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AV 〜Real Heart〜




アタシは泣いている・・・

どこで・・・・?

ここは・・・病室・・・

忘れもしない病室・・・

303病室・・・・・・・




シンジの居るところ・・・

あたしが昔・・・・居たところ・・・・






気づいたら外には夕闇が迫っていた。

アタシは泣きつかれて眠ってしまったらしい。

とりあえず帰ろう・・・

シンジが一朝一夕には回復しないと分かっているから。

帰ろう・・・


何かが欠けた家へ。





「ただいま・・・」

「お帰りなさい、シンジ君は・・・その様子ではまだなのね」

「うん・・・」

「ほら、入って。とりあえず夕食にしましょ」

「うん・・・」

「元気出しなさいよ。シンジ君が目覚めないわけじゃないんだから」

「そうね」

「分かったらすぐに食事よ。あなたが倒れたらシンジ君も喜ばないわ」

「はい」


ミサトは柔らかくなった。

加持さんとの結婚が決まってから、柔らかくなった。

昔、アタシはミサトのことを子供っぽい女だと思っていた。

頼れる存在ではないと思っていた。

自分を偽っていると思っていた。


でも・・・


ミサトは頼れる存在になっていた。

15年と言う年の差もあるかもしれない。

ミサトは”良い”人間になったと思う。



でもアタシは・・・・

ミサトは「そんな年でそんなこと考える方がおかしいのよ」という。

本当にそうなのだろうか・・・





そんなことを聞いてから、アタシは考え出した。

考える。

何を?

アタシとは。

なぜそんなことを考える必要があるの?

なぜ・・・・・・心を見つけるため。

アタシの本当の心を見つけるため。

そう・・・よかったわね・・・

アタシの本当の心・・・・

心・・・・

ココロ・・・・

思う心・・・

シンジを思う心・・・・

本当のシンジを思う心・・・・・・・



それは多分・・・・・



答。









アタシは自分の部屋の片隅にほっておいたヴァイオリンを取り出した。

ずっとそのままだったため、埃をかぶっていた。


なぜ今更ヴァイオリンなのか・・・


シンジがチェロをやっているのを思い出したから・・・・

シンジの部屋で・・・・チェロを見たとき・・・














アタシはチェロを見た夜、夢を見た。

シンジとアタシ・・・・

そしてファーストと、銀髪の少年・・・

4人で演奏する「kanon」


その夢を見た朝・・・無償に弾いてみたくなった。

ヴァイオリンを。

シンジのチェロのように。

誰かに聞いてもらうため・・・とかじゃない。

強いて言うならシンジに聞いてもらいたい。

でも今は・・・・ただ無償に弾きたい。

それだけだった。






〜〜〜〜〜♪♪♪♪〜〜〜〜〜♪♪♪

久しぶりにヴァイオリン。

昔みたいに良い音は出ないけど、弾いているとなんだか良い感じがする。

快感。


ヴァイオリンを弾くのがこれだけ楽しいのは始めてだった。


楽しい。


音を出すのが楽しい。





そしてそこにシンジの笑顔が現れる。



ますます快調になるあたしのヴァイオリン。






気持ち良い・・・・・・・・・・・・・・







とっても気持ち良い・・・・・・・・






ねぇ・・・・・シンジ・・・・・・・・・



















アタシは荷物を持ってシンジの病室を訪れた。


今度こそ・・・


今度こそシンジを覚醒させるために・・・




「シンジ、入るわよ」


アタシは一言言ってシンジの病室・・・303病室に入る。


シンジはまだ目覚めない。


いつものように、虚ろな・・・光を失った目を開けたまま、寝ている。


今度こそはこの目に光をあげる、アタシが。


アタシは荷物を広げた。



いつものように、お弁当。


櫛・・・・タオル・・・・着替え・・・・



そして初めて持ってきたもの・・・・ヴァイオリン・・・・



シンジの病室にチェロも入れてもらった。




病室自体は完全防音。

問題はない。


アタシはまず・・・・・




ちゅ・・・・・



シンジにキスをする・・・・



そして、ヴァイオリンを首にかけた。


「シンジ・・・・聞いて・・・・アタシの音を・・・アタシのココロを・・・・」


アタシは「Partita V」を弾く。


軽快な音が病室に響き渡る。


アタシはシンジを感じてヴァイオリンを弾く。


感じて・・・・シンジ・・・・アタシのココロを・・・・


お願い・・・・シンジ・・・・アタシに笑顔を見せて・・・・・



願いながら・・・・・


アタシ自身、笑顔で・・・・


自分自身の音に酔いながら・・・・


ヴァイオリンを弾く。













一通り弾き終わったとき、アタシはシンジを一度見た。


泣いていた。



アタシ・・・・・・














そしてシンジも・・・・・





















「ア・・・・・・・・・・・ス・・・・・・・・・・・・カ・・・・・・・・」















シンジが・・・・・・目覚めてくれた・・・・・

アタシの音に乗せたココロを読み取ってくれた。


アタシは・・・・・シンジに抱き着いていた。




アタシは泣いている。



シンジを触れながら泣いている。




今度こそ・・・・本当の涙を・・・・・





泣いている・・・・・・

















「こんな事があったわね・・・・シンジ・・・いえ、あなた」




ver.-1.00 1998-07/23公開
ご意見・ご感想・「やっと終わりかい?」等は
y-mick@japan-net.ne.jpまで!!
あとがき

「思い出しオチかいっ!!(N2爆)」ですな。

ということで、どうも、すでに半壊している Y-MICKです。
これで「A」シリーズも完結です。

「R」を書いた時点から、これはやるつもりだったのですが・・・・
何でしょう?これ(爆)

う〜みゅ・・・私は元々こういうのが得意な人間ではないのですが・・・
なんとなくインスピレーションと言いますか・・・・その場の勢いで書いてしまいました(^^;)
じっくりネタを考えて、道筋を考えて、それから執筆する。
そういう作品ではないんですよ、これ。
本当に思い立ってすぐ書いたもの、何ですよね。

まぁこういうのも時々書きたくなるものですし・・・良いですよね?
良いとしましょう(笑)

で、これが完結した時点で、次回ですが・・・・
新連載なんか考えちゃってます(爆)
現存するものを無視して・・・です(笑)
これも良いですよね?(爆)

では、また会いましょう。
そりではっ!(^^)/~~





 Y-MICKさんの『AV 〜Real Heart〜』公開です。





 思いでか〜い


 遠い日の思いでか〜い



 そっか(^^;



 今は幸せ一杯なんだよね(^^)
 じゃ、いいや♪



 え、もしかして・・・

   結婚したはいいけれど、
   ぐちょごちゃどろどろに成っていて離婚寸前

   ”ふと思い出した苦しみから解放された喜び絶頂のあの瞬間”

 とかだったりして(爆)



 え、え、もしかして・・

  「眠っている間はアタシ一人のものだったものね・・あの時にはそうだった」
   アスカの手には血で濡れた包丁が。

 とかだったりしたら凄いぜ・・やだやだぁ(自爆)






 さあ、訪問者の皆さん。
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