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翌日。
そこは何故か昨日と同じくアスカの家の応接間だった。

「平日も群れて勉強かい?!我が家で各自やったらええやんけ!」

「鈴原!何言ってんの、鈴原は一人でしっかり勉強できるの?」

「えらい言われようやな、そいで何でまた数学やねん!違うのやらせてくれ!」

「ダメよ!鈴原が完全に数学を理解するまでは!」

「なんでやねん〜」

「いい?テストまで毎日ここに集まってしっかり勉強するのよ!」

「そんなあほな〜」

期末テストまで後7日。
 


翌日。

「痛たたたた〜!!なにすんねん〜!」

ヒカリに片耳を引っ張られながらトウジが部屋に引きずり込まれる。
そのままトウジはじゅうたんの上にどすんと投げ捨てられた。
険しい表情で見下ろしながらヒカリが問いつめる。

「鈴原!どうして逃げようとしたの?!」

「もう勘弁してえな〜、わしこういうのんしんどいんや〜!」

「何言ってるの、苦しいのは当たり前よ!それを乗り越えてこそいい成績が取れるんじゃないの?!」

「乗り越えんでええわいな〜」

「くじけないで!苦難に立ち向かうのよ!」

「ねーアスカ」

「何よ」

「ここんとこ何だか鈴原君とヒカリを中心に事が動いているみたいな気が・・・」

「それは・・・それは言っっちゃだめ!」

「なんで?」

「アンタ今のヒカリに下手に触れない方がいいって解らないの?」

期末テストまで後6日。
 


翌日。

「だずげでぐで〜!両耳引っ張るてどういうのんや〜!!」

「早く入りなさい!!」

ぼてっ

「なんでこんな目に・・・・」

床に叩き付けられたトウジは文句を言おうとヒカリの姿を見上げた。

「ひっ」

トウジの体にブロードバンド並みの早さで戦慄が走る。
彼を見下ろすヒカリの全身から異様なオーラが立ち昇っていたからだ。

「さあ、始めましょうね〜・・・」

「ひええええ・・」

期末テストまで後5日。
 


翌日。

「おにいちゃ〜ん、洞木ゆう女の人から電話やで〜」

電話の子器を片手に赤いジャージ姿の少女が部屋に駆け込んで来た。
彼女を待ち構えていたのは両手でスケッチブックを突き出している兄だった。
白い画用紙に筆ペンで書かれた文字は、『たのむ!わしはおらんと言うてくれ!!』。
突っ込み所満載のその様子に何か言おうとした妹に対し、すかさずスケッチブックのページをめくるトウジ。

『みっくちゅじゅーちゅとバンホーテンココアをやる!』

言葉を飲み込み、考え込む表情を作って見せる妹に向けて更にページをめくる。

『尾崎小百合のぼよよ〜んフラワーもやる!!』

嘘をつく見返りに手に入る物は、まだ小4の少女にとって余りに魅惑的すぎた。
兄に向かい目で合図する妹。

(ホンマか?)

ページがめくれる。

『嘘言うてる場合か!』

うなずく妹。

「すんまへん、お兄ちゃんいてませんわ。はい、どこ行ったんか分かりません。はい、ほなさいなら・・・」

妹から小器をもぎ取り、電話が切れたのを確認するとトウジは大きく息を吐いた。

「ふ〜、助かった。すまんのう、ソノコ」

「お兄ちゃん、わかっとるな?みっくちゅとバンホーテンとぼよよ〜ん、やで?」

「おお、分かっとるがな」

「せやけどなんで居留守使わなあかんのんや?」

「お前は知らんのや、電話の向こう側がどれ程恐ろしいか!」

「なんやいなそれ?」

ピンポーン

会話に割って入るように呼び鈴が鳴った。

「なんやこんな時に・・」

言いながら廊下を歩き、途中で子器を電話器にがちゃんと置くとドアのノブに手を伸ばした。
ノブを回すとドアを勢い良く引いた。

がちゃっ
 

「うおっ!」
 

「す〜ず〜は〜ら〜、いるじゃないの〜!」
 

余りの驚きに後方に飛び退き尻餅をついてしまったトウジの眼前には、携帯電話片手に凄まじい形相で睨み付けるヒカリの姿があった。

「さあ〜、いきましょ〜う」

「おわわわ、お、お助け・・・うわっ!」

抵抗する暇もなくジャージの襟首をひっ掴まれると、トウジはずるずるとヒカリに引きずられていった。
その有り様をあっけにとられながら、ながめている赤ジャージの少女。
次第に小さくなっていく兄の姿を見送りつつ、妹はつぶやいた。

「・・・みっくちゅとバンホーテンとぼよよ〜ん貰えるんやろか・・・・・・」

期末テストまで後4日。
 


翌日。

「た、たのむ、ケンスケ、助けてくれ」

憔悴しきった表情でトウジはケンスケを拝み倒していた。
その切羽詰まった様子に当惑するケンスケ。
ここは学校の男子便所の中だった。
6時間目が終わるやいなやトウジはケンスケをここまで引っぱり込んだのだ。

「わしはもうこれ以上たえられん!イインチョ無茶苦茶やがな」

悲痛な言葉にケンスケもついうなずいていた。
勉強会におけるヒカリの様子が日を追う事に過激になっているのは周知の事実だ。
その最大のターゲットは間違い無くトウジだった。
最も学力が低いのが理由だが、レイのようにそんな状況さえも楽しめる根性もないトウジは心身共に追いつめられていたのだ。
昨日は特に酷かった。
ヒカリの放つプレッシャーが物凄く、トウジは何度も押しつぶされてしまいながらも、尚も勉学に勤しまれなければならなかったのだ。
そして今日は金曜日、今日からテスト当日の月曜の朝まで泊まり込みで勉強する事になっている。
まさに恐怖のウイークエンドである。

「今晩あそこに連れて行かれたらわしの命はもうもたん!そやからなんとかしてくれ」

涙声で懇願するトウジにケンスケは複雑な顔を作る。

「なんとかするって俺に何ができるっていうんだ?正直言って俺には勉強会止めさせる力はないぞ。他に頼んだらどうだ?」

「他て誰や?惣流はイインチョの側やし綾波は訳分からんし・・」

「シンジは?」

「あんなん女房の座布団やないけ!山の神に睨まれたらすくみ上がって言いなりやがな!」

「・・・・俺は勉強会に行くぞ。我が身が可愛いからな」

「ほなわしはどうしたらええねん!!友達やろ!助けてくれ!」

「だったらどこかに逃げるか?」

「逃げるてどこへや?」

「どこでもいいだろう、洞木の手の届かないくらいずっと遠くなら。俺は別に止めないぞ」

「そ、そうか・・・ほな、わしが逃げる間うまい事ごまかしといてくれるか?」

「それくらいならいいぞ」

「よっしゃ、わし早速旅支度するわ!後は頼むでえ!」

トウジは身をひるがえすと便所を駈け出ていった。
残されたケンスケはトウジの姿を見送りながらため息をつく。

「はあ・・・どうなるやら」
 
 



 

タンスの引き出しの所々から黒いジャージがはみ出している。
たたんだ布団の上にたたんだ黒いジャージが乗っている。
椅子にも黒ジャージがかかっていた。
ジャージが目に付かない場所はない自分の部屋で、黒いリュックサックにばななじゅーちゅに満月ポンといった食料と替えのジャージを詰め込み旅支度をせっせと整えるトウジ。
脇でその様子を不思議そうに覗き見る赤ジャージの妹。

「お兄ちゃん何しとんの?」

「わしはしばらく家を空ける」

「なんや?夜逃げかいな?」

「ちゃう、とは言い切れんな・・・」

「なんやのん、それ」

「ともかくわしはしばらく岸和田のお爺ちゃんとこに身を寄せる。誰にも言うたらあかんで。お父んにもお母んにも黙っとけや。土産にぼよよ〜ん買うて来たるからな」

「ほんまか?それやったらパルナスピロシキも買うてきて」

「わかった!パルピロやな」

「約束やでぇ!昨日わやになってもたからな」

「わかっとるがな!ほな行くわ」

立ち上がると部屋を出て廊下を忍び足で歩くトウジ。
その後ろを妹がとてとてと続く。
ドアに手をかけると息を整えそ〜っと開き、慎重に外の様子を見回す。

「よっしゃ、誰もおらん」

「ほんまに夜逃げやがな」

「そしたらしばらくの別れや。月曜には帰ってくるからな」

「早っ」

「ほなな」

夕闇の中、走り去ってゆくトウジの背を見送る小さな赤いジャージ。
なんとなく拍子の抜けた表情で少女は呟いた。

「昨ん日の恐いお姉ちゃんは出番まだかいな」
 



 

週末の夜人通りの多い歓楽街を、すれ違う者を縫う様にして黒ジャージが走る。
息を切らしながら何かに急き立てられるように。
走り続ける彼の視界にやがて目的の場所が見えてきた。

「え、駅や!」

当たり前の事に歓喜の声をあげるトウジ。
速度を上げて駅まで一気に駆け込むと、切符売り場の自動販売機に向かう。
一瞬で一番並んでる人が少ない列を見定めささっと後ろについた。

(ああ・・・早うしてくれ)

前で切符を買う人の動きが異常にのろく感じられる。
トウジにとって長くやるせない時が流れていった。
やがて最後の一人が切符を買い終え、列を離れた瞬間、トウジは既に財布から取り出した紙幣を自販機に突っ込みボタンを押した。
切符と釣り銭が同時に出ると切符だけ掴み取った。

「よっしゃ!」

トウジはかけ声と共に自販機にくるっと背を向けた。
これでやっと勉強会という名の苦悶と恐怖に満ちた閉鎖空間から決別できるのだ。
喜び勇んでいざ改札口へ駆け出そうとした時、

「おあっ!?」

トウジは目に見えない力に押し戻されてしまった。

「なんや?」

後ずさりし、うろたえるトウジの前に人影がずしりとせまる。
 

「す〜ず〜は〜ら〜、み〜つ〜け〜た〜わ〜よ〜〜」
 

「うおあわあああ!!」
 

悲鳴が構内に轟き渡った。
駅中にいる殆どの者が声のする方に振り向いた。
逃げ出そうとするトウジの首に腕がからみつく。
背後から抱きつく形になったヒカリはトウジの耳元に低く唸った。

「ど〜うして逃げよ〜としたの〜?」

「ひいいい〜、いやや〜!!」

恥も外聞もなくもがきまくるトウジをヒカリは片腕だけでしっかりと抱き締め、更に残った手で耳を引っ張り無理矢理自分の方に振り向かせる。
恐怖にゆがむトウジの顔を目と鼻の先でじっくりと睨みつつ、ヒカリは凄みのある笑みを浮かべた。

「さあ〜、いきましょうねえ〜」

「ひっひひひ・・・ひっはっふ・・・・!!」

もはやまともに言葉も出せず、体を痙攣させているトウジをヒカリは悠然と引きずり始めた。
駅にいる人々全ての注目を浴びながら。
余りに異様なその光景に彼等はじっとお下げの少女と黒ジャージを観察しているが、お下げ少女から発する鈍いオーラがそれ以上の干渉を許さない。
ヒカリの歩く方向にいた人達が慌てて2、3m後ずさり、道をあけていく。

(ヒカリ・・・・凄すぎるわ)

ヒカリから少し距離をおいてアスカは親友の姿を見つめていた。
もともとトウジが現れないと見るとすかさずケンスケを問いつめ、吐かせたのはアスカだった。
手の届かないくらいずっと遠くと聞き、なら中学生の使える交通手段は電車しかないと結論付け駅に向かったのだ。
予想通りだったとはいえ、今のヒカリを見ているとこれで本当に良かったのかと疑問が膨らむ。
といっても今のヒカリは自分にも止められないだろう。

(今アタシにできる事といったら・・・)

アスカは回りの人間にジャージを引きずるお下げの少女の仲間と気付かれないように距離を取りながら、さりげなく二人について行くのだった。
 
 
 
 
 

大ぼけエヴァ 
 

第拾壱話 切実、悩みの中で
 
 
 
 
 

惨劇編
 
 
 
 
 
 
 
 

何故ここにいるのだろう。
ここで何をしているのだろう。
そもそも何が元でこのような事が始まったのだろう。
はたしてここにいる者がそれをどれだけ憶えているのだろう。
昨日と、その前の日と、そのまた前の日と、そのまたまた(以下略)と同じ部屋、同じ机、同じ顔ぶれ、そして同じ教科書・・・・・
いったいいつまでこの状態が続いてゆくのだろう。
異常なまでに重苦しい空気が部屋に充満する中、勉強は黙々と進められていく。

「鈴原〜」

ぎくっ

「は、はい!」

「ここは45度でしょ〜?どうしてこんなのわからないの〜?」

ぞぞぞぞぞ・・・・

「す、すんまへん・・・」

「謝らなくていいから、しっかりやりなさい〜」

言葉とともに岩山のごとき圧力がトウジの消耗しきった心にのしかかる。
はっきり言ってこの部屋を支配する重苦しい空気はヒカリ一人が発生源だった。
そしてそんなヒカリをどうにか出来る人間はここにいる者の中にはいない、というかここでなくてもいないだろう。

「うう・・・」

呻くトウジの身体がごそごそと小刻みに動いた。
ぴくりとヒカリが反応する。

ぐいっ

ヒカリの左手が向かい合っているトウジの左手を握りしめた。

「あ痛たたたた・・・ちょっと足組み替えただけや!イインチョやめてくで〜!」

ヒカリはトウジの左手を常に握って勉強していたのだ。
トウジを金輪際逃がさないように、少しでもおかしい動きを見せたらぐいっと握りしめる事にしている。
普段のヒカリなら自らトウジの手を握って離さないなどという大胆な事は到底できる筈がない。
だが今のヒカリは普段のヒカリとは違っている。
自分が今やっている事がどういう意味を持つのかさえ冷静に判断できていないのだ。
アスカや他の者もその事になにも言おうとはしなかった。
閉ざされた室内でヒカリはもちろんの事、他の者達も次第に正常な神経を失いつつあった。

「ねー、アスカ。今何時?」

「聞いてどうすんのよ?」

「お腹すかない?」

「さっき食べたでしょ!」

「さっきっていつ?」

「さっきはさっきよ!」

「そう・・・なんだか時間の感覚がわからなくてねー」

「いいから勉強しなさい!」

シンジは虚ろな目でアスカとレイのやりとりをながめていた。
二人は気付いているだろうか?
同じ会話を約10分ごとに繰り返しているのを。
いや、シンジ自身の時間感覚も怪しくなっているので本当に10分ごとなのか分からない。
なんだか時の流れがねばついて物凄くのろくなっている様な気がする。
この状態がいつまで続くのだろうか。
先はあまりにも長い・・・・・
 

「そうよ、それが正解。そうよね、アスカ?」

突然ヒカリに聞かれ、どきりとするアスカ。
親友でも今のヒカリの目つきは恐い。

「えっ?ええ・・・そ、そうね正解よ」

「鈴原〜、やればできるじゃないの〜」

ぎゅっ

「痛っ痛いがな」

正解しても握るんか〜い!と突っ込みたいがとても言えない。

(もうあかん!このまんまでは死んでまう!なんとかせんと・・・)

「それじゃあ次の問題・・・」

「そ、そのまえに便所に行かせてくれんか?たのむ、もれそうや〜」

右手だけで拝む仕草をするトウジを濁った瞳でじ〜っと見下ろしているヒカリ。

「・・・・・・・・別に漏らしてもいいけど」

「うえっ?」

悠然と答えるヒカリの言葉にトウジの口が大きく開いたままひくついてしまった。
他の者も表情を凍らせてしまう。

「・・・・・・・・・・」

しばらく全員無言・・・・・

やがてアスカがぎこちなく手を伸ばし、レイのほっぺをねじった。

「うにょっ」

「(はあ〜、やっとこっちの世界に戻れた!)あ、あのヒカリ・・・」

「なあに?」

「あっあのね、漏らしちゃまずいんじゃ・・」

「そう?」

「(ヒカリ〜、アンタもこっちに戻ってよ〜)そ、そうよ。トイレくらい行かせてあげたら・・・いいんじゃないかな〜って」

「そう・・・そうね、分かったわ。鈴原、行ってもいいわよ」

許しの言葉にトウジの開いた口がやっと閉じた。

「す、すまん、おおきに!それじゃ行かせてもらうわ」

トウジは立ち上がった。
ヒカリも立ち上がった。

「・・・・・!」

手がつながったまんま。

(な、なんでやねん!!)

「さあ、行きましょ〜」

「ちょっちょっちょっと待ってくれ、つながったまんま用をたすのんかいな」

「離したら・・・逃げるんじゃない?」

ぎくっ

「い、いやそんな事は・・・・・あ、あんなあイインチョ・・・・わしがババ、やない糞しとるとこ見張るつもりか?」

「・・・・」

「そんなん不潔やろ?」

ぴくっ

不潔という単語にヒカリの目が微妙に反応した。
握られた手を睨みつつ考えこむ表情を作る。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・分かったわ」

「(長っ!)そ、そうかそんなら手え離してえな」

にぎっ

「!?・・・・・離してえや」

「トイレに入るまで離せないわ〜」

「そ・・そんなアホな・・」

ぐいっ

「行きましょ〜」

ヒカリはまるで巨大怪獣のように重量感ある動きでゆっくりと歩き出した。
その迫力に押し出される形で歩かされるトウジ。
そして彼等の一挙手一投足を息を呑んで見送っているシンジ、アスカ、ケンスケ、レイ。
二人の姿がドアの向こうに消えた後、シンジが今だドアを見つめて立ち尽くすアスカの背に声を絞り出した。

「やっぱり・・・おかしいよ!どうにかならないの?」

振り向きもせずアスカは漫然と答える。

「どうにかって・・・・・どうにもならないからおかしいのよ・・・・・」

どれだけおかしいと思っていても、どうにもならないまま彼等の長い夜は深けてゆくのだった。
 



 
 
 

桃色のドット模様のタオルケットにくるまって、身を縮こまらせ横たわる姿は何かに怯えているように見える。
タオルケットの中はヒカリの家で寝る時と同じピンクのパジャマ姿。
明かりはつけっぱなし。
早くに床についたのに中々寝付く事ができず、すでに日をまたごうとしていた。

「夜が・・・こんなに寂しいなんて・・・・」

マヤは切な気に声を漏らす。
先週から我が家に帰り、一人暮らしに戻ってから何度もくり返した言葉を今夜も呟く事になった。
ヒカリの家にお世話になっていた時、マヤは何年かぶりに家族の温もりを感じつつ眠りにつく生活を味わったのだ。
精神的にどん底にまで落ち込んでいたマヤにとってそれはまさに救いの手であった。
家族の優しさに包まれる事の余りの心地よさに、そこから抜け出せなくなっていたのだ。
そして意を決してやっと独りの生活に戻った途端、言い知れぬ孤独が我が身を脅かす結果になってしまった。
今では明かりを消して暗闇に身をゆだねる事すら恐い。

「こんな事じゃいけないのに・・・」

不安に満ちた表情は寝床につく前からのものだ。
恐らく眠りについてからもそれは変わりないだろう。
それでもなんとか寂しさを紛らわそうとマヤは楽しい事を考えようと試みる。

(センパイ・・・・・だめ!センパイの事考えると、蛾まで出てきそうだわ〜・・)

結局脳裏に浮かぶのはヒカリの家での家族団らんの時の事ばかりだった。

(ああ・・・・ヒカリのお家に・・・・帰りたい・・・)

ここが自分の家だというのにマヤはほとんどホームシック状態に陥っていた。
どうしようもない寂しさに堪え着れずマヤの目から涙がはらりとこぼれ落ちていく。

「今頃・・・ヒカリはどうしているのかしら・・・・」
 
 



 

ごごごごごごご・・・・・
 

大魔神のごとき憤怒の表情でヒカリはごう然と立ち尽くしていた。
開け放ったトイレを食い入るように睨みながら。
トイレには外へとつながる小窓ががあり、その小窓は目一杯開かれている。
一見このような小さな窓から人が通り抜ける事は不可能だと思われる。
だがここにトウジがいないという事実がそれが無理矢理実行された事を物語っていた。
ほんの数秒前、彼女の耳にどてっという音が入ったのはトウジがそこから脱出した時のものだったのだ。

「逃げたわねぇ〜、性懲りもなく〜!!」

トイレの窓の外はマンションの通路になっていた。

「逃がすもんですか〜!!」

ヒカリはそれまで身にまとっていた重苦しさをかなぐり捨て、疾風のごとき早さで廊下を駆け抜けていった。
騒ぎを聞き付けやってきたシンジ達はその姿を唖然としながら見送る。

「ア、アスカ、どうしよう?」

「とにかく追っかけましょう!」

「あ、私追っかけるの得意だよー」

「自慢してる場合か〜!」

こうしてシンジ達は慌ただしくヒカリの後を追い掛け出すのだった。
 



 
 

「はあっはあっはあっはあ」

夜の静寂の中を荒い息を響かせ、闇にまぎれるように黒いジャージが疾走する。
マンションの階段を6階から1階まで転げ落ちるように駈け下りて外へ出たトウジは、何処へ行くかも考えぬままひたすら走り続けていた。
彼をここまで追い立てているのは背後に感じる異常なまでの恐怖感だった。
実際に後ろからトウジを追いかけてる者がいるのかどうかは分からない。
それを確かめるために後ろを振り返る事は今のトウジには恐ろしくてとても出来なかった。
自らの心の中で恐怖感が膨らむだけ膨らみ、それがトウジの背にプレッシャーとなって追い立てていたのだ。

「はあっはあっ・・・!?」

ふとトウジは自分の足裏に鈍い痛みを感じた。
痛みだけでなく足裏全体の感触がざらついたものに変っている。
走りながらそれまで気にもとめていなかった回りの景色を見回す。
街灯。
そしてその光にさらされた木々の群れが緩やかな風にそよそよと枝葉をゆらしている。
その中で一際太い幹をたたえたイチョウの木がトウジの真正面にそそり立っていた。
ここは公園だったのだ。
足下を見下ろす。
このときトウジは初めて自分が裸足である事に気付いた。
ざらついた感触は乾いた土を踏んでいたからだった。
速度を落としイチョウの幹に手をつくと、ぐったりともたれかかった。
息を整えながら足裏にこびりついた砂を払い落とす。

「久々やな、ここに来るのは・・・」

小5の時第三新東京市に越して来て以来、トウジはよくこの公園で遊んでいた。
小規模ながら森と呼んで良い位に木々が多く立ち並ぶこの場所は、トウジのお気に入りだったのだ。
それまでの恐怖も忘れ、感慨深気にイチョウの木を見上げるトウジ。

「ようここで『ぼんさんが屁をこいだ』をやったなあ・・・」

だるまさんがころんだを関西ではそう呼ぶ。

「だるまさんとぼんさんとどっちにするかでよう喧嘩になったなあ・・・」

しばらくの間イチョウを見つめていると、おもむろにトウジは幹に顔をくっつけた。

「・・ぼんさんが屁をこいだ」

昔に帰ってぼんさんが屁をこいだのオニをやってみるトウジ。
セリフを言った後ちらりと振り向く。
しかしそこには人の姿はない。
トウジはもう一度幹に顔をつけ、声をあげる。

「においだらくさかった!」

言い終わった後ゆっくりと後ろに首をひねるトウジ。
当然そこには人の姿はない・・・・はずだった。

「?!」

トウジは誰もいないはずのこの場所に何故か気配を感じた。
後ろを見ても人の姿は見えないのに。

「なんでや?」

忘れていた不安が再び頭をもたげる。
浮き足立つトウジの耳に音が聞こえた。

がさっ

「わっ」

思わず幹から飛び退くトウジ。
音は幹の裏側から伝わってきたのだ。
身を強張らすトウジの目に太い幹の裏側から影がゆっくりとせり出してくるが見えた。

「おおおお・・・・」

もはや金縛り状態になったトウジの目は否応無しに影に釘付けになる。
ちょうどその時夜空に浮かぶ満月が雲の切れ目から姿を見せ、鈍い光を影に照らしたのだった。
影が人の形となり、次いでその鬼神のごとき形相を映し出した。
 

「うっふっふっふ・・・・見ぃつけた〜」
 

「うぎゃおおおおお〜〜!!」
 

その時トウジはオニが自分ではないと知った。
公園中に届きそうな凄惨な悲鳴を轟かすと、金縛りになっていた筈の体をバネの様にはじけさせ、オニから逃げ出そうとした。

「逃がさないわああああ〜」

叫びとともにヒカリの体が宙を飛んだ。
走り去ろうとするトウジの背中との距離が一気に縮まっていく。
背中から腰・・・足・・・・放物線を描きながら次第に落下していくヒカリの視界が下へ下へと移動してゆく。
トウジとの距離あと1mの所でヒカリの体が地面スレスレにまで迫った。

「ふんっ!」

体が地面に接触する瞬間、ヒカリは片手をぐいっと伸ばした。
ヒカリの手がトウジの右足首アキレス腱を掴んだ!

「うわっ!」

ずるずるずるっ・・・・

「離〜さないわよ〜!」

走るトウジに地面を引きずられながらもヒカリは掴んだ手を決して離さない。
地面とヒカリの体が擦れ合い土煙が立ち昇る。
数m走った所で遂にトウジの体が停止し、つんのめる様にして前にぶったおれた。
地面に突っ伏しながらトウジがチラリと後ろを覗くと、猛然とお下げを髪を振り乱して体に付いた土ぼこりをなぎ払うヒカリの姿が見えた。

「うおああああ・・・」

恐怖にかられながらも起き上がろうとするトウジだが、アキレス腱だけ掴まれた右足首は地面に押し付けられ動かせない。
四つんばいになった状態でもがき這いずろうとする。
その間もヒカリの残った手がトウジの足をつたい進み、太股まで這い上がってきた。
唸るようなヒカリの声がトウジのすぐ後ろで響く。

「大〜人しくしなさ〜い・・・」

「うぎぇ〜〜!!」

恐怖で心臓が破裂しそうになった。
両手の爪を立て、土を引っかき必死に逃れようとするトウジ。
僅かづつ体が前に移動するが、すでにヒカリの手はスウェットの腰の部分に手が届いていた。
それでもトウジは前に逃げようとする。
地面につき立てた十本の指のうち二、三本の爪がめりめりと剥がれ始める。
ヒカリがスウェットを掴み引っ張った。
黒いスウェットが膝までずり下がり、虎縞のトランクスが丸見えになった。

「ひええええ〜!やめてくで〜!!」

悲痛な叫びもまるで意に返さず、ヒカリはトウジの足から膝、太股、そしてトランクスをはいた尻まで這い進んでいく。
パンツ丸出しになり、なりふり構わずのたうち回るトウジの尻がヒカリの顔に直撃した。

「ふがっ」

お尻に顔をうずめながらもヒカリは腕を伸ばしジャージの背を掴んだ。
ヒカリが掴んだ手とぐいっとたぐり寄せるとトウジの体は両膝を立てて引き起こされる形となった。
お尻に埋まっていたヒカリの顔がトウジの背をつたい、首筋まで移動する。
恥も外聞もなく両手で空を掴みながら膝で歩いて逃げようと試みるトウジの耳元に、異様に優しい、艶の有る声が囁かれた。
 

「すずはら〜、つ・か・ま・え・た」
 

意に反してトウジの視線がぎこちなく背後に引き付けられる。
獲物を狙う獣のように目をぎらつかせ、婉然と笑うお下げの少女の顔があった。
 

「・・・・・うわわわわわわ〜〜!!」
 

生まれて初めて味わう未曾有の恐怖にトウジの理性が完全にはじけ飛んだ。
身体中の血液が逆流し、本能はただひたすらこの場から逃げ出す事のみを命令する。

「うわっぐわっわわっおわわっひぎえ〜〜!!」

意味不明の叫びが月夜をつんざく。
別人のようなパワーで脱出しようとするトウジに揺さぶられるヒカリだが、その目のぎらつきはいささかも衰えない。
振り落とそうと暴れるトウジのジャージの背をしっかり掴み、更に残る手でトランクスのゴムの部分を引き付けた。

「うふふふ・・・・あきらめなさ〜い」

言いながらヒカリはジャージの襟にがぶりとかみついた。

「ふうっふうっふう・・・・」

ヒカリの生暖かい鼻息がトウジの首筋をくすぐる。

「いいいいいっひええええ〜!」

それでも立ち上がろうとするトウジの足にヒカリの両足がからみついた。
ヒカリを亀の甲羅のようにに張り付けたままトウジは渾身の力を込め、遂に立ち上がる事に成功した。

「ぎょえ〜〜〜〜」

だだだだだだだっ

叫びながら森の中を全力疾走するトウジ。
スウェットが足下までずり落ち、まるでペンギンのような走り方になっているというのにその速度は異常に早い。
その走り方ゆえに尋常でない揺さぶりを受けるヒカリ。
しかしヒカリは少しも慌てず、トランクスを掴んでいた手を離した。
トウジの走る振動でトランクスがずり落ち、半ケツ状態になった。
ヒカリは離した手をトウジの耳に伸ばした。

「う〜う〜あ〜ら〜」

ジャージの襟に噛み付いたままいつものセリフを言うと、慣れた手付きで耳を掴んでヒカリは思いきり引っ張った。

ぐきっ

トウジの首が強引かつ不自然にひねられた。

「げっ・・・・」

短く唸ると首をひねったままトウジは前方にぶっ倒れていった。
ヒカリを張り付けたまま。

どしゃあああっ

地面に激突し、土煙を上げながら2、3mすべった後トウジの体は停止した。
動かなくなったトウジの背にしばらく張り付いていたヒカリは、やがてからめていた手足をゆっくりと解いた。
食わえていたジャージの襟をぐいっと引っ張り、トウジの体を表返した。
泥だらけになったトウジの体を間近で舐めるように見つめるヒカリ。
90度ひねられたままの首・・・眼は半開きで白眼を剥いており、鼻先はこすれて赤く腫れ、口元は引きつったまま固定されている。
と、ヒカリはトウジの引きつった唇が僅かに震えるのに気付いた。
らんらんと目を光らせながらトウジの口元に耳を寄せる。

「・・・・・・・なんでやねん・・・」

うわ言のように呻くトウジの顔が苦痛にひん曲がった。

「なんで・・・・こんなことすんねん・・・なんのために・・・ここまでせなあかんねん!!」

散々恐ろしい目に会わされてきた者だけが絞り出せる魂の突っ込みだった。

「・・・・・・」

無言でトウジを凝視するヒカリ。
重苦しい時間が経過していく。
やがてヒカリはトウジの耳元で囁いた。

「そんなことはテストが終わってから考えなさい〜」

トウジの正論も今のヒカリの精神状態では効果は無かったのだった。
 

「そんなんいやや〜!!」
 
 



 
 

「こっちよ!」

アスカが叫び声のした方を指差し、走り出した。
シンジ達もそれに追従する。
はっきり言ってさっきの声は余りに強烈だった。
いったい何が起きているのか・・・
不安に心を揺さぶられつつ、アスカは森の中を駆け抜ける。
その後ろを走るシンジの顔色はアスカ以上に不安げだ。
主にヒカリを心配しているアスカと違い、シンジはトウジの方を心配しているからかもしれない。
シンジと並走しているレイは不安というより、むしろわくわくしているみたいに見える。
彼女ならではの無節操さだろう。
そして最後尾を走るケンスケの手には手の平サイズのビデオカメラが握られていた。
もちろん暗視機能を備えた最新型である。
ここまで付き合ってきたからには元を取らないと、というのがケンスケの本音だった。
それぞれの思惑を抱き、彼らは二人の姿を求めて走る。

「おおおおあああおあおあ〜!」

再びトウジの非想な叫びが聞こえた。

「近い!」

アスカの行く手にこの公園最大の太さを誇るイチョウの木がそそり立っていた。
ここは小学校時代のアスカやシンジはもちろん、この辺の子供達の遊び場の定番だった。

「ここか!」

全速力でイチョウの木までたどり着くとアスカは辺りを見回した。
残る三人もアスカに追い付いた。
シンジがアスカに声をかける。

「ねえアスカ・・・」

「いるわ!この辺りに・・・」

真剣な口調にシンジ達もアスカに倣ってきょろきょろ見回す。

「おーい、やっほー、鈴原くーん、ヒカリー、返事してー」

レイのにぎやかな声が夜の森に響き渡った。
しかしレイが期待する返事はかえってこない。
レイはもう一度呼び掛けた。

「なんなら悲鳴でもいいよー」

「うぎゃおおおおお〜〜!」

皆は悲鳴のする方に一斉に振り返った。
木々の合間にぽつんと立った街灯。
その白色光の冷たい光の中、襲う影と襲われる影がシルエットとなって浮かび上がっていた。
慌てて二つの影に走り寄るアスカ達。

「ヒカリ!」

数mまで近付いた時、突如彼らの足が大地に根が生えたごとく動かなくなってしまった。
彼らの眼前で信じられない光景が繰り広げられていたのだ・・・・・

尻餅をついた状態で震えているトウジ。
黒のスウェットの片足が脱げてしまい、毛深い脚がむき出しになっている。
パンツは半分尻が出るまでずり落ちていた。
泥にまみれたジャージはチャックが一番下まで下がっており、胸がはだけている。
恐怖に怯えるその顔からはおびただしいまでの汗が流れ落ちていた。
トウジの視線は彼をここまでにしてしまった者に釘付けになっていた。
その身を地に伏せ、獲物を狙う野獣のような姿勢を取り、トウジを威圧しているお下げ髪の少女。
彼女もまた泥まみれだった。
今にも襲い掛かりそうな鋭い目つきで睨み付ける彼女からは異様なオーラが発散されている。
たとえ親友のアスカでさえ寄せつけない程強烈なオーラが。

「鈴原ぁ〜、さあ、おいでなさ〜い」

ヒカリの手がじりじりと地を這いながら接近する。。
トウジの体が反発する磁石のように後ずさっていく。

「かかか、堪忍してくで〜〜!!

ヒカリに背を向けるとトウジは四つん這いで逃げ出そうとした。
瞬間、ヒカリの身体が宙を跳んだ。
這い逃げるトウジに猫科の猛獣のように飛びつくと襟首を掴む。
引っ張られたジャージが脱げ、トウジの上半身がむき出しになった。
さらにヒカリはトウジの胴に組み付き地面に倒れ込んだ。
トウジは背中から地面に叩き付けられる。
もはや身に付けているのは半分ずれたパンツだけになってしまったトウジを、両膝で立ったヒカリが目を輝かせながら見下ろす。
夜空に漫然と浮かぶ満月の光がお下げ髪越しに射し込んだ瞬間、ヒカリの体がトウジにのしかかった。
 

「すずはらあああああ」
 

「おわあああああ!!」
 

パンツいっちょのトウジの体にまたがるヒカリ。
いわゆる馬乗り、マウントポジションだ。
腰を左右に揺り動かし振り飛ばそうとするトウジだが、揺らされながらもヒカリはトウジの両肩をがっちり捕まえ離さなかった。
逃げる事も適わず完全に恐慌状態に陥ったトウジの眼前に、鬼神となったヒカリの顔面がずずいと迫る。
 

「無〜駄な抵抗はやめなさ〜い」

「いやや、いやや、いやいやいや〜!!」
 

今まさに我が身を征服せんとするヒカリに対し、必死にいやいやするトウジの両眼から悲痛な涙が飛び散った。
今度は腰を縦に動かして跳ねのけようとするが、ヒカリの腰がトウジの動きに合わせて前後にカクカク振れるだけで全く効果がない。
それでも取り付かれた様に腰を動かし続けるトウジに、ヒカリは絶頂の声をぶっ放した。
 

「これでフィニッシュよお〜〜!!」
 

「あああああ〜〜!!」
 
 
 
 

どぴゅっ・・・・
 
 
 
 
 

トウジの鼻からふた筋の赤い液体が発射された・・・・・・・・
 
 
 
 
 

目の前で引き起こされた惨劇をシンジ達はどうする事もできず、ただただ傍観し続けるだけであった。
あまりに壮絶な光景。
シンジ達の認識では、逃げたトウジを追いかけ捕まえる事がヒカリの目的だったはずだ。
しかし実際彼らが見たものは、森の中でヒカリがトウジに襲いかかり、泥まみれになりながらトウジのジャージをはぎ取り、裸にしてトウジにのしかかり、馬乗りになって・・・・
これではまるで強○シーンだ。
しかも今、この時も二人はマウントポジションのまま腰を前後にカクカク動かしていた。
街灯と月明かりに照らされた二人のシルエットは少年少女の目には余りにもえげつない。
近付く事も声をかける事も適わず立ち尽くすアスカは、変貌した親友の名前を呻くのだった。

「ヒカリ・・・・・こんな形で・・・」

「ねーアスカ」

レイが小声で尋ねる。
さすがに現状ではにぎやかには喋れない。

「ヒカリはどーしてあんな事するの?」

ヒカリから視線をそらすようにしてアスカはレイに振り向く。

「レイ?」

「うん?」

「あれはね、本人も自分のやってる事が分かってないの。だからこの事は誰にも・・・・ヒカリ本人にも言っちゃだめよ・・・わかったわね?

ぎろりとレイを睨み付ける。

「えっ?どーしてむぎゅっ」

レイの喉にギロチンチョークスリーパーを食い込ませるアスカ。

「ぐぎゅるるる・・・うん、分がっだぎょ〜ん!」

もしヒカリが自分のしでかした事の意味を自覚してしまったら、いったい彼女はどうなってしまうか・・・想像するだに恐ろしい。
親友としてそれだけは絶対避けねばならなかった。
アスカは睨む相手をシンジに移行させた。

(分かってるわね?)

小さくうなずくシンジ。
シンジ、アスカ、レイの三人から少し後方に距離を取り、ケンスケは目立たぬようにカメラをヒカリとトウジに向けていた。
まだ誰にも気付かれていないようだ。

(とてつも無いもの撮ってるよ、俺・・・まさかこんなもの写せるなんて・・・・しかし、これ・・・・・・絶対売る事できないな)

突如、夜の闇を切り裂くように一陣の風が吹き抜けた。
満月を背景に腰を振りながら身を反らせたヒカリのお下げ髪が、まるで獅子のたてがみの様に荒々しくたなびく。
 

「さあ、お勉強よおぉぉぉ〜〜う!!」
 

天を振り仰いで絶叫するヒカリの姿は、あたかも月に向かって遠吠えする野獣のようであった。
 
 
 
 



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 
 
 
 

(いったい何があったっていうの?)

ミサトは期末テストの初日から、クラスに起きている異常な状態に当惑を隠せなかった。
今教室ではテスト用紙が各生徒の机に裏返して置かれている。
チャイムが鳴ると同時にテスト用紙が表返され、1時間目の数学のテストが始まる事になる訳だ。
問題はテスト開始を待ち受けている生徒の内の数人の様子だ。
普段何かと行動を共にする事の多い彼らは、まるで死地に赴くかのように切羽詰まった表情で席につき、ひたすらテストの開始を待ち続けている。
彼らのかもし出す雰囲気が教室全体に重苦しい空気を与えているのは間違い無い。
中でも万年黒ジャージの生徒の様子は強烈だった。
短期間の間に随分やつれはて、憔悴しきったその姿は悲愴感に溢れまくっていた。
今にも机から崩れ落ちそうで、見ていてとても危なっかしい。
それでいて落ちくぼんだ目からは異様なまでに凄まじい光が放たれている。
ミサトはそれが追い込まれ、後がもうない者だけが発せられるパワーだという事を知らない。

(何をどうすりゃああなるっての?それと・・・・)

ちらっと目を移す。
このクラスのまとめ役、委員長の肩書きを持つ少女に。

(あれじゃクラス委員長じゃなくてクラスの大魔王じゃない・・・)

圧力を四方八方に発散してぎらつく眼。
びりびりと逆立たんばかりのお下げ髪。
体全体からは視認できそうな位強烈なオーラが沸き上がり、教室から溢れんばかりに充満していた。
他の数人と違って、追い込まれているというより追い込んでいる側の力場を形成しているようだ。
余りの圧迫感にミサトも息苦しくなってきた。

(ああ・・・早く始まらないかしら?)

そう思った時、タイミング良くチャイムが鳴り響いた。

ピ〜ンポ〜ンパ〜ンポ〜ン・・・

「そ、それではプリントを表返して・・テスト開始!」

ミサトの声にマッハの早さでトウジが反応した。
一瞬で用紙を表にすると凄まじい勢いで名前を記入する。
名前を書き終わる前に既に問題文を目で追い始めていた。
その行動動作は通常の3倍速どころでは済まないだろう。
問題を解いているというのに、その姿はまるで何者かから全力疾走で逃げているかのようだ。
ヒカリもトウジに負けない勢いでシャーペンを持つ手を動かしていた。
しかし周りを圧するオーラは相変わらずだ。
ふとミサトが見渡すとヒカリと数人のみならず、生徒全体が追い立てられるようにテストに取り組んでいる光景が見えた。

(伝染したっていうの?・・・・どうなるのかしら)

先行きを気に揉むミサトに関係なく生徒達は張り詰めた空気の中、黙々とテストに取り組んでいた。
 


ピ〜ンポ〜ンパ〜ンポ〜ン・・・

終了のチャイムが鳴ると同時に待っていたとばかりにミサトが声を飛ばした。

「はい終了〜!プリントまわして!」

言い終わるとミサトは安堵のため息を大きく吐き出す。

(ふう〜、これでやっと解放され・・ん?)

その時、ミサトの耳が生徒の一人が奇妙な音を発するのを聞いた。

ぷしゅう〜・・・・

音とともにトウジの体しぼんでいく。
まるで空気の抜けた黒い風船のように。
しぼむだけしぼみ切るとトウジの体は机の上にふにゃふにゃと沈んでいった。

「な、何なの・・・」

ぼろ雑巾のように机に転がるトウジの姿を凝視するミサト。
その無惨な有り様を目の当たりにしたミサトの脳裏に、前世紀のボクシング漫画のラストシーンが浮かんでいた。

「鈴原君・・・・灰になって・・・燃え尽きてる!」

黒いジャージの中には完全燃焼し、灰色の燃えかすとなったトウジの肉体があった。
しかし机に顔をうずめる彼の表情は、ついさっきと打って変わって安穏としたものだった。
やっとトウジは地獄の苦しみから解放されたのだ。

(とにもかくにも・・・・すっごく大変だったみたいね・・想像つかないくらい)

ぴくりとも動かず泥のように眠り続けるトウジを、ミサトはとがめるのを見合わす事にした。
期末テスト初日一時間目にして、彼の長く凄惨な戦いは終わりを告げたのだった。
 
 



 
 
 
 
 

身をすぼめ、目立たぬようにマヤは自分の机にじっと座っている。
テスト期間中、職員室ではいつもこんな状態だった。
自分の作成したテストがないので仕事らしい仕事がなかったのだ。
しかも全教科のテストが終わった今、他の教師達は採点作業に懸命な中でマヤはただその様子を見ているしかない。
根が真面目な性格のマヤが肩身の狭い思いをするのは無理ないが、それだけではここまで畏縮はしないだろう。
数学の採点がそろそろ終わるらしいのだ。
自分の受け持っている2ーAの平均点はどうなのだろうか。
それ如何でこれからの自分に対する評価と処遇が決まるのだ。
緊張した面持ちでマヤは現在採点の仕上げを行っている時田の席をちらりと盗み見た。
さっきからいったい何回同じ動作をくり返した事か・・・・
と、その時背を丸めて、せわしなく採点作業を続けていた時田の動きがぴたりと止まった。

「!?」

マヤのこめかみから汗が一筋流れ落ちた。
丸めていた時田の背がぴんと伸び上がった。

(採点・・・終わったのかしら?)

そう思った瞬間、マヤは緊張に身を硬くしていた。
もう盗み見るどころか時田の背から目を離す事が出来なくなっている。
ゆっくりと時田の背が椅子から離れた。
マヤの鼓動がどんどん早くなっていく。
立ち上がった時田は一瞬間を置くと、身を反転させた。

(はっ!)

息を呑むマヤと時田の目が合った。
無表情で時田はマヤに向かって歩き出した。

ぞくっ

背中に寒気が走るのを感じながらマヤは近付いて来る時田の姿に見入っていた。
程なく時田はマヤの正面に到達した。
感情の無い顔が見下ろす。

「・・・・伊吹さん」

「は、はい!」

名を呼ばれ、おもちゃの様にぴょこんと立ち上がるマヤ。
しばらくの間無言でマヤのおどおどした顔を見つめ続ける時田。

「・・・・・・」

(・・・時田先生、いったい何を・・・・)

今のマヤは蛇に睨まれた蛙状態である。
身と心を強張らせつつ時田の発する次の言葉を待ち続けた。
長い沈黙ののち時田は口を開いた。

「・・・・採点を今終えました」

どきっ

(やっぱり!!)

「二年全体の平均点は58点・・・・・」

「は、はい・・・」

「あなたのクラスの平均点は・・・・・」

どきどきっ

「は、はい・・・」

さっきにも増して長い沈黙が続く。
まるで今世紀初頭にやっていたクイズ番組の解答シーンのように・・・
マヤはそれまで激しく打ち続けている鼓動が止まってしまいそうな緊迫感を味わっていた。

(ど、どうなるの・・・・?ああ、恐い・・・聞くのが恐い!!)

マヤの緊張が最大レベルに達した時、時田がきしんだ声をしぼりだした。
 
 

「・・・・・・・・・・64点、学年最高でした・・・」

びっくんっ!

一瞬マヤの頭の中が真っ白になった。

(・・・・・・・・えっ????・・・ええっ???・・・最高?最高って何?最高な事なの???)

事態を飲み込めないマヤよそに無表情だった時田の顔が苦渋に歪み、頭を垂れながら一気に喋りだした。

「伊吹さん!すまなかった、僕が間違っていた!!君には酷い事を言ってしまった、すまない・・・君のクラスがこんなにレベルが高いとは・・・・こんな短期間で・・君の授業がここまで生徒の学力を上げていたとは・・・・知らなかったんだ!許してくれ!!」

深々と頭を下げて謝罪の言葉を叫びまくる時田の前で、事態を飲み込み切れないマヤはただただ呆然と立ち尽くしていた。
騒ぎを聞き付けた他の教師達が遠巻きに二人を囲んでいる。

「もう君のやり方に一切口出しはしない・・・・失礼した!」

言い終わると時田は取り囲んでいる教師達をかき分けて自分の席に戻っていった。
その背中には痛々しいまでの敗北感が漂う。
マヤはその姿を相変わらず呆然とした顔で見送っていた。

「伊吹さん」

「はっ!」

突然背後から肩を叩かれマヤはやっと我に帰った。
振り向くとそこには穏やかな目をしたナオコの顔があった。

「教頭・・先生」

「よくやりましたね。まだここに来て間も無いのにこれだけの結果を出すとは。点数だけがすべてではないですが少なくとも時田先生は納得したようです」

「・・・・はい」

ナオコは優しい笑顔を作った。

「良かったですね」

ナオコの激励を受けてやっとマヤの心に安堵と嬉しさが込み上げてきた。

「・・・はい!」

「頑張ってください・・・これまで通り」

「頑張ります!これまで通り・・・はっ!?」

マヤは自分の姿を見下ろした。
身に付けていたのはこれまで通り制服だった。

(これって・・・・・これまで通りって・・・・・・・・これからもこのまんまって事なの〜?!
 
 



 
 
 
 

「やったわ!100点よ、満点!とーぜんね」

返されたばかりの数学の答案用紙を見つめてアスカは御満悦だった。
元々の学力にプラスしてあれだけ勉強したのだから、これで満点でなければ逆切れしていただろう。
しばらく完璧な答案用紙をうっとりとながめた後、いつものパターンでシンジの答案をのぞき込んだ。

「どう?」

「うん・・・」

普段のようにあまり答案を隠そうとはしないシンジ。
赤ペンで書かれた数字は76だった。

「・・・どうだろ?」

「うん・・まあ・・・OKでしょ!ね、ヒカリ?」

と言いつつヒカリの反応をそっとうかがい見る。

「・・・・・・・・そうね。勉強した分は取れたんじゃないかしら・・・」

シンジとアスカは安堵のため息をユニゾンさせた。

「俺は93だ。文句は無かろう」

ケンスケがさらっと言ってのける。
もっともシンジの点で大丈夫か確かめてからの自己申告だが。

「鈴原・・・・・」

ヒカリが低い声でトウジを見た。
トウジは直立不動で答案をしっかりと持っている。
硬直した身体が小刻みに震えていた。
ヒカリが手を差し伸べトウジの持っていた答案を親指と人さし指でつまむと、しゅっと抜き取った。
目の高さに持っていくヒカリ。
緊迫感が最高潮に達する。
 

「・・・・・・・65点」

どきんっ

「・・・・・・・・・・・やればできるじゃない。よくやったわね、鈴原」

はあ〜〜〜・・・

トウジはその場にへなへなと座り込んでしまった。
これで本当の意味で何もかも終わった訳だ。

「ねー私のも!」

明るい声でレイが割って入る。
手にはハリセンに折った答案が。

「バカ!なにやってんのよ!」

ハリセンを取り上げ一発叩いてから元の答案に修復する。

「・・・・・」

「ねー、どーう?」

「・・・・・アンタ・・・・・・・57って平均点下回ってどうするのよ〜!!

「えー、こんないい点数取ったの初めてだよむごっ」

レイの口に答案用紙が突っ込まれた。

「あれだけ教えてやったってのに〜!このっこのっこのっ」

「アフハ〜、ヒハリのへん数はー?」

「アンタが気にするな〜!」

レイの口に答案を押し込み終わるとアスカはヒカリに振り向いた。

「ヒカリ・・・・どうだったの?」

「ええ、私は・・・・・」

控えめにそっとアスカに答案を差し出すヒカリ。
アスカはその点数にしっかりと見つめた。
 

「・・・・・・・・・・きゅうじゅう・・・なな点!・・・・・ヒカリ、アンタ中間テストの時より・・・55点も上乗せしたの!?」

「・・・・ええ」

小さくうなずくヒカリを大きく口を開けて呆れ返るアスカ。

(まさかここまでやるとは・・・・よくもまあ・・・)

とにかくこれでうちのクラスが学年最高の平均点をあげたのだ。
呆れるんじゃなく喜ぶべきなんだろう。

「良かったわね、ヒカリ!」

「うん!」

ヒカリは明るい表情で教壇の方を見た。
 

答案を返してからしばらくの間続いた生徒達の悲喜こもごもの騒ぎ様を、止める事もなくマヤはながめていた。
学年一の平均点を取ったとは言うものの、これで本当に良かったのだろうか。
自分の置かれた状況は変わっていない。
複雑な表情を浮かべるマヤは騒ぎ続ける生徒の中に、こちらに向けられた視線を感じた。
そっと視線の方に顔を向けた。
優しい瞳でヒカリが見つめていた。
少しの間見つめあう・・・・
やがてヒカリは温かい微笑みをマヤに投げかけ力強くうなずいた。

(ああ、ヒカリは私のために一生懸命やってくれたのね!97点も取って・・・・・・・・これじゃ本当に良かったのかなんて悩みづらいじゃない〜!!
 

それこそがマヤの抱える切実な悩みそのものなのだった・・・・
 



 
 
 
 
 

緊張した面持ちでドアの前にたたずむマヤ。
両手には以前コダマからもらったお下がりの服を始め、日用用品などを詰め込んだバッグがぶら下がっている。
背後からヒカリがマヤの肩に優しく手を乗せた。

「大丈夫よ、いつも通りにしていれば」

「・・・」

「さあ、入りましょ」

「ええ・・・」

マヤはぎこちなくドアのノブに手をかけた。
意を決してドアをさっと開けた。

「マヤ!」

「マヤねえ!」

「マヤちゃん」

「やあ、よく来たね」

ドアの向こうではヒカリの家族の笑顔が待ち構えていた。
一瞬後ずさるマヤの背をヒカリが押し返した。

「さあ、ごあいさつして」

「あ、はい・・・・あの、こんにちは」

コダマが苦笑ながらマヤを見下ろした。

「違うでしょ、マヤ。ただいま、よ」

「えっ・・・・」

「ここはあなたのお家みたいなもんだから・・・・」

どきっ

(私のお家!?)

「さあ、もう一度」

ヒカリの家族全員の目がマヤに注がれていた。
マヤはうつむきながら恥ずかしさに頬を染めている。

(うう、言いにくいわ、とても・・・)

「ほら、言ってあげて」

ヒカリに促され、観念したマヤは小さく声を漏らした。

「・・・・・・・ただいま」

「・・おかえりなさい」

マヤの足が照れくさそうに玄関へ一歩入り込んだ。

「また・・・・お世話になります」

「よろこんで!!」
 
 

こうしてマヤは再び洞木家で生活する事になった。
立ちはだかった障害をクリアして。
しかしマヤの前にはまだまだ障害が山積みされている。
本質的な部分が解決されないかぎり。
それらの障害に悩みながらもヒカリとの友情と洞木家の温もり包まれ、結局何も解決しないままマヤは流されるように日々を過ごしていく事になる。
 

「ああ・・・これでいいのかしら?・・・・・でもここは心地よい・・・・・」
 
 



 
 
 
 

「し、社会が52点?!ア、アタシの明晰な頭脳が〜!!」

「アスカ、仕方ないよ・・僕も数学以外ぼろぼろ・・・」

「英語70、理科50、国語・・・・・41〜!!」

「ねーアスカ。私なんて一ケタあったよー」

「俺も何も言えない」

「わしはどうでもええわ」

「ごめんなさいね、アスカ。私のせいで・・・・」

「そんなそんなそんな・・・・・・・・数学なんて大っ嫌いよお〜〜〜!!
 
 
 
 

第拾壱話完



 

次回予告

期末テストも終わりいよいよ夏休み。
喜べ諸君!と、言いたい所だが・・・
その前に授業参観をするってどーいうことだ!
こんな時期に親を呼んでどうすんだ?
誰だ、家族総出で行こうと抜かすバカモノは!!
生徒と父兄と教師が一同に会した時、複雑な人間関係が絡んでねじれてこねくり回し、授業参観はとんでもない事態に爆走する!
 

次回大ぼけエヴァ、

第拾弐話 喜劇の会話
 
 

次回も、

「おもろい授業やないけ、へぇっしょんあほんだらぼけかす
 
 



 
 

随分間が空きました。
やはり具体的なこれだというネタなりオチなりをはっきり思いついてから作らないとうまくいかないようです。
話を書いていてただギャグがないと心配だから入れておくのと、これだと思いついたギャグを入れるのでは雲泥の差です。
無理にギャグを入れても仕方ないのです。
結局『時間をかければ誰だって完成できる』という理屈を使いやっと書き上げました。
時間をかけてちょくちょく書くと全体の流れ、バランスが分かりにくくなりギャグのテンポがおかしくなり、悪戯に長くなるんよ。
反省ものでんな。
今回は次回の父兄参観をにらみ、家族を沢山出しておきました。
前回レイのも出てたし。
それがどう転ぶのか、わてにもわかりませ〜ん。
なるようになれ!
は〜ああ、ぼよよ〜ん・クロス!!

 
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ver.-1.00  2002-4/18公開
御意見、御感想、御質問、御指摘、大平かつみ尾崎小百合はブレイクするのか、その他のメールは、m-irie@mbox.kyoto-inet.or.jp まで。



 
 
 
 
 


 えいりさんの『大ぼけエヴァ』第拾壱話その3、公開です。





 色々なものを捨て去り、
 様々なものを犠牲にして、

 ・・・・・ついに掴んだ成果!



 凄いぞ委員長〜
 どんと数学の平均得点をアップ!

 勉強会参加メンバーのみならず、
 その無言の圧力でクラスみんなもアップしたようだし、、
 そして何より自分も大幅アップしたのは、流石の責任感だよね☆


 これでマヤちゃんの制服授業も維持できたわけだし、万々歳。
 本人は喜んでいないようだけど、とにかく万々歳。


 色々な意味で委員長の権威がますます高まった一件でした・・・



 次の試験も頑張ろう〜!
 次は数学以外も頑張ろう〜




 さあ、訪問者のみなさん。
 3部作完結のえいりさんに感想メールを送りましょう!






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