第三東京市第壱中学2−A在籍相田ケンスケの日記より抜粋
6月30日(月)
碇が珍しく欠席した。
風邪か?
一人暮らしなのに平気かな。
7月1日(火)
転校生が来た。
アイドル並のルックス・・・。
いい商売が出来そうだ。
7月2日(水)
碇と転校生、どうも怪しい。
長いつきあいの俺たちにさえ、心を開こうとしない碇が。
なにかあるな、これは。
7月3日(木)
親父が死んだ。
死因は溺死。
泥酔して、湖に転落しただって、あの親父が・・・。
そんなことは絶対にない。
7月4日(金)
葬式。
悲しいはずなのに、不思議と涙が出ない。
7月5日(土)
親父の書斎で、書類箱を見つけた。
書類の内容は・・・。
俺は許さない、親父を殺したヤツらを。
7月6日(日)
俺は、力が欲しい・・・。
力が・・・。
あいつ・・・。
碇なら・・・。
もしかしたら・・・。
ケンスケが主役の無謀な短編
昼でさえ、滅多に人が近づかない”魔の森”に一人の少年が入っていき
ます。眼鏡をかけ、迷彩服に身を包んだその少年の名は、相田ケンスケ。彼が、
なぜこのような無謀なことをしているのかというと・・・
「碇の家って、たしか魔物が棲むとか噂されているあの森の中だよな。でも、碇
以外に俺の悩み解決できる人間はいないし・・・。うーん、どうしよう」
などと、森の入り口で迷うこと4時間。ようやく森に入ることを決めたときに
は、日が落ちて辺りは暗くなっていました。それでも、彼は行かなければなりま
せん。
なんだか得体の知れない生物の叫び声が森の中にこだましています。サバイバ
ルゲームで鍛えられているケンスケくんですが、さすがにこういうのは苦手のよ
うです。
ケンスケくんはそれから、1時間ほど森を彷徨い、ようやく小綺麗な洋館の前
に辿り着くことができました。彼は気付いていないようですが、うまく誘導され
てここに行き着いたと言う方が正しいでしょう。
「やっと着いた。おーい!碇、開けてくれー」
玄関の前で大声を張り上げるケンスケくん。しばらくして、中でパタパタとい
う足音が聞こえました。
「どなたですか?」
顔を出したのはシンジくんではありません。亜麻色の髪を肩まで垂らした鳶色
の目の少女。年は17,8歳くらいのようです。おまけにメイド服を着ています。
「あ、あれ?ここ碇さんのお宅では?」
「シンジ様にご用ですか?」
「(シンジ様?おいおい)お、俺はシンジくんの同級生で相田ケンスケです。彼
に折り入って相談したいことがありまして」
「まあ、そうですか。では、どうぞお入りになって。シンジ様のところまでご案
内いたしますわ」
メイドさん(?)に案内され、ちょっと浮かれ気味のケンスケくん。
いつもより、多く喋っています。
「あの失礼ですけど、あなたの名前はまだ」
「あら、私の名前ですか?私、エステルです」
「エステルさんですか。素敵なお名前ですね」
「まあ(=^^=)]
などというくだらない会話を続けているうちに、目的の場所に着いたようです。
「シンジ様はここにいらっしゃいます。それでは私はこれで」
優雅に去っていくメイドエステルさん。
ケンスケくんは食堂(らしい)だだっ広い部屋に入ります。
「シンジぃ、あ〜んしてっ♪」
「う、うん(^^;」
「お、お前ら、
そういう関係だったのか!?」
そこでは、アスカ様がシンジくんに夕食のビフテキを食べさせていたのです。
ケンスケくんでなくても、いや〜んな感じです。
「「へっ、ケンスケ?
違う(わ)よ、誤解しないで」」
シンジくんとアスカ様が、見事にユニゾンして答えます。
ケンスケくんが、この非常時に”トウジと委員長がいれば、「ゴカイもロッカ
イもないわ(で)」という突っ込みが聞けたのに残念”と思っていたとか、いな
かったとか。
「惣流がなんで碇の家にいるんだよ!碇、お前一人暮らしじゃなかったか?」
そのとき、知能指数400を誇るシンジくんの頭脳がフル稼働を開始。
ピッカリ!(思いついた音)
どうやらなにか思いついたようです。
「ケンスケ、ちょっと耳を貸してよ」
「な、なんだよ」
「実は、アスカは男なんだ」
「えっ、それ本当か?」
「あんながさつでずぼらで
おまけに凶暴、家事も出来ないのが
女であるわけないじゃないか」
「そう言われてみれば、そうだな。
あいつ、見た目はいいけど性格最悪だもんな」
「そ、そうだよ、だからこのことは内緒にしといてよ」
「あ、ああ。分かったよ(なんか、怪しいけどな)」
うまくいったと内心ホッとしていたシンジくん。
背後に般若のように恐ろしい顔をしたアスカ様がいることにまったく気
付いていません。
「あんたたち(#-"-)、
覚悟はできた?」
「「ギョエエェェ」」
「ケンスケ、なんのようなの?こんな時間にここに来るなんて.イテテ」
手形と大きなたんこぶが痛々しいシンジくん。
「そうだった。俺、用があるから来たんだよな。アタタ」
手形はありませんが、大きなたんこぶをこしらえたケンスケくん。
「バカなこと言ってんじゃないわよ!」
いくら嘘でもシンジくんに悪口を言われたのがショックなのか、アスカ様は不
機嫌。まだお怒りは解けていないようです。ケンスケくんを無視して痴話喧嘩を
始めました。
「アスカ、ケンスケが可哀想じゃないか」
「なによっ、バカシンジのくせに
あたしに意見する気ぃ?」
「そ、そういうわけじゃないよ」
「うるさい、
うるさい、
うるさ〜い」
「僕は知っているよ。アスカが本当は優しくて
素直なんだってことを。
でも、他の人は誤解するよ」
「うるさぁい!
誤解されたっていいわよっ。
シンジがあたしのことだけを
見ていてくれたら、
それでいいのよ!」
「でも、僕はいやだよ。
アスカが誤解されて悪く言われるなんて」
「シンジぃ、ありがと」
「アスカ・・・」
痴話喧嘩が終わったと思ったら、今度は潤んだ瞳で見つめあっています。
「(あうう、俺がいること忘れてんじゃないのか)2人ともやめてくれっ!今、
話すから」
「「あ、ケンスケいたんだ(のぉ)?」」
「(ううっ、俺っていったい)碇、俺の親父が死んだの知ってるよな」
「うん」
「親父殺されたんだよ・・・」
「殺されたって、どういうことよ?新聞には事故死って出てたじゃない」
「親父の秘密の書類を読んだんだ。なにかを追っていて、消されたんだ」
「「消された?」」
「碇の親父さんの会社、ネルフにだよ・・・」
つまり、ケンスケくんの話を総括するとこういうことです。
ケンスケくんのお父さん(ジャーナリスト)はある犯罪を追っていました。
ネルフの悪事を突き止めたのですが、公表目前に殺されてしまったのです。
「父さんが・・・。いつだってそうなんだ。自分さえよければいいんだ」
「シンジ・・・」
「碇・・・、俺はあいつらに復讐したい!でも、俺には力がない」
「それでシンジの力を借りようっていうの?」
「・・・・・」
「分かったよ、ケンスケ。命を失うことになるかもしれないけどいい?」
「もちろん」
3人は、シンジくんの研究室にいます。
薄暗い部屋の中には巨大なフラスコのようなものとコンピュータ、魔法陣。
かなり不気味でオカルトな部屋です。
「碇、これはなんだい?」
「アスカに手伝ってもらってようやく完成したんだ」
「だから、なんなんだって?」
「悪魔召喚装置と物質転送装置だよ」
「(頭痛くなってきた)・・・俺はなにすればいいんだ?」
「あのフラスコ見たいのに入って。アスカ、手伝ってよ」
「分かったわ」
ケンスケくんは覚悟を決めて、二つあるフラスコのひとつに入ります。
シンジくんはコンピュータを起動、アスカ様はその後ろにピッタリくっついています。
「剣魔シメイスこれでいいかな」
「あんたバカぁ?
こんな強いので大丈夫なの。
下手したら死ぬわよ」
「ケンスケなら大丈夫。そんなことじゃ、ポケモンマスターにはなれないよ」
「はぁ?」
パソコンの画面にいかにも弱そうな悪魔が現れました。
いわゆるへっぽこ悪魔です。
「アスカ」
「分かってるわよ。あたしが交渉すればいいんでしょ」
アスカ様と悪魔の交渉はすぐ終わりました。
アスカ様に逆らえるものなんて、そういません。
弱そうな悪魔が姿を消し、代わりに立派な黒馬に乗った騎士が現れました。
「ありがとう、アスカ。後は任せて」
空のフラスコに、悪魔が転送・物質化していきます。
二つのフラスコが強烈な光を発します。
「シンジぃ、
これいつまでかかんのよぉ?」
「朝まで・・かな」
「じゃあ、
もう寝ましょう(=^^=)」
「う、うん(=^^=)」
なぜか2人の顔は熟れたトマトのように真っ赤なのでした。
その空間に存在するものは少年と騎士だけ。
「我はシメイス。キンメリアの守り神にして、戦を司りし者。
少年よ、なにを望むのだ」
「力が欲しいんだ・・・」
「何故、力を欲する?」
「親父の仇を討ちたい」
「然り。父の仇は与に天を戴かず、という。我が力を貸そう!ただし・・・」
「ただし?」
「相田ケンスケという人間はこの世から消える。
我と同化し魔人と化すが、それでもよいか?」
「俺が消える!?」
「然り」
「分かったよ!俺の命くれてやる」
「その言やよし。我が力、今日からお前のものだ」
二つのフラスコの光が次第に弱くなっていきます。
フラスコの中にはなにもいません。
ケンスケくんはどうしたんでしょうか。
あ、いました。
魔法陣に白銀のブレスレットを握りしめたケンスケくんが佇んでいます。
外見に変化はありませんが、今までの彼とは違うようです。
「力が溢れてくる。これが俺なのか。アーハッハハ」
どうやら、少しきてしまっているようです。
こうして、悪魔の力を手に入れた魔人凶戦士ケンキーバ
が誕生しました。
後日談
数々のトラップを乗り越え、シンジくんの寝室にたどり着いたケンスケくん。
勢いよくドアを開けたケンスケくんは絶対零度で凍りつきました。
シンジくんとアスカ様が幸せそうに寝ていたのです。
しかもピッタリと寄り添って。
「むにゃむにゃ・・。
シンジ、大好きぃ。
むにゃ」
「くーくー。
アスカ、行っちゃダメだ。
くーくー」
続かないです
ご意見・ご感想、苦情はasuka@ikari.vip.co.jpまで!!
あとがき
ケンスケくんが主役といういささか無謀なSSです。
本編のシンジくんにつながるように作ったつもりですが、
アスカ様が素直すぎたかもしれません。
主役の影が薄すぎるので、反省しています。
ヘボいのに読んでくださって、ありがとうございます!
ご意見、ご感想なんでもいいから、一言でいいからメールください!
独り言
用語を簡単に解説致します。
・凶戦士ケンキーバ=しゃんらいずの異色作でこんなのがありました。しかも、
主人公の声を当てたのが、ケンスケくんと同じあの人だった
りして・・・。
・ポケモンマスター=ゲームボーイ専用ソフト「ポケットモンスター」を極めた
者。
・キンメリア=ギリシャの詩人ホメロスによると西の闇と霧の国に住む伝説上の
蛮族だそうです。実在したかどうか定かではありません。
・父の仇は与に天を戴かず=『礼記』に掲載されている有名な言葉です。父の仇
は必ず殺せという敵討ちの礼を表しているそうです。
藤太郎さんの短編『凶戦士ケンキーバ』、公開です。
巨大な力を手に入れる為、
悪魔に魂を売ったケンスケ・・・ですね(^^;
巨大な力・・・永遠の脇役ケンスケには過ぎたる物のようで、
結局シンジとアスカのラブラブの前に影が薄いままで終わってしまいましたね(笑)
冒頭はシリアスのりで持って行っていましたが、
アスカの可愛さの前ではケンスケでは不足でした(^^;
さあ、訪問者の皆さん。
可哀想なケンスケを救おうとした藤太郎さんに感想のメールを!