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ある日のレイちゃん

ダンスダンスダンス




 この話は「めそめそアスカちゃん2」のサイドストーリーです。先に向こうを読んでね。




 ちゅんちゅん ちゅんちゅん




 スズメの声につられてレイはぱっちりと目を開いた。特に寝ぼけてはいないようだ。いつもの事である。無愛想な壁紙一つ無い部屋の飾り気の無いパイプベッドからレイは上半身を起した。かけていた布団がずれる。全裸である。別にシャネルの五番をつけている訳ではない。ただ寝間着を持っていないだけなのだ。レイは寝る時まで何かを身に付けていたいと思わない。




 ベッドのそばには、医療用品を入れた段ボール箱、冷蔵庫、小さな箪笥。小さな箪笥の上には端末と携帯電話とレンズが割れた眼鏡がいつも置いてある。冷蔵庫の上にも小物が並んでいる。




 最近眼鏡の横に付け加わった物がある。それはレイ、シンジ、トウジ、ヒカリが並んで写っている写真である。それは木の写真立てに入っている。




 彼女はあまり慣れない言葉を言ってみる。




 「碇君おはよう」












































 その子は奇麗で儚く無口な子。
 みんなも知ってる中学生。
 でも彼女は最近変わったのです。
























 彼女は




























気になるひとが出来たのです





















ある日のレイちゃん

ダンスダンスダンス
























 レイは朝の支度をする。まずシャワーをあびる。アルビノ特有の透き通るような肌を水玉が転がっていく。髪の中にもよくお湯を通す。体にほとんど色が無く華奢なレイがお湯を浴びていると、まるで姿は水の妖精の様だ。




 汗を流した後、全裸のままスリッパを履きバスタオルを頭に掛け髪を拭き拭き部屋に戻る。冷蔵庫から牛乳を取り出す。医療用の袋から総合ビタミン剤と栄養補強剤を取り出し牛乳と一緒に飲む。バスタオルで体をよく拭いた後、トイレを使う。部屋に戻ると服を身につける。服は学校の制服とその他数着しか持っていない。




 レイは最近買った物がある。大きな鏡である。自分の身長以上あった。部屋の壁に張り付けてある。着替え終わった後鏡で自分を見てみる。別に感想がある訳ではない。いつもの綾波レイ、それがうつっているだけだ。白い肌、澄んではいるが赤い瞳、細い眉、丸顔にジャギーのかかった空色にも見える白髪、形のいい鼻、小さな唇、細い首、細い体つき。美人だ。表情があればだが。彼女は鏡に向かって微笑んでみる。ぎこちない。仮面の様だ。また無表情に戻った。ただ少し残念そうにも見えた。彼女は鞄に携帯電話を入れ部屋を後にする。




 レイは学校に向かう。両手で鞄を前に持ち静かに歩いていく。レイの一風変わった美貌に目を引かれる通行人もいる。しかし次の瞬間には目を外して通り過ぎてゆく。人はあまりにも違う物に近づかないのかもしれない。学校の途中のコンビニで昼食用のお弁当を買っていく、学校の購買や食堂で買ってもいいが人ごみが苦手な為そうしていく。




 学校の途中のベンチで文庫本を読む。暫くは本に没頭する。レイはラブレター避けという理由でシンジと一緒に通学する事にしている。リツコに相談した結果そうしている。リツコとしてはチルドレン同士できるだけ傍にいれば連絡も取り易いと思っての事だろう。レイはなんとなくそうする事が好ましい事だと思っている。いつもこのベンチで文庫本を読みシンジを待っていた。静かに本を読んでいるとシンジが声を掛けてくるのである。




 しかしその日は違った。




 「おはよう綾波さん」




 見た事も無い金髪の少女が挨拶をしていた。なぜか目の辺りが赤くなっている。




 「おはよう」




 レイは視線だけを動かし挨拶を返す。




 「私セカンドチルドレンの惣流・アスカ・ラングレー」




 金髪の少女が自己紹介をする。レイはセカンドチルドレンが来日したのを思い出す。シンジと一緒に弐号機で使徒を倒したのも思い出す。特に興味は無い。




 「そう」




 レイが静かに答える。




 「あの」




 アスカが困ったように言葉をつなぐ。




 「……」




 特に返す言葉は無いレイ。




 「綾波さん。お友達になりましょ」




 アスカはびびりつつも続ける。




 「命令があればそうするわ」




 レイは無表情に神秘学の本から目を離さず答えた。すこし怒っていたのかもしれない。朝の挨拶はシンジとのものだったから。




 「命令ってそんな……そんな……私そんな……お友達になってくれないの。私なんか悪い事したの……ううううう……うううううう……うぁ〜〜〜〜〜〜〜〜ん」




 いきなりのアスカの大音響の泣き声にレイは反射的にベンチから飛びのいた。レイは心持ち目を大きくしている。驚いたのかもしれない。泣きじゃくるアスカを眺めた後シンジにたずねる。




 「碇君この子どうしたの」




 レイはシンジと一緒にいる女の子に興味を持った。レイはあまり人が泣く所を見た事がない。人は泣くものだと知っていても実際はあまり知らない。めずらしく思った。




 「何かっていうとすぐ泣いちゃうんだ。それ以外はほぼ満点なんだけどね」
 「そう。碇君この子の事好きなのね




 レイの顔に少し表情が湧いた。自分が口走った言葉の意味が自分でもよくわからなかった。ただなんとなく、シンジの言葉がいやだった。




 「綾波何か言った?」
 「いいえ」
 「まあとにかく。泣き止ませないと」




 シンジとレイの会話を横にアスカは両手を両目にあてて号泣していた。




 「綾波、アスカさんに謝って。さすがにさっきの言い方はやばいよ」
 「そう。わかったわ」




 レイはアスカの前に立つとアスカに話し始める。




 「惣流さん。さっきはごめんなさい。私あまり他の人と話した事が無いので時々変な言い方するの。惣流さんの事嫌いな訳じゃないわ」
 「アスカさん、綾波ってちょっと話し方が変なだけでさっきのも悪気があった訳じゃないんだよ。だから泣き止んでそんなに泣いてたら仲良く出来ないよ」
 「だって……うっく……ひっく……いきなり……ひっく……命令があればなんて……ううう……言うんだもん……ううう」




 アスカが少し収まって来たところで、シンジは二人の手をとると握手をさせる。




 「二人とも友達になろうよ。ね。アスカさんも泣いてないで」
 「うん。ひっく……綾波さんよろしくね」
 「ええ。惣流さんよろしく」




 レイは無表情にアスカを眺めた。シンジは横でほっとした顔をしている。レイはなんとなくアスカと一緒に居てもいい気がする。




 「さぁ学校に行こう。時間をくったから早くしないと遅刻だよ」




 シンジが言った。レイは握手をやめると、シンジの左隣に並び学校に向かう。アスカもそれに習い右隣に並び学校に向かった。




 レイとシンジとアスカは学校についた。少し遅れてトウジとケンスケもついてくる。レイはいつも校庭で視線を感じる。が気にはしない。最近シンジと登校するようになって少し視線の質が変わったような気がする。それも特には気にしていない。今日はまた少し視線の質が違うようだった。アスカがいるからだと思った。




 下駄箱までつくと、シンジとアスカが話をするのが聞こえる。




 「あれ惣流さんどうしたの」
 「何でも無いわシンジくん」




 レイはアスカが視線に脅えていたようだったのでその話かと思った。
 レイは無造作に自分の下駄箱を開ける。




 ざばぁ




 ラブレターが流れ落ちる。




 「綾波今日は少な目だね」
 「そうね。ラブレター。言葉で愛をつむぐ物。紙に愛を放つ物……ぶつぶつ」




 いつもラブレターを見ると考えてしまう。ラブレターの意味をリツコに聞いた事がある。愛する人にあてる手紙と教えてくれた。では愛するって言うのはと聞いた。リツコは少し言い淀んだ後今にわかるわと答えた。ラブレターの中身を読んでみた事もある。書いてある事はわかったが、それが何を意図する物かよくわからない。ただ最近ラブレターを書いてみたい気はする。誰に書けばいいかがわからないが。




 レイは落っこちた30通ほどの手紙を拾い上げごみ箱に捨てに行った。いつも紙がもったいないと思う。以前この事をミサトに話したら貼り紙をしたほうがいいといわれた事がある。文面はこうだ【私には碇シンジ君という恋人がいます。ラブレターを入れないでください】。レイはシンジとアスカの元に戻った。




 「じゃ先教室行っているから」




 レイはスタスタと階段を上がっていった。いつもの行動。いつもここでシンジに別れ教室でまた会う。なんとなくそうしている。ただ今日はシンジと一緒に教室まで行ったほうがいい気がした。理由はわからなかった。




 レイは教室に行くと自分の席に着く。




 「おはよう。綾波さん」




 クラスの委員長が挨拶をしてくる。そばかすだらけの女の子だ。




 「おはよう。洞木さん」




 レイは挨拶を返す。前は無表情のまま特に返事もしなかったが、最近は挨拶はするようになった。シンジに挨拶はしたほうがいいといわれたからだ。もっともシンジも愛想がいい方では無いが。でもなぜシンジに言われたからするようになったのかよくわからない。別にわかる必要もないと思い、取り合えず挨拶はするようにしている。




 レイは委員長がいろいろ話してくるのを聞いている。料理の話、ファッションの話、男の子の話、よくネタがつきないと思う。ただスズハラと言う単語がよくでてくるように思う。なぜだろう。なんとなく気になる。レイは時々相槌をうち聞く。最近はこおいう話を聞くのが少し好きになっている。委員長も最近レイが少し興味を持ってきたのが解るのかよく話しかける。レイが独りぼっちでさみしいと思っているみたいだ。




 「綾波、委員長おはよう」
 「おはよう碇君」
 「おはよう碇君」




 シンジが教室に入って来た。レイと委員長に挨拶をする。いつもならレイにとって2度目の挨拶だが今日は一度目だ。シンジは挨拶の後委員長と言葉を交わす。レイも何か話してみようかと思うが話す事がないのでやめにする。




 少し遅れて教室にケンスケとトウジが入ってくる。




 「綾波、委員長おはようさん」
 「皆おはよう」
 「おはよう」
 「おはよう」




 レイは挨拶を返す。レイに挨拶をしてくるメンバーはいつもこれぐらいだ。レイはふと委員長を見る。最近委員長はトウジと挨拶をする時ぎこちない時がある。なぜだろう。なんとなく気になる。




 シンジとケンスケとトウジは席のそばで馬鹿話を始めている。レイは自分の席でなんとなく外を見ながら何とはなしにその話を聞く。ときどきレイの名やアスカの名が出てくる。シンジがからかわれているようだ。レイとアスカを比べる話やどっちが好みだとか。ふとシンジの方を見た時たまたまシンジと目が合う。シンジは顔を赤くして俯く。レイは何故だか理由が解らない。ただ少し不安になる。




 ピンポンパンポン




 始業のベルがなる。まもなく担当の教師がアスカを連れて教室に入って来て、その日の学校が始まった。















 昼前の3時間目、レイの携帯電話が鳴る。授業中の静かな教室に音が鳴り響く。皆の視線がレイに集まる。レイは特にあせりもせず鞄より携帯電話を取り出し通話を始める。




 「レイ」




 リツコの声だ。




 「ハイ」
 「使徒が出たわ」
 「ハイ」
 「緊急招集よ」
 「ハイ」
 「シンジ君とアスカちゃんもそこにいるわね」
 「ハイ」
 「じゃ連れてきてちょうだい」
 「ハイ」




 がちゃ




 電話は切れた。皆の視線が集まる中携帯電話を鞄に入れ、鞄を持ち立ち上がる。シンジとアスカの席のそばに行く。アスカは空いている席と言う事でシンジの隣の席になっている。レイは声を潜めて言う。




 「緊急招集。出たわ。一番近くのネルフ本部への入り口まで案内する」
 「うん。わかった」
 「綾波さんわかりました」




 シンジが教師に言う。




 「ネルフの緊急事態で3人で早退します」
 「わかった。気を付けて」




 レイは教室の出入り口に向かって歩き出す。シンジとアスカも慌てて鞄を取りついていく。三人とも出入り口で教師に一礼し教室をあとにする。




 レイは下駄箱で下ばきに履き変えると二人を待つ。二人がすぐ追い付いてくる。




 「碇君、惣流さんこっちよ」




 レイはすたすた歩いていく。二人は黙ってついてくる。二人とも緊張しているようだ。




 「綾波、緊急の入り口ってどこにあるの」
 「学校の裏山の奥のほうよ」




 レイはどんどん歩いていった。










 レイは今日待機だった。まだ零号機の修復が終わっていない為である。取り敢えずプラグスーツに着替えてはいたが、発令所に待機となっている。発令所には青葉とリツコも残っていた。




 ぼろ負けだった。初号機と弐号機は無様な事になっていた。レイは一部始終を発令所で静かに見ていた。碇君とあの子大丈夫かなと思った。レイはアスカの事も気になる。レイは思う、友達になってとはっきり言ったのはあの子だけだ。それで気になるのかとも思う。レイはシンジに対するものとは違うが暖かいものを感じる。レイは今回の出撃はとりあえず時間稼ぎにはなったと考える。作戦の立てようもあるかと思う。




 「わぁ〜〜〜〜ん。ひぇ〜〜〜〜〜ん。うぇ〜〜〜〜ん」




 レイはアスカが泣いているのを会議室の角で聞いている。さすがにレイもアスカが2時間も連続して泣いているのを聞いているとこれは無駄な行為だと思ってくる。シンジは忍耐深いと思う。結局シンジがアスカを隣の部屋で慰める事となる。レイは会議室に残りパイロットとして会議に参加する事となる。レイはどちらかというとシンジとアスカと一緒にいたいと思う。とはいえ赤木博士に言われて会議に参加する。




 結局シンジとアスカにユニゾンの攻撃を行わせるという結論となる。練習にはダンスが使われる事になる。レイは自分でも踊ってみたくなる。




 「レイちゃんこれがダンスの練習用のS−DVDだよ」




 その日の会議が終わりダンスの教官がリツコの部下の峯マサヤに決った。レイはすぐに会いに行った。峯マサヤがレイにS−DVDのディスクを手渡す。




 「ほんとに一人で練習するのかい。シンジ君とアスカちゃんと一緒にやれば?」
 「邪魔になると思います」
 「なんならシンジ君とアスカちゃんの訓練が終わったらその後の時間、練習につき合ってあげるよ」




 マサヤはこの儚げな少女を好ましく思っていた。何か力になってあげようと思った。




 「その時間は二人に振り分けてください」
 「そうかい。やっぱり皆で練習したほうがいいんじゃないかなぁ」




 レイはその言葉に動揺していた。シンジ達と何かをしてみたい気がした。




 「いいえ。やはり一人でやります。ありがとう」




 レイはマサヤに挨拶をすると自分の住居に向かう。その途中でS−DVD一体型のテレビを買った。支払いはネルフのカードで行った。華奢なレイはテレビを運ぶのに苦労した。見かねた電器店の主人がショッピングカートを貸してくれた。レイはお礼を言うとテレビを運んでいった。




 レイはテレビを部屋に運び込むと早速包装を開いた。冷蔵庫の上を奇麗にするとそこにテレビを置いた。早速S−DVDを再生して見る。画面には幾人かの男女がレオタードで踊りのレッスンを始めている。レイはショッピングカートを戻しに行き、帰る途中で日持ちのする食料を大量に買い込んだ。部屋に戻ると制服からレオタード代わりの水着に着替えテレビの画面を参考にし踊りの練習を始めた。




 レイは部屋に篭り踊りの特訓をした。学校にもネルフにも行かなかったが、マサヤから連絡が行っているらしく何も言ってこなかった。毎日踊り続けたおかげで身体中痛かったが随分さまになってきた。少なくとも自分ではそう思った。




 三日目の夕方、レイにミサトから呼び出しがかかった。練習中だったレイはシャワーを浴び制服に着替えミサトのマンションに向かった。マンションの入り口でミサトとマサヤにあった。レイは挨拶をし二人についていった。




 ミサトの部屋の前ではシンジがアスカを取り押さえ、トウジがヒカリを抱き起こしていた。レイはなんだかこの光景がいやだった。




 レイはシンジとアスカが一緒に練習するのをぼぉーっと見ていた。自分の方がアスカよりうまいと思った。その時の自分の思考が今までした事の無い考え方だと急に思い付いた。自分を主観的に他人と比較をするのは初めてだった。なにが原因だかわからなかった。ぼっと考えていた。




 「レイ」
 「ハイ」
 「やってみて」
 「ハイ」




 レイはぼっとしていた為、あやうくミサトの声に気付かない所だった。静かに立ち上がると部屋の中央へ行く。レイはアスカが置いたヘッドホンを拾うとシンジに向き合い言った。




 「踊りましょ」




 レイにしては感情がこもっていた。踊りたかった。




 ずんたった ずんたった ずんたった ずんたった




 どうにかシンジとレイは二人でステップを踏めた。レイは踊りの練習がうまくいったと思った。だがどうして一緒に練習していないのにユニゾンになるのかはわからなかった。




 「これは作戦変更してレイと組んだほうがいいかもしれないわ」




 ミサトが呟く。




 「えっえっ……いや……いやぁ〜〜〜〜あ〜〜〜〜〜〜〜〜」




 レイはアスカが部屋をとび出して行くのを踊りながら見ていた。




 「惣流さん」




 レイの手はシンジに振り払われていた。レイはシンジがとび出して行ったのを呆然と見送った。何だかいやだった。レイ立ったまま部屋の入り口をずっと見つめていた。周りのものたちは何も言わなかった。




 「葛城一尉私帰ります」




 レイはそう言い、部屋を出た。誰も引き止めなかった。自分の住居に向かった。部屋に着くとシャワーを浴び水着に着替え練習を続けた。










 それは攻撃日の前日の夜だった。レイは夜中なんとなく目を覚ました。ベットから全裸のまま降り床に立った。部屋には月の光が満ちていた。レイはいつもの練習の様に踊り始めた。透明に近い白い裸体が月の光の下で揺れた。レイは不思議な気持ちがした。誰かと踊っているような気持ちがした。きっと月が一緒に踊ってくれているんだと思った。そして踊り終わった。レイはそのままシャワーを浴びた。体を拭き、ベットに入った。明日シンジとアスカのユニゾンがうまくいけばいいなと思った。レイはいつのまにか眠っていた。










 レイの目の前の発令所のモニターには、初号機と弐号機の息の合った攻撃が映し出されていた。レイは念の為プラグスーツに着替え発令所にいた。レイは椅子に座りじっと見ていた。シンジとアスカが勝利し、掛け合い漫才を始めても見ていた。




 「レイちゃん」
 「ハイ」




 レイはあまり聞き慣れない声に振り向くと加持が立っているのを見た。




 「着替えたらちょっとつき合ってもらえるかな」
 「ハイ」




 レイは答えてからミサトを見る。ミサトは頷いて了承した。




 着替えたレイを加持はジオフロント内の公園へ連れていった。レイは遠くの芝生にシンジとアスカがいるのが見えた。ジオフロント内はワルツのリズムが流れていた。




 「レイちゃん」
 「ハイ」
 「シンジ君と踊りたいかい?」




 レイは少しためらった。なんでためらうか自分でもわからなかった。だか数秒後に言った。




 「ハイ」
 「じゃいっしょにいこうね」
 「ハイ」




 レイは加持の後ろについてシンジとアスカの元へと歩いて来た。レイは芝生の中に座っているシンジとアスカが談笑しているのを見た。レイは二人が生きているのが嬉しかった。ジオフロントに光ファイバーでひき込まれた夕日が辺りを照らしていた。




 「お〜〜い、シンジくん、アスカちゃん」
 「あれ加持さん、あ、綾波も。どうしたんですか」




 加持とレイはシンジとアスカのそばに歩みよって来た。




 「シンジくん、実はレイちゃんが君に用があるそうだ。で俺はアスカに用があるんだ」
 「綾波、用って何?」




 シンジは立ち上がる。レイはシンジをじっと見ていた。加持はアスカの横に座る。加持とアスカはレイとシンジを見ている。




 「私と踊って」
 「踊るの?」
 「うん」




 レイはまだじっとシンジを見つめた。夕日がシンジの顔にさした。やがてシンジの顔がほころんできた。レイの心がとても暖かくなった。レイはシンジがこう言ったのが嬉しかった。




 「お嬢さん。喜んで」
 「有り難う」




 レイとシンジは踊り始めた。前よりもずっとうまく踊れた。嬉しかった。レイは目の隅にアスカが加持と踊っているのを捕らえた。アスカは微笑んでいるようだった。レイはよかったと思った。








 その日、ネルフ中が踊っていた。







 数日後、峯マサヤはリツコの研究室に向かっていた。彼はリツコの直属の部下である為リツコの研究室にいる事が多い。その為マヤとも結構親しかったりする。長い廊下を歩いていると、廊下の向こうからレイが紙袋を持って歩いて来た。レイはマサヤの前までくると立ち止まり言った。




 「こんにちは峯さん」
 「こんにちはレイちゃん」




 レイは紙袋からS−DVDのディスクを取り出した。どうやらこれを返す為リツコの研究所に来ていたらしい。




 「これ、ありがとう」
 「どういたしまして。踊りうまくなったかい?」
 「ハイ」
 「それはよかった。じゃあ急いでいるんでこれでね」




 マサヤはディスクを受け取るとリツコの研究室に向かおうとする。しかし背広の背中をレイに引っ張られ振り向く。レイは左手で背広を引っ張り右手で何かの紙をマサヤに示していた。




 「ん?なんだい。どれどれ…………入会希望…………社交ダンス愛好会。レイちゃんは愛好会入りたいんだ。もちろん歓迎するよ」
 「よかった」




 レイはこれでもっと上手にシンジと踊れると思った。嬉しかった。思わず微笑みがこぼれた。とても自然な微笑みだった。美しかった。思わずマサヤが見惚れるほどだった。こうして峯マサヤはネルフで三人目にレイの笑顔を見た人間となった。








つづくかなぁ〜〜?






ver.-1.00 1997-10/05公開
ご意見・感想・誤字情報・らぶりぃりっちゃん情報などは akagi-labo@NERV.TOまでお送り下さい!




あとがき

 めそアスの裏編はこれです。「めそめそアスカちゃん2」でユニゾンの練習をシンジとアスカがやっている最中、レイちゃんは何をしているんだかとても気になり書きました。私レイちゃんも好きなんです。元々私LAS書きじゃないし、今後の展開でどうなるかわかりません。アスカとレイの二人とも幸せにしたいですが。この話はめそアスが続けば続くでしょう。
 それではまた。







 合言葉は「レイちゃんに微笑みを」




 ではまた



 まっこうさんの『ある日のレイちゃん』公開です。
 

 う、あぶない・・・
 レイちゃんに転びそうになってしまった(^^;

 私はアスカ人、私はアスカ人、私はアスカ人
 そう、私はアスカ派のだ〜

 静かな思い、
 自分のその思いに戸惑い、心を揺らしながらも暖かさにつつかれる・・

 1人静かな・・
 

 くぅ−、
 私はアスカ人アスカ人アスカ人
 アスカ人なんだ〜       (^^;
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 [らぶらぶおーるきゃらくたーず]のまっこうさんに感想メールを送りましょう!


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