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@ 悲しみ

 

 

目を開けると、そこには見覚えのある笑顔があった。

「碇君?碇君なの?」

思わず声を上げる。

しかし、シンジは手を振りながら、闇に消えていく。

「イヤァァァァ!行かないで!」

 

はぁはぁはぁ

また同じ夢だ。

「泣いてる。夢を見て泣いている。わたしが?」

 

使徒の攻撃にも、ゼーレとの最終決戦にも人類は生き残った。

 

 

 

『ナゼナイテイルノ。』

「悲しいから。」

『ナゼカナシイノ。』

「大切な人を…」

『ダレ?』

「碇君…」

『イカリクンテダレ?』

「優しい。私に心をくれた。前の私が守った。ひとつになりたい。」

『ナゼウシナッタノ?』

「私のせい…。いや。失ってなんかいないわ。碇君!」

 

 

憂鬱な一日が始まる。

綾波レイにとって、学校ほど苦痛なものはなかった。

レイにとって、シンジの居ない学校など………。

 

 

 

 

「シンジどうしたんかなあ。」

「なんでも、シンジがこの前の騒ぎを一人でおさめたんだとさ。」

「へぇ。」

「そろそろ出てくるんじゃない?」

「惣流は精神が狂っちゃったんだろ。」

沈黙

「すまん。悪いこと言ったなぁ。」

「EVAのパイロットって大変やなぁ。」

「トウジ。おまえも…」

沈黙

「ごめん。余計なことばっかりいって。」

「シンジはどうしたのかなぁ。」

「綾波さん知ってる?」

「知らない。」

「そ、そう。」

 

レイの肩はガクガクと震えていた。

誰も気が付かなかったけれど…。

 

「起立、礼、着席。」

ガタッ

「今日は皆さんに悲しいお知らせがあります。」

レイの顔が、引きつる。

「実は…。」

誰かがポツリと言った。

「いや。」

「え?」

「いやぁぁぁぁ!!!!!」

レイだ。

感情をむき出しにしている。

その意外な行動に皆は呆気に取られている。

レイは頭を抱え、震える。

「言わないで……先生。お願い。」

レイはきえいりそうな声を絞り出した。

「だがね、綾波君。」

教師は複雑な顔をした。

「私は真実を伝えなくては…。」

「真実は時として、人を傷付けます。」

「言わなくてはいけないんだ。わかってくれ。」

 

 

教師は始めた。

「碇シンジ君だが…。」

「嘘よ。みんな、こんな嘘に騙されちゃいけないわ。」

皆はレイの異常な行動に、驚きと、ある不安を抱いた。

「言わないで…先生。」

沈黙…

 

「亡くなった。」

「嘘よ!!!嘘よぉぉ!!!嫌よ。何でそんな顔するのみんな!!
碇君は死んでなんかいないわぁぁぁぁ!!うそよぉぉ…碇君は、碇君は…。」

レイはへなへなと、床に伏せてしまった。

 

 

「事実なんだ。碇君は私たち人類を守る為に…………」

 

「自爆した。」

 

「シ……ン…ジ…が?」

 

「目撃証言があるんだ。敵を掴んで消えた。というものがね。
綾波君、君も見たのだろう。」

 

 

 

 

レイはふらっと立ちあがる。

「信じたくない。碇君が死んだなんて。信じないわ。あれは幻よ。」

「しかし、あや・・」

「だって、言ったもの。『もう、君を独りにしない』って。
碇君は嘘をつかないもの。」

「綾波君…。」

「『もう人を傷付けたくない』って。」

「だがね・・」

「碇君の居ない世界なんて…」

「………」

「碇君が死んだんなら、……私も運命を……」

「まて。綾波君。君には未来が…」

「私の未来は碇君よ…。」

「…………」

レイは小さいながらも、しっかりとした声で言った。

「私は何のために生きればいいの?」

 

 

Aに続く


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ver.-1.00 1997-08/31公開
ご意見・感想・誤字情報などは ----------まで。

 TOMYさんの『こころ』1、公開です。
 

 サラリーマン教師。
 レイのクラスの担任は教師失格ですよね。

 自分の”仕事”の遂行のみを目的として、
 生徒の”気持ち”を省みない・・・
 

 狂おしいほど泣きわめいている生徒に対し、
 あくまで”仕事”を続ける。

 さいてー(^^;

 

 

 シンジの死。

 何が起こったのでしょうか、
 何が起こるのでしょうか。
 

 さあ、訪問者の皆さん。
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