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<まえがき>

どうも、たこはちです。

実は私、盆に実家に帰省した際、映画を見て参りました。
七月二十日以来二度目の観賞でした。
で、ラストの「気持ち悪い」、あのまま放って置くとホント気持ち悪いので、書いたのが今回の作品です。

まあ、とりあえず、そんなところです。
ではのちほど。




















まごころをきみに















今、自分達がいる場所がかつてどのような場所だったか、
その二人にはしる由もなかった。

ただ、湖面より突き出したコンクリートが、
そこにかつて、人の営みがあったことを物語っている。

そんな湖畔にその二人は佇んでいた。




少年はどこかの学校の制服を着ていた。

少女はレオタードのような身体のラインを浮彫りにしたスーツを着ていた。

右腕と左眼、そして額に包帯を巻いて、うずくまっている少年の傍らに立って、彼を見下ろしていた。

嫌悪の色をその目に浮かべて。










僕をたすけてくれ?

アンタ、よくそんなこと言えるわね。

アタシのこと傷付けるだけ傷つけておいて、

心も体もズタズタにしておいて、

よくそんなことが言えるわね。

アスカじゃないとダメなんだ

アタシじゃないとだめ?ふざけるんじゃないわよ。

ミサトもファーストも恐いから、父親も母親も恐いから、アタシに逃げてるだけじゃない。

ちがうよ、アスカじゃないとダメなんだ。

ハンッ、よく言うわね。

だったらなんであの時、アタシが15番目の使徒に攻撃されてる時、助けにこなかったのよ。

アタシがエヴァシリーズを相手にしている時も、なんで助けにこなかったのよ。

アタシのこと助けもしなかったクセに、なんでそんなアンタなんかアタシがたすけなきゃいけないのよ。

ふざけるんじゃないわよ。

アスカ、僕を独りにしないで、僕を見捨てないで

ふ〜ん、じゃあ、なんだってアタシの首を絞めるのよ。

アンタ、本当はアタシも恐いんでしょ、アタシが恐いから殺そうとするんでしょ。

でも、独りはもっと恐いから殺せないんでしょ。

ちがうよ、アスカにずっと傍にいて欲しいから

だから殺すってわけ?死体でいいから傍にいて欲しいってわけ。


気持ち悪い


アンタ、気持ち悪いのよ。























そこは崩れかけたマンション。

かつてそこには、何世帯かの家族が生活をしていた。

しかし、今やそこに住むものは誰一人いない。

ただ、雨露をしのぐために、少年と少女が軒を借りているのみだった。









アスカ

なによ

アスカに聞いて欲しいことがあるんだ

アタシは別になにも聞きたくないわ

・・・うん、そうかもしれないけど、聞いて欲しいんだ

聞きたくないって言ってるでしょ

そう、じゃ、じゃあ、聞かないでいいからさ、そこにいてよ

・・・・・・

あ、あのさ、僕は、人を傷付けて生きるくらいなら死んでしまえと思ったんだ。

人を傷付けるだけで、誰にも必要とされないんだったら死んじゃえと思ったんだ。

そして、僕を必要としてくれないみんなも死んじゃえと思ったんだ。

そしたら、みんな死んじゃった。

いや、死んだんじゃない、他人も自分も無い、ひとつになっちゃったんだ。

LCLに溶けあって。

自分も他人も無い世界。

誰を傷付けることも、誰に傷付けられることも無い世界。

それは、僕の望んだ世界のはずなのに、でも、ちがったんだ、

どこかちがってた。

誰も傷付けることも、傷付けられることも無い世界なのに、

僕は、みんなと居ることを、

人の間で生きることを望んだんだ。

傷付け、傷付けられる世界を望んだんだ。

そしてなにより、アスカの傍にいたい。

そう、望んだんだ。

メーワクな話ね

え・・・うん・・・ゴメン

なんで謝んのよ、どうせ悪いとも思ってないクセに

ゴメン

フン

しっかし、ということは、

アタシはアンタの都合でここに居るわけね。

え?

そうでしょ、アタシの傍にいたいと思ったから、アタシとアンタふたりっきりなんじゃないの

そうなのかな

アンタ、そんなこともわかんないわけ?自分のことでしょ

ゴ・・・・、いや、そうだね、そうかもしれないね

いいメーワクだわ、アタシの都合なんてお構い無しじゃない。

アタシはアンタの顔なんか見たくもないのに、

アスカ・・・

こうなったら、とことん、アンタを苦しめてやるわ。

憎いアンタを一生苦しめてやる。

憎いって・・・

そうよ、決まってるでしょ!

アタシはアンタのせいで、こんな顔の傷やこんな腕の傷をうけたのよ。

それに、それに、ママだって、アンタのせいで居なくなったわ!

そうよ、みんなアンタのせいよ!

ことある毎にこの傷を見せつけて、

アンタがアタシにしたことを思い出させて、

アンタを苦しめ続けてやるわ!

アスカ・・・

よかったわね、シンジ!

ずっとアタシに傍にいてもらえて!!
























二人はそのマンションで幾日も時を過ごしていた。

他に行くあての無い二人。

顔を合わせる度に少女は少年を罵り、

少年は、その少女の言葉を、ひたすらに受け止めるだけだった。

しかし、いつしか、少女の罵る声も少なくなり、

やがて二人は、ただ日々を生きていくこと、それだけに全てを傾けるようになっていた。

そんな生活に疲れてきたある日、

少年はひとつの決意をした。









ねえアスカ

なによ

そろそろここを離れない?

なによそれ

いや、僕達だけが生き残ったって、どうしても考えられないんだ。

きっとどこかに、僕達のように人の形を取り戻した人が居ると思うんだ。

だから、さがしに行こうよ。

そうね、アンタにしてはいい考えね。

でもアンタ、それでいいの?

なにが?

アタシは傍にアンタしか居ないから一緒にいるのよ

うん

他に生きている人が居たら、アタシはアンタの傍からいなくなるかもしれないのよ

うん

それでいいの

うん

アタシはアンタの気持ちを聞いてんのよ!

アンタがどう思っているのか、はっきり言いなさいよ!

・・・・・

なによ

・・・・・

そうやってまた逃げるの?

僕は・・・

なによ

アスカに傍にいて欲しい

フン、はじめっからそう言いなさいよ

あーんしーんしなさい。

アタシはアンタの傍から離れるつもりは無いから、

アタシには、アンタを苦しめるっていう大きな責務があるから、

アタシのうけた苦しみを、痛みを、アンタに忘れさせないために、

アタシは、一生、アンタの傍を離れない。









そして二人は、そのマンションを跡にした。

人の営みを求めて。



























ある崩れかけた街。

その場所を街と言っていいのかわからない。

しかし、そこには確実に人の営みがあった。

乾いたサバンナのオアシスに動物が集まるように、

営みある所に人は集まり、さらに大きな営みをつくりだしていた。

そんな街の一角、

朽ちかけたアパートの一室に二人の姿があった。

今、その二人の姿を見て少年少女と思う者は、もういないだろう。

そのくらいの時が、いつの間にかに流れていた。









なに?

え?

結局消えなかったね

ああ、別にいいのよ

そう

そうよ、これはアタシにとっては大切なモノだから

大切なモノ

そう、大切なモノ

アンタは、アタシにとって憎むべき存在だって、この傷を見る度に思い出すことが出来るから

アスカ・・・

そしてこの傷は、アンタを苦しみから開放しないための鎖だから

そう、そうだったね

でも、だったらなぜ、普段は髪と服で隠してるの?

いつも見せていれば、僕をもっと苦しめられるだろうに

アンタバカ?そんなこと出来るわけないじゃない

どうして?

どうしてって、そんなことしたら、こんな傷を持った女を妻にした男って、アンタの株を上げるだけじゃない

そうかな

そうよ

僕は別にかまわないけど

アンタがかまわなくても、アタシがかまうのよ

アンタはろくでもない男なんだから、世間に誤解されないようにしなくちゃね

はぁー

なによそのため息

今頃後悔なんかしたって遅いのよ

アンタは一生苦しむのよ、アタシのこの傷を見続けてね

わかってるよ

僕は、だから、

強く生きてこれた

だから感謝しているんだ、アスカには

か、感謝なんかするんじゃないわよ

アタシはアンタを苦しめているだけよ、感謝される覚えはないわ!

うん、わかってる

わ、わかってなんかないわよ

アンタなんかに、アンタなんかにアタシの気持ち

わかるわけ、

ないじゃない

アスカ・・

ア、アタシは、 アンタのこと

アスカ

え?

僕にはアスカに言ってもらいたい言葉がひとつあるけど

・・・・・

でも、それを聞きいちゃいうと、きっと僕はそれに甘えちゃうから

そして、また、

アスカを傷付けてしまうから

シンジ・・・

・・・・・

・・・・・

・・・・・

って、バ、バカ

なに言ってんのよ、アタシがアンタになにを言うっていうわけ?

アタシがアンタに言うことといったらひとつしかないわ。

バカシンジ!

アンタなんか大っ嫌い!

この先も、ずっと、傍を離れないんだから!














その後、二人がどの様な人生を送ったかは、

また、別の話である。





























ver.-1.00 1997-08/20 公開
ご意見・ご感想は こちらまで!


<あとがき>

どうも、いかがだったでしょうか。

いやいや、
私としては、なにか足りない気がしてるんですが、これでいいような気もするし。
何ともいえません。
でも、まあ、ある程度は満足しているので公開しました。

一応、芝居の台本から台詞だけ取ってきたような構成にしています。そう思えないかもしれませんが。
ですから、その時々の彼女らの仕草とか表情は、皆さんの想像にお任せします。

これに肉付けすると、よりましな物になるんではと思いながらも、
私としては、彼女らに会話のみをさせたかったので。

それでは、

たこはちでした。



そうそう、思わせぶりな引き方をしましたが、期待しないで下さいね。
ああ書いた方が、なんか納まりがよかったからそうしたまででして(^^;


 たこはちさんの『まごころをきみに』公開です。
 

 「気持ち悪い」で終わった映画。
 ここで「気持ち良い」になりました(^^)

 「真心を誰にぃ??!」であった映画。
 その真心の行く先を見せてくれました(^^)

 ほっとHOTで、スッキリさっぱり。

 ありがとうたこはちさん(^^)/
 

 さあ、訪問者の皆さん。
 LASの救世主たこはちさんに御礼のメールを!

 

 

 ・・・・変な二つ名を付けてすみません(^^;


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