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ふぅ……
イカリ=ユイは今日何度目か分からない――32回目までは数えたのだが、後はやめてしまった――ため息をつくと、ゆっくりといすから立ち上がった。
そこはイカリ家の居間で、派手すぎず、地味すぎず、見た者を自然に安心させるような、そんな選び手の趣味の良さを証明するかのような家具が並べてある。
その選び手――ユイは、朝から言い様のない不安を抱えていた。正確には、シンジが家を出てからだが。
(あの子に何かが起こるような――そんな気がする……)
そして、ユイが再びため息をつこうとしたとき――
バタンッ!
「おばさん! シンジが、シンジが死んじゃう!」
泣きそうな――あるいはすでに泣いていたのかもしれない――叫び声をあげてユイのため息をさえぎったのは、他でもない息子の幼なじみ兼花嫁候補、そしてかつての戦友達の一人娘でもあるソウリュウ=アスカ=ラングレーその人であった。
ユイと彼女の夫であるゲンドウ、そしてアスカの両親であるキョウコとイルクは、若い頃は四人組の冒険者として大陸中を旅してまわっていたのだ。
慌てて着たのか、ブラウスのボタンは一つずつずれて、スカートは後ろ前になっている。そんなアスカのただならぬ様子と、先ほどのアスカの発言から、ユイはシンジの身に、おそれていた何かが起きたことを悟った。
アスカを問いただそうとユイが口を開きかけたその時――
「ちょっとアスカァ! どういうことよシンジが死んじゃうって! 説明してよ! 何があったのよ一体!!」
アスカの『シンジ』という言葉に反応して、いきなり現れた少女がユイの言おうとしたことを全て言ってしまった。
果てしなく深い夏の空を思わせる水色の髪をユイと全く同じショートカットにし、ルビーにも似た魔性の紅い輝きを放つ瞳を持ったその少女――他でもないシンジの姉であるイカリ=レイはアスカの胸ぐらをつかんでぐらぐらと揺すっている。
「シンジが、死んじゃう! 死んじゃうぅ!」
「だから一体何があったのよ!」
「いやぁぁぁぁ! シンジ! シンジィィィィィ!」
「シンジにもしもの事があったら承知しないわよ!」
「うるさぁい!!」
ぴたっ。
思わずそんな擬音が聞こえてきそうな位に、アスカとレイは、一瞬にして口をつぐんだ。
横ではユイが肩を上下させて立っている。ユイは二人の視線に気づくと、こほんと咳払いをすると、アスカに向いて言った。
「アスカちゃん。落ち着いて。いい、まず、シンジに何があったのか、順を追って説明してちょうだい。」
ゆっくりと、アスカの目をのぞき込むようにして、一語一語切って話す。
その様子に、アスカも落ち着きを取り戻したのか、数分前の出来事をユイとレイに向かって話し出した……。
「――というわけなんです」
「わかったわ。とにかく行ってみましょう。まだほんとにシンジの魂が崩壊してしまったのかどうかわからないわ。強力な魔法を使った後に、精神が衰弱して気絶してしまうのはよくあることだから」
「「本当!?」」
今にも泣き出しそうな顔をしたアスカとレイが同時に叫ぶ。
「ええ、本当よ。どれ、それじゃあ、早速行くわよ」
「ユイ」
やおら立ち上がったユイに、突然奥の書斎から、色眼鏡をかけてもみあげと髭のつながった中年男が声をかけた。
ユイの最愛――だろう。多分――の夫、ゲンドウである。
「何ですか、あなた」
気勢をそがれて、やや不機嫌そうにユイが応えた。
「夕飯の時間までには帰れよ」
無表情に言い切るゲンドウ。
ぴしっと音を立ててユイの額に血管が浮かび上がる。
「あ・な・た・という人はぁぁぁぁぁっ!!!」
床をだんだんと足で打ち付けながら叫ぶユイ。
「実の! 息子が! 死にそうなのに! ど・お・し・て! そう言うことが言えるんですかぁぁぁっ!」
もはや夕食を作る自分がいなければ、夕食の時間も何もないということすら気がつかないらしい。
「大丈夫だ。シンジが死んでも飢え死にせんが夕食が食べれなければ飢え死にしてしまうではないか」
何が大丈夫なのかよくわからない。
「それに」
そう言ってニヤリと笑うゲンドウ。
「その程度で死ぬほどヤワには育てていない」
「何バカなこと言ってんのよぉぉぉっ!」
ずがっ!
声と同時にゲンドウの頭に勢い良くフライパンが振り下ろされた。
「シンジはあんたと違って繊細なんだから! あんたなんかと一緒にしないでよ!」
敬語すら使わないアスカ。どうもいったん収まった混乱が再びぶり返して、かえって本音が出てしまったらしい。
「む、むう……無礼な……」
頭を押さえてうめくゲンドウ――よく生きてるな。
はあ、とため息をついてユイ。
「あなたが馬鹿なことばかり言ってるからじゃありませんか」
「ちょっと! シンジ助けに行くってのはどうなったのよ!」
はっと全員――ゲンドウ除く――が振り向いた。
「「忘れてたぁ!」」
かわいそうなシンジ。
「い、行くわよ! レイ! アスカちゃん!」
「「はい!」」
あわてて駆け出す3人を見送りながらゲンドウはぽつりと呟いた。
「ユイ……夕食のおかずは魚がいいぞ」
家でアスカ達がどつき漫才をやっている頃、シンジは――まだ気絶していた。
実は、あの怪物を撃退したとき、まだシンジの意識はあったのだ。
あのとき、シンジとアスカはちょうど怪物を挟んで向かい合う形になっていて、シンジからアスカはよく見えなかった。
そして、怪物がいなくなったとき、真っ先にシンジの視界に入ったのは――全裸のアスカだった。
普段なら鼻血を出す程度ですんだのだろうが、心身共に衰弱しきった状態のシンジにとって、それはあまりにも刺激的な光景だった。
そして、あえなくシンジは深い深い眠りへと落ちてしまったのだ。
未だ眠り続けるシンジの元に、3組の足音が近づいてくる。
「シンジ!」
ユイがシンジの元に駆け寄り、頭に手をかざして精神を集中させる。
固唾をのんで見守るアスカとレイ。
10分ほどしただろうか――実際にはもっと短かったかもしれない。ともかく、アスカとレイにはそれぐらいに感じられた。
ここまで心配されて、真相を知られたらこの二人が怒り狂うことは必定である。
ユイが顔を上げて、二人を安心させるように微笑んだ。
「大丈夫。シンジは生きてるわ」
その言葉を聞くと、急に体中の力が抜けたように座り込むアスカとレイ。
「よかったぁ…………」
アスカが安堵の息をもらした。
「あら、この子、けがしてるじゃない」
やたらとのんきな口調でユイが言った。
それはもはや『けが』ですまされるものではなく、シンジの肩は刃物でざっくりと切り裂かれた様になっていた。血が固まってこびりついている。
「どれ、治しておかないとね。あら、鼻血も出てる。鼻でも打ったのかしら……まあ、いいわ。名も無き生命の精霊よ。傷つき疲れ果てし我が同胞に、ひとときの安らぎを与えん。<治癒真言>」
呪文の完成と共に、ユイの右手が淡い光を放つ。その青白い輝きを浴びるだけで、シンジの肉体は何もなかったかのように再生されていく。
<治癒真言>――精霊魔法の中でもかなり上位の魔法である。これだけの魔法を苦もなく操ることから見ても、ユイの実力は推して知るべきだろう。
「さて、と。とりあえずこの子を家まで運ばなくちゃね。アスカちゃん、そっちもって。レイはこっち」
ユイがシンジの頭を持ち、アスカとレイがシンジの右足と左足をそれぞれ持つ格好で、3人はシンジを家まで運んだ。
アスカはもう言葉を話す気力もないのか、ただ黙ってシンジを運んでいる。ユイとレイも同様だ。
(よかった……シンジが生きてて……)
アスカの心には、安堵感だけが広がっていた。
どうも、ぎゃぶりえるです。うーむ、まだキャラを自分のものにできてないなー(特にユイとレイ)。
なんか文章も変だし、まだまだ修行が足りませんね。
さて、先日、とうとう夏休みに入りました(まだ現役の中学生さっ)。通知票を見ると、国語の「表現力」の欄が「もう少し努力が必要」……うーみゅ(-_-;
エヴァの映画はまだ見に行ってません。アスカ死なないといいなぁ……
ではでは。
ぎゃぶりえるさんの『ネルフ村の平和な日常』第2話、公開です。
意識を失ったシンジのその訳・・・(^^;
なんやそれ〜〜〜! 心配して損した〜〜〜〜(笑)
ライトなノリのファンタジーだと言うことがハッキリしたのかな(^^)
アスカちゃんも全裸を正面から・・・
14歳と言ってもかなりナイスなバデーですから、うぶうぶシンジくんには刺激が(^^;
ちょっとずつ慣れて行かないといざと言う時に(^^;;;;
それはそうと、
ぎゃぶりえるさんて中学生だったんですね!
・・・・下手したら私の半分?!
うぅ・・・おっさんを実感するなぁ (;;)
私が中学生の頃なんてMSX・ツインファミコンですよ。
今の中学生は良いな・・・
こういうセリフがおっさん臭いのか(^^;
さあ、訪問者の皆さん。
若いEVA小説書きのぎゃぶりえるさんにお便りを出しましょう!
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