佐門の部屋15000HIT記念 歩いていこう! 生命に太陽の恵みが与えられ始める頃、目覚まし時計が自己主張を始める。 葛城家の主夫、碇シンジの朝は早い。 彼には、三人分の朝食、二人分のお弁当、我が儘な同居人のための朝風呂の準備などなど、14才の少年がする仕事ではないものが待ち受けている。 「……うん………ふあ〜〜〜あ……」 重いまぶたに活を入れ、愛しき寝床に別れを告げる。 彼とて14才の少年、まだまだ寝ていたいものだが、彼の同居人達がそれを許さない。 まず、彼は洗面所へと向かい、半分眠っている脳を洗顔で叩き起こす。 刺激を与えるため歯を磨く。 ようやく、目覚めてきたようだ。 そのまま、朝風呂の準備にバスルームへと向かう。 「ふう……アスカも自分で入るお風呂の準備ぐらい自分でしたらいいのに………」 彼が、ぼやいている間に湯が満ちてくる。 温度の調整は、最も気を使う瞬間である。 これで、彼の同居人の一日のご機嫌が左右する。 少し熱いと、 「アタシを火傷さすつもり!!」 と、怒り。 少し冷たいと、 「アタシを凍えさすつもり!!」 と、怒る。 「はあ……一体どうすればいいんだよ……」 ぼやく。 ここ2日ほど、彼女はご機嫌は斜め。 2日前にやってしまった口喧嘩が原因だ。 彼の料理に、彼女が文句を付けたのが始まりだった。 ……………ちょっと、バカシンジ!なによこれ!な・ん・でピーマンが入ってんのよ!アタシが嫌いなの知ってんでしょうが!! ……………いいだろ、ピーマンの一切れや二切れ。いつまでも好き嫌いするなよ。ピーマンは体に良いんだよ。 ……………アタシは臭いがするだけでイヤなの!! ……………いつまでも、お子さまみたいなこと言うなよ。 ……………あんですって〜〜〜!!!もう一度、言ってみなさいよ!!! ……………いつまでもピーマンが嫌いなんて言ってるのは、お子さまだって言ったんだよ。 ……………こぉのバカシンジ!!!! ……………パンッ ……………なにするんだよ! ……………うっさい!アンタ、このアスカ様に口答えするなんて、いい度胸してるわね! ……………だいたい、なんだよ!いつもいつも僕を叩いて!何様のつもりだよ! ……………問答無用!! ……………パンッパンッパンッパンッ ……………痛いじゃないか!!この暴力女!!! ……………ガツッ …………………………………………… 「だいたい、アスカも普通グーで殴るかよ…………」 彼の頬は、まだ2日前の青あざに彩られていた。 回想している間に、お風呂の準備は終わり、お弁当に取りかかる。 キッチンで準備に取りかかる彼に、この時間には起きているはずのない人物から声がかかる。 「……おはよう、シンジ……」 「えっ…………ア、アスカ、どうしたの?こんな朝早くから…」 驚愕の色に包まれ、信じられない物を見るような目つきで、アスカを見るシンジ。 「なによ!アタシが早起きしちゃいけないって言うの!」 アスカは、急激に不機嫌になっていく。 「そ、そんなことないよ……ただ……めずらしいなって……」 「バカ!!」 パンッ 「フンッ!これからお風呂にはいるから、覗いたら殺すからね!!」 キッチンには、腫れ上がった頬を押さえたシンジが立ちつくしていた。 「僕が、なにしたって言うんだよ…………」 幸い、シンジのぼやきは、アスカの耳に届くことはなかった。 「また、やっちゃった………」 アスカは湯船につかりながら、反省の色を見せる。 「あ〜あ、アタシってどうしていつもシンジを叩いちゃうんだろう……… だいたい、シンジが悪いのよね。せっかく謝ろうと思って早起きしたのに…… でも、手を上げるのは良くないわね…… シンジもまだ痣が残ってるし…… こんなんじゃあ、嫌われちゃう…… イヤだな……」 素直になれない自分が疎ましかった。 「どうやって仲直りしようかな…… うだうだ考え込んでいてもしょうがない! 実行あるのみよ!!」 風呂場でガッツポーズを取るアスカ。服を着た方がいいと思うのだが……… 思い立ったら、すぐ実行。アスカのモットーである。 急いで、風呂から出るアスカ。 鏡の前でチェックをする。 「よし、アタシはパーフェクト。いくわよ、アスカ。」 シンジは、朝食とお弁当を作り終えて、テーブルの上でアスカを待っていた。 「はあ………またアスカを怒らせちゃったな〜 僕も言い過ぎたんだよな…… アスカと仲直りしたいな〜 でも、どうすればいいんだよ……………」 テーブルに突っ伏して、シンジは後悔の念に捕らわれていた。 「バカシンジ、なにそんなとこで寝てんのよ。」 「ア、アスカ、もう出たの。早いけど朝御飯出来ているから……」 「そう。早く食べましょ。」 「う、うん………」 「ほらほら、ボサッとしてないで、ご飯ついでよ。」 「うん。」 「「いただきます。」」 シンクロする二人。 アスカは思わず吹き出す。 「プッ…アハハハハ……アタシ達、いまだにシンクロするわね。」 「ハハハハハハハハ……僕たち、よっぽど気が合うんだね。」 二人して、久々に笑った後、朝食を片づけにかかった。 程なくして、二人の食欲は満たされる。 「「ごちそうさま。」」 最後もシンクロした二人は、お互いの顔を見て笑う。 そんな中、アスカが前々からの計画を実行に移す。 「シンジ、今日はもう出るわよ。」 「えっ、どうしたの?だってまだ7時だよ。」 「いいから、今日は早く行くの!早く準備しなさいよ。」 「わ、分かったよ。」 「さっさと着替える。」 「う、うん。」 シンジは、アスカに部屋へと放り込まれた。 アスカも部屋へ行き準備にかかる。 シンジの準備は速い、さっさと着替え、鞄に教科書とノートをつめれば、もう終わりだ。 「アスカ、機嫌が良かったな。 良かった。 でも、どうしてこんなに早く学校へ行くんだろう? まあ、いいか。 アスカの機嫌が良かったら。」 シンジは部屋を出て、アスカに声をかける。 「アスカー、まだなの?」 「まだよ!少しぐらい待ちなさいよ!」 アスカの声には、少し怒りが込められているのをシンジは聞いた。 「今のは失敗だったな……… せっかく、アスカの機嫌が良かったのに………」 ぶっそうな文句が書かれたふすまが勢い良く開いた。 アスカの顔に少し怒りの色が見て取れる。 「アスカ、ごめん。」 開口一番シンジは謝った。 アスカはそれに怒りをそがれたようだ。 「もういいわよ。さあ行くわよ。」 「う、うん。」 二人は玄関を出て、エレベータへと向かう。 まだ夢の世界にいるミサトはすっかり忘れ去られているようだ。 この後、起きてきたミサトは、二人がいないことに気付き、諜報部に連絡してパニックとなるのだが、これはまた別のお話。 「シンジ、今日はちょっと違う道で行くわよ。」 「え、どうして?」 「アンタ、バカぁ〜、だからこんなに早く出てきたんじゃないの。文句無いわね。」 「僕はいいよ。」 「そ、それでね…………」 アスカは真っ赤になって、シンジに手を差し出した。 「あ、あのね…………別にシンジと手を繋ぎたいんじゃなくて…………その……そ、そうよ、仲直り……したいから……」 しどろもどろで赤くなるアスカを見て、シンジは「可愛い!」と、思ってしまった。 「い、いいの……」 「………うん……」 お互い真っ赤になりながら、手を繋いで歩いている二人は、初々しいカップルにしか見えなかった。 朝早く、二人の邪魔をする者はいない。 シンジもアスカも、頬を染めて下を向いて歩いていた。 二人の思考は全て、繋がれた手に向いていた 「………シンジ、ごめんね。叩いたりして……」 「………僕こそ、ごめんね。アスカを怒らすようなこと言って………」 「「………………………………………。」」 沈黙が二人を包む。 決して気分の悪い物ではなく、二人の心が繋がれた手を通じて、通いあうような心地よい物。 「「あのさ。」」 重なる言葉。 「シ、シンジから言ってよ………」 「ア、アスカから言ってよ………」 「ダメ、シンジから!」 「う、うん………な、なんかさ、たまにこういうのもいいよね……… ………ふ、二人でゆっくり歩いて学校に行くのもいいね…………… 朝は空気がおいしいし………静かだしね………」 「そ、そうね………うるさいバカはいないし………
「えっ………」
「な、なんでもないわよ………ねえ…シンジ………こういうの……たまにしない?………」
「ぼ、僕は、アスカさえよければ…………いつでもいいけど…………」
「じゃあ、月曜日は早起きするね。」
「僕も早く起きて、準備するよ。」
「決まりね!」
「うん!」
二人の手を繋ぐ力が、少しだけ強くなった。
「僕たち、こうやってこれからも歩いていけたらいいね。」
「アタシたち、こうやってこれからも歩いていけたらいいわね。」
二人は歩いていく。
ゆっくりとお互いの気持ちを確かめあいながら、歩いていく。
二人で一緒に…………
End
こういうの、いいですよね〜
昔を思い出します…………………………………………(現実逃避中)
ハッ……思わず、過去の思い出浸ってしまいました。(^^)
でわ、この辺で……………………………………………(再び、現実逃避中)
佐門さんの部屋15000HIT『記念歩いていこう!』、公開です。
手をつないで通学・・・
・・・いいですねぇ・・
・・・・可愛いですねぇ・・
・・・・・初々しいですね・・・
ちょっと素直になって、
ちょっと勇気を出して。
ずっとずっと・・
さあ、訪問者の皆さん。
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