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            warlock






いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか?
ええ、はい。うちの店は見ての通りの輸入雑貨店でございますよ。
もともとは先代が始めた商売なんですが、あの人は商売というよりもほとんど
道楽みたいなもんだったんです。ろくにお客も来なくてねえ。
で、私が後を継いでから本格的に経営する様になった訳でして。
店は小さいですが、なかなか評判も良いんですよ。
・・・・・あ、これに目が止まりましたか。
これは最近イギリスで人気が出ている人形でして。
見ての通りの小さなレディの人形です。
ドレスもとてもよく作り込まれていて、その辺が人気の理由でしょうね。
ほら、目なんか見てください。まるで生きてる様じゃないですか。
とてもプラスチックとは思えません。
あ、こちらなんかどうです?
これはちょっと毛色が変わって、ブラジルの・・・・・・・はい?
・・・・・・はい、はい。そうでしたか。
お客様は秋口様のご紹介でしたか。これは失礼を。
では、奥へご案内致します。
・・・・・え?
ああ、商品を棚から落とされてしまったのですね。
いえ、そんな恐縮なさらないで下さい。
どうせここに置いてあるものはがらくたばかりでございますから。
さ、こちらへどうぞ。ちょっと地下へ入りますよ。
階段が少し急ですので足元にお気を付け下さい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
はい。ここが私の”本当の”商売のための部屋になります。
ちょっと殺風景ですか?
しかしこれはこれでなかなか味があってよろしいものです。
あ、遠慮なさらずそちらにお掛けになって下さい。
つまらない小物などを置かない分、ソファは最高級のものを置いてありまして。
やはり本物は座り心地が違いますな。
ああ、気に入って頂けましたか。それはありがとうございます。
紅茶の一杯もお出ししたい所ではありますが、お客様も少し焦られている
ご様子ですので、とりあえずお仕事のお話に移りましょうか。
・・・・はい。その通り。
私の店はお客様の人生を、より価値あるものへ変える事を目的としています。
うなだれていらっしゃったお客様も、二度目に訪問される時にはとても
生き生きとした表情をしておられます。
そんなお客様を見るのが私の喜びでして。
・・・・・ええ、もちろんそうでしょうとも。
成功、というものは常に他人の犠牲によって成り立っているものでございます。
これはこの世の真理です。
人の世に限らず、自然の摂理が既にその様に作られているのですから。
ですからお客様が成功された時に、そのお客様の成功の邪魔をしていた人間が
一人、二人亡くなられてしまう事、これはもう止むを得ない。
で、お客様は一体どの様なお話で?
・・・・・はい。
・・・・・・ふむ。
・・・・・・・・ほう、なるほどなるほど。
つまり同期の出世頭を消して欲しい、と。
その方がいらっしゃらなければお客様が本来その地位にいらした筈と。
おお、おまけに部長の娘さんとの縁談までまとまりつつあるのですか。
これはもう一刻の猶予もありませんな。
殺して・・・・・・いえ、舞台から退場頂きましょうか。
では、どういった人を御所望で?
え?
ええ。私は暗殺者を斡旋するのが生業でして。
とりあえず手元に居る暗殺者の中からお客様に選んで頂く事になります。
もちろん各自能力は違います。
事故死に見せかける事に長けた者もいれば、毒殺が得意な者、
ただ単に撲殺するだけの者、様々ですな。しかし実力は皆保証致します。
・・・・・・はあ、一番確実な者、でございますか。
これは少し弱りましたな。
いえ、私が斡旋出来る者の中で最高の者となりますと、少々お高くなって
しまいますので。はい、料金の方が。
場合によりますが、まずこれだけの御予算は見て頂かないと・・・・・・・。
・・・・・ああ、やはり少し高すぎる様ですな。
確かにこの料金は法外と思われても仕方がありません。
下手な国の国家予算に匹敵しかねませんからな。
ああ、そんな御立腹なさらないで。
これは特別です。普通の暗殺者を御所望されれば、リーズナブルなお値段で
動く者を紹介出来ますが。お客様が一番確実な者を、とおっしゃいましたので
・・・・・まあ、レストランのワインと同じ様なものですよ。
彼の料金が高くなってしまうのはどうしようも無い事でして。
なにしろ彼は”ウォーロック”ですから。
は?
ああ、そうですな。
一般の方々にはウォーロック、などという言葉は馴染みが無いかも
知れません。
お客様さえよろしければ簡単に説明させて頂きますが。
・・・・・はい。では御説明致します。
ウォーロック、というのは魔術師の階級なのです。
魔術師達は皆その力量に応じてランクづけされております。
基本的に七級魔術師から一級魔術師まで。
七級は本当に初歩の初歩の魔術しか習い覚えていない者。
そして大体三級程度が普通の魔法使いの限界となります。
これくらいになると一般的にはかなり優秀、と言えますな。
で、まあ普通の魔法使いでも、学習次第では二級ぐらいまで到達出来ます。
到達した頃にはもう空の向こうからお迎えが来かねませんが。
最後の一級、となるとこれはもう努力ではどうにもならない。
そう、持って産まれた才能、というものが必須なのでございます。
無論魔法使いとして産まれた以上普通の人々から見ればそれだけで
羨望を受けるに足る才能と言えるやも知れませんが、
一級魔術師となるためにはさらにその”上”が求められます。
しかしそれだけに凄い。
一級魔術師の魔術を直にご覧になれば、それこそ腰を抜かす事請け合い。
あ、焦らないで下さい。
ウォーロックについての説明はこれからです。
先程一級魔術師の説明を致しました。
一般的には一級ともなれば魔術師の最高峰、押しも押されぬ実力者、
という事になるのですが、実は非公式にですが一級の上が存在します。
その呼び名はウォーロック。
・・・・・・というのは英語風の呼び名でして、日本語では”特級魔術師”などと
呼ばれますな。一級の上だから特級。何とも安易なネーミングですが。
そしてこのウォーロックとまでなりますと、これはもう・・・・・・・。
そう、神様と呼ぶに相応しい力を持っております。
誇張もけれんも一切無しに。
・・・・・はあ、具体的に表現しろ、と言われましてもなかなか難しゅうございます。
・・・・・それでもしろと。
・・・・・そうですな。まあ、少なくとも普通の人間や魔術師には彼らを殺す、
という事は不可能と言えましょう。
断言致しますが、例え核ミサイルの直撃を食らっても彼らは傷一つ負いません。
何と言おうか・・・・・”違う”のですよ。彼らは。
一国の軍事力、どころの話ではない。
例え地球上全ての兵器と兵士とを掻き集めようとも、彼らの持つ力には
到底及びません。彼らが少しでもその気になれば、大国同士の戦争さえ
瞬く間に終結させられるでしょう。
戦争(war)を封じる(lock)。
ウォーロック(warlock)という呼び名はそこからついた、という説が一般的です。
人数、ですか。
先程も申し上げた通り、ウォーロック、という階級はあくまで非公式なものです。
それ故に本人が勝手に名乗っているという者も幾人かはいるのですが、
まあ誰一人異を唱える事が無い、正真正銘のウォーロック、となりますと、
世界に二十名ほどとなっております。
意外に多いとお考えで?
で、まあ、私はその内の一人と懇意にしておりまして、半ば冗談混じりに
彼は私の暗殺者名簿に登録している訳ですよ。
お分かり頂けましたか?
でしたらビジネスのお話に戻りましょうか。
お客様のケースですと、やはりここは事故死、という形を取るのが無難では
ないかと考えます。
それでよろしければそういう者を紹介致しますが。
・・・・・ええ、ええ。そう言われる方よくいらっしゃいますね。
分かります、そのお気持ち。
憎い相手ですからな。あっさり殺してしまってはあまり面白くありません。
やはり長く、じわじわと苦しめてから・・・・・というのがよろしい。
ご安心下さい。オプションでそういうサービスも選択頂けます。
料金は精一杯勉強致しまして、大体・・・・・・・・・。





 


ver.-1.00 1998+01/28公開
ご意見・感想・誤字情報などは kawai@mtf.biglobe.ne.jp まで。

後書き

・・・・・何でしょうね・・・・・これは。
ただ気の向くままに書いている内に、妙な話になってしまいました。
書き終わってから気が付きましたが、そもそもエヴァ小説でもありません。
まあ、本編の世界観を理解する一助にでもなればと考えております。
それでは。


 河井さんの『warlock』、公開です。
 

 ウォーロックの凄さの一端・・
 

 シンジって凄いんですね(^^;
 今更ながらにびっくり・・
 

 アスカは何級なんでしょう
 ミサトは?
 リツコは?

 レイは特級だな・・。
 

 特級と言えば、マオ?
  彼は「調理師」でした(^^;
 

 

 エヴァ小説ではないですが、
 連載の補助的な物と捉えて・・・(^^;
 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
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