TOP 】 / 【 めぞん 】 / [飛羽 駆夏]の部屋


アイツはあたし、あたしはアイツ


だけど、アイツはあいつじゃなかった――――





ASUKAKUSA
魔道少女アスカ物語(?)





−1−






キーンコーンカーンコーン………



ネルフ国城の大聖堂の鐘が、正午を伝えている。

空はうっとうしいくらいに憂うつな曇り空。

地面の落ち葉が風に吹かれて、わたしの足元を回転しながら吹き去っていく。

不意に風が強くなり、わたしの着ている法衣のすそを軽く巻き上げていく。



………寒い。



寒いさむい寒いサムイ寒いいぃいっっっ!!!!!



ぬぁんでこのわたしが秋も終わって冬至も近いこのくそ寒い季節に
表でつっ立ってなきゃいけないのよっ!

吹き抜けていく冷たい風が、わたしの頬を冷やし、自慢の緋色の金髪を巻き上げ、
大きくてだぶだぶでで素材の薄い法衣の中をすかすかと素通りしていく。

だ―――っっ!寒いっっ!!

さっさと中に入ってあったかいココアの一杯でもすすりたいものだわっ!


心の中で散々悪態を吐きながら、 わたしは目の前に立っている魔導士を睨み付けた。



『………エル・イルクス・ダース・トリアム…大いなる大地の溜飲よ… エルネを成しゆく永遠の還流よ………』


わたしとその老魔導士との間の地面には、白墨で描かれた簡単な魔方陣がある。
魔力の放出範囲を限定し、過度放出を押さえる、試験用のよく使われているもの。
わたしが地、相手が天の方に立って、呪文を詠唱している。

わたしは今、魔導士免許を取る為の試験の真っ最中なのよ。
普通は十分に修練した大人しか取れないんだけど、 今のわたしの実力なら落ちるわけないわ。

まあ、そーいう事は後回しにして……遅いっ!!おそすぎるっ!

前に立っている試験管の老魔導士は、 節くれだった両手を胸の前でがっちりと組んだまま、
ぶつぶつと呪文の長い詠唱を続けている。



『………凍てつく大地を押し流す、猛き腕…数多を覆い隠す広辺なる心……』


低い声で堅々しくゆっくりと重厚に長々と、きっといっちばん最初の章節から唱えてるに違いないわね。
唱え始めてからもう20分は立ってるし。
あーもうっっ!!こっちはさっさと終わらせて暖かい所へ引っ込みたいのよっ!!

よっぽど先制攻撃してやろうかと考えたけど、卑怯とか何とか言われて落とされたら元も子もないしね。
鳥肌が立ちそうな寒さをこらえながら待ってやっていた。わたしって律義。



『………彼の神話の奔流の如きそのお力を…我が前、我が世界に具現せよ!……その…』


ようやく、魔導士のそのよう手に青白い光が燈り始めた。

足元の魔方陣も魔力に反応して淡く輝き始める。



って、この呪文はまさか……




『……その大いなる古の力の御名は……―――『氷河(プロック・ブリザード)』』

ああっ!やっぱり!!


魔導士が両手を開いてぐっと前に突き出す。
それと同時に手から幾千もの氷の吹雪が白く輝く光筋となってわたし目掛けて打ち出される!!


ドォン!



まったく!この寒い中よけい寒くするような呪文使わないでよっっ!!

凄まじいスピードで迫る氷河に臆することなく、
わたしは胸の前で素早く印を組むと両手をばっと上にかざした。


『――…駆けよ駆けよまばゆき閃光…紅の躍動たるメルカバの火輪……―――火焔(グロブ・フレア)!!』


一瞬にして両手の上が熱くなる。
わたしは両手を一気に振り下ろした。



ゴウッ!



凄まじい火炎の玉が投げ放たれ、白い氷河と真っ向からぶつかりあう!



ジュワッ!



氷が炎を弱め、炎が氷をを溶かして…相殺されて消えた呪文のあとに蒸気の煙が巻き上がった。


『縄水槍(アクア・ビュート)!』


その湯気を切り裂くように突き出してくる6本の水の蛇!


『風刃(エア・シックル)!』


両腕を薙いで打ち出したかまいたちが水蛇をまとめて真っ二つにし、
そのまま相手の魔導士めがけて疾走する!


『…硬結界(エイ・テラー)!』


ギィン!

ちっ!
相手の周りに淡い光の壁が張り巡らされる。
私の放ったかまいたちは固い金属音と赤い六角形の波紋を残して、
壁の前にあっけなく消えた。

さすが、だてに年くってないわね。けど、―――甘い!


『破呪(キャンセリング)!』


乱発した9本の黒い矢が光の壁に幾何学図形を作り、壁はガラスのように簡単に割れ落ちる。

相手が次の呪文を唱えるよりも早く私は次の魔法を―――――

『……パル・シクス・ジエノサイダムス………バル・グレイ……!!』

「ちょっと待ったあっっっ!!」





「何よ、いいとこだったのに…。何か反則でもした?」

わたしは魔方陣の外で傍観していた審判長のオヤジ魔導士に言った。

「大ありだわい。今唱えたその呪文、その右手に乗っ掛っとる暗黒球は何だ!?」

「わたしの自作したのよ。悪い?別にタブーは破ってないでしょう?」

「自作?オリジナルか。しかし呪文合成にも程があるわい。
そんなとんでもないものぶつけたら相手が死ぬわ。もうよい、そこまで!両者、収めよ!」

審判長が終了の合図を上げる。

まったく、ちょっと本気をだそうと思ったらすぐこれ。 たまには気兼ね無しに思いっきり魔法使ってみたいものだわ。
わたしは渋々魔法を解除した。


「どう?これで解ったでしょう?わたしの実力。…まあ小指の爪ほども出してないけど。」

「う、うむ……確かにぬしの魔法力は同年代の枠を抜け、常人のレベルをも超えているやもしれぬ。
だかーしかしー…自作呪文の多乱用はー、えー、自然界の理と秩序を………
「っあ―――もう能書きは良いから早く決定してよ!合格、否、どっち?」

わたしは言葉をさえぎって話を進めさせた。こっちは一刻も早くこの寒さから逃れたいのよ!!

「わ、わかったわい……まあ、少々思詠の使い過ぎる事もあるが構成自体はしっかりしておる。
惣流・アスカ・ラングレー。……合格じゃな。」

「良しっ!ま、当然ね。」

わたしは(心の中で)ガッツポーズを取った。


「えーそれで、正魔導士(ウィザード)としての正式認定式は明日の……
「あーそういう細かい事は後でパパからでも聞くから!!もう行って良いでしょ!?」

返事を待たずにわたしは駆け出してしまった。
全く!こっちは急いでんのにわざわざ話を引き伸ばすような事しないで欲しいわ!










−2−











ほ――――――っ。

クリームの浮かんだココアを一啜りすると大きく息を吐いた。
白い息が上がる。

あー生き返るわねー。
カップを両手で持ってすっかり冷たくなった指先を暖める。

窓の外を眺めると、残り少なくなった木の葉っぱが風に吹かれて
取れるか取れないかのところでゆらゆらと揺れているのが見えた。

「お早う、アスカちゃん。」

不意にぽんと肩を叩かれて後ろを見上げると、

「ミサトぉ。」
「ちゃーす。どうだった?テスト。」

ミサトは片手にランチの包みを持ってテーブルの向かいの席に座った。

「楽勝よ。あったりまえじゃない。」

「そう、やったじゃない。おめでとう。」

「当然よ、当然。」

ミサトはこのマギ=アカデメイアの中では上クラスの実力を持つ正魔導士。
あ、実力はわたしの方が上よ。たぶん。
…負けてるのはそのナイスバディだけだと思いたいわね。

「じゃあ、これで最年少魔導士の誕生ってわけね。
『赤魔女アスカちゃん』の名前も確定する事間違いなしって感じ?」

言いながらミサトは包みを広げ、中からサンドイッチが出てきた。
ココアを啜っていたわたしはその言葉にカップを静かに置く。


「ミサト……いい加減そのネーミング辞めてくれない?」

「あらぁどーして?ぴったりじゃない?」

「安直すぎるのよネーミングが!『赤魔女』なんて、妙な印象しか与えないじゃない。
それと、『ちゃん』付けも辞めてくれない?」

「やけにこだわるわねー。そんなに嫌?
でも私くらいから見ればやっぱり『ちゃん』付けしちゃう年頃なんだけど…。」


きょとんとした顔でミサトはサンドイッチに食いついた。


「……年の事は仕方ないと思ってるわよ。でも力的に私よりずっと弱い大人全員が、 『ちゃん』付けしてくるのよ?
はっきり言って我慢ならないの!見え見えなのよ!
年下だっていう事だけで立場誇示して優越感に浸ろうとしてるのが!!!

「ア、アスカちゃん、落ち着いて……」


勢いよくガタンと椅子を倒して立ち上がったまま、はっと気がついて見渡してみると、
食堂にいるほとんどの人が目を向いてこちらを見ていた。

……さすがにちょっと恥ずかしくなって私は椅子に座りなおした。


ミサトは苦笑しながら言った。

「まあ……気持ちは分からなくもないけどね。で、これからどーするの?」

「何を?」

「決まってるじゃない。卒業したらどうするの?ここで仕事?
それともネルフ王宮に仕官でもするの?」

「……まだそこまで決めてないわよ。」

答えるついでにミサトのサンドイッチを1つ摘み上げた。


「第一、研究論文もまだ1つ残ってるし、他にもいろいろ遣ってみたい事あるし。
こんな若い身空で一つの場所に固定されたくないわよ。」

「はーっ。そう言ってられるのも今のうちよ。いーわねー、若い子は。」


なんか妙に悟りに入っているわね?

そう考えながらサンドイッチを一口食べた……とたん、『ジャリ』という音がした。

「ヴっ……ミ、ミサト……あんた中に何入れたの?」
「え?別にただの焼きそばのマスタードソース絡めだけど?」

何…それ?

「…今『ジャリ』って言ったわよ、『ジャリ』って。」
「?……ああ!、アクセントに乾燥レーズン入れたの戻しきれてなかったのかも。」

レーズン!?

そう思った途端口の中に甘みが広がってマスタードの辛みと…………もう止そう。


「……よくこんなの平気で食べられるわね…。」
「え?美味しくなかった?」

変ねー、と首を傾げながらミサトは2つ目のサンドイッチを頬張った。
あんたの味覚がおかしいのよ!一体どういう食生活してんのかしら?

口の中に入れた以上戻すわけにもいかないので
私は何とかそれを飲み込むと、席を立った。

「もういいの?」
「十分よ。」

わたしは食堂の出口へと向かい……ふと思い立ってくるりと振り返った。


「ミサト!」
「え?何?」

三つ目だろうサンドイッチを咥えたままこちらを見たミサトに、わたしは言い放った。

「あんた結婚できたら料理は旦那の方にやってもらいなさい!でないと相手死ぬわよ!」















食堂を出るとわたしはまず書庫館へ向かった。
大廊下を渡って、アカデメイアの本舎に入る。

アカデメイアは自然界の理と動性、いわゆる魔法の勉強をするところ。
でも自主的に研究してる人の方が多いから学校とはちょっと違うかもね。

今日は日曜だからいつもより人は少ないけど、 会う人会う人と全てわたしにあの挨拶をしてくる。


「あ、『アスカちゃん』。こんちはっス。」

「ごきげんよう、『赤少女アスカちゃん』。」

「今日も可愛いね。『赤魔女アスカちゃん』。」


……ほーらね。


…皆、見下してるわね。やっぱり論文仕上げたらここを出ようかしら?

冷たい風が流れ込んできたのに気がついて窓の外を見ると、
ちらほらと雪が舞い降りてきていた。


あーやだなー。ただでさえ寒いって言うのに………降るのはともかく積もらないで欲しいわね。


なんて、風流もへったくれもない事を考えながらあるいて、ようやくわたしは書庫館の中へ入った。


「あら、アスカちゃん。」

今日の監守はおっとりマヤか。

「また今日も『物置』?」
「そうよ。中動かしてないでしょうね。」
「ええ。あそこへ行くのはアスカちゃんくらいよ。ふふふっ」

いかにも愛想って感じがする笑みを浮かべるマヤを尻目に、わたしは『物置』へと向かった。
『物置』って言っても本当は使われなくなった本を保管しておく倉庫みたいな所なんだけど。

書庫館の立ち並ぶ本棚の奥、さびた鉄製の扉がある。

わたしはその扉に両手を押し付けた。

『……虚透過(スルー・ホロー)。』

両手が淡く緑色に発光し、水の中に入るようにその鉄の扉の中に沈んでいく。
そのままずぶずぶと手を沈み込ませ、腕を、身体を・・・すり抜けさせた。



扉の内側は、鍵もつけられていないほど堅牢に閉ざされた、ひとすじの光も入らない部屋。
何も見えない。

私はわたしは呪文を唱えつつ、ぱん、と両手を打ち合わせた。

『照光(イルミネート)!』

真っ暗な空間に小さな淡い光の玉が出現する。
わたしはそれを軽く放り上げた。



ぱぁん……


光が弾けると同時に昼間のような明るさになった。

部屋の全景が見渡せるようになる。結構広いのよ。

ビロードの絨毯の敷かれた部屋の、壁全体を覆うぎっしりと詰まった本棚。
その中に納められている本はどれもこれもページが抜け落ちていたり文字が消えて読めなかったり、 中には本とは呼べないような朽ちた木板や、石銘なんかも保管されている。

何でもここは普通の時間軸と別の空間になっていて、
量子とかの法則がないからいくらでも保管できるんだそう。
平たく言えばここは古本廃棄場かしら?

高い天井を見上げれば大きな魔方陣が描かれてある。
さっき放り投げた魔法に反応して光るんで、いつのまにか照明代わりになってるけど。

わたしは本棚から2、3冊の本を引っ張り出した。
中央の、ちょうど一番明るいところに座りこむ。
それから……ちょっと行儀が悪いんだけど、床の上に寝転がって本を開いた。


適当に開いたページには、超古代の文字で注釈の加えられた絵図が描かれてある。
「火」「風」「水」「土」 の四元素(リゾ・マタ)で構成されている魔力の連鎖バランスの挿図。

まあ、難しい事は省くけど、魔法はこの四元素、 つまり自然界を構成している理の流れを操って
炎や水柱、かまいたちとかの現象を引き起こすものと定義されているの。
それを行使するのに必要なのは、制御できるだけの器となる魔法力と、呪文の詠唱。

それさえ完璧なら赤ん坊でも狐火ぐらいは出せるわけよ。
呪文さえ唱えればね。

アカデメイアとかの魔法学校で教えているのは、
そういった火とか水とかの基本的な呪語と、それを構成するための協律構法。
そして全ての魔法はそれらを組み合わせて合成された呪文によって
召喚されるものなのよ。

わたしは暇なときは大抵この部屋でこうやって古代の文献を読み漁っているの。
今やっている研究の参考資料にもなるし、たまにオリジナルの呪文の材料にもなったりするし。
…この部屋実は結構頑丈に出来ているらしいから、
たまーに内緒で表じゃ絶対使えないような極大呪文やらタブーに近い
構成呪文なんかを平気でぶっ放してたりもしてる。…絶対に内緒だけど。
一応ちゃんと後で片付けてるんだからね!


…で、魔法を学び始めてから8年。
習った呪文、調べた呪文、考えうる限りの現存出来る呪文を試してみたわ。
なかには暴走したり、消滅させちゃったり、発動できないものもあったけど。

一体どれぐらいの数があったのか、まだいくつあるのか、
数え切れないほどの呪文の洪水の中で、魔導士は何の為に魔法を紡ぐのかしら?
わたしは、どうしてそんな魔導士になる道を選んだんだっけ……?

時々ふと疑問に思う事がある…。


火の呪文を唱える。

炎が出る。


当たり前の事だけど、どうしてそんな風になるのかしら?
逆に呪文という言葉がなければ、私たち魔導士は一瞬にして火をおこす事も、
かまいたちも、氷の一粒も出すことが出来ない。

本当にそれで良いのかしら?一体、『呪文』って…何なの?





考えるのに飽きて、床の上にあお向けに寝転がった。
天井の輝く魔方陣が目に入り、眩しくて思わず目を閉じる。

まぶたの裏に、くっきりと残る残像。

図形と、文字とで造られた文様。
それがどうやって魔法と同じ効力を生み出すのかしら?

目を開けると、少し慣れたのか魔方陣がくっきりと見えるようになった。
超古代の、読めはするけど意味までは解明されていない文字。



『……エ…』


わたしは、何の気なしに、その言葉を、音にして呼んでみた。





『エル・エムダ・アン・リリス・リブタル・エサミ・ルア・ルエ・ラア・ルエ・ルゼル・ エィデル・バル・エ・リレル・ウロイ・ルエィク・ハサル・エ・リトマ・ンォフ・ルダン・ サルェフ・ラスイル・エギガ・ルエ・ミラル・エシ・ムャシル・エキサス・リ・リン!』



カァッ!!




そのとたん、今まで白い光を放っていた天井の魔方陣が、赤く強く輝いた!!

「うっ!」

まともに目に入って思わず目を押さえる。

何とか体を起こし、まだちかちかする目を無理に開いて再び上を見ると、


ゴオオオォオオオオ……ッ!!


血のように赤く染まった魔法陣がゆっくりと浮き上がるように……天井から剥がれ…落ちてくる!
真下にいる、わたしめがけて。

「うそ!」

恐い!

避けようとしたけど、間に合わない!!


ゴオオオォオオオオオオッ!!

「きゃあぁああっ!!」















わたしは目をつぶり、全身を庇って何かの衝撃から身を守ろうとした。
けど、痛みも、感触も、何も伝わってこなかった。

「……え?」

恐る恐る目を開けてみると、真っ暗だった。
真っ暗な闇のなかで、足元から赤い光が放たれている。


フォォォォ……

下を見ると、さっきまで天井にあった魔方陣なそっくりそのまま、
わたしを中心にして、足元に、赤い光を放ったまま描かれていた。

「なっ!」

足が動かない!?

パニックを起こしそうになる精神をを必死で保ちながら、
何とか動こうと躍起になっていると、目の前をい光がひらり、とかすめ通った。

「え?」


今度は























足元から天井に向かって一直線に駆け上っていく。

それらの光はやがて収束し、七色に変化しながら膨れ上がり…


…最後には真っ白な光の玉になった。


フォォォォ……


『照光』 の呪文よりも大きくて、純白な強い光の玉は
どんどん膨張し、形をうねらせながら、ある形を作っていく。
丸がかったどんどん細くなり、丸まって、また形を作り…



……魚?

…鳥、



そして、うずくまり丸まった、人の形を成していく。

目の前で流れていくその変化を、 わたしはただ、唖然とと見ている事しか出来なかった。

人の形を取ったその光の固まりは、 一度胎児の様にひざを抱えてうずくまると、
ぱっ、とはじけた。

カッ!
「っ!」





強烈な光が収まると、その人の形をした光は……わたしの目の前に ……立っていた。



淡く光輝く、黄色の肌。



やや大きいけど細い、体のライン。



顔を両手で覆って、その上に垂れ下がり、さらさらと揺れている、
黒い、短くそろえられた前髪。



ゆっくりと、両手が離される。





まるで夢から覚めて間もないように、ゆっくりと、虚ろに開かれていくその瞼。

見覚えのある顔立ち。

ゆっくりと開かれた瞼から現れたその瞳は、わたしと同じ、 蒼碧の……い瞳だった。




「!!!!!!!!!!」



頭の中に何か鋭い光が走った。


声を出せないでいるわたしをぼーっと、しばらく眺めていたその少年は、
しばらくしてはっと正気に返ったような顔になった。


そして、まるでやっと思い出したかのようにゆっくりと、微笑みを作って、口を開いた。



「……えっと、はじめ…まして。…………っていうべきかな?アスカ。」



ぷつんっ



わたしの中で、張り詰めていた何かがきれたような気がした。



思い出したら結構情けないんだけど、
混乱していたわたしはただ、こう、叫ぶ事しか出来なかった。



「あ…あ……… あんた誰よ――――――――――――――――――っ!!!






























…ぜーはーぜーはーぜーはー……




「『誰よー!』…なんてひどいよぉ…。アスカぁ。」



大声をだしたことで何とか頭が落ち着いてきた。
あー恥ずかしい。このアスカさま人生最大の失態だわ。

わたしは大きく深呼吸をすると、さっきの少年にきっ、と向かい合った。


「まぁ…、いきなりだったから慌てるのも無理はないと思うけど。」
「あんた、誰?」

へらへらと笑うそいつにビシッと指を突きつけて言った。
とにかくこっちのペースで話さないと。




「わたしはあんたの事なんて全っ然知らないの。 見たことも聞いた事も、会った事もないわ。」

「えー?だってアスカ、僕は…
「気安く名前呼ばないで。人ともの話す前に自己紹介するってのが常識でしょう?」

ってまぁ…全身発光してる奴が人じゃないって事はわかるんだけど。
見てくれからして…何かの精霊かしら?



そいつは最初きょとん、とした後、苦笑して言った。


「僕は、『惣流・アスカ・ラングレー』だよ。」

「はぁっ?アスカはわたしよ!?寝ぼけてないで真面目に言いなさいよ!」

「だから、僕も『アスカ』なんだってば。
…まぁ、詳しく言うなら、僕は『アスカ』の……理力かな?」






理力、それは人の中にある魔法を操る力、いわゆる魔力の源みたいなものの事よ。
だけどなんでそれがあいつなわけ?



「……じゃあ、あんたはわたしの理力…魔力のかたまりで、
さっきの魔方陣のせいでわたしの中から偶然召喚された、っていうわけ?」

何回か聞き直して問いただして補足して、やっとわたしはそれだけの結論を出した。


「うん。」

あっさりとそいつ――その少年は頷いた。


「……信じてないだろ?」
「当ったり前でしょーがぁっっ!!精霊か幻獣の類いならでっち上げも出来るとして、
いきなり人の魔力だなんて『すっぱだか』の男に言われたって誰も…………ってあぁああっっっ!!」


わたしは慌ててくるりと後ろを向いた。
しまった……すっかり忘れてたわ(汗汗汗汗汗)



………………見たかな…?



「?…ああ、これ?」

「そ、そうよ!うら若き乙女の前で何て恰好してんのよ! せめて隠すぐらいしなさいよね!」

「あ、ごめん。じゃ…」


パチン、と音がしたのでわたしは横目で…ちらっと見た。

「っなっ!!」
「これでいいかな?」

振り返るとそいつはいつの間にか、わたしと同じアカデメイアの法衣を身にまとっていた。
一体どうやって!?

「ど、どうやったの?」

「え?アスカ習っただろ? 分子間力の融合におけるヘルステスの魔力均衡とA−Tの分子固定具現……
「だ―――っ!!うん蓄はいいから!…ま、まあいいわ。
服出せるんだったらついでにその光ってる体も何とかしなさいよね。」

そう言うなりそいつはこくんと頷いて、ふっと消えた。


「え?」




…あっ、消えたんじゃなくて真っ暗だったから見えなくなっただけね。

わたしは明るくしようと思ってもう一度呪文を唱えた。


『照光(イルミネート)!!』








しーん。










「……あら?おかしいわね。………『照光(イルミネート)!』













しーん。










発動…しない!?何で??


「だから、さっき言っただろ?」


ぽうっ、と目の前に光の玉が浮かび上がり、少年の顔が浮かび上がった

「なに…?」

「僕が『アスカ』の理力、『君』の魔力そのものなんだ、って。」




…え?



「ちょ…っ…ちょ…ちょっと待って…。……それっ…て、本当に本当なの??」

「嘘ついたって仕方ないじゃないか。」


恐る恐る尋ねたその質問にいともあっさりと答える。



ぴしっ


「あんたが…わたしの持っていた魔力そのものなわけ…?」



「そうだよ。」


即答で返される。



ぴしっ



「……じ、じ、じゃあ…、 あんたがここにいるって事は…………わたしの中には?」

決まってんじゃんか、っていうような顔をしてそいつは言った。

「とうぜん、魔力はないと思うよ。『僕』がそうなんだから。」

びしっ





ずっと、わたしの中で否定しよう否定しよう考えない考えない… と思って閉じ込めていたものが……ついに―――




ばりんっ





――――壊れた。





「嘘ようそよ嘘よ―――――っっっ!!!!信じないしんじない信じないんだからぁっ!!
出なさいよ魔法!!
『(グロブ・フレア)!!』『(ブリザード)!!』 『(エア・シックル)!!!』『(ストーム・シールド)!!』『(ロック・ウォール)!!』『(エイ・テラー)!!!』



「だから無駄だってば。魔力の存在概念自体が僕の――



「うっさいわよ!あんたは黙ってて!!畜生!出なさい!出でよ!!
『(フロスト・シール)!』『(アクア・ビュート)』『(ディバインサンダー)!!!』
なんでもいーから出なさ―――いっっっ!!!!!」
















−3−











まったく!まったく!まったく!
何てことよ!何てことよ!!何てことよ!!!


このわたし、希代の天才『美少女』魔導士と謳われた、……不本意だけど 『赤い魔法少女アスカちゃん』の2つ名をもつこのわたしが!!
いきなりレベル0魔力なしMP消失ノーマテリアの人間になってしまうなんてぇっっっ!!





「あら、アスカちゃんもう……

おっとりマヤの前をばびゅんっ、とつっ切ってわたしは書庫館を飛び出した。



「あら?アスカちゃんの後ろにもう1人…いなかったかしら?」






だん!だん!だん!だん!だん!だんっ!





階段を4段飛ばしにして駆け上がり、わたしは『そいつ』の片手をしっかと握ったまま、
アカデメイアの校舎の最上階、そこにある部屋の大きな扉をばしん、開けた



「パパあっ!!」




「何だアスカ。校内では理事長と呼べと言っているだろう?」


扉を開けたその広い部屋の奥にある、執務机に座っていた理事長…うちのパパがのっそりと顔を上げた。


「それ…どころ…じゃ…ない…の!!」

「おいおいおい…一体どうしたんだ?そんなに息を切らせて。 と、連れてきたのは誰かな?……ん?」



のんきな理事長はわたしの後ろにいる、 息も切らせていない平然とした『あいつ』を見て首を傾げた。



「???…うちの学生だったかな?いや、前に一度どこかで見たような………」
「パパ、いまはそんな事どーでもいいの!教えてよ!あの書庫館の『物置』はどーなってるの!」

「『物置』?ああ、あの封印の…それがどうかしたのか?」

「いいから話して!!あの天井の『魔方陣』は一体何なの!??」

わたしは机に体を乗り出して急かした。


「魔方陣?そんなものがあるのか?いや、私は知らぬが…… 学長リツコ君、何か知っとらんかね?」

「『物置』の魔方陣ですか?」

理事長の隣で書類を片付けていた学長、赤木リツコが顔を上げた。

「…ああ!それはきっと私の作成したものですわ。」

「何です…って!?」

「何年か前に書庫の整理の為にあの『物置』が造られたときに…… 保管する魔道書が何らかのきっかけで発動しないように 『封縛』 の魔方陣を、 古代文書を参考に私が構成して描きましたけど。」


『封縛』!?


まさか……もしかして…


淡々と話すリツコに、私はのろのろと尋ねた。

「………学長……その魔方陣の効力は…?」

リツコは眼鏡をくい、とあげて答えた。

「効力?え……っと、今言った封印の力とそれから・・・他に何かあったかしら?
何しろ強い効果重視で色々なところから集めて合成したし、 超古代文字の中には未だに解読されていないものもあるから…… ちょっと予測できない未知の効果があってもおかしくないわね。」







ばたん…



飛び込んで入ってきたときとは正反対に、今度はのろのろと部屋を出た。


「大体察しがついただろ?」


落胆しているわたしに『あいつ』は無神経にも飄々と話しかけてくる。


「まあ…ね……あの魔方陣の文字をわたしが詠唱した事で何か別の力が発動して…
まともに光を浴びたわたしは全ての理力を解除されて… 放出された魔法力が凝固したのがあんたなわけなのね。」

「ご名答だね。さすがはアスカ。僕な事だけはあるよ。」


笑う顔を見ていると何だかいらいらしてくる。

「とにかく…とりあえず『物置』へ戻らないと。…あの魔方陣ぶち壊してやるわ。」

「あー…でも、アスカ魔法使えなくなっちゃったから 『物置』には入れないと思うよ?」

「うっ…じゃああんたの魔法で入れなさいよ。」

「いいけど……壊したら怒られない?下手したら停学になるかもしれないよ? あーあ、卒業も近いのに……
…そういう所は考えないなんて相変わらずアスカは……

「いちいちウルサイのよ!あんたは!!」



いらいらを払おうとして思わず怒鳴ってしまった。

『そいつ』は、びっくりした後申し訳なさそうに弱く笑い、言った。



「――ごめん。アスカ。」


とたんに苛立ちが復活する。

「ごめんで済むと思ってんの!!こうなったのは誰のせいだと思ってんのよ!
謝る暇があるならさっさと私の魔力に戻りなさいよ!!」

「も、戻れって言われたって分からないよ。 方法も分からないのに……
第一僕はアスカのの魔力である事はあるんだし…

「さっきまで飄々としてたくせにいきなり弱気になるんじゃないわよ! うっとうしいのよ!!」


あいつみたいで!


「大体あんたねえ!知ったようなふりしてあんたはあんた……ええい惑るっこしい!! 名前は?あんたの!」

「僕の?別にないけど。」

「あーもううざったいわね!!だったら自分で作りなさいよ!」


そう言うときょとんとした『そいつ』はしばらくうーんと考え込んだ。


「…僕はアスカの魔力なんだから…………『マジック・オブ・アスカ』…?
……うーん……ASUKAの反対でAKUSA………『アクサ』も良いね。」



………………。



……てっっっっって―――――的にセンスないわね。



「ださい。それに『アクサ』なんて言いにくいじゃないの。」

「えー?じゃあアスカつけてよ。僕に、一番呼びやすいやつ。 その方が気に入りそうだし。」

「ええ?」


わたしは一瞬躊躇した。

名前?それなら最初出会ったときから決まっていた。
だけど、その名前を呼ぶ事にすこし、ためらいがあった。

……『あいつ』はもういないのに。





ややしばらく考え、わたしは…ゆっくりと、その『名前』を口に出した。





「…………。……『シンジ』。」


その青い瞳がふっと笑った。


「……じゃ、僕は『シンジ』だね。よろしく。『アスカ』。」



そいつ・・・『シンジ』の差し出した右手をわたしはゆっくりと握った。





その手のひらは…………暖かかった。










−4−











とりあえず、わたしたちはマギ=アカデメイア中を歩き回って、元に戻す方法を探した。

『シンジ』と2人で書庫館中の書物を読み漁ったり(ほとんど前に読んじゃってたんだけど)、
考えられるだけの魔法を『シンジ』が合成してみたり(暴走しそうになったんで慌てて止めたけど)、
『物置』の木板や石銘を解読しようと躍起になったり(結局読めなかったけど)、
休勤している教官の部屋にこっそり入って資料調べたり(ばれたらやばいんだけど)、
もどれもどれもどれーと両手を組んで一心に祈ったり(まるっっきり無駄だったけど)

したけれど、…………やっぱり打つ手は見つからなかった。





「ねえ、単純に誰かに相談したら?」


「あんたバカぁ?こんなこと他の誰かに話せるわけないじゃない!?
笑い者にされるのがオチよ。」


今は休憩という事で食堂にいる。
向かいの席に座った『シンジ』に、わたしはココアを啜りながら言った。


「そんなものかなあ…?」

「そうなのよ。でも……あーどうしよう、このまま魔力が戻らなかったらわたし……」
「あ、それなら大丈夫だよ。さっきみたいに僕が魔法使うから。」


あっさりと言い放つ『シンジ』に、わたしは思わず頭を抱えた。


「…そーゆー問題じゃないわよ。
大体元々あんたはわたしの魔力なんだからわたしが好きにしようが勝手でしょ?」


「……すごい横暴に聞こえるよ…それ。…まあとにかく、自分が出来なきゃ嫌なんだね。」



ガタン、と、わたしは椅子から立ち上がった。





「…仕方ないわ。次の手段よ。」

「え?」

「さっきあんたが言った方法、使わせてもらうからね。」










わたしたちはアカデメイアを出た。


正門から出て少し行くと、町の大通りに出る。



「あ、『アスカちゃん』だ。こんにちは。」

「やあ、『赤少女ちゃん』。」

「今日も可愛いね。『赤魔女アスカちゃん』。」


…………やっぱり大人はわたしを見下してる。



いつもなら適当に返事を返すんだけど、今日のわたしは無視して通り過ぎた。

その後ろを『シンジ』が付いてくる。
怪しまれるといけないから、顔がわからない様に法衣のフードをすっぽりと被らせている。

…まあ、目立つから怪しいことは怪しいんだけど。



ずんずんと真っ直ぐに大通りを上っていくと、やがてこのネルフ王国の首城が見えてくる。
白亜の城壁の門をくぐると、本城とは別に左の方に大きな建物がある。

ネルフ王室直営魔法学修練校、パラス=リュケイオン。

マギ=アカデメイアと並んでネルフの2大魔法学校と言われているこの学校は、
国王が理事長なだけあって格調高い雰囲気を醸し出し、 見る人々に厳粛さと畏敬の念を持たせている。
……実際にはそんなに肩っ苦しくはないらしいけどね。



本舎となる大聖堂の重い扉をゆっくりと押し開けると、さすがに休日だからか、 中にはほとんど誰もいなかった。


「やあ、誰かと思ったら、アスカじゃないか。」

その中にいた、たった1人の人物に、わたしは精いっぱい嬉しそうに言った。


「お久しぶりです!加持さんっ!」





「いやー…ホンと久し振りだなあ。確かこの間会ったのは・・・
「一昨年の創立祭以来ですよ。」

「あ、そうか。あの時の魔闘大会で、アスカがうちの生徒を全員破って優勝したんだっけなあ。」



両手をぽん、と付いて言う加持さんにわたしは思いっきりにこやかな顔をした。


「そうか……2年ぶりか。それだけ経てば背も伸びるわな。 それにずいぶんと綺麗になったじゃないか。」

「やだ、加持さんたら…。でも加持さんなら凄くうれしいです!」

「そいつは光栄だな。で、今日はどんな用事があってきたのかな。」



加持さん…加持リョウジさんはこのリュケイオンの司祭の1人なんだけど、
他のじじい達と違って若いし、ハンサムだし、とっても気さくな人なの。 打ち解けやすいタイプっていうのかしら。
私も小さい頃からけっこう面倒見て貰ってたから、加持さんはわたしが一番尊敬している人なの。


「へ……え。そんな事があったのか。」


わたしは加持さんにさっきまでのことを逐一細やかに説明した。
加持さんになら何でも話せるもの。



「そいつは結構異例な話だな。…で、こっちがその『シンジ』君かい?」

言われて『シンジ』はフードを取り、ぺこりとお辞儀をした。


「なかなかいい男じゃないか。……やっぱ似てるよなあ。」
「え?」

はっ、としてわたしは加持さんを見上げた。


「…アスカに。」

「え?わ、わたしに??」

「そうだろう?こう言っちゃ悪いかもしれないが、アスカの分身なんだし。」


な、なんだ…そういう意味だったのね。
わたしは思わずほっと胸をなで下ろした。



「しかし……彼がアスカの魔力として戻るとなると・・こりゃ厄介だぞ。」

「もう一度…契約とかは出来ないんですか?」


契約っていうのは人の中に潜在している魔力を呼び起こす儀式のこと。
たいてい洗礼式のときにやるんだけど、それを行使するのが司祭である 加持さん達の一番大切な仕事なのよ。


だけど加持さんはゆっくりと首を横に振った。


「…一人の人間に二度の契約を行ってはいけないんだ。一度破棄された契約がどうなるのか、
再契約で引き出される魔力はあるのか、魔力のデートル自体がまだ解明されていないからな。
だから……一応、禁呪(タブー)の中に入っている。」

その言葉を聞いてわたしはぐっと息を詰まらせた。

禁呪、タブー。魔導士が決して使ってはならない魔法、または魔力行使。


「じゃあ、わたしの魔力は…」

「再び『植え付ける』、ってことは出来ないな。
まあ、他の方法ならあるのかもしれないが、何しろ前例がないからな。」





そん、な……






「すまないな。役に立てなくて。」

「いえ…いいんです。有り難うございました。加持さんと話せてよかったです。」

「いや、こちらこそ。…で、どうするんだい?」

「大丈夫です。何とかなります。心配しないで下さい。」


心の中を見せないように、わたしは精いっぱいの明るい笑顔で言った。


「あ。それから・・・このこと、他の人には内緒にしてくれませんか?」

「あ、ああ……承知したよ。頑張れ、アスカ。」





わたしは大聖堂を出た。



『頑張れ』……それが気休めの言葉だということはわかっている。


城門を潜り出て、はあ、と大きなため息を吐いて、気を取り直すと、わたし後ろを振り返って言った。


「さてと、次行くわよ!『シンジ』。」





だけど、シンジは暗い顔をしてうつむいていた。


「…何やってんのよ辛気臭い。しゃきっとしなさいよしゃきっと!」

そう言って背中をバンバンと叩いた。
それでも、『シンジ』は視線をゆっくりとわたしの方に向けただけだった。

「………って、ないだろ?」

「え?何?」


「……そう思って、ないだろ?アスカは。」





「な、何言ってんのよ…。」

「元から不安だったんだろ? だからさっさと解決しようと加持さんのところへ行ったんだ。でも、だめだった。」


「ち、ちょっと・・」


「他にすがり付けるところ、ある?」


「何言ってんのよ…とにかく黙りなさいよ。」


「一番頼りにしてた所が駄目だったんだよね。」


「黙りなさいって……いい加減に…」


「…………もう、駄目元なんだろ……?」
「黙れって言ってんでしょ!!」





はっと気がつくと、周囲の人々が驚いた顔でこちらを見ていた。


しばらくして皆元の動作に戻る。

その中に、こちらをじっと凝視している者がいた。

「……アスカ?」
「え?」



人ごみの中から、1人の少女が現れた。
青い僧服に身を包み、右手には小さな錫杖を握り締めている。
頭には僧侶(クレリック)の証の神官帽。
少々そばかすのある顔に、黒い瞳。
セミロングを2つに分けたおさげにしているその少女を認めると、
わたしの唇から、それに当てはまる名前が…自然に漏れた。


「………ヒカリ?ヒカリなの?もしかして!?」

「やっぱりアスカなのね!うっわー久しぶりっ!!」


わたしとそのヒカリは駆け寄ると両手を取り合って喜んだ。

ヒカリはわたしのすごい幼少からの友達なのよ。
でもアカデメイアに入ってからすっかり顔合わす機会が無くなっちゃってて……


「うっわー…えーと、……8年ぶりぃ?すごーい!今リュケイオンで何年生?」

「4年よ。アスカも有名になったわよね!うわさは重ね重ね聞いていたわよ。」


…同年代の子に誉められたのは初めて。

何か……嬉しい。


「ヒカリの方は?僧侶の勉強って大変でしょう?」

「そうでもないけど、少しね。 先生がものすごい形式ばった人で毎日の授業がすっごい……
…あ…お連れさんがいたのね。ごめんなさい。」


ヒカリは後ろに立っていた『シンジ』を見ると軽く会釈をした。 『シンジ』も笑って応対する。


「…………。」



ヒカリが少し顔を近づけて小声で言ってきた。



「ね、アスカ。あの人もしかして……彼氏?」
「!?っばっっ……違うわよ!!そんなんじゃないのよあいつは!」

「そう?でも何か顔赤くない?アスカ。」

「違う、違うのよ、ヒカリ…。」


何で顔に血が上るのか自分でもよくわからなかったけど、
とにかくわたしはその誤解を解こうとおたおたと言った。


「そう?でもさっき言い争ってたのまるで痴話ゲンカみたいだったわよ?」

「だ、だからねヒカリ…」

「いいわねぇ…アスカは。はぁ〜っ。わたしの周りにも誰かいい人いないかしらね〜」

「……も…いいわ…ヒカリちょっと性格軽くなったわね…」


しばらくそうやってじゃれ合いのような会話を続けていると、不意に後ろから声がかかった。



「何…話しているの?」



その声に、わたしははっとした。


振り返ると、丁度城門から出てきたばかりの、白い長いマントに身を包んだ少女が歩いてくるのが目に入った。

マントのすそから時たま醒めるような蒼色のドレスが顔を覗かせる。
そのマントを泊めている大きなブローチと、青銀の髪からその額にかかる額環(サークレット)の宝石、
そしてその双瞳は共に、……血のように鮮やかな、だった。



「れ、レイ王女様!」

ヒカリはぱっと離れてレイに向かって深々と会釈をした。 それを見た例は軽く左手を振る。
今はプライベートという意味らしい。



わたしは振り返ったまま礼もせず、ただじっとつっ立っていた。



「レ…レイ……。」


「…アスカ。久し振りね。……どうかしたの?…!?」


鈴のような声が滑らかに言葉を紡ぎ出す。
唄うような言い方は女賢者(セージ)の証。

レイはその赤い瞳でじっとわたしを見つめた後、不意に目をそらした。



「…あ……」



レイが見たのは、わたしの…後ろ。



「まさか……」



見据えたまま…レイはゆっくりと足を踏み出した。


「レ…レイ……。」


まずった…やばい……!

こんな所でレイが出てくるなんて…そんなことしたら…



レイは『それ』の前に立つと、おずおずと、 …普段の彼女からは到底見られないような、当惑と哀情、
そして………慕情のこもった眼差しで……ゆっくりと…尋ねた。








「…………碇……君…?」


















































「……ちがうよ。」










「…ごめんね。」





『シンジ』は…ゆっくりと首を横に振った。










「―――――っ!!」
「あっ、アスカ!」


居たたまれなくなって、気が着いた時には、走り出していた。





何?何なの!?


胸がぎゅっと締め付けられるような感じ。


何で?何でこんな感じになるの?



分かってたわよ。レイがああ尋ねることは。

予想してたでしょ?

だってレイは「シンジ」のいとこだもの。


そして『シンジ』は『違う』と言った。
あれはわたしの魔力だもの。

だけど、わたしは『あいつ』に――― 『シンジ』にそれを肯定されたくないと思っていた――!?





息が切れて、鼓動が早く、大きく感じられる。

わたしは壁に手をついて、息を整えた。
城から大通りを下って……どのくらい走ったんだろう。



わたしは息を整えながら、ゆっくりと………言葉を吐き出した。





「………来ないで。」



後ろの気配がぴたりと止まった。

わたしは振り返った。例の如く、『シンジ』が立っている。
『シンジ』は心配げな顔をしていた。

黒色の髪、同じ顔立ち、


だけど…わたしと同じ青い瞳を持つ『あいつ』。



「……何よ……」

「…アスカ……。」


「…何で……いるのよ……」


「…………。」



「…何で…何であんたがこんな所にいるのよ!!」




支離滅裂。何の意味もこもっていない。ただわめいてるようなもの。
だけどわたしは、それを押さえることも出来ず…ただ、感情の赴くままに叫んだ。


「何であんたがいるのよ!…せっかく忘れかけてたのに! そんな時になんであんたが現れるのよ!バカ『シンジ』! …あんたさえいなけりゃ…あんたさえ現れなけりゃこんな事にはならなかったのに!! 何がわたしの魔力よ!何が同じよ!!あんたなんかが出てこなきゃ全て丸く収まってたのよ!!!」





はあっ…はあっ……



いつのまにか涙ぐんでいた目をさっと擦ると、
わたしはまだ荒い憤りのまま、『シンジ』を睨んだ。




「…………。」




『シンジ』は唖然とした顔で立っていたけど、やがて…
…いかにも悲しそうな顔をしながら目をそらし、小さく、呟いた。



「…ごめん。…でも……僕はアスカだ。」


「アスカがいるから、僕がいる。…アスカがいたから、僕が生まれたんだ。
ぼくは…アスカの一部だよ…。」




「…ふざけんのも大概にしなさいよ…。」


わたしは冷ややかな目で睨み続けた。 対して『シンジ』は右手で胸をぎゅっ、と掴むと、うつむいて、言い続けた。



「アスカの心の中に……僕がいた。僕のこの井出達…この容姿…この存在は皆アスカが願ったものなんだよ。
アスカの心の一部なんだよ。だからアスカ…心を……隠さないで。…僕を捨てないでよ……ねえ…アスカ…
アスカぁ……お願いだから僕を捨てないで…僕を…見てよ!僕を認めてよ!!!







息切れは、既におさまっていた。



悲哀のこもった…その青い瞳。それに向かって、わたしは、言った。







「……そんなの知らないわよ。」



撃たれた様に『シンジ』が目を見開く。
その、左目から、ひとすじの涙が…こぼれ落ちた。


わたしは後ろを向くと、最後に一言だけ呟いて、その場を去った。





「―――ついて来ないで。」

















−5−











ガン……ガン……ガン……ガン………



雲の切れ間から太陽の光が差し込み、僅かな場所だけこの冷え切った大地を暖めていく。


わたしは乾いた石段の隅にゆっくりと腰を降ろした。



石段を降りた所には、噴水池のある公園があって、 今も小さな子供たちが何人かで遊んでいる。

石のベンチに腰掛けて、連れの女の人と和んでいる老人もいる。


しばらく見ていなかった、なんでもない光景。


私も昔はここで…皆と一緒に混じって遊んでいたっけ……。


わたしはひざを抱えて丸くなり、露出した足首を寒さから守るように法衣の裾をかけた。





………8年…か……






ヒカリたちは今, パラス=リュケイオンの4年生。
レイは王族だから、とっくに賢者(セージ)の資格を持っている。

そして…わたしは……。



わたしは首を振って、思い直した。



違う、後悔してるわけじゃないわ。アカデメイアに入ることを望んだのは私自身だもの。
自分より一回り近く違う大人たちの中で…別につらかったわけじゃない。寂しかったわけはないわ。
その分、勉強に…魔法の修練に打ち込めたもの。


……でも



…結局は……自分を相手に認めてもらいたかっただけなのかもしれないわね…。





『お願いだから僕をを捨てないで…僕を見てよ!僕を認めてよ!!』



『あいつ』の声が頭にこだまする。
わたしは膝に顔を埋める様に丸くなった。



『僕を捨てないで!』



そう。あれは―――わたし自身。

『あいつ』の行動、しぐさ、口調……全てわたしが心の底に閉じ込めていたものだわ。

大人たちは、本当のわたしを見てはいない。
子供としてしか、または魔導士としてしか、見てくれない。
黙っていたら…何もしてくれない。
だから、自分から動いて、喋って、自分を誇張しなくちゃいけない。
そうでなくちゃ、見てもらえなかったもの。
そうでなくちゃ、やっていけなかったもの。

わたしが大人たちの中で成長していくには、彼らと対等な立場になるよう、 人一倍努力しなくちゃいけなかった。
子供扱いされて甘く見られるのが、一番嫌だったもの。

でも………








ガン……ガン……ガン…ガン………



新しいモニュメントを立てる為のの砕石機の音が、辺りにこだましている。


その音の切れ切れの合間に、幼い子供たちの喚声が聞こえてくる。


どちらも、気にならなかった。かえって、自分の心の中に入っていけた。





「……寒い……な……。」








――――――本当は……泣きたかったのかもしれない…








………ガン………ガン……ガン……グガッ



「…え?」


妙な音に少し顔を上げた。



振り返ってみると、建立する大理石のモニュメントに、打ち付け方を間違えたのか、
無残なひびが遠目でもはっきり分かるほど大きく入っている。



あーあ、もったいないわね…。



最初は、なんとなくそう思っただけだった。


――だけど、

それに気付いていないのか、石の振り子の砕石機は、ゆっくりと離れると、 再び勢いよく石を打ち付けた!


ちょっ…そんなことしたら……

ガァン!





ひびの入った上に更に衝撃を受けた大理石は……上3分の1のところから放射線状に 亀裂が走り――――





…ピシピシピシビシ…………ガキィン!




砕けた。

その破片が、幾重にも重なって降ってくる!



「キャアァッ!」


公園で遊んでいた子供たちが悲鳴を上げて逃げ出す。

    ガン!

                                                     ガン!


                         ガン!




          ガン!

                                             
                                              ガン!





幾つもの石の破片が地面に衝突する!



「あっ!!」


若い女の人が、転んだおじいさんを支えたまま動けないでいる。

その2人に迫る落石!危ないっ!!


階段を駆け降りながら呪文を唱える!



『硬結界(エイ・テラー)!!』





発動しない!!



「しまっ…た!」



使えないなんて…こんな時に!!


せめて、動かそうと思っておじいさんの腕を持つ。
だけど、その3人の上に、群になったひときわ大きな石の破片が迫る!!


避けられないっ!!!


「「きゃああぁあああっっっ!!!」」


『豪風盾(ストーム・シールド)!!』






ズウ…ン……




そよ風が、凪いでいる。



わたしは、つぶっていた目をおそるおそる、開けた。



――目の前に立つ影。


左の方に、軌道を変えて落下した石の破片が、土煙を上げている。



わたしはゆっくりと、目を上げた。



冷たい風が、頬を冷やす。


アカデメイアの、裾の長い黒の法衣を、ゆっくりと靡かせながら、
それは、大きく肩で息をついている。



残っていた風が消えると、『そいつ』は、ゆっくりと、首だけをこちらに向け、 それから体を反転させて、言った。



「大…丈夫だっ…た…?…アスカ。」



わたしは膝の砂を軽く払って立ち上がった。


おじいさんと女の人の謝礼の言葉を丁重に返すと、『シンジ』は、 わたしの方を向いて、弱々しく笑った。


そのまま、そこに立っているだけ。
何も、話して来ない。


ただ、じっとわたしを見つめて、わたしが何か言うのを待っている。

恐いのね…わたしの言葉が。
わたしの反応が。
それを隠そうともせずに、『シンジ』は弱々しい、脅えた目で見つめている。



青い瞳。



…見せ付けられているようで、何だか腹が立ってきた。





「………ん……うえぇ…ん…え〜〜〜ん…」



はっと気がついて見ると、ひとりのちいさな女の子が、地面にへたり込んだまま、大きな声で泣いていた。

『シンジ』が踵を返して女の子の方に向かう。


「どうした…の?」



見ると、女の子は降ってきた破片で足を打ったみたいだった。 左足がありえない方向に捻られている。
余りの痛さに喋ることも出来ず、泣くことも止められないみたいだった。

ど、どうしよう…

と言わんばかりににあたふたと『シンジ』は辺りを見回して……一瞬、わたしと目が合った。
けれどもすぐ目をそらし、まごついた挙げ句…『シンジ』はその女の子の足もとに膝を付くと、
ごめんね、と謝ってから足を持った。


「!!!!!」

女の子が悲鳴を上げた。

痛い痛いと叫ぶその女の子の足を、慎重に動かして元に戻そうとしている。
やってる『シンジ』も、とても痛そうな顔をしている。


わたしは、それを眺めたまま動けなかった。



『シンジ』は懸命な表情で、足を直そうとしている。
…その全身に、淡い光が立ち始めた。


「え…?」


その暖かそうな光は『シンジ』の両手から女の子の足に移り、 白く輝き始めた。

女の子の鳴き声が、だんだん小さくなっていく。


まさか……あれは……!!



足が正常な位置に戻ると、光は消えた。


『シンジ』はゆっくりと、女の子を抱き起こす。

女の子は『シンジ』にしがみつく様にして両足で…立った。



「マユ!」
「! ママぁっ!!」

わたしのすぐ横を、エプロンを着けた若い女の人が駆け抜けた。


その女の人は『シンジ』から女の子を受け取ると、しっかりと抱きしめて、
ありがとう、本当にありがとうございました、とお辞儀をした。



女の子とその母親が去って、初めてわたしは『シンジ』に1歩踏み出した。


『シンジ』は2人を見送ったそのまま、背中を向けたままでいる。



「………あんた……やっぱりわたしじゃないわ……。」

『シンジ』は振り向かない。


「何よ…何で治癒魔法なんて使えるのよ…。あんたわたしなんでしょ?魔導士(ウィザード)でしょ?
なのに何で僧侶(クレリック)の『治癒(クア・ヒール)』 が使えるのよ!!?」



『シンジ』の真後ろまで来て、わたしは足を止めた。


「…使えるよ。……アスカにだって。」

背中を向けたまま、『シンジ』は言った。

「よく言うだろ…?『コトバの魔法』って。」


「ひとつの言葉でも、思いを込めて伝えれば、気持ちごと相手に伝わる。
…逆に、本気で憎しみを込めて言い放てば、それは心を抉る鋭利な刃になる……。」

「それと、同じだよ。魔法も…。『燃えろ』と強く念じれば炎が出て、
氷の粒をイメージすれば氷が現れる…。言葉は…一番感情を伝達させやすいんだよ。」

「魔力は…意志の力……呪文は…思いのコトバ……」


「治したい、痛みをなくしたいと思えば…それは癒しの力になる…?」


『シンジ』は振り返って言った。

「魔導士(ウィザード)も賢者(セージ)も僧侶(クレリック)も、 根本的なところでは皆一緒なんだよ。
それぞれの心の動きに、一番合ったものを選んだいるだけ。
…アスカは…まだ本気で人を労わったことがないだけなんだよ。」



シンジは、ふっと、悲しそうに笑った。

「……そんな余裕…無かったもんね…?」


「…知ったような口聞かないでよ…」


わたしは『あいつ』を直視できなかった。


「だって…ぼくは…」
「…わかってるわよ。いちいち言わないで。」





なんで…あいつの姿なのかしら。

それはわたしが望んだから。

でも、わたしは何で『あいつ』の姿を望んだのかしら…。

なぜ、『シンジ』なんだろう…。





「…あの、…アスカ。」

「何よ。」

「寒くなってきたし…そろそろ帰らない?」


言われて辺りを見ると、太陽が、西に沈みかけて赤い色に染まる頃だった。


「……そうね。暗くなってきたし、そろそろかえりましょ。」

意外と簡単に言葉が出た。
にっこりと笑った『シンジ』が右手を差し出す。


これで、仲直り…かな。いつもみたいに。

わたしはひとつため息を吐いてから、手を伸ばした。



けど、手を取ろうとしたその時……その右手が揺らいだ。



「え?」

とたんに『シンジ』がめまいを起こしたかのように、ふらっと倒れ込む!

「なっ…ちょ、ちょっと!!」

慌てて両脇に手を入れて倒れる体を支えた。
『シンジ』は…わたしに寄りかかったようになって、荒い息をしている。


「ど、どうしたのよ…一体!?」

「……ハァ…ハァ…ッごめ…ん……ちょっ…と……つか…れた……だけ……ハァ…ハァ…」



そういった途端、重さが無くなる。

「え??」


軽くなった『シンジ』の肩がわたしの手をするっと…通り抜けた!?


「し…『シンジ』…!?」

触れようと手を伸ばす。…!!透き通る!?


「……だい…じょ…ぶ……だか…ら…アス…カ…」

「あ…あんたねえ…そんな辛そうな顔しといて心配するなって言う方がおかしいわよ!」

「…そう………だ…ね…」

『シンジ』は、力無く微笑んだ。…消えてしまいそう……今にも…。


「…でも……大丈夫……慣れない事…すると、 皆…そうでしょ…?」

「慣れないことって…あ!」

さっきの治癒呪文!?



「あんた…さっきの分かっててやったの?」


「……ん……別…に……だけど…アス…カは……やさしい…から…」



『シンジ』の姿が、どんどん薄くなっていく…それと比例して、体からゆっくりと光が発ち始めた。

まるで、砂のように…さらさらと煙のように光の粉が体から離れていく。


「な……」

「…あ……もう……限界なの…かな?」
「何ですって…!」


シンジは座り込んだまま、自分の体から離れていく光の粉を眺めながら呟いた。


「…大きな魔力が…ひとつの場所に終結しているのは…本当は、とても…危険なことなんだ… ましてや人1人分の魔法力なんて…バランスを大きく乱すから…ね……だから…少しずつ分解されて…いくんだ…。」

「な……」

「それを…押さ…える為に…魔法を…使ってた…んだよ…今まで…。でも… 今日はいっぱい魔法…使っちゃっ…たし……一番安定する、主の側を…離れちゃっ…てた、から…ね… もって日没まで…と思って…いた…けど……さすが…アスカ、だね…」

「そ……」

そんな…!
じゃあ…わ、わたしが……!



「ごめん…ね……アスカ…」


『シンジ』は、消え入りそうな笑顔で言った。


「魔力…戻らない…かも…しれな…くて…」

「…だ、駄目よ…」


体が、震える。

喉の奥が…乾く。


…消えて…しまうの…?…消える!?



「………冗談じゃ…ないわよ……」


『シンジ』の笑顔がどんどん透けていく。


『シンジ』が…いなくなる。

それは、わたしの魔力が完全に無くなること。


…でも、決して、それだけじゃないことを、わたしは自覚していた。


…どうして?


…どうしてでもよ!!



「…あんた…このままいなくなったら…承知しないから! わたしの……わたしを置いていくなんて…二度と許さないからね!!」



涙が出そうになるのを、わたしは必死でこらえた。





「アスカ…」

シンジの、透き通った手が伸ばされる。


「大…丈…夫だよ…僕は…アス…カの…そばに…たと…え…消えてなくな…ってしま…って…も…
………だっ…て……僕…は……アスカだか…ら……アスカの心…に…いたん…だ…から…」




感触は、感じない。
だけど……その手は……暖かかった。




「……本当…ね…?その言葉…」



『シンジ』が、にっこりと。笑う。



「…じゃ…ずっと…そばにいなさいよ。今日は……今日だけは……ずっと ………消えてなくなるまで…無くなっても…ずっと…ずっと……いなさいよ…。」


シンジは頷き、そのまま目を…閉じた。










すっかり日も暮れ、街灯の淡い光だけが辺りを照らす、夜の闇の世界。

冬の夜は、誰もが家の中で暖かい夕食や、だんらんをして、温もりを感じる時。そういう、時間。


わたしは自分の部屋に帰ると、そのままベッドに潜り込んだ。


日中使われていない布団は、とても、冷たい。


「『シンジ』。」

呼び付けると『シンジ』はふよふよと寄ってきた。


………すでに、人の形を形成していない。

『シンジ』だったものは、ただ、光の塊となって、漂っていた。


魔法の、光。


小さく、弱々しいけれど……不思議とあたたかそうな光。


ベッドの布団の中で…そっと、両手で包み込んだ。



冷えたベッドの中は、とても肌寒かったけれど、胸の…抱きしめた最後の光は、
…とても……とても……暖かかった。





わたしなん……だよね。


わたしの中に、いたん…だよね。


だから……「あいつ」じゃないけど……。


だけど……わたしの…『あいつ』だから……。



……ごめん…ね…






「おやすみ……『シンジ』…。」


(……み…アスカ……)





虚ろに閉じていく、視界の中に…「あいつ」が……見えたような気がした。





……そう…あいつ…が………




















「いやああぁああああ〜〜〜っ!!!」

「どおしたの?アスカぁ。」


あいつに…最初に会ったのは、確か3つか4つのときだったと思う。
ヒカリたちにもまだ会っていない、本当に、幼い時だった。


あいつは…――そう、あいつの名前は――「碇 シンジ」



「こわくなんかないよぅ。かあいいでしょ?」

「いやいやいやぁっ!!かえるなんかをすででつかまえるやつなんてにんげんじゃないわよっ! きもちわるいっっ!!!」


シンジのお母さまは王様の親戚らしく、よくお城に入って行ったけど、
その間、わたしがシンジを連れて一緒に遊んでいた。


「はやくすててよ!バカシンジ!」

「…それはかえるさんにわるいとおもうよ〜?アスカぁ。それにこーんなちっちゃなみどりのなのに
こわいなんて…ぼくこのまえまちのおそとでこ――――んなおっきなやつみたことあるよ?
そのときはおじさんたちがやっつけてみんなでごはんにしたけど。」

「たっ……っったべたのぉ?あんたも!?」

「うん。おいしかったよ。」
「ああぁあああ〜〜〜〜っきもちわるいきもちわるいきもちわるいっっ!!!!」



シンジは人見知りが激しいくせに虫とか動物とかが大好きで、 相手からもよく懐かれていた様だった。
ウサギや猫やペンギン(?)とかならともかく、蛇やカエルや蛾なんかを捕まえて来た時は、
わたしは声を張り上げて怒るしかなかった。…あの時は。


「あ!レイだ!おはよーっ!」

「…おはよ……いかりくん。」

「ね、ね、レイ、さっきおしろのもんのとこでかえるさんみつけたんだ。かたつむりさんもいたんだけど
ねてたみたいだったからそのままにしといてあげたんだけど…ね?かあいいでしょ?」



「…………。」


「……あれ?」

「あ…あ、あんたばかぁ??なにやってんのよ!レイがきぜつしちゃったじゃないの!!」

「え?え?え?…これってきぜつってゆーの?うっわー…ぼくはじめてみたぁ。」

「ほんっっっとーにバカね!!バカシンジ!!!」



シンジと、レイと、わたしはいつも一緒だった。

世間で言う、幼なじみというやつだったと思う。

けんかしたり、絶交したり、泣かしたりもしたけれど…それでも、 わたしたちはずっと、ずっと一緒だった。


だけど……6歳の時――――






「ねえ、バカシンジ。」

呼び出したのは、街の外れの、小高い丘の上。


「なに?アスカ。」

「バカシンジにだけ教えてあげる。ぜったい内緒よ?レイにも。」

「え〜?なに??」

ごそごそと取り出したのは、1冊の古い、分厚い本。

「…なに?これ……『………ほー……がく……ぎ…』」
「『魔法学技術書典』よっ!!いいでしょー―パパからもらったのよ!」

「おたん生日プレゼント?」

「そうよっ!『アスカも6歳になったんだからそろそろ魔法をおぼえても良いころだ』って。
レイだってもう賢者の勉強してるんだし。」

「アスカのおうち、えらい人いっぱいいるからね。」

「それでね、きーてきいて!わたし来年アカデメイアにはいるのよ!! パパがわたしにそしつがあるからって!!」

「へぇ〜すごいね〜〜っ。……で、『まほー』って…なに?」


「…あ〜んたばっっかぁ〜〜?魔法を知らないなんて!それでも………ま、いいわ。 説明してあげる。」

地面に本を開き、図示する。


「いーい?これが…『水』、 これが『風』『火』、 で、こっちが『土』って書いてあるの。魔法はね、
この4つのげんそを使っていろんなことを起こす力のことなのよ。」

「いろいろなことって?」

「…うーんとねぇ…火を出したり…水を出したり…たつまき起こしたり…」

「…雨とかふらせる?お空とかもとべるの?」

「…もっ…もっちろんよっ!!」

「うわー!うわぁーっ!!すごいねーアスカ!!」



シンジに自慢したくて、シンジに誉めて貰いたくて、わたしは知っている限りのことをベラベラと喋った。


「……でね、こうやって指を組み合わせて、力をん〜とこめながら呪文をとなえると…火と風がまざって新しい魔法になるんだって!!」

「すごいすごいすごいねー!!!それができるの?アスカ!?」

「あったり前でしょ!ちょっと離れててよ。………『火(イグニス)!!』


空中に生じる、赤い炎。

「…わっ!……うわー!すごいすごーい!!」


調子に乗って、わたしは習った魔法全てを召喚した。


『水(アクイア)!』

『風(アネモス)!』

『土(テーラ)!!』



「すごい!!きれー!うわぁすごいよアスカ!!」

「へへーん、どーだすごいでしょー…でこれをこうすると ―――――『具現(インカネート)!!』



バァン!



――そのとき、異変が、起こった。







そのときのわたしは、まだ、禁呪の存在を知らなかった。

禁呪、タブー。それは魔道士が決して使ってはいけない魔法。または魔力行使。

それを犯すと、世界の理が褶曲したり、未知の厄災を生じるかもしれないから。


数々ある禁呪の中で、最も犯してはいけないタブーのひとつ、

それは――






――何の媒介も無しに、四元素全てを合成してはならない。―――






わたしの召喚した魔法は、互いに増幅し合い、互いに打ち消し合った。

合成と相殺…誕生と破壊…相反する力が同時に生み合い…溶かし合い…そして………










―――――『混沌』が――生まれた――――――









ゴオオオォオオオオ!!!!



周りのもの全てが、砂のように崩れて吸い込まれていく。





ゴオオオォオオオオオ!!!!





魔道書が、わたしの頬をかすめて飛んでいった。



「…う……うう……っ…く………っ…」




わたしは地面にしがみついて必死に踏ん張った。
掴まるために握りしめた草が次々と抜け、後ろに飛んで行く。





ゴオオオオォオオオオ!!!!





恐怖が走った。




恐い!

怖い!

いやあっ!!



グオオォオオオオオ!!!!



「ア…スカ……っ…早く…!」


「…!!…っだ……だめよ…シン…ジ……っ…来ちゃ…ダメ…っ!…」



大地にしっかりと潜り込む、大きな岩につかまりながら、シンジが手を伸ばしてくる。


「…アスカぁ…っ!」



その手を取ろうか――一瞬…迷った。



「!!!」


そのとたん、力が抜けて、体が大きく後ろへ引っ張られた!!


「きゃああぁあああっ!!」
「アスカっ!!」



がしっ!


離れていくわたしの手をすんでの所でシンジが捕まえた。





グオオオォオオオオオオ!!!!


「シ…ン……ジ……っ…!!!」

足場を滑らせて、体が、中に浮かび上がる。



ただ一点でわたしを捕まえている、シンジの右手。
それを握っているわたしの手が、汗ばんでくる。




「…ア……ス…カ…あ……っ…」



わたしを捕まえているシンジも、岩の一つの窪みに指をひっ掛けたまま耐えているだけだった。



このままじゃ…2人とも引き込まれるのは時間の問題―――





ゴオオオォオオオオオオオ!!!!



腕が痛い!

体が痛い!

足が吸い込まれそう!



靴が、脱げた。
一瞬、足元が見える。


「!」





ただ、その口蓋を開いてあらゆるものを呑みこむ、 黒…黒!黒!黒!黒!





その時、唯一繋がっていた左手が、

――軽くなった。



「「!!!」」



グオオオオォオオオオオオ!!!!



「や……っ…いやああぁあああああシンジいいぃぃ!!!!!」
「アスカああああぁあああああっっっ!!!!」






























静寂が………戻っていた。





わたしは……大地の上にうつ伏せに…倒れていた。

顔を、上げる。



辺りを、見回す。





木々は無くなり、生い茂っていた草も消え、
黒の…混沌のあった場所の地面も、えぐり取られたかのように大きく…消滅していた。





わたしは辺りを見回した。





風も…ない。



雲も…ない。



草も…



木も……



鳥たちも……





そして……





「……シ…ン……ジ?………し……ん…………」






そして………シンジの…姿も…………………







「……じ…………あ……あぁ………あ………」








わたしをかばったのかもしれない。



わたしが、身代わりにしたのかもしれない。





どちらにせよ、たった1人だけ……1人だけ吸い込まれなかった。


そして、もう1人は、消えた。





そう、碇シンジは――――――――消滅した―――――






「……あ……い……っ…い… いやあああぁああああああああああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ あああああああああああああああああああああああああああ―――――――――――っ!!!!!!!





















「…アスカ…?…どうした?アスカ。」



ネルフ国中に、捜索願いが出された。

王様が手を尽くして外の国々まで探してくれた。



「パパ。わたし、決めたから。」



だけど、シンジは見つからなかった。





―――――消えて、しまった。



わたしのせいで!!!




わたしの所為よ!!!!


わたしが魔法を使わなければ……こんな事には!!!




お葬式をした。……ここには居ない、シンジの…



泣いた。



レイも泣いた。初めて見せた涙だった。



パパも泣いた。



シンジのお母さまも泣いた。王様も泣いた。





なのに………わたしは、真実を…本当のことをみんなに話さなかった。



レイにも……パパにも……加持さんにも……誰にも話せなかった。


だって、恐かった!




わたしが消したのに!!


恐かったのよ!!…みんなに怒られることが!



わたしが殺したのに!!


怖かったのよ!!…とてつもなく悪いことを犯して…怒られて…
…みんなから追放され……みんなから捨てられるのが!!!




たった、それだけのことで!!

バカはわたしの方だわ!!
自分のことしか考えていないなんて最低よ!


最低!
最低!


最低!                                                                最低!


最低!                                                                最低!


最低!                                                                最低!



最っ低だわ!!















「パパ。わたし…がんばるから。アカデメイアで…魔法…一生けんめい覚えるから。」

「………そうだね…。アスカ……シンジ君の分まで…頑張りなさい…。」





……シンジの分まで……







そう…だからわたしは魔導士(ウィザード)の道を選んだ。


誰にも負けないくらいに、頑張った。

誰からも見下されないように、頑張った。



だけど……本当にそれで良かったのかしら…?



学ぶのはシンジが誉めてくれた魔法。

磨くのはシンジを消した魔法。



それで…本当に……良かったの?





…わからない………






でも…もしかしたら…『シンジ』のことは…やり直すいいきっかけなのかもしれない。


今まで、魔法にしか頼って来なかった…

それを見直す、いい機会なのかもしれない。




どちらにせよ、明日…目が覚めれば…変わる。

今までの…わたしの生活が…。



わたしは、胸の辺りの…かすかなあたたかさを…そっと抱きしめた。


明日になれば…きっと、消えてしまっているから…



だから……





ごめん…ね……『シンジ』………



……ありがと………そして……さよなら……










−6−











カーテンを開けたままにしていた窓から、太陽の光が差し込んでくる。

その眩しさに、わたしはゆっくりと…目を開けた。


「…う…ん……っ」



しばらくまばたきをした後、手を伸ばして大きく伸びをした。

布団の外は、朝方なだけあって、すごく寒い。

もう一度寝ようと思って毛布の中に潜りこん………?…なんか、狭い?


「え…?」


布団から、ばっ、と顔を出した。

ぱっちりとした、青い瞳と目が合う。


「え…?!!」

「おはよう。アスカ。」





『そいつ』―――『シンジ』は、にっこりと、笑った。



「っな……っ……き……きゃあああぁあああああっっ!!!







寒い。、冬の日の朝。

いつもと同じように過ぎていく、1日のはじまり。



「な…なっ何であんたがわたしのベッドの中にいたのよ〜っ!しかもまたハダカでっ!!!」

「あ、これは…別に意識してなかっただけで… 昨日ベッドの中に入れたのはアスカだったじゃないかぁ。」

「!!…そ…そりゃそうだったけど……『シンジ』あんた消えたんじゃなかったの…???」

「え?う、うん……えー…とね…」

『シンジ』は起き掛けのご丁寧にねぐせのついた髪を掻いた。


「…あの…昨日、眠る前に思い出したんだけど… ほら、一晩…眠ったでしょ?」

そこまで聞いて、私もはっと、思い当たった。




魔法力 一晩眠れば 元どおり 」 (RPGのお約束(^^;))




「…ね?だから今はパワー満タン元気百倍のパーフェクトな状態なんだよ。良かったねアスカ。
これで魔法が消えないですむし。…それにしても不思議だよねぇ。 魔法力の源って体力と関係があるのかなぁ…
…根性とは関係ありそうだけど……今度の論文にしたら?アスカ。
『睡眠による魔法力の復活と体力回復のメカニズムについて』とかってさ……あ、それから アスカぁ〜寝る時はブラ外してから布団に入った方がいいよ。 寝違えちゃったら形どころじゃないし、分身の僕としても本体のアスカがグラマーな方が心持ちいい………」
「バ・カ・シ・ン・ジ・ぃぃ〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」



いつもと同じように過ぎていく、1日のはじまり。

いつもと同じ朝で、いつもとは違う、新しいはじまり。


でも、どんなに違っていても、わたしはわたしだもの。
何も、恐れることはないわ。


魔法は使えなくなっちゃったけど、『シンジ』がいるし、
まあ、しばらくは、なんとかやってけるでしょ。




このアスカさまがここで終わるわけはないんだから!!見てなさいよ!バカシンジ!!










「でさ、アスカ。早く着替えて行こうよ。今日認定式でしょ?」

「え?…で、でもわたしは……」
「大丈夫だよ。僕が代わりにに魔法使うから。僕がアスカを助けるからさ。
適当に言い分け作っちゃいなよ。」


「……そうね。じゃ、着替えるからとっとと出てって頂戴。覗くんじゃないわよ!」

「………はいはい。(^_^;)」






ちょっと!このまま終わるわけじゃないでしょうね!!
ver.-1.00 1998+01/02公開
ご意見・ご感想・質問などなど、 こちらまで!


あとがき反省会


駆夏「どうも、飛羽駆夏(とばかるか)です。ここまで読んで頂きまして、有り難うございました。
本当はぎりぎりでも30日の内に大家さんに送りたかったんですけど、隣でかーさんがテレビ見るし…うわさのドラマスペシャルやってたし… いつのまにか『何で年末だからって第九流すの〜〜(;_;)』とか『弐号機はパワーアップじゃなくてPRODUCTION MODELなんだ!』とか突っ込みながら見てました。」

アスカ「ほ〜〜〜っ。それでその番組最後まで見て結局上げられなかったわけね。」

駆夏「……はい。そです。すいません。」

アスカ「まったく!これじゃどうやったって読まれるのは1998年入ってからじゃない! セイ者が詰まってからせめてこっちだけでも間に合わそうとしてたみたいだけど、 結局自決締め切り破ったわね。や〜いや〜い、や〜いうそつき〜うそつき〜うそつき太郎〜」

駆夏「(う、内輪ネタを…(^^;))…はい。そうです。大家さんを始めほんの少しでも待ってて下さってた(いるかなぁ…) 皆様本当に申し訳ありませんでした。悪いのはわたしの怠慢です。ごめんなさい。わたしは嘘つき女です。新年は厄年女です。」

アスカ「関係ないことまで言ってどうすんのよ。 …ま、とにかく謝ってるだけで終わってもしょうがないし、 早く作品解説の方に移っちゃいなさいよ。」

駆夏「はい、そうします。ぎりぎりまで延ばしてそれを超えて、 気が付いたら80KBを超える大作もどきになってましたけど、 私の書きたかったことは全部入ったと思います。アスカさん、何かご不満はありますか?」

アスカ「おおありよ!こんなに長くして!長くなったら分けろって言われてたでしょうが!」

駆夏「はい。そうです。でもど〜やっても途中で切ると違和感が残っちゃってて ……気持ちの問題で切らないことにしました。 多分読んでる方で1回で読み込めなかった方もいらっしゃるんじゃないかと思います。 すいません。」

アスカ「謝るだけなら使徒でも出来るわよ。それにこの世界観は何よ!?半日とすっ飛ばして明朝のシーン しか書いてないのに、あんなに沢山アクシデントが起こるなんてこと、普通無いわよ!」

駆夏「ま、まぁそれはお話ということで…(^_^;)」

アスカ「安易な答えに逃げるんじゃないわよ。 おまけにわたしは教官にタメ口きいてトラウマ持ちで、 夢の中でも意識がある摩訶不思議な少女になってんじゃない!」

駆夏「あ〜う〜〜…そんなとこまでこだわらないで……(^_^;;) これでも頑張ったんですよ?女の子1人称への初の試みでしたし…(チェックしきれなかった所あったら教えて下さい。) 魔法を作るのにかなり悩んだし …それに見てくださいよ!この前代未聞の女性キャラの多さを!!」

アスカ「あんたの小説が男ばっかだからでしょうが。 それにわたし以外ちらっとしか出てないじゃない。」

駆夏「あうぅ…(^_^;;;)は、話を変えましょう。えっと、この話の世界観について、 とりあえず、魔法世界です。魔法はいろいろ参考にしてますけど一応オリジナルです。詠唱呪文は ぶっつけ本番でした(オイ!)カタカナの所はまだ解読されていない文字の音読みということで… (でも『シンジ召喚呪文』はわかる人にはわかるでしょう(^^;))
魔法少女アスカさんはネルフ王国の中でも5本の指に入る実力者ということになってます。 唱えている呪文もかなりの高等基礎魔法です。最初の戦闘も例えばマヒャドとメラゾーマがぶつかった と考えれば一番わかりやすいでしょう。」

アスカ「それをいきなり最初っからぶち壊しておいて―――」

駆夏「それが今回のテーマなんですから。その為にかなり強引に話進めさせて『シンジ』君出しましたけど。」

アスカ「『アスカの中の碇シンジ』?……めぞんのどこかの話と似たような話ね。」

駆夏「(^_^;;;;)さ、最初は本編の弐拾伍、弐拾六話を見返していて『…何かシンジ君とアスカっていっしょじゃーん』 と思ったことがきっかけでした。」

アスカ「ちょっと!どーゆーことよ!!わたしとバカシンジが一緒って!」

駆夏「えっとですね。過去について言えばアスカさんもシンジ君もお母さんが死んでる(でいく)所をはっきりと見てますし、 僕を捨てないでとかわたしを殺さないでとかのも似通ってましたし、 ……それ以前の境遇は正反対ですけど………反対って言う事は1つのグループに入るってことでしょう? で、アスカさんから見たシンジ君の記憶をベースに、アスカさんの理想が入った、アスカさんの分身ということで…… かなりややこしいですけどこれ以上は伏線なんでノーコメント(^_^;)」

アスカ「文章長いと読者が引くわよ。…じゃ、わたしの思い通りの『シンジ』っていうわけ?」

駆夏「ちょっと語弊がありますけど、そゆことです。」

アスカ「そう、思い通りってこと……ふふふふふふふふふ(ニヤリ)」

駆夏「(…聞いてやしないっすね)それではこの辺で。ここまでおつきあい下さいまして有り難うございました。」

アスカ「ちょっと!このままはいサヨナラで終わらすつもりじゃないでしょーね!! わたしはどうなるのよ!このまま魔法使えないままだったら承知しないわよ!!」

駆夏「え…いや……一応続きは考えてありますけど、これから他の作品も頑張らなくちゃいけないですし…。 それに正直言って続こうか迷ってます。今回反応がマジで心配ですし。」

アスカ「あんた自分で書いたのに責任取んなさいよ!これ読んでる読者のみんなも発破かけてやんなさい!!」

駆夏「ここが変だ、わけ分からん、どーゆー意味?等の質問、叱咤、感想がありましたらじゃんじゃん送って下さい。 続きはそれらを元にして修行してレベルUPして書きたいと思っています!」

アスカ「それじゃ、ASUKAKUSA2まで再見!」


 飛羽 駆夏さんの『ASUKAKUSA』、公開です。
 

 魔法少女アスカちゃん・・・

 なんて萌える副題なんだ〜♪
 

 いや別に、私は”魔法少女萌え”ではないですが(^^;
 

 
 ぶかぶかで薄手の生地の衣装・・

 このあたりには萌えるよね?!

 ダメ?(^^;
 

 

 

 魔力が形となって、
 それが過去の傷を自らに突きつけるもので、
 自分では魔法が使えなくなったりして、

 アスカの今の心と
 そこに至る動きがきますね・・
 

 
 魔法を使えなくなったアスカ
 消えたシンジとアスカシンジ
 他のキャラ達

 気になるところがいっぱいです〜
 

 

 さあ、訪問者の皆さん。
 大作を書き上げた駆夏さんに感想メールを送りましょう!


TOP 】 / 【 めぞん 】 / /[飛羽 駆夏]の部屋