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めそめそアスカちゃん
「こら、まて、またんかい」
風で吹き飛ばされたトウジの帽子は、一人の少女の足元に転がって来た。クリーム色したワンピースの少女は、白く細く美しい手でその帽子を拾い、トウジに渡した。
「あ、ありがとさん」
「どういたしまして」
にっこり
三バカトリオのハートを直撃する可愛い笑顔だった。
その時、一陣の風が吹いた。
少女のワンピースがめくれた。
純白のスキャンティーがみんなの目に焼きついた。
「うわぁ〜〜〜〜〜〜〜ん。見られちゃったよ〜〜〜〜」
少女はワンピースを押えてペタリと座り込むと大声で泣き始めた。
その子は奇麗で可愛くて才能豊かで魅力的。
みんなも知ってる中学生。
でも彼女には一つ秘密があったのです。
彼女は
泣き虫だったのです
めそめそアスカちゃん
「うっく。ひっく。ハローミサト。元気してた。うっく」
アスカはしゃくりあげながら挨拶をする。
「アスカ相変わらず泣き虫ね。でも随分背も伸びたし少しは大人になってきたみたいね」
「ひっく。うん。うっく。背は伸びたわよ。ひっく」
「ほら。そろそろ泣きやみなさい。折角の美人がだいなしよ」
確かにアスカの顔は涙と鼻水でぐしょぐしょだった。ワンピースも涙でしみだらけである。
「あの、これ使って」
「うっく、ありがとう、ひっく」
シンジが渡したハンカチを受け取ると顔に当て、更に1分ほど泣き続けていた。やっと治まったらしく、顔をハンカチから離した。
「ハンカチ、ありがとう、えっとどなたでしたっけ」
「あっ、彼はシンジ君、碇シンジ君よ。彼がサードチルドレン」
「ぼく、シンジです。よろしく」
「よろしくシンジ君。私、エバンゲリオン弐号機の専属パイロット、惣流・アスカ・ラングレーです。よろしくね」
「ワシ鈴原トウジ」
「僕は相田ケンスケよろしく」
「鈴原君と相田君ね。こちらこそよろしくね」
アスカはシンジの方に振り返る。
「貴方がサードチルドレンのシンジ君。すごいわよね。緒戦でしかも初めてのエバで使徒を倒すなんて。私も頑張んなきゃ」
「でも僕戦闘好きじゃないから」
「私だってあまり好きじゃないわ」
「そうかなぁ。なんか嬉しそうだけど」
「え、私、そんな狂暴女じゃないわ。ううううわぁ〜〜〜〜〜〜〜〜ん」
また、今度は上を向き大声で泣き出した。
「あ、ごめん。そ、そうだよね。そんな事無いよね、ね。ごめん」
シンジもうろたえてしまう。ミサトは処置なしという感じであきれている。アスカは五分ぐらい泣いた後やっと落ち着いて来た。
「うううう、ひっく……ごめんなさい。私すぐ泣き出しちゃうの。自分でも情けないからやめようと思っているんだけど……うっく」
「そんな気にすること無いよ。誰だって悲しい時は有るし」
「シンジ君って優しいのね。ううう」
「そんな事無いよ。ね」
「ありがとう」
もう既にいい雰囲気の二人である。
「はい挨拶はそれぐらいにしてブリッジへ行って手続きをすませましょう」
ミサトが皆を引き連れ移動を開始した。
「おやおやボーイスカウト引率のお姉さんかと思っていたが、どうやらそれはこちらの勘違いだったようだな」
「ご理解いただけて幸いですわ。艦長」
「いやいや。私の方こそ久しぶりに子供達のお守が出来て幸せだよ」
「この度はエバ弐号機の輸送援助ありがとうございます。こちらが非常用電源ソケットの仕様書です」
「だいたいこの海の上であのオモチャを動かす要請なんぞ聞いちゃおらぁ〜〜〜〜〜〜ん」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。うわぁ〜〜〜〜〜〜〜ん。また艦長さん怒ってるぅ〜〜〜〜。うぁ〜〜〜〜〜〜〜〜ん」
「う、まただ。このお嬢さん何とかならんのかね。何かというと大音響で泣き出すんで、うるさくてたまらん」
うぁ〜〜〜〜〜〜〜〜ん
もうアスカは止まらない。
「おいおい、またアスカちゃん泣いてんのか」
突然ブリッジにヒゲ面のにやけ男が入ってくる。長い髪を後ろにまとめている。
とたんにミサトの顔がひきつってくる。
「どうもぉ〜〜」
「うぁ〜〜〜〜ん、加持さぁ〜〜〜〜ん。ひぇ〜〜〜〜ん」
「加持君、君をブリッジに招待した覚えは無い。まあいい、とにかくこの子を何とかしてくれ」
「へいへい。アスカちゃんほらほら泣き止もうよ」
「うぁ〜〜〜〜ん。ひっく。ひっく。うん加持さん。うっく」
「では艦長後ほど手続きにうかがいます」
ミサトは話を打ち切った。
「何であんたがここにいるのよ」
「彼女の随伴でね。ドイツから出張さ」
「迂闊だったわ。十分考えられる事態だったのに」
ここは食堂である。ぶーたれたミサトとまだ泣き顔のアスカが対照的である。
「今付き合っている奴いる?」
「それがあなたに関係ある訳」
「あれつれないなぁ」
「碇シンジ君、君は葛城と同居しているんだって」
「え、ええ」
「彼女の寝相の悪さ治ってる?」
沈黙
「「えっえ〜〜〜〜」」
トウジとケンスケは変なポーズで驚いている。シンジは鈍くてリアクションなし。ミサトは顔を真っ赤にし加持をはっ倒そうとする。
が
「わざわざ私の前で言うなんて。加持さん大好きなのに〜〜〜〜。うぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜ん」
全てはアスカの泣き声で中断された。
「あっしまった。葛城何とかしてくれ」
「アスカちゃん落ち着いて。このバカ後で殴っとくから」
「うぁ〜〜〜〜〜〜〜〜ん。わざわざ仲のいい所見せてるぅ〜〜〜〜〜〜〜〜」
「こりゃ。処置なしだな」
「そ、惣流さん落ち着いてよ」
シンジはハンカチをまたアスカに貸す。
「ありがうぁ〜〜〜〜〜〜〜〜んとううぇ〜〜〜〜〜〜〜〜ん」
「シンジ君取り敢えず私手続きしてくるから。私とそのバカが一緒にいると、アスカ泣き止まないみたいだし」
「うぁ〜〜〜〜〜〜〜〜ん。加持さんばかじゃないもん。うっく、ひっく、ひぇ〜〜〜〜〜〜〜〜ん」
「ミサトさんわかりました」
「じゃ」
ミサトは食堂を出て行った。食堂にはまだ泣いているアスカと既に疲れ切った男性陣が残っていた。
「アスカちゃん碇シンジ君はどうだった?」
泣き止んだアスカは加持と二人で艦内をうろついていた。甲板のはじっこでアスカと加持の二人は話していた。
「碇君って優しそうな男の子ね。でもエバのパイロットとしてはわかんないわ。だって優しすぎる気がする」
「でも彼のシンクロ率は初陣で40%をゆうに超えてるぞ」
「うっそ〜〜〜〜」
「下手するとアスカちゃんを超えちゃうな」
「えっ、やだ。私これだけが誇りなのに、そんな……ぐす、ぐすん」
「アスカちゃんしっかりするんだ。実戦が潜在能力を引き出すことはよく有る事だ」
「ええ。ぐす。うん。後でシンジ君と話してみるわ」
「そうだな。パイロット同士話してみるのもいいだろう」
「碇シンジ君」
ミサト一行が艦内見学移動中にアスカは声をかけた。
「なんだい惣流さん」
「あの、ちょっといいかしら」
「え、僕はいいですけど」
「シンジくぅ〜〜ん折角の美人のお誘い断ったら悪いわよ。行ってらっしゃい」
「いえ、あの、そんな事じゃないです」
アスカはまたべそ顔になっている。
「そ、惣流さん行きますから。じゃミサトさんまた後で」
「わかったわ。アスカ、シンジ君また後でね」
「これが私の弐号機よ」
空母オゼローの甲板いっぱいを使って弐号機は固定されていた。
「へえ〜〜弐号機って赤いんだ」
「うん。でも違う所は色だけじゃないの。この弐号機からがほんとのエバなの。量産の1号機なの」
「ふぅ〜〜ん。でも実戦まだだじやないか」
「できるもん。私だって実戦で戦えるもん。ううう」
アスカは俯き瞳を潤ませ始めた。
「惣流さん、でも女の子なんだから無理に戦わなくても」
「なによ。女だからってばかにするの。やっぱり私は何もできないと思ってるんだ。うっく。ひっく」
「あ、泣かないで、そう言う訳じゃないよ。惣流さんみたいな繊細な子に戦いをさせちゃいけないと思うんだ」
「そう。で、でも私これに乗って戦わなきゃいけないの。戦う理由があるのよ。私一番じゃなきゃいけないの」
どぉ〜〜ん
「なんだろう今の音は」
「さあ、何かしら」
涙をふきふきアスカは答える。二人は船側の手すりに駆け寄り、他の戦艦を見た。
どかぁ〜〜ん
次々と大破する戦艦と空母、水中を巨大な物体が壮絶な早さで移動しているようである。
「あれは…………使徒?」
「あれが本物の使徒なの」
アスカの瞳に意志の光が煌めいた。
「シンジ君」
「なんだい」
「手伝って欲しいの」
「なにを?」
「あいつを弐号機でやっつけるのを」
アスカはシンジの返事も聞かず手を引っ張って走り出した。
アスカは艦内の人気の無い階段にシンジを引っ張り込んだ。
「ハイこれ」
アスカは赤いプラグスーツをシンジに差し出した。
「これに着替えて。あそこの陰でよ。私も着替えるから見ちゃ駄目よ」
「わかった」
シンジは赤いプラグスーツを受け取ると、階段の陰に廻り着替え始めた。さっさと着替え終わると、座って待った。
「ねえまだぁ」
待ちきれなくなったシンジが覗いてみると、アスカはプラグスーツを引き上げている所だった。アスカの豊かで美しい胸が丸見えだった。二人の目が合った。
「うぁ〜〜〜〜ん。すけべ〜〜〜〜。うぇ〜〜〜〜ん」
アスカはまた泣き出した。しかし今度は泣きながらもちゃんと着替えていた。
「うわぁごめん」
シンジは慌てて頭を引っ込めた。
「ひっく、なんで男の子って、うっく、えっちですけべなの、ひっく」
ぷしゅ〜〜
アスカは髪を掻き揚げプラグスーツを密着させると、涙を手で拭い言った。
「アスカ行くわよ」
まだ涙を拭き拭き階段の陰に行く。シンジがおそろいの赤いプラグスーツに着替え所在なさげに立っていた。
バシ
アスカの平手が炸裂する。
「いたいなぁ〜〜」
「さっき覗いたお返しよ。ひっく。あとで責任とってもらうからね。うっく。とにかく今はエントリーしなくっちゃ。ひっく」
アスカは泣きながらシンジを引っ張っていった。
「オゼローから入電です。エバンゲリオン弐号機起動中です」
「なんだって」
「なぁ〜〜いすアスカ」
「やもおえん、エバンゲリオン弐号機起動終了までオゼローを守れ」
「スミマセン艦長」
「いや、先程から我々の攻撃が効かんようだ。それならあのオモチャに賭けるだけだ。私は現実的なんだよ」
「わかりました。ブリッジの通信をネルフにつないでもらえますか、それとエバにも」
「わかった」
オーバーザレインボウのブリッジではネルフ及びエバへの双方向回線を開いた。
「アスカ聞いてる」
「ミサト聞いてるわ」
「僕も一緒です」
「シンジ君も乗ってるの、よし、起動したらバッテリでこっちまで来て。この空母のジェネレーターならエバの出力がフルに出せるわ。それまでに外部電源コネクタを用意しておくわ」
「「わかりました」」
「発令所聞いてる」
「ミサト聞いてるわ」
「リツコ、この海域の衛星写真をエバに転送して。1分以内で」
「わかったわ。マヤ写真のデータ用意、青葉君転送準備、日向君データの解析」
「「「了解」」」
発令所はリツコが仕切っている。
「アスカ写真届いた?」
「届きました」
プラグの中には各戦艦と空母の位置関係が示された3D表示が浮かび上がった。最短移動ルートも表示される。
「じゃいきまぁ〜〜〜〜す」
弐号機は覆っていたカバーをマントの様に背負ってオゼローの甲板を蹴り飛んだ。戦艦、巡洋艦、空母の上に飛び移って移動した。
「ごめんなぁさぁ〜〜〜〜い」
アスカはふんずけた船に謝りながら飛んでいく。
「最後よぉ〜〜。エバンゲリオン弐号機ちゃっかんしまぁ〜〜す」
弐号機はオーバーザレインボウの甲板に着艦した。
どぉ〜〜〜〜ん
弐号機が着艦した衝撃でボロボロと戦闘機が海へとこぼれ落ちていく。
「うまいわアスカ。すぐ外部電源に切り替えて」
「了解」
「何がうまいだ。艦隊がめちゃめちゃだ」
艦長がわめく。
「よいしょっと」
弐号機は外部電源ソケットを挿入する。インジケーターが変わった。
「惣流さん九時方向から急速接近」
シンジが教える方向からは大きな水しぶきをあげ巨大な物体が近づいて来た。水面に上昇してくる。人の手ではあり得ない造型。使徒だ。
「けっこうでかい」
「ど、どうにかなるわよ」
「でも武装が無い」
「プログナイフがあるわ」
弐号機はプログナイフを準備する。弐号機はプログナイフを右手で持つと刃を押し出しクラウチングスタイルで構える。使徒は水上を壮絶なスピードでオーバーザレインボーに向かって来た。
「きたわ」
アスカの顔が引き締まる。シンジも脇で使徒を見ていた。
ざばぁ〜〜〜〜
使徒がスピードを落とさず甲板に跳ね上がった。プログナイフを振るう余裕は無かった。弐号機はプログナイフを落とすと、使徒が艦橋に当たらないように受止めた。甲板上で相撲でもとっているようになった。
「アスカァ〜〜よく受止めたわ」
ミサトが叫ぶ。
「甲板がめちゃくちゃだぁ」
艦長がぼやく。
一方アスカはプラグ内でうなり声をあげていた。使徒の力は弐号機を通してアスカにフィードバックされる。アクションレバーを握るアスカの手は震え、筋肉には痛みが走った。
突如手の負荷が半減した。気がつくとシンジがアスカの体の上に身を投げ出すようにして、アクションレバーを握っていた。シンジもシンクロした為負担が分配されたようだ。
「ありがとう」
アスカが言う。
「うん。それよりどうにかしないと、これじゃ全然動けないや」
と言っていた矢先
どぉ〜〜ん
「きゃ〜〜」「わ〜〜」
弐号機がふんばっていた甲板が損傷し、使徒ごと弐号機が海へと落ちた。
「落ちたじゃないかぁ〜〜」
艦長が騒ぐ。
「何とかなります」
落ちついてるんだか鈍いんだかわからないミサト。
海に落ちた弐号機は使徒から離れていた。
「惣流さんだいじょうぶ?」
「大丈夫よ」
初めての実戦の為であろうか、言葉とは裏腹にアスカの顔は青ざめていた。
「今弐号機は電源ケーブルでぶら下がった状態よ。身動きはとれるけどどうしようもならないわ」
「そうだね。ミサトさんに引き上げてもらおう」
「アスカ、シンジ君大丈夫〜〜」
ミサトの声が響く。
「ミサト大丈夫よ。だけどココじゃ身動き取れないから引き上げて」
「わかったわ。幸いプログナイフはまだ甲板に残っているし」
「早くしてね」
が間に合わなかった。使徒がぶら下がっている弐号機に迫って来た。
ぎゃぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アスカは絶叫をあげていた。使徒に噛付かれた弐号機の感触が全てアスカにフィードバックされたのだ。サメに食いちぎられる人間の痛みがアスカを襲う。
「シンクロカット!!!!」
シンジが叫んだ。プラグ内が暗くなった。アスカはぐったりと気を失っていた。
「シンジ君どうしたの。映像が無いのでわからないのよ」
「使徒が弐号機に噛付いているんです。惣流さんが痛みで気絶しました。シンクロはカットしました」
「そう。それでケーブルが引っ張られているのね」
「はい。このままじゃ弐号機が食いちぎられてしまいます」
「じゃアスカをもう一度起こして再シンクロするしかないわね」
「でもそんな事したら惣流さんがもたないです。それにあの様子じゃ痛みかたじゃ操縦できないと思います」
だぁ〜〜ん
弐号機とオーバーザレインボーを衝撃が襲った。ケーブルが伸び切り、使徒が空母を引っ張る形となった。
「ミサト」
発令所から通信が入る。
「なにリツコ」
「ケーブルと弐号機の装甲あと10分しかもたないわ」
「分かってるわよ。でも今シンクロしたらアスカ痛みで操縦できないわ」
「じゃ痛くなければいいんでしょ」
「そんな事できるの?」
「ええシンクロした情報の内、操縦系をアスカ、感覚系をシンジ君に分けるのよ」
「でもそれじゃシンジ君に痛みが全ていくじゃない」
「ええでもそれしか無いわ」
「僕はいいですよ」
「シンジ君!!」
急に通信に割り込んで来たシンジは言う。
「このままじゃ二人して死んでしまいます」
「そう。わかったわ。じゃリツコ準備して」
「そう4分以内に準備するわ」
リツコはオペレーター達に指示をする。
「マヤ、データ処理用スクリプトの用意、青葉くんデータ転送準備、日向君回線用の軍事衛星の確保」
「「「了解」」」
オペレーター達の手が霞んだ。人間業とは思えない速度でタイピングしていく。
しかしリツコはさらに上を行っていた。抱えていた端末とマヤの予備用の端末の二台を床に置き両手で両方のキーボードを叩き始めた。片手でもオペレーター達の速度を上回った。神技だった。
一方アスカは気絶したままだった。
「シンジ君」
「なんですかミサトさん」
「まずアスカを起こして」
「わかりました」
シンジは苦悶の表情を浮かべて気絶しているアスカを見た。シンジはアスカの肩をつかむと乱暴に揺さぶった。
「惣流さん起きて」
「うっ……シ、シンジ君」
アスカが息を吹き替えした。シンジはまだ痛がっているアスカに対し手短に作戦を説明する。アスカは目を丸くしてシンジに言った。
「シンジ君、あの痛みは凄まじいわ。長時間曝されたら死んでしまう」
「だから惣流さんがすぐに使徒の口を開いて口の中に飛び込みあそこに光るコアを壊せばいいんだ」
「そんな事、私出来るかどうか…………」
アスカは俯き沈んだ声で言う。
「惣流さん、元気を出して。大丈夫だよ。自分の力を信じるんだ。僕だって初めての戦いは泣き叫んだんだ。でもどうにかなったんだ。惣流さんは僕と違って正式な訓練を受けているんだ。絶対出来るよ」
「わかったわ。私やるわ」
暗いプラグの中でアスカの瞳が輝いていてきた。
「その意気だよ。これでうまくいったらさっき覗いたのなしにしてよ」
「それは別の話だわ。前から食べたかったあんみつって言う日本のお菓子おごってもらうから」
アスカに元気が出て来た。
「ミサト準備できたわ。後はアスカがシンクロを再開すれば、痛覚はシンジ君へ、操縦系はアスカちゃんへ繋がるわ。シンジ君に伝えて、何があってもアクションレバーを離さない事。本来シンジくんはシンクロしないけど、アクションレバーを通して無理矢理シンクロさせるから。もし離したらアスカが苦しむわ」
「リツコわかったわ。聞こえたシンジ君、アスカちゃん」
「聞こえたわ。ミサト」
「ミサトさん。了解です」
「じゃあ後はまかせるわ。使徒を殲滅したら弐号機を引き上げるからね」
プラグ内は静かになった。
「じゃあ、やるわ。シンジくんの体、すこしの間貸してね」
「わかった」
二人はアクションレバーを一緒に握った。
「シンクロスタート!!!!」「ぎゃぁ〜〜〜〜〜〜〜〜」
アスカの声と共にシンジの絶叫が上がる。それはずっと続く。
弐号機は使徒の口を開けようともがく。が、力が足りずじたばたするだけだ。
プラグ内ではシンジが絶叫を上げ続けていた。しかしアクションレバーは離さない。離した瞬間痛覚もアスカに繋がるからだ。アスカは懸命に弐号機を操っていた。だが力が足りない。目の前のシンジの絶叫が徐々に小さくなって来た。もう心臓がもたなくなってきたらしい。アスカも不甲斐なさに涙を流しながら絶叫した。
「動いてぇ〜〜〜〜動いてょ〜〜〜〜動かないとシンジ君がしんじゃう〜〜」
その時、弐号機の周りを水蒸気の泡が被った。赤いフレアが弐号機の体からわき上がる。四つの目が光った。
ふぉ〜〜〜〜ん
弐号機が水中で吠えた。じりじりと使徒の口をこじ開けていく。
アスカは涙をぼろぼろと流しつつも歯を食いしばって操縦をしている。シンジはぐったりと頭をアスカの腰に預けるようにしていた。もう絶叫も上げてはいない。それでもアクションレバーは離していなかった。
そして、完全に使徒の口が開いた。弐号機はATフィールドを全開にし使徒のそれを中和した。一気にコアに対して跳び付き全力のパンチをくらわした。
ピシ
コアにひびが入った。
まばゆいばかりの白光。使徒のコアが爆発した。
プラグの中で二人はもみくちゃになっていた。ケーブルは切れたようで内部電源に切り替わっていた。アスカはモニターで外を見る。使徒は口の辺りが大きく裂けて動かなくなり沈んでいく。弐号機も沈んでいく。
アスカはシンジを見た。彼は血を吐き気絶していた。使徒のコアの爆発の爆圧のフィードバックを全て彼が受止めた為だった。
「シンジくぅ〜〜ん。おきて、お願い起きてよぉ〜〜」
沈み行く弐号機の中でアスカはシンジの頭を抱き号泣する。
「アスカさん……そんなに強く抱きつ……いたら痛い。どうや……ら肋骨が筋肉の異常収縮で……折れたみたいなんです」
シンジは薄目を開きか細い声でとぎれとぎれに言う。
「あシンジくん、大丈夫なのね、よかったぁ〜〜〜〜うわぁ〜〜〜〜ん」
アスカは安心して余計大声で泣き始めた。
「それより……アスカさん、早く生命維持モードに切り替えないと、何時助けが来るかわからないし」
「ひっく、うっく、そうね。生命維持モードへ切り替え」
プラグはモニタも落ち、明かりは残り時間表示だけだった。
「うっく、ひっく、後は救助を待ちましょ。うううう」
やっと落ち着いて来たのか徐々にアスカも泣き止んで来た。
「シンジくん、呼吸を楽にする為プラグスーツを脱がしてあげる。肋骨を絞めつけないように」
「ごめん。お願いします」
アスカはシンジはプラグスーツを緩め上半身をむき出しにした。右胸全体に内出血が広がっていた。
「ごめんなさい。最後に私がATフィールド張り損ねたせいでこんなになっちゃって。ひっく。ごめんなさぁい。うううううううう」
「もう泣かないでよ。二人とも助かったんだし。とにかく救助を待とうよ」
「う、うん」
アスカは顔をごしごしこすった後、痛みで顔をしかめているシンジをシートに座らせ、自分はその左側にちょこんと座った。
二人はプラグの中で救出を待った。
2時間後UN海軍水中作業班により回収救助された弐号機は、すぐエントリープラグを排出された。オーバーザレインボーの甲板上に置かれたプラグの電源は尽きかかっていた。ミサトはあわててレバーを操作してハッチを開く。
そこには上半身裸で顔をしかめて眠るシンジとその胸に頭を預けて眠るアスカの姿があった。シンジの手はアスカの頭を抱いていた。
「この子達ったらもうこんな」
おもいっきり誤解したミサトの言葉と共に、泣き虫アスカは来日をはたしたのであった。
つづくかなぁ〜〜?
あとがき
「チルドレンINワールドカップ・優勝への長い道のり」を書いていて、私の書くアスカちゃんってよく泣くなぁ〜〜と思い付いたんです。それならいっそ泣き虫にすれば、可愛くなるし後でどつぼ(精神崩壊)なぞならないなぁ〜〜と思って書きました。ただそうするとアスカとシンジがラブラブにすぐなってしまう。これが問題かなぁと思ってますが。まぁ可愛いので許してってとこです。それにしても私はLASじゃなかったはずなのに……LGRを書かなくては……
ではまた
まっこうさんの『めそめそアスカちゃん』、公開です。
泣き虫アスカちゃん・・・
うっ・・・守ってあげたい(爆)
初めから弱さを見せることが出来るここのアスカちゃんは
壊れたりはしない・・かな?
チルドレン達とは別に
格好良く活躍しているリツコさん。
・・・まっこうさん、「らぶりぃりっちゃん」ですね(^^)
さあ、訪問者の皆さん。
新鮮なアスカ像を築いたまっこうさんに感想メールを送りましょう!
14歳でスキャンティを履いているアスカ・・・やるな(ニヤリ)
LGR・・・「らぶりぃで、ごっついMADなリツコさん」かな?(^^;
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