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チルドレンINワールドカップ外伝・las
「「ただいま」」
アスカとシンジのお帰りである。ゼーレとの戦いにも生き残り、心も体も癒えつつある二人は今ネルフ本部内に住んでいる。今は懸命にネルフ首脳陣と政府、国連との間で政治的な戦いが行われている。彼らはそのごたごたが済んだら復学の予定だ。今は時々EVAの整備を手伝いつつ心身を休めている。今日もそんな整備の手伝いから戻ったところだ。
「あっそうか。今日ミサトさん出張してたっけ」
「ミサト、副司令と一緒に第二新東京市よ」
「そうだね」
「シンジ、おなかすいたぁ〜〜なんか作ってぇ〜〜」
確かにそろそろ夕飯時だ。
「ちょっと位休ませてよ」
「まあ、それもそうね」
シンジは居間へ行くとごろんと寝転がると仰向けになる。特に荷物はない。アスカも同じくごろっとシンジの側に寝転がる。顔をのぞき込むように右手で頬づえをつきつつだ。アスカの髪の毛が少し広がる。
何となくのんびりした時間。特に言葉はない。シンジは右手でアスカの髪の毛に触れる。何となく…………。柔らかい手触りがシンジの手に伝わってくる。シンジは首をこころもち傾ける。自分が触れているアスカの髪を見詰める。アスカも自分の髪に触れるシンジの手を見詰める。何となく…………。
「ねえシンジ」
アスカが呟く。シンジは視線を上にあげ答える。
「なあにアスカ」
アスカはシンジの瞳を見詰め言う。
「キスしようか」
シンジは特に何も言わない。アスカの瞳を下からのぞき込む。
「私達のキスって一度目は私の嫌味みたいなものだったし、二度目はシンジを傷付けるためだったし…………」
アスカの瞳の色が沈んでくる。
「アスカ、あれは君がやったんじゃない。心に巣くってた使徒がやったんだ。気にしないで」
「ありがとうシンジ。でもお腹に傷が残っちゃったわ。あのナイフの傷は一生残っちゃう」
「別にいいよ。僕はこれでも男なんだし傷ぐらい。もしアスカがそんなに気になるのなら形成手術でもして治してもらうよ。リツコさんだったらこんな傷痕ぐらいすぐ元通りにしてくれるし」
「…………」
アスカは黙っている。少し経ってから口を開く。
「もしシンジが嫌じゃないのならそのままにしておいて欲しいの。私その傷を見る度心が痛いわ。でも私にとって戒めにもなるの。もう絶対誰も傷つけたくないってことの。それにシンジとの絆でもあるの。だからそのままでもよければ」
「僕はいいよ」
「ありがとう」
また沈黙が部屋を支配する。シンジはまたアスカの髪を撫でる。アスカはシンジの瞳を見詰めている。
「ねえシンジ。キスをしよ。私何だかキスしたくなっちゃった。我が儘につきあって」
「うん。でも改めて言うと恥ずかしいな。ねえこのままの格好でじゃだめ?わざわざ起き上がって面と向かうとやっぱり恥ずかしいよ」
「いいわよ」
「そう」
シンジは首を少しそり返すと両手でアスカの頭を抱く。アスカは右手で髪をかきあげシンジの顔にかからないようにする。アスカは目をつぶる。シンジがアスカの頭を引く。二人は唇を合わせる。
妖精が通り過ぎるぐらいの時間が過ぎる。二人は唇を離す。
「やっぱり変なキスだったかも。ごめんね」
シンジが言う。アスカの頭を離す。
「ううん、いいの。私達にお似合いだわ。……ねえシンジ」
アスカが顔を起こす。目を開き言う。
「なんだいアスカ」
「シンジのこと好き」
「うん。僕もアスカのこと好き」
「今度はしっかりシンジからキスできるようになってね」
「うん。そうだね」
また何もない時間が流れる。やがてアスカが急に勢いよく起き上がる。
「さてっと、本当にお腹空いてきちゃった」
シンジも勢いよく起き上がる。
「じゃすぐ何か作るよ。チャーハンとかでいい?」
「うん」
二人はキッチンへと歩いていく。何でもない日の特別な夕暮れだった。
終わり。
あとがき
え〜〜あおぎりないさんファンクラブ(^^)会員番号1番のまっこうです。
あおぎりないさんのCG「las」を見ていたら急に話を書きたくなってしまいました。あおぎりないさんの絵はいつ見ても創作意欲をかきたててくれます。あのCGの状況は私の連載ではこうなるかなぁと思います。と言うか挿し絵ならぬ挿し文を書いた感じです。
それでは
それにしてもワールドカップ優勝への道のりはまだまだ遠いです。
まっこうさんの『チルドレンINワールドカップ』外伝、公開です。
辛く厳しい日々を過ごしてきた二人の、
やっと安らげる時と場を得た二人の、
あたたかい、
柔らかい時間。
ホッとしますね。
傷を残すことで更に優しくなれる二人。
読んでいる方も優しくなれますね(^^)
さあ、訪問者の皆さん。
”挿し文”。素晴らしい発明をしたまっこうさんに感想メールを送りましょう!
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