カシャッ・・・・・ヴン・・・
「登録確認、110−SA0014、シンジ・イカリ」
僅かな読みとり音の後、確認の音声と共にサブモニターにEVAのデータと、シルエットCGが表示される。
「ヘルメット及びシートベルトを着用して下さい、着用なき場合すべての操縦システムは作動しません」
彼は指示に従いベルトを付けると、これから始まる戦いに不安と期待を込めて、ヘルメットのバイザーを降ろした・・・そして・・・
「本日のフィールドは、アルファ・ケンタウリ系第四惑星ゴースト・シティエリア・・・重力1.2G地雷原なし快晴」
アナウンスと共にゲートが開いた・・・・・・
【ちょうど僕らが生まれた頃・・・アーケード産業は市民権を得たのだという】
【2015年現在───】
【かつては無謀な若者のたまり場と信じられていた場所で、あらゆる状況の仮想現実を作り上げる一連の遊技に】
【・・・僕らは熱狂していた】
太陽の下、砂煙を上げながら一体のEVAがゲートから現れる。それはやけに長いシングルアクションの銃を両手で持っているだけの、やたらと軽武装のモノだ・・・そう、シンジの相棒の”九朗”である。しかしその姿は、若干の変更がなされており、前回左腕に装備されていた盾はなく、その代わりなのか、横に向かって大きくせり出した円筒状のプロテクターが両肩に装着されていた。
「ハーイ!シンジ!!」
シンジのコクピットに可憐な声で通信が入る。その声で機体の向きを変えると、がれきの上に”ベンケイ”がたたずみながらこちらを見下ろしている。
「ずいぶんと待たせてくれたじゃない」
声の主は笑顔で言っているが眼は笑っていない。
「ご、ごめん、一寸職員室に用が有って・・・」
ドン・・ボン
「うわっ!!」
その言い訳には答えず(シンジは正直に言ったのだが)左腕についた主砲のバズーカーが火を噴き”九朗”の左肩プロテクター半分を吹き飛ばす。
その後、今度は満面の笑みで返事を返す。
「デートに遅刻したんだから当然よね!」
「ひ、ひどいよアスカ!!」
シンジは抗議の声を上げるがアスカは当然のごとく取り合わない。
「いくわよ!」
かけ声と同時に”九朗”との間合いを詰めるアスカ。
「・・・もっと・・こう・・風情のあるデーとしたいな」
言いながら、臨戦の構えをとるシンジ、それに向かい振り上げた左腕を振り下ろす”ベンケイ”。
「あら?”九朗”とデートするのに、他にどんなやり方があるって言うの!?」
「・・・・・・・」
不満の顔をしながらも何も言えないシンジだが、機体は攻撃をしっかりかわしていた。
そのころ店内では、トウジがカウンター近くのテーブルに陣取り、シェイクをすすりながらモニターを見て軽くため息をついた。テーブルの上にハンバーガーの包み紙が四つほど丸められている。 『まったくようやるで・・・』
「どーしたの?鈴原」
背後から聞こえた女の子の声に振り向き答える。
「ん?なんや洞木はんか、見ての通りや何もしとらん」
「だって今ため息してたじゃない?」
それを聞きトウジは、顔をモニターに向ける。その様子を見て彼女もモニターの方に眼を向けると、その中で戦っている二人を見つけた。
「あら、すっかり仲良しね!あの二人」
「そ、そやな・・・・」
トウジは、どつきあいをしている二人を見て苦笑いをしながら返事した。
「だって意外だったわ。アスカって男嫌いで有名だったから」
「そうなんか?・・・じゃ、がっこではどないなんや?」
彼女は、トウジの向かいに座り人差し指を顎に当てて話を続けた。
「そおねぇ・・一寸気が強いけど頭はいいし、運動神経も良い元気な女の子よ」
とそこまで言うと少し俯きかげんで視線をはずし、静かに話し始めた。
「・・・す、鈴原も・・・アスカに興味あるの?」
その様子に気づいたのか気づいていないのか、自分を指さし一寸驚きながら明るい声で返事をする。
「ん?わし・・誰があんな気の強い女っ、頼まれたってごめんや!」
その返事を聞いてほっと胸をなで下ろしたが、それはスピーカーから聞こえたひときわ大きい音や声によって誰にも知られることはなかった。 モニターには、たった今ライフルを撃った”九朗”と、その銃弾を受けた”ベンケイが映っていた。しかし、ダメージはほとんどなく、左腕を伸ばすと反動でバランスを崩している”九朗”の首根っこを捕まえた。
「!!」
「ねらいが甘い!」
ドグワッ
そのまま左手を引き寄せ、右手の主砲を”九朗”の頭部めがけて至近距離でぶっ放す。だがそれは、左手で砲身の向きを変えられたため腕と顔の一部を焦がす程度で終わる。
「そっちこそ!!」
シンジは、叫ぶように言うと右手のレバーを操る。
バキャ
”九朗”が腕を払いのけようともがいたとき、右手で持っていたライフルのサポートが”ベンケイ”の頭部に当たりアイカメラを破壊した。同時にアスカの目の前に砂嵐が広る。
「うそ!?主眼が!!」
「やった!!」
回線を開きぱっなしで戦っていたので、相手の言葉で自分の優位がわかると喜びの声を上げ、拘束から逃れるとおもむろに弾丸を装填し狙いを付け撃つ。
ドン・・・・・・ボンッ
「!!」
弾丸は寸分違わず”ベンケイ”の右胸部に当たった。筐体内に合成音声が流れる。
「This cockpit was crashed.・・・・・GAME OVER.」
「ゲッ!!パイロット死亡〜〜〜〜〜〜!?」
「ふぅ・・・今日も何とか勝てた」
シンジは、自分の勝利を確認すると安堵のため息と共にシートにもたれかかった。
「デンジャープラネットV第12ゲームが終了しました。筐体付近のお客様は白線の外へお下がり下さい」
アナウンスの後、二人の乗った筐体がせり出してくる。出てくるなりアスカは、ヘルメットで筐体を軽くたたくと地団駄を踏見ながら悔しがっている。
「あーっもう絶不調!!!まーた”ベンケイ”がランクダウンしたじゃない!!」
その剣幕に一寸怯みながらも背後から声を掛けるシンジ。
「・・あ、あのアスカ?・・・今度の日曜日あいてる・・かな?」
それに対して勢いよく振り返るといきなりシンジの胸ぐらをつかんだ。
「あたしはいつでも良いわよ!よーし日曜ね、今度こそこてんぱんにしてやるわ!!」
「・・・・ちょっ、ちょっと・・く、苦しい・・・」
「かーっ!聞いとれへんわ!!」
その様子に呆れたような声が掛かる。アスカは、シンジをつかんでいた手を乱暴に離すと、キッとトウジを睨んだ。
「何よ!あんた、あたしに文句でもあるってぇーの」
「んなもんないわい!・・・まっいいわ、実はな、今度の日曜にワシらの学校で文化祭があるんやがけーへんか?」
勢いに気圧されつい大きな声で言い返すが、気持ちを落ち着けると用件を述べた。
「国府高専の?」
「・・・げほ、同好会で”デンジャープラネットT”の筐体でアトラクションするんだ」
アスカの疑問の声にシンジが首もとを押さえながら答えた。
「う〜ん、じゃあ一緒にいこうヒカリ!」
「・・・・・・・」
一瞬顎に手を当て考えると、トウジの向かいの少女に声を掛けた。しかしヒカリは組んだ手の上に顎を載せながらぼーっとしている為気がつかない。
「?ねえヒカリってば!」
「・・・・・えっ!?な、何アスカ?」
「もう、どうしたのよ、だ・か・ら日曜に国府高専の文化祭に一緒に行こうって話よ!」
目の前で手のひらをヒラヒラされたのに気づいて返事をしたヒカリに、半ば呆れたように答える。
「えっあたしも行っていいの?」
「もちろんや!!歓迎するで!」
「・・・そ、そう・・・・」
「ふ〜ん、そおいうこと・・・」
間髪入れないで返された声に少し頬を染め俯くと、小さい声で返事をした。その様子を見ていたアスカがにやけながら呟いた。
「じゃあきまりね!!」
「ところでヒカリ時間は良いの?」
「えっ・・・・・あーーもうこんな時間お父さんに怒られちゃう!じゃあまた後でアスカ!じゃあごゆっくり碇君、鈴原!」
自分の時計に目を落とし軽い悲鳴をあげると友人に挨拶をしてあわただしく走っていく。この店は、彼女の父親が店長なので、中学生の頃からカウンター業務などの手伝いをしているのだ。
20分後
「じゃあ僕たちもそろそろ帰るよ・・・あっそれと、今週中は学園祭の用意で来られないと思う」
「あっそうわかったわ、じゃあ他の男とでもデートしてる」
「そ、そんな!!」
その言葉に思いっきり動揺するシンジ、その様子を見て満足すると笑顔で言葉を続ける。
「いっぱいデートして”ベンケイ”の失点を取り戻すのよ!ここんとこ負けてばっかりだしね、丁度良いわ!!」
「・・・・ひどいよアスカ・・・・」
「にしても、毎日毎日よう飽きんなぁ」
そんなやり取りを見ながらトウジがぼやく。それを聞き止めたアスカが一瞬表情をこわばらせた後、返事を返す。
「・・・千機のエヴァを倒すのが目標なのよ・・・だから”ベンケイ”・・・」
このときアスカの瞳の奥に陰が宿ったが、誰も気づくことはなかった。
「なるほどなぁ・・・まっがんばれや!」
トウジは、頭の後ろで手を組みながらどうでも良いように返事をした。アスカは、軽いため息をつくと日曜の確認をする。
「じゃあ、校門の前に10時にいればいいのね?」
「うん、迎えに行くから」
「遅れるんじゃないわよ!!」
「うん、わかってる・・・・・・そっ、その・・かわいい服できてね・・・・」
そこまで言うと赤くなって俯いてしまった。(なら言わなけりゃいいのに)そんなシンジを見ながらアスカが答える。
「わ、わかってるわよそんなこと!!それともこのあたしが信用できないって言うの!?・・・まっいいわじゃあ今度の日曜日に!」
「じゃあ日曜に・・・」
「ほならまたな」
軽い挨拶をすると二人は帰路についた。残されたアスカは、ニヤニヤ笑いながらほおずえをつき考え事をしている。
『それにしてもヒカリったら、あんな奴のどこが良いのかしら?』
『まあいいわ、あたしにまかせなさいヒカリ!良い作戦を立ててあげるからね!』
人の恋路には燃えるアスカだった・・・・・
ポン、ポン、ポン
「こちらは、第三新東京市立国府高専放送部です、本日は第11回三国専祭におこしいただきありがとうございます」
開催の花火があがり校内放送が流れる中二人の少女が校門の前でおしゃべりをしながら人を待っている。一人は黄色のワンピースを着て茜色の髪を赤い髪飾りで留めたアスカ、もう一人は、白いブラウスに膝下まである紺色のスカートをはき、手に大きなバスケットを持ったヒカリである。
そこに彼女らの待ち人らしい二人組が現れ、そのうち制服姿の一人がこちらに気づくと手を振りながら走ってきた。
「ハァ、ハァ・・ごめんアスカ待った?」
「おっそいわよシンジ!!何やってたのよ!!」
「ご、ごめん・・一寸打ち合わせがのびちゃって・・」
実際に遅れたのは3分くらいなのだが、彼女にとっては3分だろうが1時間だろうが関係ないらしい。
「でも来てくれてうれしいよ」
「約束したんだからあったり前でしょ!!」
「うん・・すごくかわいい」
「あ、あったり前でしょ!!・・・・全く・・・早く案内しなさいよね!!」
笑顔で話すシンジに、顔を赤くしながら大きな声で返事をする。そんな二人を見ていたヒカリと、頭の後ろで手を組みながら歩いてやってきたいつもどうりジャージ姿のトウジが笑いながら挨拶をする。
「くすくす・・おはよう碇君に鈴原」
「ああ、おはようさん!にしても朝からあっつうてかなんな〜」
ニヤニヤ笑いながら茶化すトウジと、手を口元に当てて未だに笑っているヒカリのせいで、二人とも真っ赤になって俯いてしまった。
「ご来場のみなさま、お楽しみいただいておりますでしょうか、ただいまから本校のご説明をいたし・・・・・・ぎゃぁ・・・」
ピーーガーーーゴン、ガタガタ・・・・ブツン!
「アー、アー、テステス、本日は晴天なり・・・コホン・・・この放送をお聞きの諸君!!我々は国府高専ビデオゲーム同好会です。ただ今からグランドにおいてアトラクションを行いますので、みなさんお誘い合わせのうえお越し下さい!では・・・」
ガタガタ
「ふーまったくもう・・・・失礼いたしました。えーとでは本校では・・」
「な、何なの今の!?」
「やっとるやっとる」
突然の出来事に、復活したアスカが質問するが、トウジは何事もなかったように流す。その時、背後こら忍よる影があった。
「この学校の伝統でね、日頃生徒会に虐げられている同好会がゲリラ活動を起こすんだ。あなたがいつも碇君達と遊んでくれる新屋敷高の惣流さんだね?」
あわてて声のする方向を向く4人が見た者は、薄い水色のカバだった。そうむかしのTVアニメの主人公である。その手には”ビデオゲーム同好会アトラクション『DPTにAIを込めて』”と書いてある大きなプレートを持っている。
「あっ会長!今日は晴れ着なんですね」
「似合う?」
「何や会長はんか?おどかさんでほしいわ!」
こともなげに話すシンジとトウジを横目に唖然としている二人の少女。
「アスカ、洞木さん紹介するよ、僕たちの同好会の会長で長船さん」
まだ固まっている二人に目の前の物体を紹介する。そんな二人に近づくとおもむろに話し出すカバ。
「今からアトラクションやるから良かったら見てってね!!」
と言うとスキップしながら去っていくカバ、はっと我に返って質問する二人。
「・・・何なのあれは?」
「いやだからうちの会長だけど?」
「だ・か・らそういう事じゃなくて!なんであんな物着てるのか聞いてるのよ!」
「えっ!だってうちの学校4年生から私服なんだよ」
返ってきた答えに信じられないと言うような顔で聞き返すアスカ。
「あれが私服って言うの!」
「いつもは、クマとかウサギとか着てるよ」
笑顔で答えるシンジに何も言えなくなる。そのやり取りを黙って聞いていたヒカリだったが、確認の質問をトウジにぶつける。
「ほんとなの?鈴原」
「嘘やないで・・・そういや会長はんの顔って見たことあらへんなぁ」
素直に答えたトウジだったが、片手を頭の後ろに回すと空を見ながら呟いた。そんな時、二台の大型トラックが校門からグランドに向かって入ってくる。その一大の側面には大型のハイビジョンモニターが埋め込まれている。 とたんに驚嘆の声や歓声が上がり人々がグラウンドに集まってくる。すでにグラウンドでは特設のステージが用意されており、その真ん中には頭に茶色のトンガリ帽子をかぶり、同色のマントを羽織って片手にギター、もう一方の手にマイクを持った眼鏡を掛けた青年がイスに座っていた。青年は、頃合いを見計らって話を始めたが、その声は先ほどの放送と同じ物だった。
「みなさんもご存じのように、2001年到来を契機に外資系の大手ゲームメーカーのゼーレ社が、超大型体感筐体を看板に、独自のアミューズメント・チェーンを展開したことにより、国内での通信対戦ゲームが飛躍的に布教したわけです」
「油圧可動式のコクピットとCGスクリーンの組み合わせによる体感ゲームは誰もが一度は熱狂されたことでしょう・・」
そんな中例の四人組も会場にやってきた。
「今あそこで演説してるのが2年の燈谷先輩って言うんだ」
話をしているのを聞きながらシンジが説明する。その姿を確認したアスカとヒカリは同時にため息をついた。
「なに、あの人もいつもあんな格好しているの?」
「ちゃう、ちゃう!あの人はこんな日やから会長にあわせただけや!」
ヒカリの質問に、手を振りながら答える。
「もう良いわよ!シンジまだ始まらないの!」
「も、もう一寸待ってよ・・」
苦笑いしながら答えるシンジ。ふと気づくといつの間にかマイクが目の前に固定され、ギターを弾きバックミュージックにしながら説明する燈谷の姿があった。
「そして大手ソフトメーカーゲルヒン社が参入・開発した”デンジャープラネット”シリーズの登場です!!」
「惑星間戦争を背景に行う超リアルアクションゲームですが、最近では主にバトリングのみを楽しむ傾向にあります」
「それらに使用されるロボット、これらElectronics Virtuality Armorは、通常その頭の字をとってEVAと呼ばれ、そのデザイン、果ては設計までを自宅のパソコンで行うことが可能であり、その自作機のデータは”ゼーレパレス"で専用ディスクに書き直され、そのディスクを筐体コクピットのドライブに入れれば自作機でのプレーが可能になるわけですが、もちろんゲームバランスを保つために、理にかなわない設計・性能EVAデータはマスターシステムによって拒否されます」
「このゲームシステムは大反響を呼び、他社参入のツールソフトが大量に発売され、また、各ソフトハウスはレディメイドEVAの開発にしのぎを削っています」
「今日お集まりのみなさんには、このゲームにシリーズ1作目をお楽しみいただきたいと思います」
その言葉と同時に、もう一方のトラックの荷台が開き中から小型の筐体が出てくる。それにアスカは、驚きの声を上げる。
「すごいじゃない!どうしたのあれ?」
「何、私の同級生だったOBのコネですよ」
その問いにいつの間にか側にいたカバが答えた。
「おまえ早く卒業しろよな!」
カバのわきに立っていたスーツを着た男性が呆れながら言う。その男性は、シンジ達に気づくと懐から名詞を取り出し自己紹介を始める。
「あ、君たち新入部員?私同好会のOBでこういう者です」
と、差し出された名詞には名前と株式会社ゲルヒンの名前が印刷されてあった。それを受け取りながら自分たちも自己紹介する。
「あ、ゲルヒンのかたでっか?わしは、鈴原トウジ言います」
「・・・碇シンジです・・・どうぞよろしく」
「へ〜碇君て言うのか、珍しい名字だね・・・・ん、どっかで聞いたような?」
ワー
腕を組んで考え事をしている男性を見て苦笑していたが、急にあがった歓声に振り向くと、第一試合が丁度終わったところだった。そしてその勝者の筐体には、何時の間に乗りこんだのかアスカの姿があった。
「ア、アスカ何時の間に?」
「さて第二試合は、先ほどの勝者の惣流さん&”インテンス”対二年電子科の水野君&”クライン”・・では、第二試合開始!!」
そんな疑問をよそに、開始の合図がなされ試合が始まった。
ボン
開始数十秒、”クライン”は電脳空間のゴミと化した。その後もアスカは圧倒的な強さで勝ち進んでいく。
「・・・・・・・」
「ん?どないしたんやせんせ!」
「・・・僕、今まで”ベンケイ”の性能ばかり目がいっていた気がする」
「何やいまさら、ま、あいつはパイロットとしてもあなどれん敵やゆうことや・・・何なら今対戦してみたらどないや?」
「はぁ」
シンジがため息をついたとき司会の燈谷がアナウンスを入れる。
「4人勝ち抜き!後一人勝ち抜けば株式会社ゲルヒン提供の賞品が手に入りますよ!がんばって下さい!」
「君たち!!どういう事だねこれは?君たちビデオゲーム同好会は出展を認められていない筈だが!?」
突然、シンジ達の後ろからヒステリックな叫び声をあげる、眼鏡を掛けたいつぞやの青年。その言葉にカバが青年を指(?)差し言い放つ。
「たしかに!!貴様ら電算部の陰謀によって我が同好会の文化祭参加は阻まれた!!」
「ふっ、それは誤解というものだよ、なぜなら我が電算部の好意を裏切ったのはそちらだからね!」
「す、すみません部長」
両手の掌を上に向け首を左右に振りながら話す青年に、シンジが謝るがそれをかき消すように避難するかば。
「いかにS.AランクのパイロットとはいえEVAの性能に問題があるのではご期待に添いかねる!」
「その暴言取り消してもらおう!!あのEVAは我が電算部の総力を結集した自信作だっ被害妄想も甚だしい!!」
「”電算王!が”ベンケイ”に負けたんは性能差が決定的だったからやろ!」
「なんだって〜〜〜〜〜」
頭に血が上った者に対して火に油を注ぐような言葉を掛けるトウジ、そこに騒ぎに気づいた燈谷が話しかける。
「おや、電算部の日下部部長、どうです一戦?」
「ふん!女子供相手に何をしろというのだ!!」
「何や怖いんか?そうやろなぁ、なんせあいつが”ベンケイ”のパイロットやからなぁ」
「何?そいうことなら話は別だ、最新機”電算王弐号機”で勝負してあげよう・・まあ勝敗は見えてるけどね」
簡単に挑発に乗ってしまうが、彼はまだ気づいていなかった、先ほどからの会話を、筐体のシートに座り聞いていたアスカの額に、数本の血管が浮かんだことに・・・・
両者の準備が終わったところで燈谷の合図と共に戦いの幕は切って落とされた。
「試合開始!!」
10分後
バタッ
10分間それは彼にとって永遠のように感じた時間かもしれない。戦いは一方的なものだった。それならなぜこんな時間がかかったのかと言えば、答は簡単アスカがなぶったのだ。致命傷を与えないように殴るは蹴るは、そのたびに暴れ狂う筐体それはもはや暴れ馬のようであり、ふらふらと降りてきた彼が、口元を押さえたまま地面に突っ伏したとしても誰も文句を言えなっかった。
「おめでとうございます!これは賞品です」
「ありがとう!」
何事もなかったように事が運びシンジ達の元にアスカがやってきた。ちなみに日下部部長はそのまま放課後まで寝てたらしい・・・合掌・・・
「あーおなかすいた!シンジなんか食べにいこ!」
「うん、もうすぐお昼だしね、そうしようか」
「わいももう腹ぺこや!」
ヒカリはトウジの発言に、バスケットを持ち上げると話を持ちかける。
「あ、す、鈴原・・その私お弁当作ってきたの・・みんなで食べましょう」
「ほんまか?ほなそうしよか!!」
「そうと決まったら食べる場所を探しましょ!」
「そうだね・・・あっじゃあ校舎裏の芝生のところでどうかな?」
「そやな、いいんとちゃうか!」
「じゃあ決まりね!!」
と、午後の部のために筐体の調整やEVAのデータ修復をすると言う会長達を残して、四人は校舎裏に移動していった。
「やーくった、くった、満腹や」
ものすごい勢いで食べ終わると木にもたれ掛かり、片手でおなかな辺りをさすりながら言った。
「そんなにあわてて食べなくたって誰も取りゃしないわよ!」
呆れながら注意するアスカにトウジが言い返す。
「んなこといってもなぁ、うまいんやからしょうがないやんけ・・・・ふぁー、なんかわし眠くなってきたんで一寸横にならしてもらうわ」
と言うとそのままの格好で眠ってしまう。
「ちょっと鈴原!食べてからすぐ寝ると牛になるわよ!」 「しょうがないよ、昨日準備でほとんど寝てないみたいだから・・・」
注意するヒカリに対して、サンドウィッチを食べながらトウジを弁護をする。そのままシンジが食べ終わったのを確認すると、アスカが声を掛けた。
「シンジ行くわよ!」
「えっ、どこに?」
「どこって決まってるでしょ!他の催し物を見に行くのよ!!」
「あ、そうだね・・・・洞木さんはこの後どうする?」
「あっ、ちょ・・・シンジ」
「えっ!!あたし!・・・え〜と・・・その、私も少し疲れたからここで休んでるわ」
腰を上げたシンジがヒカリに意見を求める。ぼーっとトウジのことを見つめていたが、はっと我に返り一寸俯きながら答えた。その脇でアスカが胸をなで下ろしていた。
『全く、よけいなこと言うんじゃないわよ・・・でもこれで作戦どうりね』
「じゃあトウジのことよろしくね!」
「う、うん」
「ほらさっさと来なさいよ!!」
ヒカリが消えさりそうな声で答えたとき、先に歩き出していたアスカがシンジを呼ぶ。
「あ、ちょっとまってて!」
「?」
シンジが側にくると、何かを思いついたようにヒカリの側に駆け寄っていく。
「何?アスカ」
「ヒカリ、うまくやんなさいよ・・応援してるからね」
にこにこ顔で近寄ってくるアスカに尋ねると耳元でささやかれた。それを聞いたヒカリが顔を真っ赤にして俯くと一回だけうなずいた。
「何話してたの?」
「内緒!さっ行きましょ」
上機嫌で帰ってきたアスカに質問したが期待した答えは返ってこなかった。その後色々な所を見て回った二人だだったが、結局同好会の午後の部を見るためにグランドに来ていた。
そこで、モニターを見ながらはしゃぐアスカをシンジはただ眺めていた。
「・・・どうかしたの?」
「・・・さっきのアスカを見てたら、”九朗”のカスタムが限界に達したとき僕はアスカに負けるんだろうなって・・・」
「そんなのあったり前じゃない!あんたは、設計者としては良いかもしれないけどパイロットとしてはあたしの足元にも及ばないわ」
「・・・・・」
アスカの指摘に無言で俯くシンジ。それを見て話を続ける。
「でも、もしあたしがあんたを負かす日が来てもよ、その次はもっとすごいEVAを作って挑戦してくれるんでしょう?・・・・それとも・・・」
はっと顔を上げると穏やかな笑顔をたたえたアスカの顔があった。そしてシンジもほほえむと自信を持って答える。
「もちろん挑戦するよ!」
一方、こちらでは、最初は隣に座って寝顔をただ眺めていたが、ポカポカの陽気と満たされたおなかによっておそってくる睡魔に勝てず、トウジの肩に頭を預け、そのまま二人で寝息をたてていた。
夕方
トウジは肩に掛かるヒカリの安らかな寝顔をただ黙って見ている。
「・・ん、・・・うん・・・えっ・・す、鈴原」
「おっ、起きたみたいやな、もう終わりの時間やで」
ぼやけた視界に、笑顔が映し出される。 「・・・・・ずっとこうしててくれたの?」
「ん、まぁ、よく寝てたみたいやったからな・・・」
「・・・ありがとう・・・」
あわてて鼻の頭をかきながら逆の方を見て答える、そんなトウジを見てヒカリは小さな声でお礼を言った。
ピンポンパンポ〜ン
「本日は、三国専祭にお越しいただきまして、ありがとうございました。まもなく閉祭のお時間になりましたので、どうかお忘れ物の無いようにお願い・・・・・・」
校内放送が流れたとき、いい雰囲気を作り出している二人の元に、絶妙のタイミングでシンジとアスカが連れ立って戻ってきた。何のことはない校舎の陰に隠れて覗いていたのだ。
「ヒッカリ〜そろそろ帰りましょうか?」
「そ、そうね」
「じ、じゃ、そこまで送ったるわ」
「い、いいわよ、す、鈴原達片づけとかあるんでしょ?」
シンジとアスカは、二人の動揺がおかしくてたまらないらしく顔がにやけている。
「バス停から戻るから大丈夫だよ」
『ふふ・・トウジも人のこと言えないじゃないか』
「そう!じゃ行きましょ!」
『クスクス・・もう、ヒカリったらさっきあんな幸せそうな顔してたのにね』
アスカは賞品でもらったロゴマークの入ったサルのぬいぐるみを両手で抱え、おしゃべりをしながらヒカリと前を歩いている。その後ろをシンジとトウジが歩いている。そんな調子でバス停に着いた。
「今日は、楽しかったわ!」
「うん、またねアスカ!」
「んじゃ、きぃつけてな」
「うん、じゃまたね・・鈴原・・・またね碇君!」
「洞木さんまたね!」
その日の夜
さんざんヒカリをからかって自分の部屋についたアスカは、空と同様に暗くなった部屋に立っていた。その瞳には、両手で持ったサルのぬいぐるみが映っている。そしてその視線は一点に注がれていた・・・そうゲルヒン社のロゴマークに・・・
踏みつけた・・・・・・・
Ohtuki:第二話如何だったでしょうか?一寸オリジナルが入りました(^^;;今のところ私にはこれが精一杯です。
Ohtuki&Mizunoさんに『BREAK-EVA』 #2,公開です。
いつの間にやら良い雰囲気のシンジとアスカ。
意地っ張りながらもどこか甘えた言動・・・いいですねぇ(^^)
そして、もう一組。
ヒカリの思いはトウジに通じ始めているようで、
こちらもいいですね(^^)
あっ! 3バカのもう一人は?
・
・
・
・
やっぱり彼はあぶれ物か(笑)
『BREAK AGE』に「ケンスケ」が当てはまるキャラはいないもんなぁ・・
・・ここは思い切ってアスカの兄をケンスケにするとか(爆)
・・・・・これはイヤだ(^^;
さあ、訪問者の皆さん。
元作に自分のカラーを入れ始めた Ohtuki&Mizuno さんに感想メールを送りましょう!