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一一

   

「ジュニア・・・。」

三枝と手塚は同時にその名をつぶやく。

だが、その名とは裏腹に破壊と怒りの権化ともいう雰囲気をもっていた。

「ゴジラ、ね。」

三枝は、その名を言い直した。

モニターの中のゴジラは使徒と零号機のいる場所に向かい、ゆうぜんとだがすばやく

移動してきていた。

 

「全員この場から退避、データ以外は持たなくていいわ!」

ミサトが指示を出す。

「初号機の、シンジ君の、サルベージが、」

言いかけたマヤを

「今ここにいて、全滅してはそれもできないのよ、マヤ。」

リツコはきつい口調で落ち着かせる。

「わ、わかりました、退避します。」

ネルフのスタッフが半分も退避し終えないうちにその場所にゴジラは到達した。

 

同時刻欧州スペースガード

はやぶさからの報告により、本部施設内は騒然としていた。

無論、迎撃するための宇宙船も存在はしている。

だが、光速の50%で飛んでくる物体の軌道計算が追いつかない。

「なんで、この小惑星はこんな不規則蛇行をはじめた?」

「わかりません、フランスやドイツ、イタリアのMAGIシステムもフル稼働させていますが、

軌道の計算がでてもすぐに変わります。」

その報告を聞いていた、司令官とおぼしき人物はしばらく考えたあげく

「わかった、SPIP1とSPIP2に発進命令を出せ。」

と、指示をだした。

「できれば、P1にもサポートさせたい、出発の準備はすすめろ。

日本の、いや第三新東京の状況は報告を絶やすな、飛べそうならば、すぐに出せ。」

「伝えます。」

オペレーターはすぐに指示を飛ばし始めた。

 

その指示は、赤道直下の孤島ゾルゲル島にも伝わった。

「ムーンライトSY3を出せってことか?」

一人のオペレーターに指揮官らしい人物が聞く。

「いえ、まだそこまでには行ってないようです。」

そういうと、中央のメインスクリーンに映し出されている目標の軌道を見た。

そして、

「むしろ、この後ろの二つの小惑星が動き出したときの準備をしておいたほうがいいと

思います。」

「霧島機長、待機レベル2にて乗員を待機させろ。」

インターカム越しの霧島は、すぐに全隊員に非常呼集をかけた。

とはいっても、ここは南海の孤島ゾルゲル島である。

隊員が集まるのに時間はなかった。

しかもこのゾルゲル島は、地図にはのっていない。

島の中央に巨大な施設があるこの島は、セカンドインパクトによって異常をきたした

世界中の天候を修復するための気象コントロール実験が行われていた。

すでに、いくつかのコントロール実験には成功してはいるが、大掛かりなものはまだだった。

そして、ここには宇宙船を打ち上げるための施設がある。

実験機材を打ち上げるためのほかにも、宇宙からの脅威を避けるための迎撃高速宇宙船も

装備されていた。

「機長、相手はスペースゴジラですか?」

集まった隊員は、口々におなじことを聞いてきた。

「まだそれはわからない、だが、異常な物体であることは確かだ。」

そういうと、待機室内のモニターに目をもどした。

「機長、こんなときになんですが、お嬢さんのこともあります、今回は・・」

「いや、いいんだ。」

心配そうに近寄ってきた副機長を軽く手をあげて制した。

「娘は、私が生きているなぞ、まったく知らんよ。」

そういうと、目をモニターに戻した。

そこには。

 

ゴジラが目下の敵と定めたのか、半壊しているデストロイアには目をくれず、触手のような器官を

伸ばし始めた使徒のほうに向かった。

雄たけびをあげるゴジラに使徒は、その触手を絡めた。

初号機と同様に、体内に絡めとろうというのだろう。

だが、一瞬背びれが光ったかと思うとゴジラは体内放射でその触手を引きちぎった。

逆に、使徒は引き寄せていたためゴジラの強烈な一撃をその体に喰らってしまった。

「まずいわ!」

リツコは移動しながらも、送られてくる情報を聞いていた。

「なにが、まずいの?」

ミサトはその言葉を聞き、聞く。

「使徒は、おもったほど強度をたもてなくなっているようなの。」

そういうと、地下に移動するための輸送車両内でミサトに説明をはじめた。

 

三ノ輪は席につくと、すぐに状況を確認した。

「発進まで、15秒か・・・。」

手際がよすぎる。

と思った。

「狙っていたな、時田博士。」

つぶやくと、司令センターのモニターに目を向けた。

指示をだしている姿が見える。

「すまんな、三ノ輪くん。」

そういう時田の声がインカムを通して聞こえてくる。

それでも、緊張の中に、なにかうれしさのようなものを感じなくもなかった。

「それはかまいませんが、遠隔操縦ですし、戦果は期待しないでくださいよ。」

三ノ輪は、リストに目を通しながら答える。

「大丈夫だ、まだ完全な状態でないのは、相手もわかっている。」

科学者ってのは、と心の中でつぶやき。

「デリカシーってものがない。」

そういうと、発進の表示があらわれた。

「なに、がちがちの官僚なんてそんなもんだ。」

時田は、そういうと司令センター正面のモニターに目を向けた。

そこには青白い炎を吹き出し、飛び立つジェットアローンの姿が映っていた。

 

そのことは、すぐにNERVにも、そして上空で交戦中の逸見にも伝わった。

「出来かけの機械で、闘うのか?」

驚きと、あきれが入り混じった声で逸見は聞いた。

戦闘参加するという情報は、黒木が伝えた。

「やつらは熱海、伊東のデストロイアを迎撃にでたようだ。」

そういう、黒木を胡散臭げな目でみてから

「Gフォースは、出ないんですか?」

「戦自もNERVも、参加を承認はなかなか認めなかったので遅れている。」

少し間を置いて、そう答える黒木。

「まあ、すでにメーサー戦車隊が展開しつつあるよ。」

そして通信はきれた。

同時に衝撃がベータ号を襲った。

「どこからだ?」

逸見はどなった。

「下方、黒い生物です。」

破損は少ない、と聞いた時の逸見の顔をみて

「目標、エネルギー線らしきものを発射しました。」

と付け加えた。

「エネルギー線だと?」

逸見は再度モニターで確認しながら攻撃を指示した。

 

その同じ時、轟音とともにジェットアローンは熱海に降り立った。

すでに、大半の艦が半壊している。

展開している戦車や歩兵との交戦の煙があちこちに見える。

「ずいぶんと小さいな。」

三ノ輪は表示されるデータをみて唸った。

ジェットアローンの武器は、自身と同じか、それ以上の相手であった場合有効となりうる

武器が搭載されている。

小型の敵はあまり考慮されてはいない、といってもいい。

周囲の遊戯施設や熱海城などの周囲に4mほどのデストロイアが確認できる。

「とりあえずショルダーメーザーで攻撃してみてくれ。」

モニター越しの時田が指示をだしてきた。

「了解、ショルダーメーザーですね。」

ジェットアローンは、熱海城の方に体を向ける。

肩の装甲が開くと同時に閃光が熱海城とそこに群がるデストロイアを襲った。

「思ったよりは、効果があるな。」

状況をモニターで確認しながら時田は、なにかを手元のノートに記録した。

 

ゴジラは、使徒の触手を引きちぎり同時に使徒につかみかかった。

周囲のビルをなぎ倒し、使徒は地面にたたきつけられた。

が、ゆっくりと浮かび上がると同時にその形態を縦長の楕円状に変化させた。

楕円の上部に赤いコアが光っている。

まだ黒っぽい半透明の色彩をたもっているため、中の様子がうかがえる。

初号機は、わずかに動き始めていた。

そのことに気づいてか気づかづか使徒は楕円の周囲から無数の触手を伸ばし始めた。

だがその触手をゴジラの熱戦はなぎ払った。

黒いコールタールのような体液と、赤い人の血のような体液の両方をほとばしらせて

のたうつ触手。

そして、やけた触手を苦しげに振り回す使徒。

そこに、半壊していたデストロイアがサイズを一回りほど小さくなったが集合体で

割り込んできた。

「今だわ。」

レイはゴジラと使徒の注意がデストロイアに向いた一瞬を見逃さなかった。

零号機は、ナイフを構えると使徒の背後に回った。

 

デストロイアは思わぬ敵の出現に戸惑ったのか、侵攻の速度が緩んだ。

だが、すぐに複数の集合体へと融合していった。

「まあ、このサイズならすべてが使えるな。」

時田はモニターをみながら一人ほくそえんだ。

「三ノ輪君、テストが目白押しだ。」

「楽しんでやがる。」

回線をオフにした状態で三ノ輪は悪態をついた。

こちらは遠隔操縦で安全である。

が、現場の兵士はすでに何人も犠牲になっている。

それは仕方のないことだろう、自分で選んだ運命だ。

だが、気になることはある。

「霧島、むちゃなことはするなよ。」

思わず口をついて出た言葉。

今現在第3新東京市にいる元教え子。

その存在が気がかりだった。

数体のデストロイア集合体に対峙したジェットアローンを、攻撃姿勢にしながら

腰部のミサイルを威嚇で撃つ。

「反応がやはり鈍いな。」

わずかな差だが、実際に搭乗しているの違い遠隔操縦の際の動作時差が気になった。

わずかな時間でも、命取りではある。

「腹部プラズマメーザー砲、発射。」

デストロイアが炎に包まれていく。

その炎を身にまとい、デストロイアはジェットアローンに向かってきた。

背後の艦からの援護射撃なのか、デストロイアの背中に時々砲撃の爆発がおきる。

だが、海上の艦隊はデストロイアの眼中にはなかった。

デストロイアにとって現在邪魔な物はジェットアローン以外にいなかった。

数体が正面からくる。

レーダーの様子から背後にいるデストロイアは題3新東京市を目指しているのがわかる。

正面の相手を肩部メーサーでなぎ払うと、三ノ輪は反転し他のデストロイアを追う。

気づいたのか、2匹がジェットアローンと対峙する。

腹部のプラズマメーサーを三ノ輪は発射した。

 

金属の擦れるような甲高い音を発してプログナイフは使徒に食い込んでいく。

が。

突然音が消えると、使徒はそれをも飲み込んだ。

レイは零号機を数歩後ろに下がらせる。

そこに、ゴジラの熱戦が使徒と零号機を襲った。

ATフィールドを攻撃のために中和していた零号機は熱戦をまともに受けてしまった。

それは使徒にとっても同じ事だった。

その時だった。

使徒の体内から異常な音が響いてきていた。

楕円体上部のコアを不規則に明滅させて使徒がもがきはじめた。

突如、中央から血のように紅い液体が吹き出てきた。

「なによ、あれ?」

戦闘の最中、様子に気づいたアスカがそこに目を向けた。

一瞬の隙が生まれる。

デストロイアが襲い掛かってきた。

「しまった!」

弐号機をよこっとびに避けさせる。

が、運悪くそこにベータ号の攻撃で墜落してきた黒い生物の一部が降ってきた。

音をあげて肩のパレットが溶けていく。

「ひっ!」

あわてて振り払おうとした弐号機の手のカバーが同じように溶けていく。

「何なのこいつ。」

そこにデストロイアが襲いかかってきた。

だが、眼前で突然とまる。

顔、といって言いのであればだが、をゆっくりとまわす。

アスカも後退しつつ、黒い生物の取り付いたパレットを引き剥がす。

はがすと同時に黒い生物は再び空に舞い上がる。

それを無視してデストロイアの向かう方向を見る。

 

「なんだ、あれは?」

逸見は、その様子を映すモニターにくぎ付けになった。

そこには、使徒を内部から引きちぎり再び外に出てこようとするエヴァンゲリオン初号機の姿が

うつっていた。

 

「あたし達、こんなものにのってるの?」

アスカもその血まみれといえる姿に、愕然とした。

初号機は使徒を引き裂きつつ雄たけびをあげていた。

アスカもレイもその姿にすくなからず畏怖をいだいた。

だが、その正面にいたゴジラは使徒を引き裂き外にでてくる初号機にいきなりつかみかかった。

首と頭を無造作につかむとそのまま地面にたたきつける。

敵を奪われてしまった怒りか、それとも使徒と同じ物とみたのか、あるいは新たな敵にしか過ぎないのか。

初号機をたたきつけると、再び頭をもち地面にたたきつける。

「碇くん!」

レイが無線で呼びかけながら近づこうとしたとき、よこからデストロイアが襲い掛かってきた。

零号機の横腹に、今度は鋭い器官が食い込んだ。

レイを脱力感が襲う。

実際にはエネルギーを奪われているのは零号機に過ぎない。

だが、シンクロしているレイもまたすくなからず影響をうける。

 

「零号機とパイロットのシンクロを切れ。」

ゲンドウが初めて状況の変化とともに支持を出す。

オペレーターは支持どおりにシンクロをカットした。

だが、同時に零号機の反撃の手段も奪われる。

「碇、これでは反撃できんぞ!」

冬月は、ゲンドウに批難をこめた声で言う。

「問題ない、いまレイにダメージが残るほうが問題だ。」

というと、再び黙った。

 

零号機は動くこともできなかった。

だが、デストロイアにとってそれはどうでもいいことだった。

地面に押し倒すと、存分に零号機のエネルギーを吸い取ろうとし始めた。

それは、シンクロの切れたプラグの中でもモニターでレイにもわかった。

だが、倒されては脱出もできない。

エントリープラグのハッチが下になっているのだった。

が、突然デストロイアの動きがおかしくなった。

 

ラドンは空中に飛び上がった。

追ってデストロイアも飛び上がっていた。

口を大きく開き追いすがってくるデストロイアに向かい、空中でふと反転する。

まるで、木の葉が翻るような動きだった。

そしてデストロイアに向かい、翼をたたみ矢のような姿勢で正面から向かっていく。

顔の口を大きく開いているデストロイアもまた針路をかえず正面から向かっていく。

ラドンはその口に飛び込んだ。

デストロイアの顔も口も捕食するためのものではない。

戦闘用のものだった。

口にいたってはミクロオキシゲンの噴射口に過ぎない。

ラドンはそこに突っ込んでいった。

超音速で。

さすがにそこはやわらかかったのか、デストロイアは衝撃に耐えることができず

空中でばらばらに分解した。

分解したとはいえ死んだわけではない。

デストロイアのひとつひとつは第3新東京市の中に落ちていくと、姿を小型の集合体に変え

都市内部のどこかへと消えていった。

一応、ラドンはデストロイアの一匹を粉砕はした。

が、すでに飛行能力はだいぶおちていた。

かなりの怪我をもしている。

だが、ラドンは休むことなく弐号機のパレットから離れ空中で集合する黒い生物に向かおうとした。

だが、その黒い生物を狙うのはラドンだけではなかった。

「攻撃。」

逸見の指示で放たれた小型のミサイルは、ラドンにも何発か命中した。

叫び声をあげて落ちるラドン。

「ファフッ!」

アスカはそれをみて叫ぶ。

一瞬、進みかけた弐号機の歩みが止まる。

ラドンは、それでも地面ぎりぎりでふたたび空に舞い上がる。

だが、以前のような速度はでていない。

それでも、デストロイアに向かっていこうとした。

 

ゴジラは初号機をさらに強く地面に叩きつける。

その衝撃で、初号機の頭部の角が砕け散っていた。

さらに、倒れた初号機を踏みつけようとした。

だが。

もんどりうって倒れるゴジラ。

雄たけびは今度は初号機があげていた。

負けじと、ゴジラもすぐに立ち上がる。

と、尻尾の強烈な一撃を喰らわせる。

それを耐えようとした初号機ではあったが、重量の差で吹き飛ばされる。

そのまま、零号機に覆い被さり、エネルギーを吸収しているデストロイアにぶつかっていった。

すばやく起き上がる初号機。

そしてそのまま、再度ゴジラにむかっていく。

派手な、金属のはぜる音とともに頭部の拘束具がはずれ、歯のようなものが見える。

ゴジラは、ふたたび尾の一撃を食らわせようとした。

が、初号機はその尾に喰らいついた。

予期せぬことだったのか、ゴジラは叫びをあげながら尾を振り回す。

ゴジラに比べて重量の軽いエヴァはその尾の動きにそって振り回されていた。

なかなか離れない初号機をつぎつぎと周囲の建造物に叩きつけるゴジラ。

それでも離れない初号機に対し、業を煮やしたのか首をひねり甲高い噴射音とともに放射能火炎を叩きつける。

それは初号機の頭部拘束具を一部砕き、自らの尾を開放させることとなった。

怒りの咆哮をあげるとゴジラは、背鰭を青白く光らせた。

 

ベータ号では逸見が黒い生物を責めあぐねていた。

ミサイルで撃とうと、メーサーで撃とうとそれは一向に効いた気配がない。

「どうだ、あいての様子は?」

いらだった声で聞く逸見。

「センサーでは、微妙に質量がへっているようですが。」

「微妙に?」

ゴジラやその他の怪獣に対してメーザーは一時的な効果はあっても、そういった効果は

あまりでていない。

ましてや、G細胞の回復能力は異常な速度をもっている。

いまだ、この機能を有効に打破する方法、もしくは有効に利用する方法はない。

いや、ひとつだけはある。

だが、それもかなりの犠牲と引き換えでないと効果は発揮されていない。

「メーサーや、熱線砲での攻撃時に質量がわずかですが減っているようです。」

「なるほど。」

効果の程はわかったが、現在考えられる段階では人類の作り出すレベルのメーサー、熱線はここまでが

限界出力だというのもわかっている。

「可能な限り、熱線砲で攻撃しろ。」

「了解。」

ベータ号は旋回すると、ふたたび黒い生物に向かって熱線砲を放った。

 

アスカは、デストロイアを追い、背後から体当たりをかけた。

躓くように倒れるデストロイアに馬乗りになると、残ったパレットからプログナイフを取り出す。

「これなら、攻撃できないでしょう!」

そういって背中にナイフをつきたてた瞬間、デストロイアの前後が入れ替わった。

「う、そ。」

群体生物の要素をもつデストロイアは、身体の構成を入れ替え善前後を逆転させることなど簡単なことだった。

弐号機のもつプログナイフにミクロオキシゲンを吐きつけた。

ナイフは、持った手ごとぼろぼろと崩れていく。

「う、く、ぎゃあ!」

たまらずアスカは叫ぶ。

その感覚は今までにない感覚だった。

痛みでもあり、かゆみのようでもあった。

だが、それを伴いまるで手が砂になってくずれていく、手の表面が流れていくような感覚だった。

その流れとともに、痛みと、かゆみが同時に襲ってきた。

そして、しびれるような感覚が右手を支配していく。

その隙をついてデストロイアが、覆い被さるように弐号機にのしかかってきた。

「くそ!」

毒づくとアスカは、弐号機を立たせようとした。

だが、ちからが入らなかった。

すでに、弐号機の腹部にもデストロイアの捕食口が突き刺さっていた。

「しまった!」

 

その様子をマナは屋上から逃げながらみていた。

紅いエヴァンゲリオン、弐号機に覆い被さったデストロイアと、それを引き剥がそうとしている弐号機。

すでに、青いエヴァンゲリオンは動いていない。

弐号機は、デストロイアからにげようとしている。

しかし、その動きは少しづつ緩やかになっていった。

「なにがおきてるのよ?」

階段の窓から見える光景に、戦慄しながらマナは言った。

そこには徐々に力を失っていく弐号機の姿がみえた。

もはや動いてもいない零号機を蹂躙しようとするデストロイアが見えた。

 

アスカは、のしかかり弐号機に口を突き刺しているデストロイアを跳ね除けようと、弐号機の腕を

振り上げた。

つもりだったが、腕はのろのろと動くだけだった。

まだ機能している兵装ビルからの援護射撃があるのがわかった。

モニターのノイズが増えていく中、デストロイアの背後に爆煙があがるのが見て取れた。

同時に、弐号機の腕も力なく地面に落ちた。

「ちくしょう。」

虚脱感が広がる中、アスカは唇をかみ締めてつぶやいた。

 

「状況は?」

司令室に駆け込みながらミサトは確認をとった。

「指示どおり援護射撃を加えましたが、効果ありません!」

状況報告をききながらマヤたちも自分の席につく。

「弐号機、起動いますがエネルギーレベルが最低値を示しています。」

振り返ると

「パイロットへの影響も出始めています!」

ミサトはそれを聞くと、

「シンクロをカットして!」

と指示をだした。

だが

「指示受け付けません。

いえ、指示が届きません、電波障害が大きすぎます。」

日向が声をはりあげる。

「ゴジラ熱レベル上昇!」

全員がモニターに目をむけた。

 

逸見は、空中で分割して数をました黒い怪獣にてこずっていた。

「熱には強いが・・・。」

そういいながら、冷凍ミサイルを発射させた。

黒い怪獣の一匹が氷の塊となって地面に向かって落ちていく。

「倒せたと思うか?」

副長に聞いた。

「わかりません、勝手が違いすぎます。」

旋回するベータ号の窓越しに、苦戦するエヴァンゲリオン3機の姿がうつった。

凍結した黒い怪獣はそのまま箱根の山におちるとこなごなに砕けた。

熱海の方向に爆発の煙と、炎、そしてメーザーの軌跡が確認できた。

「熱海の方からくるデストロイアはいるか?」

「センサーでは確認できません。」

ふと笑みをもらすと逸見は、

「黒いのを連れて行くぞ。」

といった。

幸い、黒い生物はベータ号を追ってきている。

「針路を熱海へむけろ、新横須賀でもかまわん!」

そのどちらも、武器は多い。

うまくすれば、デストロイアとぶつけられるかもしれない。

「あの未完成品、やるな。」

動きが少々鈍いことをのぞけば、ジェットアローンはデストロイアとなんとか渡り合っていた。

それでも、損傷は徐々に増えていっているようであるのだが。

 

三ノ輪は反応の鈍いジェットアローンにストレスを感じながらも、なんとデストロイアの進行を防いでいた。

とはいえ、徐々にデストロイアは第3新東京市に進んでいる。

海上の艦船もほとんどが機動力を失っている。

かろうじて砲撃できるものが、艦砲を加えているという状態だった。

「なんだ?」

モニターの接近警報を聞き、その方向に目をむけると白い機体のあちこちに腐食による破損をさらした

ベータ号が写っていた。

その後ろには、黒い生物。

「こっちにもってくるのか?」

今でさえ苦戦しているというのに、その黒い生物も同時に相手をするとなると確実にここは突破される。

「おい、」

呼びかけようと無線に呼びかけたとき、空中に飛び上がったデストロイアがベータ号に攻撃をかけた。

ベータ号はぎりぎりでかわすと、上昇する。

「くそ。」

三ノ輪は、ショルダーメーザーをデストロイアに発射しようとした。

が、デストロイアと黒い生物は同時にベータ号を追おうとしたため、空中でぶつかった。

はずだが、デストロイアはすり抜けていった。

同時にデストロイアの身体から派手に煙があがった。

「なんだ?」

さきほどまでの状況を報告されたときに聞いたもの。

「やつは、王水の塊か?」

黒い生物の発生と同時に王水かそれ以上の腐食性をもつ粒子が観測されていた。

さすがにそれをまともに浴びたためデストロイアも被害を受けているようだった。

「よし。」

ジェットアローンは、上空のデストロイアにねらいをさだめるとショルダーメーザーを放った。

派手な火花をあげて、デストロイアは地面に激突した。

次は黒い生物。

ねらいを定める。

だが、一匹足りない。

その間も、ジェットアローンは休むことなくデストロイアへの攻撃を加えていた。

海岸付近のデストロイアを攻撃しようと展開したときそれはいた。

「なにやってんだあれは?」

黒い生物の一匹は、黒煙をあげて燃え盛る駆逐艦の上にへばりついていた。

それはただへばりついていたのではなく、その燃える艦からでる黒煙を吸い込み巨大になっていった。

「煙をくっているのか?」

その様子に驚きながらも上空の黒い生物に攻撃を加える。

だが、ミサイルはなにも起こさなかった。

 

「通信はまだ回復しないか?」

逸見は焦りながら、通信士に聞いた。

「だめです、システム全体を破壊されたようです。」

デストロイアとすれ違ったときに、突然通信システムがダウンした。

デストロイアは飛行時、ミクロオキシゲンのミストを噴出している。

それが、運悪く通信システムを破壊していった。

「しかたないか!」

はきすてるようにつぶやくと、逸見は機体を再度旋回させる。

と、なぎ払うように熱線砲で海岸線のデストロイアを攻撃する。

デストロイアは、首を空へむけるとぎちぎちという音が聞こえそうな勢いで同化していく。

「完全体になるには、数がすくないか?」

観測結果を聞き、ほっとする。

現在の破損のおおきなベータ号と出来かけのジェットアローンで完全体を相手にはしたくなかった。

炎の中でデストロイアは、集合体へと変貌した。

だが、逸見はほっとするまはなかった。

それはデストロイアの背後の海上で艦からでる黒煙を吸い込み倍ほどにも成長した黒い怪獣の姿を見たからだった。

「なんだあれは?」

さすがに、叫んでいた。

相手は、先ほどの2倍、集合体のデストロイアとほぼ同じ大きさになっていた。

そして、逸見と三ノ輪がそれ見ている目の前でもう一匹の黒い生物がそれに同化した。

さらに巨大な姿となっていった。

 

雄たけびをあげ、ゴジラに立ち向かう初号機はたしかにスピードではゴジラを圧倒している。

だが、そんな初号機の攻撃にゴジラはたいしたダメージは受けていなかった。

たとえ、覆い被さるように頭を押さえ込まれてもそれを難なく引き剥がし軽がると放り投げた。

初号機は零号機と並ぶように倒れた。

熱レベルの上がったゴジラの周囲に陽炎が立ち昇っていた。

アスカは、前身を襲う脱力感に抵抗できずにいた。

デストロイアに奪われる弐号機のエネルギーと同時にシンクロしているアスカの身体からも

生命エネルギーが奪われていく。

ノイズの増えていくモニターと、ぼやけていく視界の中でそれでもアスカはデストロイアを

振り払おうと手を動かそうとした。

が、もはや手も動かない。

勝ち誇ったように咆哮する。

突然目の前のデストロイアが不自然に横に飛んでいった。

 

黒い怪獣は、その艦から好きなだけ黒煙を吸い取ると、向きを海岸にむけた。

そこには、敵と認めたのかデストロイアが向かいあって立っている。

後ろには、ジェットアローンが2体に立ち向かうようにたっている。

が、黒い怪獣はジェットアローンには見向きもせず、集合体デストロイアに襲いかかった。

2匹は形態を著しく変貌させながら、ふたたび海の中に入る。

ベータ号は、その海中に向かいミサイル、熱線砲などすべての武器を打ち込んだ。

ジェットアローンも、また全武装をそこに集中して攻撃する。

波立ち、あわ立つ海面の中で2匹は死闘を続けている。

「しぶといな。」

吐き捨てるように言うと、時田は

「三ノ輪君、プラズマメーザーを使ってかまわん。」

と三ノ輪に伝える。

「しかし、照準がおいつきませんよ。」

三ノ輪は返す。

「やつが、攻撃しているあいだは動けないだろう。

そのときだ。」

やつ、とはベータ号のことをさしていた。

ベータ号が攻撃を加えたときを狙って撃て、ということだが無線操縦のためそれなりの遅れがでる。

「攻撃態勢で、まつしかないですが?」

うんざり、という調子で言う三ノ輪。

「くやしいが、デストロイアも黒いやつもこっちには目もくれん。

それが狙い目だ。」

三ノ輪はしぶしぶ従った。

ダイレクトな操作でない分おくれるのは覚悟していた。

致命的な遅れではないにせよ、これは攻撃の機会を逸すには十分な遅れだった。

格闘中の2匹に大体のあたりをつける。

あとはベータ号の攻撃をまつばかりだった。

「ジェットアローン、攻撃態勢でとまりました。」

その報告で逸見はぴん、ときた。

「よし、残りのミサイル、弾丸、メーザーすべてヤツらに叩き込んでやれ!」

はずすなよ、と心の中で言う。

「撃て!」

ベータ号からあらゆる火線が2匹に向かった。

「よし!」

動きが一時的に止まったとところを確認し、そこにプラズマメーザーを打ち込む。

今までで一番でかい水柱が上がる。

小さな津波が、砂浜を、港を襲う。

爆風と水煙が収まったとき2匹は姿をけしていた。

 

ゴジラに吹き飛ばされ、倒れた初号機にデストロイアが襲い掛かろうとした。

が、初号機は立ち上がると、デストロイアを避ける。

「ミサイル!」

ミサトはデストロイアに向けてミサイルの発射を支持する。

反動でデストロイアは、回転しながら吹き飛ぶ。

「ち、ダメージはでてないわね!」

つめを噛みながらミサトは次の指示を出す。

機銃はなんの役にもたたなかった。

 

「あれで、倒せたならいいがなあ。」

逸見はそういうと

「よし、戻ろう。」

と、機首を長野に向けさせた。

突然、機体が大きくゆれた。

「何だ?」

黒い怪獣が左翼を突き破って、駿河湾の方に向かって飛び去るのが見えた。

「くそ、やはり生きてたか!」

ベータ号は大きくゆれながら、新横須賀に向かって落ちていった。

三ノ輪もまた黒い怪獣の飛びさる方向に目を奪われた。

だが、次に海上に浮かび上がったデストロイアに息を呑んだ。

が、デストロイアもまた身体のあちらこちらに損傷をうけているような状態だった。

続けざまにミサイルを撃とうとしたが、デストロイアは咆哮すると瞬時に飛行形態に形をかえ、旧東京方面へと

飛び去っていった。

「なんとかなったようだな、三ノ輪君。」

「だといいですがね。」

「そうだな、JAをともかくもどそう。」

「しかし!」

第3新東京ではまだゴジラもデストロイアも暴れている。

「JAも損傷しているし、これ以上は武器が持たない。」

たしかに、ミサイルの残弾も少ないし、メーザーも過熱気味だった。

だが、マナのことが三ノ輪は気になった。

「これ以上は、戦闘続行不可能、ですか?」

「やってもこわされるのがおちだ。」

時田はあっさりと言う。

現状ではそうだろう。

三ノ輪もそう判断はした。

第一、この鈍い機体ではゴジラのまとにしかならない。

「JA、帰投します。」

三ノ輪は、ジェットアローンを呼び戻した。

自動でもどってくるとはいえ、その飛行はあまり安定してるとはいえなかった。

「やはり、搭乗型のほうが動きも速いし、安定するな。」

三ノ輪は一人そうつぶやいた。

「私もそうおもうよ、三ノ輪君。

今回はその場しのぎだったんだからこれでいい。」

遠隔操作用のモジュールの中に時田が入ってきながら言った。

「君の教え子を使えないかな?」

「大丈夫だとは思いますが、しかし。」

「設計の都合上、もう1人パイロットが必要なんだよ。」

「なにか有るんですか?」

「いろいろとな。」

時田はそういうとにやっと笑った。

 

ラドンは、低空を飛びながらもデストロイアに向かっていた。

そこには、弐号機に覆い被さり捕食口を差し込んでいるデストロイアがいた。

ベータ号と黒い怪獣が上空から消えたのと同時に、ふたたび空に上がるラドン。

かなり上空まであがると、ふたたび頭をしたにして急降下をかけていく。

空を切る甲高い音とともにラドンは、弐号機に覆い被さるデストロイアに体当たりを浴びせる。

デストロイアは、不自然に横にふっとんでいった。

アスカは、デストロイアが吹き飛んだあと、モニターに写る影をみた。

それはラドンの翼の一部だった。

 

ゴジラは、吹き飛んだデストロイアの方に顔をむける。

ふたたび立ち上がろうとして咆哮をあげる初号機にはまったく目もくれていない。

そこに、ものすごい勢いで吹き飛んできたデストロイアがもう1匹現れた。

2匹は立ち上がると、ひとつに融合し始めた。

先ほどから、青白く輝いていた背鰭がさらに強く光電光を発した瞬間、ゴジラの口から青白い熱線が

いままでとうって変わって、地鳴りのような音とともに放射された。

それは第3新東京市の地面を焼き、ビルをなぎ払いながらデストロイアに進み、命中した。

小型の、限定核弾頭でもつかったかのような光と爆発音の中デストロイアの姿が消えたように見えた。

が、ゴジラはすぐに空に目を向ける。

空中で、徐々に形になるデストロイア飛行形態。

形がある程度の大きさになったとき、デストロイアは東京湾の方に向かい飛び去っていった。

力強く野太い恐ろしい咆哮をあげるとゴジラは、デストロイアを追って歩き出した。

「なんてやつらなの。」

モニターから目を離し隣のリツコに顔を向けながらミサトは言った。

「あいつらまで相手にできないわね。」

リツコは答えた。

「Gフォースや国連と協議したほうがいいわね。」

ミサトはそういうと、ゲンドウに視線をむけた。

が、ここからでは表情を読み取ることはやはりできなかった。

 

マナは、教室からシェルターに戻る途中で激しい振動と爆音にさらされた。

今にも崩れそうな振動ではあったし、壁にひびもあらわれ天井の一部が落ちてきている。

「まずいわね。」

NERVの作戦中は休校である。

それなのに、シェルターで死んでいたら怪しいにもほどがある。

恐怖のためとはいえ、おもわずシェルターに逃げ込んだ自分のことを罵倒した。

が、その振動も音もすぐに収まった。

「たすかったわ。」

マナは地上にでた。

そこには、街の中を悠然と相模湾に向かってあるくゴジラの姿があった。

「シ、エヴァンゲリオンは?」

見回すと、初号機が装甲を破壊されながらもビルにめり込むようにたっていた。

その隣には、零号機がうつぶせに倒れている。

そして、かなり離れたところに弐号機が倒れていた。

その上には。

 

「ファフ。」

アスカは、呟くとモニターに移っているラドンの翼を見た。

起き上がろうにも起き上がる力がでない。

自分に、というか弐号機をかばうように翼を広げて上にのっているラドン。

「ファフ!」

思わず、左手が動いた。

弐号機の左手も同じように動く。

と、ラドンの背中にやさしく乗せる。

ラドンは首を上げ弐号機の顔をみると、力強く鳴き声をあげる。

「よかった、生きてた。」

ほっとするとアスカはシートにふかぶかと身体を沈み込ませた。

キズだらけではあるが、過労寸前のアスカに対してラドンははるかに元気だった。

 

 
 

NEXT

ver.-1.00 2001!09/11公開

ご意見・ご感想はGグラスパーまで!! 


ゴジラVSメガギラスも終わったわ。

ですね。

ウルトラマンコスモスも映画おわったわ。

だね。

生きているうちに完結するの?。

したいねえ。

無責任だわ。

まあ、大丈夫でしょう、なんとかなりますって。

ほんとうに続き書く気、あるのかしら。

んー、一人でも続きを読みたいって人がいるかぎり、かな。





 SOUさんの『怪獣聖書』一一、公開です。





 大激戦!
 大混戦!!


 使徒
 敵怪獣
 味方怪獣
 EVA
 それにいろんなとこの機械・・


 それぞれの思惑も巻き込んで、
 敵怪獣撃退も一安心とは行かないげ・・



 とりあえず、興は乗りきった〜
 チルドレン偉い。
 マシン偉い。
 ふぁふ、すんごく偉い〜☆






 さあ、訪問者のみなさん。
 完結までSOUさんを応援しましょう!







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