「明日シンクロテストが終わったらプール入るわよ！プール！」
そうミサトが言ったのは昨日の夕食の時だ。
そんな訳でネルフ本部内トレーニングプールにいる御一行様である。
御一行様といってもここに居るのは四人。
シンジ、アスカ、ミサト、加持だけであった。
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「まあ、ミサトにしてはナイスなアイディアじゃない。
たまには遊ばせてもらわないとおかしくなっちゃうわよ」
仰向けでスイ〜と体を浮かせたアスカ。
「でしょう？私も久しぶりに泳ぎたかったしね」
平泳ぎをしながらミサト。
「ははは、職権乱用だな、葛城」
加持はなぜか古式泳法だった。
そしてシンジはというと・・・・・
プールサイドで椅子に座って見ていた。（言うまでもなく泳げないから）
取り敢えず水着には着替えている。（半ば強制的に）
そんなシンジにプールから上がってきたアスカが声をかけた。
「ほらシンジ！このアタシが教えてあげるから一緒に泳ぎましょ」
シンジの手首を掴みプールに引っ張っていく。
「ちょ、ちょっとアスカぁ。僕は・・・・・」
と言いつつも体はアスカに逆らえずに歩くシンジ。
「いいから来る！」
聞く耳持たん、といった感じのアスカ。
しかしプールまであと一歩の所でシンジは立ち止まった。
「やっぱりいいよ。僕が泳げないってアスカも知ってるだろ？」
「だぁ〜かぁ〜らぁ〜、このアタシが教えてあげるって言ってるのよ！バカシンジ！」
腰に左手をあて、右手でシンジを指差して怒鳴りつける。
「え？い、いや、今回は遠慮しておくよ」
「・・・・・シンジ・・・・・」
急に穏やか口調になるアスカ。
アスカはゆっくりとシンジに近づき、その腰に両腕をまわす。
「え？ア、アスカ？」
予想もしてなかったアスカの抱擁に顔を赤くしてうろたえるシンジ。
しかし、シンジの期待は瞬く間に打ち砕かれた。
アスカは裏投げでシンジをプールに投げ捨てた。
勿論アスカも背中からプールに飛び込む。
「ぶはぁっ！な、何て事するんだよ、アスカ！！」
水面から顔を出すなり喚くシンジ。
「ふん！こうでもしなきゃアンタ一生プールに入らないでしょ？」
「だ、だからって裏投げ仕掛ける事ないだろぉ！」
「いちいち細かい事言うんじゃないわよ！バカシンジ！！」
アスカはそう言いながらシンジの前に立ち両手を差し出す。
「ほら、アタシが手を持ってあげるから体を浮かせてみて」
心なしか少し顔を赤くしてアスカが言う。
「え？う、うん・・・」
そんなアスカの顔を見て素直に返事をしてしまうシンジであった。
「う〜ん、微笑ましいわねぇ〜。良い感じじゃない？あの二人」
「そうだな、アスカは相変わらず素直じゃないみたいだけどな」
飛び込み台の下で壁に寄り掛かって談笑するミサトと加持。
「シンジ君が泳げるようになってアスカとくっついてくれれば言う事無しなんだけどね」
「ああ。だけど二人とも筋金入りの意地っ張りだからな。そう上手く行くかどうか」
「はぁ、そうなのよねぇ。そこが問題なのよねぇ〜」
ため息をついてミサト。
「まあ、俺達がどうこう言っても仕方ないさ。結局は二人の事だからな」
ミサトに軽くウィンクして笑う加持。
「それもそうね。んじゃ私達は私達で楽しむとしましょうか」
「ん、そうだな。それじゃあ、お決まりの競争でもするか？」
「いいわねぇ。負けないわよ。ふっふっふっふっふ」
キラッと目を輝かせて、ニヤリと不敵に笑うミサトであった。
「ほらシンジ、足が止まってるわよ」
シンジの手を取り後ろ向きで水中を歩くアスカ。
シンジは決して上手くはないが、必死に頑張っているのが目に見えて分かった。
アスカはそんなシンジに少し見惚れていた。
「・・・ねえ・・・アスカ・・・アスカ？・・・」
「・・・・・ねえ、アスカってば」
ハッと我に帰るアスカ。
「な、何よっ！？」
つい語気が荒くなる。
そんなつもりなど微塵も無いのに、と後悔してしまう。
「どうかな？少しは上手くなったかな？」
アスカの手を握りバタ足をしながら尋ねるシンジ。
「そ、そんなの分かる訳ないでしょ！バカシンジ！！」
「・・・そう・・・ゴメン・・・」
シンジが悲しそうに呟く。
（・・・・・違う・・・・・シンジは謝るような事何もしてない・・・）
少しの罪悪感がアスカの心を締め付ける。
「じゃあ、おかしい所があったら遠慮無く言ってね」
シンジはすぐに微笑んでアスカに告げる。
「分かってるわよ！バカシンジ！！」
怒鳴る必要なんて無いのに、と自己嫌悪に陥っていく。
アスカがそんな考えをしているうちに、二人はプールの端まで来ていた。
すると反対側からミサトと加持が凄い勢いで泳いできた。
二人共ムキになっているのか、かなりのスピードで近付いてくる。
そして、加持の方が若干早く壁に手をつきゴールする。
殆ど同着といっても良いくらいであった。
「ふう。俺の勝ちだな、葛城」
「くやしいぃぃ！！もう一回よ！もう一回！！」
壁をガンガン殴りつけながら悔しがるミサト。
シンジはそんなミサトを見てちょっとビビッていた。
「すっご〜い！加持さんカッコいい！！」
アスカが加持の腕に飛びついた。
「おいおい、あまりくっつくなよ、アスカ」
「ええぇ〜？いいじゃなぁ〜い、加持さ〜ん」
その光景を見ているシンジの表情に陰が宿る。
（・・・胸が痛い・・・苦しいよ・・・・・アスカが加持さんと一緒に居るのを見ていると・・・）
シンジは黙ってアスカを見詰めていた。
（・・・・・何でだろう？・・・・・教えてよ・・・・・アスカ・・・・・）
アスカは戸惑っていた。
（・・・・何でだろう？・・・・・シンジに酷い事を言っちゃう・・・・・言いたくないのに・・・・）
加持の所に行ったのもシンジに対する戸惑いから逃げる為だった。
（・・・・何でだろう？・・・・・素直になれないから？・・・・・アタシの素直って何？・・・・）
二人とも本当は分かっている・・・・ただ・・・・気付かない振りをしているだけで・・・・
「よし、それじゃあそろそろ上がるとするか？」
「そうね、今日は充分楽しんだしね」
加持の提案にミサトが頷く。久々の骨休みに満足気な表情をしている。
ぞろぞろとプールから上がり、荷物を置いてある所に向かう４人。
アスカは真っ先に駆け出して荷物置き場に着くと、バッグの中をゴソゴソと漁りだす。
そして何かを手に持ってシンジに声をかける。
「ほらシンジ。目が真っ赤よ！」
「そ、そうかなぁ」
「そうよ！こっち来なさい、目薬さしてあげるから！」
シンジは顔を赤くしてアスカの傍に行く。
「加持ぃ、わ・た・し、も・・・」
「おいおい、冗談はやめてくれよ、ははは」
「あぁー、加持さーん。加持さんも目が赤いわ」
ミサトと加持の会話に反応し、アスカが加持の元に駆け寄ろうとする。
しかし、その行動をシンジが不満気な声で止める。
「アスカぁ、僕にしてくれるんじゃなかったの？」
「うるさいわねぇ、アンタなんか後よ！後！」
シンジはアスカのあまりに素っ気無い返事に気分を沈める。
アスカは自分など眼中に無い。
（・・・・・なら・・・・・ここに居ても仕方が無い・・・・・）
「・・・・・分かったよ。僕、先に帰るね。それじゃ・・・・・」
「・・って、なにいじけてんのよ、シンジ！」
「・・・・・いいよ、加持さんの所に行きなよ・・・・・」
出口に向い、歩きながらシンジは言う。
「な、何言ってるのよ、さしてあげないって言ってないでしょ！？」
「でも僕は僕だけにして貰いたい・・・・・」
「なに甘ったれたこと言ってるのよ！」
「甘ったれてなんかいないよ！好きな娘が他の人といる所なんて見たくないよ！！」
シンジは自分の感情を制御出来ずに思わず叫んでいた。
「！！？？・・・え！？い、今・・・・」
「・・・・・ゴメン・・・・・迷惑だよね・・・・・」
俯いて言葉を紡ぎだすシンジ。
「・・・・・こんな事、僕の我侭だって分かってるから・・・・・」
「シンジ・・・・」
「・・・・・だから・・・・・今言った事忘れて・・・・・アスカ・・・・・」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ！」
振り向かずに歩き続けるシンジ。
「ちょっとシンジ！待ちなさいって言ってるでしょ！」
「・・・・・何、アスカ・・・・・」
シンジは歩みを止めて振り向く。
「し、してあげるわよ・・・・・・・・」
「・・・え？・・・」
「アンタだけに（ぼそり）」
アスカは俯いて、もじもじしながら声を出す。
「・・・・・アスカ・・・・・ありがとう・・・・・ 」
「・・・・・・」（ぽっ）
「い、いいから、こっち来なさいよ」
「・・・・・・」（ぽっ）
シンジの腕を取り、少し強めに自分の方に引き寄せる。
それがアスカに出来る精一杯の照れ隠しなのだろう。
「ほら、ここに頭乗せて・・」
と言って、人工芝に座ると膝の上に頭をのせるように促すアスカ。
「え？で、でも・・・」（顔真っ赤）
「い、いいから、早くしなさい！」
「・・・う、うん・・・」
顔を赤くしつつもアスカの言うままに膝に頭を置き寝そべるシンジ。
「こんなに目真っ赤にして・・・」
シンジの顔を覗き込んで言うアスカの頬も真っ赤だった。
「・・・そんなに赤いかな？僕の目」
「そうよ、真っ赤だわ！・・・ほら・・・」
と言って、右目に目薬をさす。
ちなみに、アスカの長い髪は、シンジの顔にかからんとしている。
「・・・んっ・・・」
ビクッと体が動くシンジ。
「・・・しみる？」
「・・・ううん。平気だよ・・・ア、アスカがしてくれてるんだし ・・・」
シンジは照れながらも勇気を振り絞り言った。
「ば、ばか・・・」（ぽっ）
「・・・本当だよ、アスカ・・・」
真剣な眼差しを向けるシンジ。
「・・・・・・あ、あたりまえでしょ！」
その眼差しに真っ赤っかな顔になり、目を逸らすアスカ。
「・・・うん、当たり前だね・・・」
「そうよ・・・・、じゃあ、今度は左目ね・・・」
「・・・うん・・・」
アスカはシンジの左目に狙いを定め、目薬を一粒垂らす。
「んっ・・・・・」 何度か目をぱちくりさせて目薬を乾かすシンジ。
「アスカ、ありがとう」
そう言って起き上がろうとする。
だが、アスカはシンジの頭を押さえてそれを止める。
「アスカ？どうしたの？」
再びアスカの膝の上に頭を乗せられ不思議そうな顔をするシンジ。
「まだ目が赤い？」
「ううん。青いの・・・・・シンジの唇・・・・・だから・・・・・」
アスカが覆い被さるように視界いっぱいに近付いてくる。
そしてシンジの唇に柔らかな感触が広がる。
「「んっ・・・・・ぅん・・・・・」」
暫くして、アスカが体を起こし唇を離す・・・・・名残惜しそうに・・・・・。
「・・・・・シンジ・・・・・ゴメンね・・・・・」
「・・・・・え？・・・・・」
「酷い事いっぱい言ってゴメンね・・・・・」
その言葉にシンジは首を横に振る。
「・・・・・違うよ・・・・・アスカは謝るような事してないよ・・・・・」
そしてアスカの瞳から零れ始めた涙をそっと指で拭う。
「僕の方こそ嫉妬なんてして・・・・・みっともないよね・・・・本当に・・・・・」
「・・・・・シンジ・・・・・」
「でも、アスカが誰か他の男の人と一緒に楽しそうにしているのを見ると辛いんだ・・・
・・・・・僕の我侭で勝手な想い・・・・・アスカにとっては凄く迷惑な考えだよね・・・・・」
「そんな事ない！！」
アスカが声を上げてシンジの言葉を否定する。
「そんな事ない・・・そんな事ないよ、シンジ。嬉しいよ、やきもち焼いてくれて嬉しいよ」
ポロポロと大粒の涙を流し、極上の笑顔でシンジの頭を撫でながら話す。
「だって・・・・それだけアタシの事を好きでいてくれてるっていう証拠だと思うから・・・・
・・・・好きな人にそれだけ想われるのは、とても嬉しい事だとアタシは思うから・・・・」
「・・・・・アスカ・・・・・それって・・・・・」
「・・・・・うん。アタシね、シンジの事が好き・・・・・大好きだよ・・・・・」
アスカもシンジも顔を赤くしている。しかし、目を逸らさずに互いの瞳を見詰めている。
「感謝しなさいよ、バカシンジ」
いつもと変わらぬアスカの言葉。だが、その口調はいつもより穏やかであった。
「もしも万が一、アタシがシンジの事好きじゃなかったら、アンタただの危ない奴になってたんだからね」
「ハハハ、それもそうだね。ありがとう、アスカ」
二人は微笑む。それぞれが持つ最高の微笑みで。
「・・・・・ねえ、シンジ」
アスカは自分の膝の上で寝そべっている少年を見詰める。
「何？アスカ」
「・・・・・まだ・・・・・唇青いよ・・・・・」
「・・・・・アスカ・・・・・」
二人の影は再び重なる。
何時の間にかミサトも加持も居なくなったネルフ本部内トレーニングプール。
二人が家に帰るのはまだまだ先の事だったとさ。
K：さて、何から話しましょうか（爆）
T：じゃあ、率直な感想を(^^
K：はい
T：いや〜、私の暴走がこんな立派なＳＳになるとは、けーちゃん様々ですね！
K：そんなに誉められると調子に乗っちゃいますよ（笑）
T：ええ、乗って下さい（笑）
K：キチ※イなのに、俺（爆）
I：ろぉーとろぉとろぉーとぉ、ろぉおとぉせぇーいやぁーくぅぅぅ♪
K：それが発端だからなぁ、このSS
T：そうそう、始まりはロート子供目薬にＥＶＡ出ないかなって所からだったよね
K：懐かしいなぁ（遠い目）
T：で、ＣＭをやるとしたらどんな物になるかって、私が「ほらシンジ。目が真っ赤よ！」ってはじめたんだ（笑）
K：その暴走に乗った俺（笑）
K：IRCチャットとは便利な物ですな、ほんとに
T：うんうん、全くですよ。ＩＲＣ無かったら、私のＳＳ二つは成立してないよ(^^
K：楽しいですね、こういうのも
T：そうですね
K：それでは、また逢える日まで（嘘）
T=たこはち、K=k-tarow、
I=いずみ（おまけ）
《コメント》
どうも、原案を吐き出したたこはちです(^^;
いや〜、上の対談でも述べましたが、私の暴走に付き合ってくれて、しかもこんな見事なＳＳに仕上げて下さったk-tarowさんには感謝の言葉もありません。
暴走の元となる話題を提供して下さったのはすのーろーどさんでしたから、すのーろーどさん無しにはこのＳＳは無かったわけですね。有り難うございました、すのーろーどさん。
そして、ＩＲＣサーバを提供して下さっている松光さん、有り難うございました。
たこはちでした。
どもっ、k-tarowっす。
たこさんの暴走が面白くて一緒になって妄想を爆発させました（笑）
これは1997年9月23日に行われたIRCチャットでの会話が元なんですが・・・・・
私が遅筆なんで、こんなに間が空いての公開になってしまいました（＾＾；；
現場で我々の唐突な暴走を暖かく見守り（笑）、協力してくれた
神田 “大家” 真太郎さん、
すのーろーどさん、
Heynさん
に感謝です。（いやマジで）
また機会があればやりたいですね。
キチ※イことk-tarowでした。
k-tarowさんとたこはちさんの合作ＳＳ『目薬を君に』、公開です。
ＩＲＣから生まれたＳＳ、
めぞん２本目の合作ＳＳ、
いやいや、
テクノジーって素晴らしい！ (^^;
ＩＲＣチャットから産まれたこのＳＳ。
そういう会話をしていましたね(^^)
私、半分寝ながらチャットにいることが多いのですが、
この辺りのことは記憶に残っていました(^^)
「目が真っ赤」となれば当然レイかカヲルになるんですが、
ここをＬＡＳに持っていく辺りで
k-tarowさんとたこはちさんの嗜好が分かって楽しい(^^)
そして、
その方が私も嬉しい(^^)/
紫の唇を暖める為に−−
なんて羨ましい！
なんてＬＡＳ！！
さあ、訪問者の皆さん。
ｋは「キ○ガイ」のｋではないk-tarowさんと、
【オクトパすトーリー】の名称ネタ元のたこはちさんに
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