第三新東京市、そこに乱立する兵装ビルに夕日が射し込む。
たとえ、日中がどんなに暑かろうと、
どこか寂しげな、そんな感傷的な想いを誘う、夏の終わりの夕暮れ。
そして、その夕暮れは二人の棲んでいるマンションにもやってくる ・・・・
[AGO]の部屋 1万Hit達成記念SS
終わる夏休み
「もう夏休みも終わりねぇ。」
ベランダから射し込む夕日を浴びながら、彼女は口を開く。
夕日を浴びているせいか、その表情が大人びて見え、それが彼女の美しさをいっそう引き立たせていた。
「そうだね。なんかあっという間だったから。」
それに答える少年もどこか寂しげな表情を浮かべる。
そして二人の瞳は遙か遠くを見つめていた ・・・・
「・・・・・・ ねぇ、シンジ。」
「ん? 何アスカ?」
「・・・・ キス、しようか ・・・・」
「え ・・・・?」
沈黙。
シンジは真っ赤になったまま、うつむいてしまう。
まあ、射し込む夕日であまり分からないけれど。
そして、アスカはじっとシンジをほうを見つめ続けている。
「・・・・ アタシとじゃ、いや?」
この沈黙を破ったのはアスカだった。
シンジを見つめるその瞳からは、今にも涙がこぼれてきそうな、そしてけなげな雰囲気が漂う。
「・・・・・ いやじゃ、ないけど ・・・・」
「・・・・ じゃあ、いいじゃない。」
「・・・・ 分かった ・・・・」
「・・・ 今度はシンジから、ね?」
「・・ うん。」
そう頷くと、シンジはアスカを正面から見つめた。
そして、アスカもシンジをまっすぐと ・・・・
「・・ んっ ・・・・」
静まり返った部屋に、アスカの声だけが聞こえる。
二人とも瞳を閉じたまま、お互いにお互いを離そうとせず ・・・・・
静かに、時だけが流れていく。
そして、二人にとっては永遠とも言える至福の時、お互いを感じることのできる、
自分が此処にいるということを証明する時。
しかし、その時間も静かに終わりを告げられる。
「好きだよアスカ、愛してる ・・・・・」
「アタシもよ、シンジ ・・・・・」
今度は言葉でお互いの気持ちを確かめあう。
二人、寄り添いながら ・・・・・
「絶対に離さないから、ずっと一緒だから ・・・・」
全てが終わった後、
この生命がある限り、
これからずっと二人で一緒に生きていこう
そう心に決めた二人。
・・・ もう、一人で苦しむ必要はない ・・・
・・・ 自分を優しく包み込んでくれる人がいるから ・・・・
「夕飯、作ろっか。」
「うん。」
いっぱいの笑みを浮かべて、二人はキッチンへと向かった ・・・・
「今日はミサトさん、遅いのかなぁ。」
「アタシはそんなコト、聞いてないけど。」
「うん。僕も聞いてない。」
「何してんのかしら、あの飲んだくれ。」
二人は、向き合うようにしてテーブルについていた。
そして、保護者であるミサトの帰りを待っていた。
「待っててもしょうがないから、食べちゃおうか。」
「・・ そうね、そうしましょ。」
「「いただきます。」」
そう言って、食事を始める二人。
最近では、アスカも一緒に料理をするようになった。
なんでも、ずっとシンジと同じ時間を共有していたいから、という理由だとか。
もちろん腕もそれなりに上達してきている。
「アスカ、ホント、これおいしいよ。」
シンジがおかずを頬張りながら、笑顔を彼女に向ける。
どことなく”可愛らしい”感じのするシンジの笑顔にアスカはドキッとしてしまう。
「・・・ そ、そう? よかったぁ、シンジにそう言ってもらえて。」
そして、アスカもシンジのそれに負けず劣らずの笑顔を返す。
「アスカはコツを掴むのがうまいから。」
「・・・ それは違うわね。」
「どうして? だって本当にそうじゃないか。」
「まぁ、確かにそれもあるけどね ・・・・」
「・・ なに?」
「え? うーんと、その ・・・・ シンジに喜んで貰いたいから、同じ時間を過ごしたいから ・・・・」
「え ・・・・・」
お互い真っ赤になるのがよく分かった。
それと同時に、心臓の鼓動が早まっていく ・・・・
「た、食べないと冷めちゃうよ。」
シンジのこの一言がアスカを我に返らせた。
「あ、うん。せっかくシンジが作ってくれてるんだからね。」
いつも、どことなくぎこちなさを感じさせる二人だったが、
今日はどこか違った感じがした。
「アスカ、お風呂沸いたよー。」
「うん、ありがと。じゃあ、先入るね。」
「ごゆっくり。」
シンジは、浴室へと歩いていくアスカの背中をじっと見つめていた。
そして、ふと自嘲気味な笑みを浮かべと、こうつぶやいた。
「・・・ 僕たちって、幸せなんだな ・・・・」
「ふう ・・・、シンジ、アタシとっても幸せだから ・・・」
浴室でシャワーをあびながら、アスカもこんなことをつぶやいていた。
「シンジ、お風呂空いたわよ。」
「あ、うん。わか・・・・ ああーっ!!」
シンジの言葉が言いかけでとぎれた。
「どうしたの、シンジ?」
アスカが不思議そうな顔をして言葉をかけてくる。
「夏休みの宿題、やってない ・・・・」
「えーっ? アンタばかぁ? そんなもんまだやってないのぉ?」
「ご、ごめん ・・・」
「いいわ、アタシが手伝って あ・げ・る!
まあとにかく、お風呂先に入ってきなさいよ。」
「ありがとうアスカ。」
そう言ってシンジは浴室へと消えていく。
「もう、ホンっとにばかなんだから ・・・」
アスカはシンジに聞こえないような声でつぶやきながら笑っていた。
・・・ まあ、そんなところがシンジらしんだけどね ・・・
・・・ 完璧なシンジなんてイヤだもの ・・・
・・・ アタシだっていろいろ世話焼いてあげたいもの ・・・
「さあっ、今日中に一気に片づけるわよっ!!」
「ええー? 今日中にぃ?」
「そうよ、何か文句あるの?」
「で、でも ・・・・・」
「アンタばかぁ? 残りの日は毎日休みを満喫するのよっ! 分かった?」
「そ、そんなぁー。」
情けない声を上げるシンジ。
いきなりのアスカの発言にびっくりしてしまっているようだ。
「ふーん、じゃあ手伝わなくていいのね?」
悪戯っぽい笑みを浮かべて、シンジを見るアスカ。
この可愛らしい笑みにシンジが勝てるはずがない。
「・・・ わかったよ、わかったから。だから、お願いだから宿題手伝ってぇ。」
どん底へ追いつめられたシンジは、結局アスカに泣きついてしまった。
まったく情けない限りである。
「ふふ、じゃあ、明日アタシに何かプレゼントちょうだいね。
それでチャラにしてあげる。」
「ちぇ、わっかたよ。」
見事アスカの口車に乗せられて、プレゼントを約束されてしまったシンジ。
まあ彼もイヤというわけではない。
むしろ、こうなって嬉しかったのかもしれない。
これが幸せなんだと実感していたから ・・・・
「もう、これは違うって言ってるでしょ!」
「だってぇー。」
「文句言わないの、手伝って貰ってるんだから。」
「はい ・・・・」
こんな会話と共に
夏の終わりの1コマは過ぎていく ・・・・・
<あとがき>
え−、どうも、AGOです。
ついに1万Hit突破しちゃいました。いやぁ、うれしい限りですねぇ。
読んでくれたみなさん、本当にどうもありがとうございます。
久々のらぶらぶ系でしたが、いかがでしたでしょうか?
最近シリアスものばっかり書いてるんで、なかなか思うように書けませんねぇ。(笑)
実は僕がめぞんに入居してから一ヶ月経ったんですが、この期間で1万Hit突破す
るとは自分でも驚いてしまいます。
心機一転、これからもがんばってどんどん書いていこうと思うので、どうぞよろしく
お願いします。
ではまた。
AGOさんの『終わる夏休み』、公開です。
終わる夏休み。
過ぎる時。
あたたかな場所。
快い隣人。
お互いといる事を安らぎと感じる二人・・・・
ホッとする関係ですね(^^)
夏休みは終わりますが、
この関係はこれから。 ですね−−−
さあ、訪問者の皆さん。
AGOさんにカウンタ10000お祝いメールを!