それはひとつの物語。 平和な世界。普通の人々が生きる現実の世界。 その世界に突如現れた、邪悪な意志を持った集団。 圧倒的な破壊力の前になすすべもない大多数の人間たち。 そんな時にどこからか現れる、正義の意志を持った集団。 人類を守るため、正義を守るため、彼らは戦いを始める。 彼らにしか使えない武器を手に。 彼らにしか使えない必殺技を使って。 度重なる襲撃。鋭く強力になる相手の攻撃。 その度に彼らは何かを経験し、そして強くなっていく。 相手がどれだけ巧妙な罠を巡らそうとも。 絶体絶命のピンチになろうとも。 最後には勝利し、また世界に平和をもたらす。 笑顔。そしてエピローグ。 |
僕には最後まで分からなかった。 人類を守るという事が。正義を貫くという事が。 単純そうで、それでも僕は分からなかった。 テレビ画面の向こう側で、主人公たちは何かに燃えていた。 人類を守る事。正義を貫く事。誰かを助ける事。 彼らは知っていたのだ。その戦いの意味を。 僕には分からなかった。 何故戦っているのか。何故こんな事をするのか。 漠然とした予感。曖昧な期待。見えない明日。 その中で徐々に現れる不安な要素。 早く逃げ出すべきだったのかもしれない。 例え逃げ出した先には絶望しかなくても。 例え僕が死に至る事になろうとも。 逃げ出すべきだったのかもしれない。 世界中を巻き込む最悪の事態を考えたなら。 未来を知る事ができていたのなら。 気が付いたのは、全てが終ろうとした瞬間だった。 |