。だけどちょっと過保護すぎないかしら」
「そう・・・かな?」
「そうよ。それにレイのことはどうするの?」
「自分勝手かもしれない。けど・・・僕はレイも好きだと思う」
「・・・アンタならそういうと思ったわ」
「駄目・・・かな、アスカ」
「駄目じゃあないわよ。ただアンタに二人とも好きになり続ける気力があるかどうか、それだけが心配だけどね」
「多分大丈夫だと思う。・・・努力するしかないと思う」
「そ、それなら良いわ」
「うん」

抱き合う二人。
二人に衣服の概念はない。
アスカは全身でシンジを包み込み、シンジはそれに甘えている。

二人とも感じあっていた。
シンジはアスカに対して、包み込む優しさ、即ち母性を。
アスカはシンジに対して、自分を守ってくれる強さ、言い換えるなら父性を。

互いに暖かさを感じ、次第に微睡んでいく。
二人の精神が一つになったとき、光が二人を包み始めた。
その光は周りへと広がっていく。

既にこの世界に暗黒部分は存在しなかった。












再起動する2機。
いつしかエヴァ初号機改の左手には一本の剣が握られていた。
それはプログレッシブ・ブレード。
ロンギヌスの槍とも言われる、神殺しの神器。

「・・・アスカ」
「えぇ、分かっているわ」

辛うじて動くニュー・エヴァ弐号機の左手はエヴァ初号機改の動かない右手をとる。




「みんなの状態、確認できる?」
「はい。弐号機の右腕は再生していません。エネルギーもほぼゼロ。ニュー・エヴァ参号機およびエヴァ参号機は問題有りません」
「初号機改は?」
「・・・S2機関が解放・・・されていきます」
「えっ?!」

驚きを隠せない作戦部長、葛城ミサト。
すぐにリツコの方に顔を向けるが、彼女が平然としているのを見て自身も落ち着くことになる。

「(そう・・・大丈夫なのね・・・)」
「(もう私たちにすることはないわ。後はあの子達に任せるだけ・・・駄目な大人達ね・・・私たちは)」

自虐の念に駆られるが、事実を事実として受け止め、シンジ達を信じることにする。
ミサトやリツコはもうこれだけしかする事がなかった。




ニュー・エヴァ弐号機のエネルギーを全て受け取ったエヴァ初号機改は、金色の光に包まれている。
左手に携えている剣はいつの間にか槍へと進化し、6対12枚の羽を展開している。

「じゃあ・・・終わらせてくるね、アスカ」
「えぇ」
「最後の攻撃、バックアップ宜しく。レイ、トウジ」
「任せて、シンちゃん」
「任しとき」
「じゃぁ・・・っ!!!」




光の固まりとなり突撃するエヴァ初号機改。
それに呼応するかのようにエネルギーを収束し始めるキール。

『私が生きるためにっ!』

「みんなを・・・・僕が・・・・守る・・・んだぁっ!!!」

エネルギーがぶつかる。
エヴァ初号機改のロンギヌスの槍と、
キールの体内に眠っていた全てのエネルギー。

『ぐぅぅ・・・・』

「あ゛あ゛あ゛っ!!」

バチッ!・・・・バチバチッ!!!

凄まじいエネルギー。
反発しあうエネルギーは放電現象を引き起こしている。
その中にいる二人。
もう誰も二人を止めることは出来ない。












後、白き世界が広がる。












光が一面に広がり、全ての者を包んでいく。












「・・・・どう・・・なったの?・・・・シンジは・・・・」

NERVブリッジ

「反応はっ?!」
「敵生体反応、有りません・・・・エヴァ初号機改の反応も・・・・」
「そん・・・な・・・・」

反応無し。
NERVブリッジではそれは”撃墜”を意味する。
ここではシンジは”死”と判断されてしまう。




「大・・・丈夫やな・・・・戻ってくんのやろ?シンジ・・・・・」
「・・・・」
「あのシンジよ・・・そう簡単に・・・・・・そう簡単にっ!!」




静寂だけがあたりを支配する。




絶望だけがあたりを支配する。




無力だけがあたりを支配する。




悲しみが辺りを支配しようとしている。





反応がないシンジを認識するが、皆心の片隅ではシンジの生還を信じていた。




























「・・・・・・・・う・・・」


「えっ!?」


「・・・・え、ろう・・・・」


「シ、シンジ?!」


「帰ろう、アスカ。終わったから・・・・帰ろう」




煙の中から現れるエヴァ初号機改、キール。
しかしもうそれは双方とも生きているとは言うことが出来ない。
『化石化』
力を使い果たした双方は、自身を石へと変化させてしまっていた。
辛うじて生き残っていたエントリープラグの通信機を使い、シンジは語りかける。




シンジがアスカ達に回収された後、シンジは愛機であるエヴァ初号機改を見る。
その姿は無惨感じられた。

シンジがそれを確認すると、エヴァ初号機改は望んだかの如く、塵へと化していく。
もう必要ない、自分を無へと帰すために。




「終わったわね、本当に」
「そうだね・・・もうやることはないよ、僕らには」
「そう?まだやることはあるわよ、アンタには」
「えっ?!何?何をやるのさ?」
「・・・自分で考えることね」
「そんなぁ」
「ふふっ。簡単な事よ。さっ、帰りましょ」
「・・・もう。・・・・そうだね、帰ろうか・・・・地球に」
































EPILOGUE









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