今、アスカはドイツへ向かうネルフ所有の航空機の機内にいた。
そして、誰にも聞こえないような一言。
「いきなり何だって言うのよ、バカシンジ ・・・・」
昨日のカヲルの突然の訪問の内容は、アスカとミサトへのシンジからの伝言だった。
そして、アスカはその伝言通りにドイツへと向かっているのである。
『いきなりで悪いけど、すぐにドイツに来てくれないかな?
いろいろ話したいこととかあるし ・・・・ 』
これがカヲルが伝えられた、シンジからの伝言である。
ただ、これだけ ・・・・
何が目的なのか? はっきりとした理由はわからない。
直接会ってみないとダメね ・・・・
そう直感したアスカは、すぐにドイツへと発ったのであった。
再び、航空機 機内。
なぜ、シンジはドイツにいるのか?
彼女の脳裏には、こんな疑問が浮かんでいた。
まぁ、今までシンジの正確な居場所までは把握していなかった。
もっとも、ミサトは知っていたかもしれないが、少なくともアスカにはシンジ本人からも、ミサトからも知らされていなかった。
・・・ よりによって、どうしてドイツなわけ? ・・・
彼女がこう思うのはごもっともである。
なぜ、シンジがアタシの生まれ故郷にいるのか。
アスカは、このことにどこかひっかかる気がしてならなかった。
『別離』 After Story
虚空への前奏曲
第二話
「副司令、まもなくドイツに到着します。」
機長から声をかけられ、アスカは日本からずっとしていた考え事を中断した。
直接顔を会わせるのはおよそ4年ぶりである。
このせいか、どうしても先程からの疑問よりも、別の感情の方が大きくなってしまう。
そして程なくして、航空機は空港の滑走路の一端に滑り降りた。
「アスカ!!」
タラップを降りたアスカの元に、声が掛かる。
そして、その声の主もタラップの元へと走り寄ってくる。
「シンジ!!」
アスカもそれに気付き、言葉を返す。
そして、知らずに顔に笑みが浮かんでくる。
「アタシをいきなり呼び付けて、どうなるか分かってるんでしょうね!?」
アスカは腰に手を当てたいつものポーズで、早速シンジに4年ぶりの罵声を浴びせる。 シンジは、相変わらずか、といった感じの表情で苦笑する。
「ごめん、アスカ。一応僕だって、悪いとは思ってるんだから ・・・」
「ふぅーん。でもアンタってもともと内罰的な性格だからねぇ ・・・・」
さすがに、しばらくとはいえ同居していただけあって、性格分析くらいは終わっているようだ。
そして ・・・・
「シンジ!!!」
アスカは、強ばっていた表情がふと緩んだと思ったら、いきなりシンジの胸の中へと飛び込んだ。
愛しい人の名前を呼びながら ・・・・
「シンジぃ、逢いたかったよぅ ・・・・・」
少し涙声になっているアスカを、シンジは優しく抱きしめる。
「僕も会いたかったよ、アスカ ・・・」
こうして、二人は無事再会を果たしたのであった ・・・・・
そして、街中のレストランにて。
夕食の時間であったため、あのあと二人は食事をとりに街へ出てきていた。
「アンタも少しは気が利くようになったのねぇ。」
二人用のテーブルに向かい合って座っているアスカはちょっといじらしく言ってみる。
「でも、アスカの生まれ故郷でこういうところ誘うのも恐縮なんだけどね。」
そうシンジは受け答えるが、その言葉にアスカはハッとする。
アタシの生まれ故郷。
シンジとの再会の喜びですっかり忘れていたことを思い出した。
なぜシンジはドイツにいるのか?
聞くべきか、そうするべきではないか。アスカはそのことで迷っていた。
もし聞いてしまったら・・・・。
どうしても嫌な方向ばかり考えてしまう。
「どうしたのアスカ?」
シンジの声にはっと我に返るアスカ。
だいぶ顔に出ていたんだろうか。
でなければ、シンジが声を掛けてくるわけないか ・・・・
「な、なんでもないわよ!!」
慌てて返事をしてしまったが、気付かれなかっただろうか?
しかし、アスカのそんな心配をよそに、
「ふぅーん。ならいいけど。」
とシンジはそれ以上は何も聞いてこなかった。
まぁ、今日のところはいいか ・・・・
そう決めたアスカは、素直に久しぶりのシンジとの時間を楽しむことにした。
食事を終えた二人は、夜の街へと繰り出して行った。
シンジとの、しかも久しぶりの故郷でのひととき。
アスカは自分の中に、どこか暖かいものを感じていた。
街中を歩きながら、ふとシンジの方に目をやる。
・・・ なんか、男らしくなったわね、シンジ ・・・
先程まではそうは思わなかったが、こうして一緒に歩いているとだいぶ変わったんだなと思った。
そして自然と顔がほころんでくる。
なぜか自分のことのように嬉しく思えてならなかったのである。
その後二人は、しばらく歩き続けて近くの公園のベンチへと腰をおろした。
「ふぅ、なんか疲れちゃった。こんなに歩いたの久しぶりだもの。」
アスカが笑顔と一緒にシンジに話しかける。
「僕もだよ。最近あんまり体動かしてないからね。」
「・・・・・・・」
「どうしたのアスカ? さっきから何か変だよ。」
「・・・・ ねぇシンシ?」
「・・・ なに?」
「どうしてアタシをドイツに呼んだの? どうしてシンジがドイツにいるの?」
「え・・・?」
「教えてくれないの?」
アスカはそう言って、その蒼い瞳でじっとシンジの顔を見つめる。
「・・・ そうだね。いきなり呼び付けて、理由も聞かずにってのは無理だよね。」
そしてシンジは一呼吸おくと、話を始めた ・・・・
「えっ? ゼーレの連中が!?」
その話の内容にアスカは驚きを隠せなかった。
「これは本当のことだよ。そして今度はその力を利用して計画を完遂しようとしている。」
「まさか、そんなこと ・・・・。ミサトはそのことは知ってるの?」
「ミサトさんにはまだ言ってないよ。このことを知っているのは情報を集めている僕らとアスカ、君だけだよ。」
「じゃあシンジがドイツにいるのはどうして?」
「それは、その力の源たるものがここにあるから。」
「ドイツにそんなものが眠っていたなんて ・・・・」
シンジの口から告げられる恐ろしい事実にアスカの顔は青ざめ始めていた。
シンジのほうも、無表情と言うのがふさわしい顔で話をしている。
「だから、アスカに手伝ってもらおうと思って、ね?」
「・・・ アタシなんかで間に合うの?」
アスカの口から、普段の彼女からは絶対考えられない台詞がもれる。
いくら彼女といえども、よほど怖いのかもしれない。
「アスカじゃないとダメなんだ。やっぱり僕のそばにはアスカがいてくれないと ・・・」
「シンジ ・・・・ ばか ・・・・」
『そばにいて欲しい』
シンジのその言葉に、赤くなってしまうアスカ。
「アスカ ・・・・」
シンジはそっとアスカの肩に手をやり、自分の方へと寄せる。
「あ ・・・ シンジ ・・・・」
シンジの突然の行動に、アスカは小さな甘い声をあげる。
向き合う二人の瞳。
そして、二人の距離がどんどん小さくなっていく ・・・・
「「 んんっ んむっ 」」
・ ・ ・
・ ・
・
「アスカ ・・・・」
「シンジ ・・・・」
<あとがき>
毎度どーも。AGOでございます。
えー、まず『ただいま休暇中』よりさらに更新が遅れて、どうもすいませんでした。
さらに、前回のあとがきで書いた方向の話からそれつつあることも併せてスイマセンです。m(_ _)m
設定上、試行錯誤しながら書いているもので、どうかご了承のほどを。
今回は、カヲル君とミサトさんはお休みでしたが、次回からはまた登場する予定です。
特にカヲル君には頑張ってもらわないといけないので ・・・
ではまた、次回にて。
AGOさんの『虚空への前奏曲』第二話、公開です。
舞台はドイツへ・・
再開を果たしたアスカとシンジに
ゼーレの影。
この手の陰謀と言えばドイツ!
ナチスもそうだし・・・・インディジョーンズの新作の話も(^^;
なにが出ても、
ラブラブパワーで乗り切ろう! って、何やそれ(爆)
さあ、訪問者の皆さん。
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